UCL16-17-C6-マンチェスターシティ.vs.セルティック
UCL16-17-C6-ManchesterCity.vs.Celtic
マンチェスターシティは3-5-2
バルセロナと同様に6節の結果に関わらず、2位が確定しているマンチェスターシティ。そんなこともあってかいつもと違うメンバーで、3バックにはクリシー、アダラビオヨ、サニャを、WBにはマフェオ、サネを敷いた布陣となっている。
セルティックは4-1-4-1
セルティックも結果に関わらず4位が確定しているチーム。グリフィス、ティアニー、S.シンクレアが怪我をしているためベストなメンバーとはいかないが、メンバーはしっかりと揃えてきた。あとはボルシアMGのように無気力になっていないかが焦点となる。
試合の概要
試合は1-1の引き分けで終える。4分にP.ロバーツがクリシーを突破しそのままゴールを決める。一方で8分にはハイプレスを躱したマンチェスターシティは最終的にイヘアナチョが決めて同点とする。メンバーを落としただけあってマンチェスターシティはすべての局面で苦戦していた。セルティックは敗退確定していたにもかかわらず前線から上手くディフェンスを行い、うまくプレーしていた。
EURO2016におけるイタリアの3-5-2と今回のマンチェスターシティの3-5-2について
両者の守備システムはとてもよく似ていた。(Fig.2,3)
Fig.2 マンチェスターシティの3-5-2のハイプレスI
イタリアのハイプレス
前線の2人ノリート、イヘアナチョがCBを監視し、ボールサイドのSB(ルスティグ、イサギレ)にはWB(サネ、マフェオ)がプレスする。そしてアームストロング、ロギッチをギュンドアン、サバレタ、フェルナンドが監視する。
このとき肝なのは、ボールサイドと逆側のWBは4バックの一角としてプレーすること。ボールの位置に合わせてWBが上下動を繰り返すことでハイプレスの強度を保っていた部分はEURO2016のイタリアとそっくりだった。ただし、スタートポジションにおける3バックの両脇にいるクリシーとサニャは本来SBの選手なので、スライドした時のポジションはやりなれているが、サニャはともかくクリシーが3バック(4バック)のCBの1角としてプレーできるのかは非常に疑問だった。
最初の20分間のマンチェスターシティのハイプレスはFig.2のように1列目の2人によって行われた。しかしこの試合のセルティックのビルドアップは、S.ブラウンをスビアチェンコとジムノビッチの間において3人で行われた。またGKもビルドアップに参加するため、セルティックのビルドアップを中々捕まえることができていなかった。
そこで20分以降は、落ちてきたS.ブラウンにギュンドアンがマンマークすることでビルドアップを妨害しようとした。(Fig.4)
Fig.4 マンチェスターシティのハイプレスII
ギュンドアンが前線に出ていることが多い分、フェルナンド、サバレタがカバーするエリアが増えるが、マンチェスターシティのハイプレスはうまく嵌っておりショートパスによる前進は防げていたと思う。ただしセルティックもショートパスだけではなくロングボールでの攻撃が多かったので、セカンドボールをマンチェスターシティが回収できないときにはそれなりにボールを進めていた。
マンチェスターシティのビルドアップ、セルティックのハイプレス
マンチェスターシティの攻撃をみていく。
EURO2016のイタリアと最も異なった、というか質に差があったのはビルドアップの部分だった。いずれのチームも3バックでビルドアップを行っていくが、マンチェスターシティのクリシー、サニャ、アダラビオヨはお世辞にもビルドアップがうまい選手ではなかった。一方でEURO2016時のイタリア(現ユベントスといってもいい)のボヌッチ、バルザーリ、キエッリーニはそれぞれタイプは違うものの、ハイプレスに対してもうまく対処していた。
セルティックはマンチェスターシティの3バックのビルドアップに対して、ハイプレスで対処した。(Fig.5)
Fig.5 セルティックのハイプレス
3バックに対してはM.デンベレと、SH(P.ロバーツ、J.フォレスト)の計3人がプレスし、WBに対してはSB(ルスティグとイサギレ)が当たることでかなり攻撃的なプレスを前半から続けていた。もちろんハイプレスが嵌っていたことも確かだったが、特にカバジェロ、サニャはミスを何度もしており、セルティックは前半からカウンターのチャンスを多く作っていた。
一方で頻度は少なかったものの、ハイプレスを躱し、特にインテリオールがうまくマークを外した時にはマンチェスターシティにとって大きなチャンスとなった。EURO2016のイタリアも前線のクオリティ不足を補うためにインテリオールのジャッケリーニの飛び出しをストロングポイントとしていたが、ボヌッチ、デロッシのロングパス能力に頼っている部分が大きかった。しかしマンチェスターシティには特に出し手が存在しなかったため、チャンスは僅少となってしまった。
3-5-2におけるインテリオールの役割は運動量、守備能力、飛び出しと多岐に渡るが、マンチェスターシティにはあまり適した選手がいない気がするので、あまり機能する未来が見えなかった。
マンチェスターシティのチャンス
07m20P(8-9-72)Goal
10m30P(6-8-5-72)Grade4
23m10P(22-9)Grade4
27m50T(13-72-9)Grade4
36m50P(8-3-72)Grade5
37m00P(9)Grade4
48m20P(22-19)Grade4
63m10P(6-72-8-72)Grade4
65m40T(13-8-72-9-15-9)Grade5
85m50FK-T(19M)Grade4
86m40T(8-19)Grade5
ビルドアップは全然うまくいっていなかったマンチェスターシティだったが、ハイプレスを躱したときやカウンターのチャンスではイヘアナチョの瞬間的なスピードが輝いていた。特に36min~37minまでのチャンス、65minのオフサイド判定のチャンス未遂は非常に惜しかった。(Fig.6)
Fig.6 65分のマンチェスターシティのチャンス
セルティックのチャンス
02m30T(10)Grade4
02m30T(27-18M)Grade4
03m40T(23-27)Goal
15m50P(14-18-14-10)Grade5
17m10T(49-10)Grade5
27m40P(3-14-3-10)Grade5
30m20P(8-3-27-18M)Grade4
43m10P(23-10-18-27)Grade4
58m20CK(14-23)Grade4
59m20P(18-23-18-23)Grade4
63m50P(27-16-27-23-18-16M)Grade4
77m20T(18-16-9)Grade4
81m30T(14-16-9-14)Grade5
マンチェスターシティの撤退守備の問題点
セルティックがボールを前進させることに成功したときには、マンチェスターシティは5-3-2となる。(Fig.7)
Fig.7 マンチェスターシティの守備の問題点
EURO2016のイタリアと異なった部分はもう一つある。前線の選手はハーフラインよりも自陣側まで侵入されたときにはそこまで熱心に守備に参加しなかったことだ。そしてセルティックのSHまたはSBがオーバーラップしてきたときにはどうしてもWB+インテリオールがサイドに開いてしまうため、ペナルティアーク付近のスペースがフリーになってしまうことがあった。
そのためセルティックのインテリオールであるロギッチやアームストロング、途中出場のM.スティーブンは隙あればミドルシュートという形はよく見られた。やはり5バックになってしまうと中盤をコントロールできなくなるという問題は古今東西一緒だなと感じた。
Fig.8 左からクリシー、アダラビオヨ、サニャ
さらに、危惧されていたマンチェスターシティの最終ラインの1vs1の守備はとても軽かった。中央のアダラビオヨは20歳の選手だが、両脇のサニャ、クリシーはサポートすることがあまりできていないようだった。もちろんアダラビオヨ自身も何度もM.デンベレに裏抜けを許してしまっていたので、いい出来とは言えないが、状況もかなりよくなく、いいデビュー戦とはいかなかった。
余談
両チームともハイプレスに苦戦していたため、チャンスメイクはロングボールやカウンターが中心となったが、メンバーを落としていた分マンチェスターシティが割りを食った感じになった。まあこの試合は他の試合に比べて重大な試合ではなかったが、サニャやクリシーを3バックの1角として使うのは諦めざるを得ないだろう。
UCL16-17-C5-セルティック.vs.バルセロナ
UCL16-17-C5-Celtic.vs.Barcelona
まずはスタメンから
セルティックは4-1-4-1を選択した
K.トゥーレとティアニーが怪我のため、ジムノビッチとイサギレが代役として抜擢されている。前回の試合では5-4-1のどん引きシステムでボコボコにされてしまったが、この試合ではどうだろう。
バルセロナはいつもの4-3-3
J.ピケとJ.アルバは負傷から回復したがウムティティが怪我のためマスチェラーノがLCBにはいっている。引き続きイニエスタは怪我のためA.ゴメスがインテリオールとなっている。
試合の概要
試合は0-2でバルセロナが勝利する。24分にはネイマールの浮き球を完璧な動き出しとフィニッシュでL.メッシが決め、そのご55分にはL.スアレスが狡猾にPKを誘い、L.メッシがPKを沈め最終スコアを0-2とした。1節とは違いバスを停めることはなかったセルティックは特にL.メッシの裏のスペースをついたりと効果的な攻撃もあったが、選手の質の差が結果に響いた感じでこれ以上はどうしようもない感じがあった。
マンチェスターシティのバルセロナ対策が成功した理由は、どんなときでも最終ラインにプレッシャーをかけることでビルドアップまたはゲームメイクを妨害できたことが大きかった。
セルティックもゴールキックや押し込んだあとのボールリカバリー時などかなり限定的ではあるが、マンチェスターシティのハイプレスを模倣したような形になることが多かった。
(Fig.2)
Fig.2 セルティックのハイプレス
セルティックのハイプレスの特徴はほぼマンチェスターシティと同じく、アームストロングまたはロギッチとM.デンベレがCBにプレスし、残りのインテリオールがブスケッツを監視する。ボールサイドの逆側のSHは内側に絞り、ボールサイドの選手はSBへのプレスとSHの監視を行う。
ただし、マンチェスターシティとの決定的な違いはハイプレスの頻度と強度だった。
セルティックのハイプレスはぼんやりとマーク相手が決まっているのだが、マンチェスターシティのようなシステマチックな部分はあまりなく、どこかフリーになってしまうことも多かった。そのためハイプレスを躱される場面も多く、ディティールまでこだわった守備とは言い難かった。
また、シティは押し込まれたとしてもバックパスでバルセロナの最終ラインまでボールが戻れば、マンチェスターシティの最終ラインを含めた全体が即座にラインの位置を回復しようとしていた。しかしセルティックはある程度押し込まれてしまうとハイプレスをやめてリトリート型にシフトし、バルセロナのゲームメイクを潰していこうとした。
セルティックはバルセロナのゲームメイクに対して、M.デンベレがいつもの通りデスコルガードの4-5-1で対応した。
バルセロナはインテリオールをサイドに開かせてゲームメイクすることが多いが、セルティックの中盤5人はしっかりとスライドすることで対応していた。こうなった時の対処方法は2つある。
・ライン間にいるインテリオールとのコンビネーションで2列目を突破
・サイドチェンジでスライドが間に合わないようなプレーをする
1つめに関してはL.メッシが中央でプレーしてた時代やイニエスタ、シャビが存在するのであれば簡単にクリアできると思うが、ラキティッチ、A.ゴメスコンビだとその成功頻度は全盛期時代と比べるとうまくいかないことが多い。
(ほかのチームと比べれば圧倒的にうまいのだが)
(Fig.3)
Fig.3 A.ゴメスのミス
もちろんこれだからA.ゴメスがダメというわけではなく、イニエスタやシャビといった黄金期を支えたインテリオールがいかにすごい選手達だったかということ。中央での崩しに関して2008-2009あたりのバルセロナを超えるチームは出てくるのだろうか。
当然だが、バルセロナのインサイドハーフをサイドラインいっぱいに張らせておこなうゲームメイクはセルティックのボールリカバリーエリアにかなりきれいにでていた。(Fig.4)
Fig.4は特に今のバルセロナのゲームメイクのエリアを表していると思う。サイドで数的優位を作ってボールを進めることが多いバルセロナは、必然的にボールが奪取されてしまうエリアも中央を除いたエリアとなる。別にセルティック相手であれば攻めることができているので全然問題ないが、しっかりと守備統制が整った強豪と当った時にこのゲームメイクでいいのかという疑問は残る。
2つめに関しても高精度なサイドチェンジをできる選手はJ.ピケかL.メッシに限られる。他の選手もサイドチェンジを行うのはうまいがそこまで頻度は高くない。
マンチェスターシティ戦と同じくゲームメイクがうまくいかなくなるとL.メッシが下がってきてサイドチェンジや中盤とのコンビネーションを使ってゲームメイクするようになる。
序盤、特にセルティックの運動量が高い状態のときはメッシ→ネイマールへのサイドチェンジ→ネイマールの1vs1という形はよくみられた。(Fig.5)
Fig.5 バルセロナのゲームメイク
セルティックの攻撃
対するセルティックの狙いはカウンター1本に絞っているようだった。1節とは違い、どん引きせず中盤で守ろうとすることでカウンターチャンスを増やし、S.シンクレア、M.デンベレの個の力をたよるという感じだった。
ただし、M.デンベレは戦術的にほとんど守備をしないため、セルティックは押し込まれてしまうと、ボールを奪取してもバルセロナのハイプレスに曝されるためほとんど前進できないような時間帯が前半だけでも半分ほどあった。(Fig.6)
Fig.6 バルセロナのハイプレス
基本は今までと一緒で4-2-4になりつつ、ブスケッツが高いところまでS.ブラウンをマークし、ラキティッチ、ネイマールの運動量でSBを最終的に捕まえるというものだった。
後半戦
45-55分のセルティックのハイプレス
Fig.7 左: S.シンクレア、右: J.フォレスト
40分にS.シンクレアが負傷してしまったためハーフタイムを機にJ.フォレストがLSHでプレーすることとなった。それと同時に前半の序盤に行っていたハイプレスも10分間復活させる。形はFig.3に示したものと一緒なので省略するが、この時間帯はセルティックにとって一番いい時間帯となった。ただし結局その後はハイプレスも曖昧になってしまっていたため本当にこの時間帯だけだったが・・・
バルセロナの撤退守備問題
この時間帯はS.ロベルトのミスなどミスを起点にしたチャンスも多かったが、そもそもバルセロナの撤退守備は4-4-2であり、L.メッシとL.スアレスはデスコルガードとして前線に残していおり、撤退守備で8人で守ることは結構難しいと思う。
実際にセルティック相手でもS.ロベルト側はかなり狙われていた。(Fig.7)
Fig.7 セルティック1vs1の成否とエリア
もちろんバルセロナの対戦相手が前がかりになりすぎれば、L.メッシを中心としたカウンターの餌食になるかもしれないので一概にデメリットだけではないが、いまのバルセロナはかなり諸刃の剣な気がする。
55-90分
セルティックのハイプレスが曖昧になってくると特にS.ロベルト、ラキティッチ、L.メッシのコンビネーションを生かしてハイプレスを破壊していくシーンが目立った。
セルティックのチャンス(前半)
6m10P(8-18-3-11-10)Grade4
17m30T(23-42-14-10-42)Grade4
25m10P(3-18-11-18-10)Grade4
26m10P(3-10-18)
35m40T(18-11-10)Grade4
セルティックのチャンス(後半)
45m50FK-P(3-5-42-10)Grade4
47m50T(42M)Grade4
52m10T(23-10-49-18-49-10)Grade5
L.メッシは中央にいることが多いので、S.ロベルトの守備負担は特に被カウンター時にとても大きくなるからS.シンクレア側でL.メッシの裏を突くがセルティックの狙い。
実際のスタッツを見ても明らかで、S.ロベルトのエリアで多くの1vs1を行っている。
ただしM.デンベレを除いた攻撃陣の攻撃精度は低く、バルセロナは大事には至らなかった。52分のM.デンベレのフィニッシュは決めたかった。ドリブルもエアバトルも強く得点力もあるのでM.デンベレは本当に約束された成長株である。
バルセロナのチャンス(前半)
3m00P(10-11)Grade4
8m00P(4-10-4-5-10-11-10)Grade5
9m20P(11-9-18-5-10)Grade5
15m00P(10-21-18-11-10-18-10)Grade4
18m20P(10-20-10-9-18-4)Grade5
20m50P(21-18-11-18)Grade4
21m30CK-P(11-21)Grade5
23m10P(20-9-18-11-10)Goal
34m50T(10-11)Grade4
40m20P(20-9-4-10-9)Grade5
Grade3以上のチャンスが17、Grade5のチャンスが5ということで、もう少し得点を伸ばしたかったところではある。L.メッシが万能すぎるのでゲームメイカーとしての顔も見せつつあるが、やっぱり最も輝くのはアタッカーとしての1vs1の時のプレーであったり、スペースにランするときである。(Fig.8)
Fig.8 メッシのスタッツ
毎試合L.メッシはすごい。スーパーな日はもっとすごいが、この試合でも1vs1の勝率100%、サイドチェンジを利用した長いパスも行い、エリア内で5本のシュート、アシスト性のパスを2本出している。
バルセロナのチャンス(後半)
53m30P(5-20-9Penalty)Grade4
55m00PK(10)Goal
56m20P(14-21-18-11-21-11-4-21-10-9)Grade4
66m30P(21-19-11-10)Grade5
68m40T(5-10-21-11)Grade4
77m10P(22-4-20-10-20)Grade4
78m50P(5-20)Grade4
82m40P(20-4-20-10-9)Grade5
87m30T(10-9-10)Grade4
スコア上離れていたこともあって後半のほうがカウンターのチャンスは多かったが、結局得点はPKによるものだけにとどまった。(Fig.9)
Fig.9 L.スアレスの狡猾なプレー
こういうプレーが南米の選手は本当にうまいとどっかで書いた気もするが、L.スアレスはPK獲得時にイサギレの両腕をロックしている。これでL.スアレスは自分から倒れることで、相手に腕を使って倒されたように見える仕組みになっている。褒められたプレーじゃないかもしれないが、トップクラスの選手はこういう何気ないプレーがうまい。
今後を見据えたバルセロナ?
計画されたイエローカード?
正直75分を過ぎた時点でほぼバルセロナの勝利は確定していた。気持ちを切らさないことは大事だが、この試合勝利すれば勝ち点12なのでグループリーグは突破確定となるため、今後の展開を少し考える余裕がでてきていた気がする。
特にネイマールとラキティッチはこの試合でイエローカードをもらうと次戦出場停止となる。仮にこの試合をイエローカードなしで過ごせたとしても6節でイエローカードをもらえばRound.of.16で出場できなくなる。すなわち5節でイエローカードを貰うのがこの2人にとっては最も都合がいいということになる。
ネイマールはルスティグと度々小競り合いしていたのでワザとなのか計画的なものなのかはわからなかったが、ラキティッチのファールはワザとだったと思う。
J.ピケ、J.アルバの交代
Fig.11 左: マルロン、右: ディーニェ
負傷明けの2人は60分を超えたあたりでそれぞれマルロンとディーニェに交代した。マルロンはやや危なっかしかったため、戦力として数えるのはまだ難しそうな感じだった。
余談
グループリーグ突破確定し、理想的な形でRound.of.16に臨む形を作れたことはとても大きい。ただしチームとしての圧倒的な強さというよりもL.メッシ依存度が大きくなって歪なチームとなっている部分もあるのでどういうチーム作りをしていくか興味深い。
UCL16-17-C5-ボルシアMG.vs.マンチェスターシティ
UCL16-17-C5-BorussiaMG.vs.ManchesterCity
黒がボルシアMG、オレンジがマンチェスターシティ(Fig.1)
Fig.1 ボルシアMGvsマンチェスターシティ
ボルシアMGは4-4-2
コルプ、クラマーの出場停止にともない、ヤンチュケ、シュトローブルがそれぞれ代役として出場している。T.アザールもプライベート関連で欠場となっている。ここまで勝ち点4であることを考えれば大一番の試合だが、主力を多く欠いてしまっている。
マンチェスターシティは3-4-3
サバレタは休養のためか召集外、インサイドでもアウトサイドでもプレーできるサバレタがいないのであれば初めから3バックにしようという意図なのかよくわからないが、本職RSBのサニャの心中は穏やかではないだろう。ウイングバックにスピードのあるスターリングとJ.ナバスを置いており、デブライネ、D.シルバが自由に動いていくスタイル
試合の概要
試合は1-1の引き分けで終える。22分にロングボールをうまく収めたシュティンドルのクロスをラファエウが決めてボルシアMGが先制、しかし45分にうまく抜け出したデブライネのクロスをD.シルバが押し込み同点とする。試合は審判によって壊されてしまったが、引いた相手を崩すすべを持たないというマンチェスターシティのにとって非常に悩ましい問題がまた足枷となってしまった。
シティの強み、弱み、ボルシアMGの強み
シティの強みはデブライネ、D.シルバ、アグエロ、スターリングのカウンター攻撃だろう。
例えば、バルセロナのようにボールを保持してくる相手にはハイプレスとカウンターで理想的なサッカーができる一方で、ボールを保持して押し込んだ時に有効な攻撃手段がないことが弱みである。
1節ではボルシアMGはハイプレスを行ったが、3-2-2-3のファルソラテラルと4-1-4-1を見事に使い分けたマンチェスターシティはボルシアMGのハイプレスを躱すことに成功していた。
こういった背景があってか、ボルシアMGは4-4-2で自陣に引き気味で守備を行い、かつボールを奪取した時はカウンターにいくか、ロングボールを使うことで、なるべくカウンターされないようにゴールに迫ろうとした。
ボルシアMGのロングボール攻撃、マンチェスターシティのハイプレス
まずはボルシアMGがカウンターに行けなかった場合の話。
Fig.2 マンチェスターシティのハイプレス
基本的に押し込められた状態でボルシアMGがボール奪取するとマンチェスターシティの前線はバルセロナのようにハイプレスを行ってくる。ボルシアMGの最終ラインにはハイプレスを躱すだけのボールスキルがないためか、ハイプレスをぎりぎりまでひきつけてロングボールを蹴る。(Fig.2)
このときマンチェスターシティのちょっとした工夫はボールサイドと逆側のWBは最終ラインに吸収されて4バックになっていることだろう。
また、GKスタートの場合も同じだが、マンチェスターシティはとにかく自分たちの攻撃時間を稼ぐためにボルシアMGにロングボールを蹴らせようと高い位置からディフェンスを行う。(Fig.3 )
Fig.3 マンチェスターシティのハイプレス(ゴールキック時)
本来、マンチェスターシティの最終ラインがロングボールを回収するのであればこれで一件落着だが、特にマンチェスターシティの最終ラインは、シュティンドルとのエアバトルに全体的に苦労しているという感じがあった。
もちろんロングボールが通る確率はあまり高くはなかったが、通った時にはハイプレスを行っていた分だけスペースができるため、ボルシアMGにとって割に合わない計算ではなかったと思う。
次はマンチェスターシティのビルドアップ、対するボルシアMGの対処法を見ていく。
基本的にはマンチェスターシティのビルドアップは3-4-3で行われ、ボルシアMGの守備は4-4-2で行われた。(Fig.4)
Fig.4 マンvへスターシティのビルドアップ-ゲームメイクI
ボルシアMGはハイプレスを行わず、中央のエリアをCBにドライブさせないような守備をしていた。しかしながら1列目の外側へのCBのドライブに関しては割と寛容的だったため、ハーフラインまでマンチェスターシティはスムーズに進めていた。
問題はここからで、CBがドライブした時のパスコースはシュトローブルとM.ダフドがかなり中央を固めていたため、インサイドのギュンドアンやフェルナンジーニョではなく、WBや外に開いたD.シルバやデブライネに限られていた。これによってチャンスメイクの手法は外側からのクロスにほぼ限られてしまった。
1節はサバレタがうまくインサイドとアウトサイドにポジショニングを取りながらバランスをとっていたが、この試合ではそういったことができる選手がいなかったのがゲームメイクをスムーズにすることができなかったのかもしれない。
特に前半30分間は中央で崩したり、カウンターの場面は皆無で、ひたすらJ.ナバスがクロスをあげては跳ね返されとボルシアMGの予想通りの動きをしてしまっていたと思う。
時間がたってくるとあまりにもゲームメイクができないマンチェスターシティはJ.ナバスをRSB、スターリングをRSH、D.シルバをLSHに移動させて4-1-4-1とする。(Fig.5)
Fig.5 マンチェスターシティのゲームメイクII
単純に1節と同様に中央のエリア、特にフェルナンジーニョ周辺を優位な状況にすることが目的だと思う。このようにポジションチェンジしてからはJ.ナバスを使った外からのサイド一辺倒ではなく、すこし中央を使った攻撃などバリエーションが出てくる。
ボルシアMGのチャンス(前半)
04m20P(16-11-17-11-19-8-13-19)Grade4
06m20T(30-11-19M)Grade4
22m40P(1-24-13-11)Goal
27m00P(11-8-5)Grade4
29m40P(17-11-13-16)Grade4
37m30P(30-8-30)Grade5
37m50T(17)Grade5
41m00T(30-11-13-8M)Grade5
チャンスとなったほとんどの攻撃はロングボールまたはカウンターに分類され、シュティンドルのエアバトル、F.ジョンソン、ラファエウ、I.トラオレの縦へのスピードは脅威だった。それ以外ではM.ダフドの攻撃参加時の質がやっぱり素晴らしかった。
Fig.6 左: シュティンドル、右: ラファエウ
1点目はヤンチュケのロングボールをシュティンドルがうまくストーンズに勝利し、ラファエウが最終的に決めたが、ボルシアMGの狙いががっちり嵌ったゴールだったと思う。
37分にはブラーボがまたもミスを犯し、O.ベントとの1vs1となったが、なんとかセーブし戦犯になることを食い止めた。実際37分の時点で2点差ついてしまっていたらおそらくマンチェスターシティは追いつくことができなかったと思う。
マンチェスターシティのチャンス(前半)
30m10T(11-8-17)Grade4
33m20P(11-25-7)Grade4
33m50CK-P(17-8M)Grade5
44m10P(21-17-7-10)Grade5
45m00P(15-21-8-7-17-21)Goal
Grade3以上のチャンスは18個あるものの、マンチェスターシティは前半30分まではチャンスらしいチャンスを全く作れなかった。これは前述のように崩していない状況でJ.ナバスがクロスを上げてしまいチャンスの質が落ちてしまったことが原因だろう。(Fig.7)
Fig.7 左: J.ナバスのクロス、右: マンチェスターシティ全体のクロス
それでも30分以降はポジションチェンジに伴ってうまくチャンスを作れるようになっていったが、アグエロは自分のところにほとんどいいボールが入ってこなかったのでかなりフラストレーションがたまっているような感じだった。
ただ、結果的には45分にデブライネがうまく抜け出し、グラウンダーのクロスをD.シルバがうまく逸らして同点にすることができてしまった。
前半の内容は明らかにボルシアMGのほうがよかったが、結果としては同点で折り返すことになってしまった。
全体としてはストーンズが自陣でのパスミス、ロングボールの処理ミス、1vs1での対応など前半はかなりよくなかった。そして隣のコラロフも1vs1では軽い場面も多く、最終ラインはかなり危なっかしかった。
後半戦
ボルシアMGの不運
後半戦に入る前に実はI.トラオレが怪我でJ.ホフマンと40分に交代している。
前半の内容は圧倒的にボルシアMGのほうが良かったと思うが、45分の失点および負傷交代とあまり運には恵まれていない模様、そして後半直後にも不運が続く。
シュティンドルが50分にオタメンディの進路を妨害したとして2枚目のイエローカードを貰い退場する。ルール上正しいかもしれないが、これで2枚目を出すのはあまりにも厳しすぎる判定だった。
退場以降の守備は4-4-1に変化し、9人のフィールドプレーヤーではマンチェスターシティのゲームメイクを防げないと考えたためか、9人でバスを停めていた。(Fig.8)
Fig.8 ボルシアMGの10人のディフェンス(4-4-1)
特記事項は特にないが、シュトローブルとM.ダフドがデブライネとギュンドアンを監視し続け、中央を割られないようにし、外側からの攻撃を誘い込もうとしていた。
O.ベントはボールリカバリー8回、タックル4/4、インターセプト3回、クリア5/5
エルベディはボールリカバリー8回、タックル3/3、インターセプト3回、クリア5/5
とサイド攻撃を本当にうまく防いでいたと思う。
また攻撃面でも変化があり、GKはショートパスではなくロングボールを一番フィジカルがあるF.ジョンソンに向けて蹴りだすようになる。(Fig.9)
Fig.9 ゾマーのゴールキック(左: 前半、右: 後半)
ただし、オタメンディがこのエリアのエアバトルをかなり制していたのでボルシアMGにとってあまり有効な攻撃手段とは言えなかった。(Fig.10)
Fig.10 エアバトルの成否(左: オタメンディ、右: マンチェスターシティ全体)
タイミングの悪いM.ダフドの交代とフェルナンジーニョの謎退場
話は変わるが、59分にはM.ダフドをベステルゴーアに変更する。正直勝ちに行くのであれば意味わからないが、この試合引き分けで終えることができればボルシアMGはヨーロッパリーグへの出場権である3位が確定するのでおそらく現実を見たのだと思う。(Fig.11)
Fig.11 10人同士のそれぞれのフォーメーション
CHをシューベルトとヤンチュケのCBもできる選手にしたため中央はかなり固くなったかもしれないが、M.ダフドがいなくなったことで攻撃面はほぼ壊滅した。
その交代の直後にフェルナンジーニョが退場する。なにに対してイエローを出したのか全く理解できなかったがとにかく退場になった。
これで両チームともに10人となってしまったが、ボルシアMGはM.ダフドを交代してしまったため引きこもるしか選択肢はなくなってしまい、非常にもったいなかった。
ボルシアMGのチャンス(後半)
63m30P(21-11-30-23-11)Grade5
68m20P(5-11-23-11)Grade4
マンチェスターシティのチャンス(後半)
48m40FK-P(17-24)Grade4
49m30T(10-7-17-7)Grade5
62m00P(17-11-21)Grade4
66m10P(7-8-17M)Grade4
72m20P(24-21-15-21)Grade4
84m20CK-P(11-30)Grade4
85m20P(24-10-21)Grade5
マンチェスターシティは勝てるチャンスがあれば勝ちたかったと思うが、負けてしまえばグループリーグ突破は6節に持ち越しになってしまう。したがって、そこまでリスクを取った攻撃をする意味もなかった。ボルシアMGも3位狙いということであればこのまま終わりたいはずなので、両チームは終盤になればなるほどおとなしくなっていき85分からの5分間はほとんど茶番だった。
またもやらかした主審
流石不評の審判である。イエローの基準もめちゃくちゃで帳尻合わせもめちゃくちゃ。
余談
マンチェスターシティは2位確定、ボルシアMGは3位確定と両チームwin-winで終えることができた。ハイプレスをしてこない相手に対するマンチェスターシティのボール保持攻撃が目下の課題であるが、決勝トーナメントまでに解決するだろうか?
UCL16-17-C4-マンチェスターシティ.vs.バルセロナ
UCL16-17-C4-ManchesterCity.vs.Barcelona
まずはスタメンから
マンチェスターシティは4-1-4-1
アグエロが1トップとして復帰し、デブライネはサイドハーフの位置をスターティングポジションとした。デブライネ、D.シルバ、ギュンドアンを生かすとしたらこの形が最もしっくりきそうである。また、GKはブラーボが前節退場したため今節はカバジェロが担当。
バルセロナは通常通りの4-3-3
J.ピケ、J.アルバはそのまま負傷のため、マテューは出場停止で、最終ラインにはマスチェラーノとディーニェが代役として選ばれている。イニエスタも膝の負傷ためA.ゴメスが中盤を担当している。地味に中盤から最終ラインにかけて出場できない選手が多く、選手のやりくりは少し大変な状況である。
試合の概要
試合は3-1でマンチェスターシティが勝利する。20分にネイマールとL.メッシの完璧なカウンターからバルセロナが先制するが、相手のビルドアップのミスから38分にギュンドアンが、51分にはデブライネの直接FKが、74分にはカウンターでギュンドアンが決めて最終スコアを3-1とした。マンチェスターシティは計画されたハイプレスを90分間しっかりとこなし、とくに守備からのカウンターではデブライネの個の力が光った。後半頭からデブライネを真ん中に持ってきた采配がすべてだったかもしれない。
両チームとも確固たるスタイルを持っているチームなので、基本は3節と変わりはない。ただしマンチェスターシティはハイプレスの方法と強度を少しだけ変化させていたように見えた。(Fig.2,3)
Fig.2 マンチェスターシティのハイプレス(3節時)
Fig.3 マンチェスターシティのハイプレスI(4節時)
同じ点はギュンドアンとD.シルバが担当するエリアごとにゾーンプレスを行ったこと
一方で一番の違いは3節よりもプレスの人数を少なくしていたことがであろう。
特にブスケッツへのマークを緩め、代わりにスペースが大きくなりがちだった中盤のサイドのスペース(ここではA.ゴメスのエリア)を埋めた。ちなみにブスケッツに渡った場合にはD.シルバ、デブライネ、アグエロのいずれがカバーすることで対応していた。
当然プレスの枚数が少ないということは、それだけバルセロナがビルドアップしやすくなっているということであり、実際バルセロナは3節の時よりもビルドアップ成功の回数は増えていた。しかし3節のようにビルドアップの成功=ゲームメイクの成功というほど中盤にスペースはなかったので、今度はバルセロナのゲームメイク力が試されることとなった。
マンチェスターシティはバルセロナが前進してくると4-1-4-1の本来の形に戻っていった。(Fig.4)
Fig.4 バルセロナの主なゲームメイク
ところで、L.メッシは近年下がり気味のサイドハーフのような位置からゲームメイクに参加したり、中央に切り込んで行ったりと、守備以外何でもする選手になっている。ラキティッチもA.ゴメスもボールを扱える選手ではあるが、イニエスタのようにすり抜けるようなドリブルは持ち合わせていない。結局バルセロナのゲームメイクの中心はL.メッシになることが多くなってきている。
しかしL.メッシがボール保持攻撃におけるゲームメイクの中心になってしまうと、L.スアレスの裏抜けやネイマールの1on1が主なチャンスメイクになってしまう。もちろんそれらも普通のチームからしたら十分脅威なのだが、3節に比べるとバルセロナはボールポゼッション率は10%も高くなっていたにもかかわらずボール保持攻撃のチャンスメイクの質は明らかに下がっていた。こういったことを踏まえても、グアルディオラは3節での反省をきっちりハイプレスに反映しているように思えた。次にマンチェスターシティのボール保持攻撃を見ていく
3節でも行っていたが、マンチェスターシティがボールを奪取すると強度の高いプレスを行ってボールを奪取してくるのがバルセロナの特徴だ。(Fig.5)
Fig.5 バルセロナのハイプレス(3節時)
ただし、L.メッシのリソースを守備で使いすぎてしまうのは勿体ないとバルセロナは考えているのか、L.メッシとL.スアレスのプレスはそれほど執拗ではない。落ち着いた時のマンチェスターシティのビルドアップはボルシアMG戦、3節と一緒で、コラロフ、ストーンズ、オタメンディの3人によって行わ
れる。(Fig.6)
Fig.6 バルセロナのハイプレス
今までと同じように、ブスケッツがフェルナンジーニョをマークしている分、中盤にスペースができることが多い。こういったときにGKがこのエリアにロングボールを正確に蹴ってくれると非常に助かる。
しかしこの試合のマンチェスターシティのGKは
カバジェロだった。(Fig.7)
Fig.7 カバジェロ
ブラーボは調子を落としているもののボールの扱いはうまい。一方でカバジェロの足元は改善傾向にあるものの正GKになるほどのレベルでは明らかにない。実際この試合でもカバジェロはビルドアップに参加することはほとんどなかったし、蹴っ飛ばしてしまうことが大半だった。そのため前半にビルドアップがうまくいったケースは、コラロフやオタメンディのサイドチェンジもしくはロングパスからのセカンドボール奪取など、とても限定的なものであった。
バルセロナのチャンス(前半)
20m20T(10-11-10)Goal
27m10T(5-10-21-11)Grade5
33m00P(19-21-11)Grade4
34m00FK(10-21)Grade4
34m10P(20-10-9)Grade5
35m00T(10-4-9)Grade5
42m00T(21-10)Grade5
両チーム共にハイプレスに苦戦していたためボール保持攻撃の精度は低かったといえる。逆に言えばハイプレスからボール奪取しカウンターの形が非常に多かった試合ともいえる。最初にカウンターのチャンスをモノにしたのはバルセロナだった。FKから奪ったボールをメッシ→ネイマール→メッシでロングカウンターを成功させてしまった。パス、ラン、ドリブル、シュートすべてにテクニックが凝集されていたL.メッシが改めて異次元の存在であることを思い出させるようなプレーだった。
この部分のみの動画
マンチェスターシティは失点してから3節と同じ4-1-3-2の形でハイプレスを行う。もちろんこれは3節でも示されたように諸刃の剣だ。実際失点してから35分までは完全にバルセロナの時間帯であり追加点を取るべきだったが、ここでとどめを刺すことはできなかった。
マンチェスターシティのチャンス(前半)
2m00P(11-8-11-8-21-17-10)Grade4
10m00T(11-10-7)Grade5
20m10FK(21-17-10)Grade4
23m10CK(17-21-7-8M)Grade4
38m40T(10-7-8)Goal
40m40T(25-21-25)Grade5
3節同様カウンターからチャンスを多く作っていたことは一貫している。20分のFKも23分のCKも直前のプレーはカウンターであったことも決して偶然ではないだろう。
前述したように失点してからのマンチェスターシティは、ハイプレスを躱されたりカウンターを浴びたりといい時間帯とは言えなかった。それでも38分にS.ロベルトのミスをきっかけにカウンターの形でマンチェスターシティは同点弾を決めることができた。これは3節から続けたハイプレスの成果といってもいいだろう。
後半戦
マンチェスターシティはデブライネを中央に配置し、D.シルバをLSHとし、さらにハイプレス方式をすこしだけ変化させた。(Fig.8)
Fig.8 マンチェスターシティのハイプレスII
ゾーンプレスをやめて、マスチェラーノ、ウムティティをアグエロとデブライネでほぼマンマーク監視することにした。また、前半以上にブスケッツに入ったら徹底的にフェルナンジーニョとギュンドアンでプレスすることで前線でのボール奪取の機会を増やそうとしたマンチェスターシティだった。
・不調のブスケッツ
ブスケッツはこの試合かなり散々だった。ここまでミスが多い試合はなかなかないと思う。パスミスやインターセプトから多くのカウンターの基点になってしまっただけでなく、守備時には多くのファウルを犯してしまいチャンスを相手に与えてしまっていた。
ブスケッツ狙いが明らかになった後半だが、60分ごろからはついにプレスを嫌ったブスケッツがCB間に入ってビルドアップに参加するようになるが、これがバルセロナにとって致命的だった。(Fig.9)
Fig.9 バルセロナのビルドアップII
バルセロナのゲームメイクはインサイドハーフがサイドに絞ることで中央にスペースを作ることだったが、中央のスペースにブスケッツがいないのであれば、後は下がってくるMSNにうまく対応するだけで十分となる。ブスケッツがCB間に落ちてしまったことで結果的にボール保持攻撃の精度も下がってしまった。さらにブスケッツがCB間に落ちることで被カウンター時に中央のスペースがフリーになってしまいがちというデメリットも浮き彫りになった。
もちろんブスケッツが落ちることでウムティティやマスチェラーノがドライブするエリアは稼げるのだが、J.ボアテングのような完璧なサイドチェンジを持っている選手たちではないのでゲームメイクにはあまり貢献できていなかった。
マンチェスターシティのチャンス(後半)
46m10T(25-10-7)Grade5
46m50T(8-10M) Grade4
50m10FK-T(17M)Goal
52m10FK-T(17-30)Grade5
52m30CK(21-17-7-30)Grade4
56m20FK-T(21-10)Grade5
62m20T(11-21-11-17)Grade5
64m50T(21-17-7-17M)Grade4
66m20T(10-8-21)Grade4
73m10T(8-17-10-17-15-10-8)Goal
79m20P(17-21-17-21-10)Grade4
82m50T(15-17)Grade4
92m10T(11-10)Grade4
マンチェスターシティの後半の立ち上がりはほとんど完璧だった。度重なるカウンターからチャンスを作り、73分までにデブライネの直接FKとカウンターからのギュンドアンで一気に2点差まで広げる。
Fig.10 スターリング、フェルナンジーニョ、J.ナバス、フェルナンド
試合のペースを下げないために、負担が大きくなっていたスターリングとフェルナンジーニョをJ.ナバスとフェルナンドに変えることでチームの運動量を保とうとしたマンチェスターシティだった。特にJ.ナバスは持ち前のスピードを生かしたハイプレス時の守備とカウンターへの参加はかなり効いていた。
オタメンディとストーンズはビルドアップはまだまだな部分も多いが、ハイラインで守ることができるCBであり、特にオタメンディのインターセプトの上手さはカウンター向きのチームであるマンチェスターシティにかなりフィットしている。
3つの誤審
今回の主審はV.カッサイ
得点につながる部分で3つの誤審があったので一応記載。
・10分のスターリングvsウムティティ
確実に足を引っ掛けていたウムティティだったが、判定はスターリングのシミュレーションでイエローカード
・42分のメッシvsフェルナンジーニョ
非常に曖昧な判定なので難しいが、PKでも全然おかしくない。
・3点目のシーンである73分のアグエロのハンド
故意ではないにせよ腕に当たっているのでハンド判定だとしてもしかたがない。
試合自体はあまり荒れてはいなかったが、決定的な部分で大きなミスが目立ってしまった。
余談
マスチェラーノとウムティティのポジションが最初の15分間逆だったのはなぜなのか、よくわからない。マンチェスターシティはしっかりと準備してきたのに対してバルセロナは素材で勝負している感じがある。
UCL16-17-C3-バルセロナ.vs.マンチェスターシティ
UCL16-17-C3-Barcelona.vs.ManchesterCity
まずはスタメンから
青がバルセロナ、オレンジがマンチェスターシティ(Fig.1)
バルセロナは通常通りの4-3-3
S.ロベルトではなくマスチェラーノをRSBにした理由はよくわからない。それ以外の選手はいつもどおりで、L.メッシも復帰したのでほぼ万全といってもよい
マンチェスターシティは4-1-4-1
この試合ではデブライネをワントップにした実質0トップのような布陣。アグエロは怪我で離脱しているわけではないが、怪我しやすい選手ではあるので布陣の選択肢を増やしておくことはとても重要。
試合の概要
試合は4-0でバルセロナが勝利する。15分、60分、68分にメッシが圧倒的な個人技を披露してハットトリックを達成すると、88分にはネイマールも決めてバルセロナが勝利する。53分にブラーボが退場するまではかなり拮抗したゲーム展開だったが、53分以降は一方的な展開となってしまった。結果的に大差となってしまったが、マンチェスターシティの姿勢は正しかったと思う。
両チームともにポゼッションが高くなる試合が多いが、これはボールを奪われてから奪取するまでの時間が短いからである。すなわち前線からの守備が機能しているからともいえる。
ちなみにバルセロナはボールを奪われてから即奪うための攻撃的なプレスにたいして、マンチェスターシティは相手のビルドアップを妨害することが主目的の守備よりのハイプレスという違いはある。
バルセロナのハイプレスは4-4-2のような形になる(Fig.2)
Fig.2 バルセロナのハイプレス
バルセロナのハイプレスの特徴は最終ライン4人に対してL.メッシ、L.スアレス、ラキティッチ、ネイマールがそれぞれ自分のマークに即座にプレスにいくことである。さらにブスケッツまたはイニエスタがフェルナンジーニョをマークすることでマンチェスターシティの最終ラインに選択肢を与えないようにする。マンチェスターシティの最終ラインもこれだけはやくプレスされてしまうとビルドアップできないという状況が続いた。バルセロナのハイプレスはほぼうまくいっていたと思うが、かなり前がかりに守備を行うため、コラロフのロングボールやサイドチェンジなど大きな展開が成功したときにはマンチェスターシティもチャンスを作ることはあった。
マンチェスターシティの前線守備
一方でマンチェスターシティは4-1-3-2のようなゾーンプレスを行った。(Fig.3)
Fig.3
マンチェスターシティのハイプレス
この守備の特徴はナポリ、バーゼルと同じで与えられたエリアの選手がボールを持つとプレスを行うというものだった。具体的にいえば、デブライネがCBのうち1人を監視し、残りの1人をD.シルバまたはギュンドアンが交互に監視することで4-1-3-2の形を作っていた。
そしてほかのチームと同様にボールサイドから遠い選手(Fig.3でいうノリ―ト)は中央のエリアを守りつつ、マスチェラーノにボールが渡ればノリートがプレスを開始する。
また、イニエスタやネイマールが浮いてきたときにはオタメンディもストーンズも果敢に前に出ていたのが特徴的だった。これによって最終ライン3人vsL.メッシ、L.スアレス、ネイマールという状況になることも多かったが、そういったデメリット以上に中盤でボールを回収したいというマンチェスターシティの強い意志を感じた動きだった。
実際バルセロナも最初の15分間はほとんど前に進めることができず、まともな攻撃は数えるほどしかなかった。
バルセロナのビルドアップ
しかしながらこれだけエネルギーの大きいハイプレスに対しても、バルセロナはショートパスでかわす場面とロングボールを使うことで徐々に対処できるようになっていた。
特にショートパスでビルドアップを成立させたときにはサイドエリアから出発することが多かった。(Fig.4)
Fig.4 バルセロナのハイプレス回避方法I
バルセロナはビルドアップ時にFig.4の形になることが多かった。すなわち最終ラインの位置関係はそのままで、ボールサイドのISHのみ(Fig.4でいうとイニエスタ)がSHの位置に移動する。
スターリングとJ.アルバが正対した場合
この時のスターリングはイニエスタへのパスルートを塞ぐためにJ.アルバとイニエスタの間の位置からプレスをかけにいった。このときJ.アルバは波線の方向にドライブすることでスターリングのプレスを躱し、ビルドアップを成功させた。
内側からスターリングがプレスを行った場合
当然イニエスタがフリーになるので、あまりプレスの効果はないといえる。
フェルナンジーニョがいった場合には中央のスペースがフリーになり、サバレタがいった場合は最終ラインが3vs3の状態になる。
大体いずれかの3択になるが、特にJ.アルバはスターリングと正対したときにドライブすることができていたのでプレスを躱すシーンも多かった。最近のトレンドというと乱暴だが、ハイプレスに対する一つの解答としてビルドアップ側の選手がエリアに不均衡を作ることが流行っている気がする。
ファルソラテラルの3-2-2-3も中央に人を密集させて、サイドのフリースペースをデブライネやD.シルバが使うという発想と、バルセロナのようにサイドラインにインサイドハーフを置くことで中央のフリースペースを前線の3人が使うという発想の根本は同じだと思うからである。
マンチェスターシティは主にSBに対してパスコースを消すような形でプレスをかけにいっており、場合によってはサイドの位置にいたイニエスタ、ラキティッチに対してもフェルナンジーニョがついていくことで、サイドの位置からのビルドアップに対してもある程度対応していたと思う。
ロングボールを用いたハイプレス回避方法
ただし、バルセロナはT.シュテーゲン、L.スアレスのラインを効率的に使っていた分、マンチェスターシティよりもハイプレスの対応がうまかったといえる。(Fig.5)
Fig.5 バルセロナのハイプレス回避方法II
フェルナンジーニョが自分のエリアを放棄してハイプレスに行くことが多かった分、マンチェスターシティの最終ラインは、中央の広大なスペースでボールを受けようとするMSNトリオの対応に迫られた。その中でもT.シュテーゲンのロングボールをL.スアレスが収めることで、結果的にハイプレスの回避&広大なスペースを3人で使えるという疑似的カウンター状態を作ることにつながった。
ちなみにマンチェスターシティはこういったプレーが少なかったが、ネイマールとL.メッシのサイドでの影響力の大きさとL.スアレスのロングボールを受ける能力、T.シュテーゲンのロングボール精度がそろってこそなので、簡単なようにみえても実現できるチームは僅かだろう。
バルセロナの幸運と不運
正直にいって最初の15分間はバルセロナのボール保持攻撃→マンチェスターシティが中盤でボール奪取→カウンターという形が多かった。すなわちマンチェスターシティ寄りで進んでいたと思うが、バルセロナは一瞬のスキを見逃さなかった。
失点シーンはT.シュテーゲンのロングボールをL.スアレスが収め、L.メッシがフリースペースを活用できたことが大きいが、それ以上にフェルナンジーニョがエリア内でスリップしなければ防げたシーンでもあった。ただしこういった小さな隙を見逃さないL.メッシはやっぱりすごい。
バルセロナの幸運はL.メッシがいることだが、それ以上に押されている時間帯に理想通りの形で得点できたことは幸運だったと思う。
逆に、序盤にJ.ピケとJ.アルバが負傷し、それぞれマテュー、ディーニェに交代しなければいけなかったというのは、バルセロナにとって不運な要素だったといえる。
試合の転換点
確かに失点してしまったマンチェスターシティだったが、プレスの強度やボール回収後のカウンターなど正しいアプローチかつプラン通りのサッカーができていたと思う。しかし、53分にマンチェスターシティのGKブラーボがやらかしてしまった。
Fig.6 ブラーボのエリア外でのハンド
自陣でのボール処理をミスし、L.スアレスにボールを譲渡、慌てたブラーボはエリア外で故意のハンドで1発退場をもらってしまった。今シーズンの調子の悪さを象徴するような出来事だった。
この時点ではPKなどなかったので1-0のままだったが、明らかにこの退場は流れを変えてしまった。
マンチェスターシティのハイプレスも1人少ない状況ではほとんど効果がなかったし、逆にマンチェスターシティのビルドアップ時には1人少ない状況となったため非常に苦しくなった。
結局2点、3点目はマンチェスターシティのビルドアップをバルセロナがハイプレスで破壊し、カウンターからL.メッシが沈めた。
73分にはスターリングに対応できていなかったマテューが退場して10vs10となったが、すでに勝負はついておりどうにかなるような状況ではなかった。最終的にネイマールが88分に4点目を決めてバルセロナは気持ちよく試合を終えることができた。
バルセロナのチャンスメイク
バルセロナのチャンス
00m50P(18-11-10-9-4-11)Grade4
15m40P(1-9-10-14-10-8-10)Goal
20m00P(14-10-11-10-9) Grade5
22m50P(10-23-11-9) Grade4
30m10P(23-11) Grade4
31m10FK(10-4) Grade4
40m20P(11-10) Grade4
45m10P(1-9-10-9) Grade5
50m30T(11-23)Grade5
51m50CK(19-9) Grade5
59m40P(23-5-10-9) Grade4
60m10T(8-10M)Goal
68m10P(1-9) Grade4
68m20T(9-10)Goal
71m40T(19-11-10-9)Grade4
80m50P(4-21-11-4-11) Grade5
85m20P(10-11-19-11-10) Grade5
86m4-PK(11) Grade5
88m30P(11-10-11)Goal
Grade3以上のチャンスは前半で14、後半で15。特筆すべきはT.シュテーゲンのロングパスがゲームメイクになっていること、90分間の試合を15分間に区切っていくと、やはり前半の終盤のマンチェスターシティのハイプレスが弱まったタイミング、ブラーボの退場以降のトランジションから多くのチャンス、ゴールを生んでいることが分かる。
マンチェスターシティのチャンス
02m20T(11-7-21-7)Grade4
07m00T(24-9-21-17-9) Grade4
36m30P(11-8-21-9)Grade4
37m30P(21-9-8)Grade5
37m50P(7-25-8M) Grade4
43m10FK(9-8) Grade4
44m50CK(21-24) Grade5
46m30P(7-17) Grade5
46m00T(30-7-17)Grade4
46m30P(25-5-17) Grade4
63m30T(8-17) Grade5
67m30P(25-17) Grade5
71m10FK(11M) Grade4
Grade3以上のチャンスは前半で15、後半で6。特に前半はハイプレスからのカウンターやセットピースからチャンスメイクできていたが、得点には至らなかった。スターリングは相変わらずグアルディオラの元で進化している気がする。逆にノリートは足枷になっていたような気がするが・・・
デブライネをワントップにすることでプレスの強度を高めたということと、デブライネがサイドに流れてチャンスメイクという形はできていたが、エリア内にはいってくる選手がもう少し得点力に長けてこないと少し厳しそう。
余談
4点差ほどの内容差があったとは思えないが、このレベルのチーム同士がガチンコでやった場合、バランスが崩れたほうは大破することが多いのも事実ではある。そういう意味で、T.シュテーゲンのセービング、ロングパス精度、L.メッシの個人技はこのレベルでも抜けていた。
UCL16-17-C2-セルティック.vs.マンチェスターシティ
UCL-GroupC2-Celtic.vs.ManchesterCity
まずはスタメンから
白がセルティック、オレンジがマンチェスターシティ(Fig.1)
セルティックは4-2-3-1
バルセロナでは5バックでバスを停めたがほとんど意味をなしていなかった。ゴードン、ロギッチ、J.フォレストが1節ではスタメン出なかった選手。
マンチェスターシティは4-1-4-1
デブライネ、コンパニが怪我で離脱しているため、CBはオタメンディ、コラロフコンビ、ISHにはD.シルバが投入されている。
試合の概要
試合は3-3の引き分けで終える。2分にS.シンクレアのFKをJ.フォレストを折り返しM.デンベレが押し込んでセルティックが先制した。その後は11分にフェルナンジーニョ、19分にティアニー、27分にスターリング、--分に--、--分に—とシーソーゲームとなった。戦力ではマンチェスターシティの方が圧倒的に上だが、D.シルバ、ギュンドアンの守備能力、M.デンベレのポテンシャルの高さといった局所的な部分が結果に影響を与えていたと思う。
セルティック、マンチェスターシティの狙いは共に非常に明白だった。
マンチェスターシティは前線からプレスをかけてセルティックのビルドアップを妨害し、中盤でボール回収し攻撃へとトランジションしていくことを目標とした。
セルティックは相手のハイプレスを躱す技術はないのでひたすらコラロフ側にながれたM.デンベレへのロングボールから攻撃を展開していくことを目標とした
マンチェスターシティのハイプレスは以下のような形になるのが基本形だった(Fig.2)
Fig.2 マンチェスターシティのハイプレス
マンチェスターシティは基本ゾーンハイプレスを行った。
アグエロがボールホルダーをマークし、片方のCBをD.シルバまたはギュンドアンの近い方がマークする。従って形としては4-1-3-2のようになる。こうなった時のセルティックはプレスを躱そうとはせず、基本的にM.デンベレにロングボールを蹴ることがほとんどだった。
ここでのキーポイントはM.デンベレがコラロフ側にほとんど流れていたということだろう。コラロフとオタメンディどちらかを相手にエアバトルしなければいけないと考えた時、CBの経験が薄いコラロフのエリアを起点にするというのは間違った考え方ではないだろう。
実際に、M.デンベレはロングボールをほとんど収めていた(Fig.3)
Fig.3 エアバトルの勝率(左M.デンベレ、右セルティック全体)
チーム全体の7割のエアバトルにM.デンベレが関与していることからもM.デンベレへの依存度が分かると思う。GKのゴードン、K.トゥーレのロングボールなど様々だったが、かなり良く収めていたと思う。さらにISHであるギュンドアンとD.シルバの守備能力が非常に問題になった。
プレスする場面であればこの2人にあまり問題はないと思うが、ロングボールを蹴られてしまったら中盤のエリアをカバーしセカンドボールの回収に取り組まなければならない。
しかし、ギュンドアンもD.シルバも守備能力が高いというわけではないので、セカンドボールを回収しきれないことが多かった。つまりマンチェスターシティはせっかく前線からプレスをかけてもその労力に見合ったボール回収はできていなかった。
セルティックのチャンスメイク
ロングボールを自分たちのボールにすることができたら、あとはM.デンベレ、S.シンクレアの個人突破頼みという感じだった。正直戦術もなにもない感じだったが、特にS.シンクレアの1on1は十分通用していたと思う。(Fig.4)
Fig.4 S.シンクレアの1on1
さらにマンチェスターシティにとって厄介だったのはセルティックはチャンスメイクの中心をセットピースに置いていたことだった。
セルティックのチャンス
02m10FK(11-49-28-10)Goal
05m10FK(11-28-2)Grade5
08m10P(63-11-18)Grade4
13m00FK(18M)Grade4
19m10P(23-6-18-63)Goal
シーズン開始からマンチェスターシティに指摘されている大きな問題は身長の低さだった。少しフィジカルが高いチームを相手にすると、オタメンディ、コラロフ、フェルナンジーニョ以外はエアバトルでほとんど負けてしまう。
実際セルティックのCKの狙いは一貫していた。まずマンチェスターシティのエアバトルが強くない選手が集まるファーサイドにボールを蹴りだし、折り返しを狙うというものだった。非常に単純だが、フィジカルの優位性はセルティックにあったので、有効だった。
これだけ少ないチャンス量で2点決めることができた根幹の要因はM.デンベレのポストワークにあるが、それでもラッキーな部分は多かった。1点目はチーム全体がマークの相手を間違えていた結果J.フォレストがフリーという状況になっていたし、2点目はギュンドアンとD.シルバが少し前がかりになりすぎてバランスが崩れていたことが大きな要因だったといえる。(Fig.5,6)
Fig.5 マンチェスターシティの1失点目(2min)
Fig.6 マンチェスターシティの2失点目(19min)
マンチェスターシティのビルドアップ-ゲームメイク、セルティックの守備
ゴールキック時のセルティックはマンツーマンでマークをつけてマンチェスターシティにロングボールを蹴らせるようなディフェンスをしていた。
しかし、いったんマンチェスターシティがボールを保持するとハーフライン付近までM.デンベレを除いた選手が撤退する。したがって、マンチェスターシティのビルドアップはあまり問題点にならなかった。セルティックが中盤まで撤退したときの布陣は4-4-1-1(Fig.7)
Fig.7 マンチェスターシティのゲームメイク
ボルシアMG戦でかなりうまく攻めていたマンチェスターシティだったが、それは相手がプレスを仕掛けてきても躱す戦術と個の能力を持っていたからといえる。一方セルティックは引きこもってしまうタイプだったので、中盤+CBの展開力とサイドの突破力がより求められる。バルセロナ、バイエルンのようにボール保持攻撃を得意としているチームはかならず最終ラインから中盤の底にかけてボールスキルが高く展開力を併せ持つ選手が多いが、マンチェスターシティはCB、フェルナンジーニョのゲームメイク能力がまだまだ発展途上である。
結果的にサイド攻撃をするにしても、崩し切るようなゲームメイクはできず、個の能力に頼ったボール保持攻撃になりがちになってしまった。
マンチェスターシティのチャンスメイク
マンチェスターシティのチャンス
9m50P(25-10-21)Grade5
10m40P(7)Grade4
10m50P(10-21-8-11-25)Goal
13m30P(1-10)Grade4
24m30P(11-7-10-8)Grade4
25m50P(7-21-7)Grade4
26m00CK(21-9-10)Grade5
27m40T(21-10-21-7)Grade5
30m30CK(8-7-30)Grade4
42m50P(22-9-5-7-8M)Grade4
Grade3以上のチャンスは17個とかなり多い。その中でも特に特徴的だったのはスターリングのドリブル突破だった。(Fig.8)
Fig.8 スターリングの1on1
閉塞した状況で役立つのは個の能力だったりする。メッシのようにすべてを高レベルでこなし、かつ選択をほとんど誤らないような選手ははっきりいっていない。だとすれば、バイエルンのD.コスタ、コマン、マンチェスターシティのJ.ナバス、スターリングのように縦への突破に秀でている選手をペップが重用し始めたのも実はかなり論理的な結果だったりする。何度も1on1に勝利し危険なクロスを上げていたスターリングは試合を通してかなり素晴らしかったと思う。
セルティックの撤退守備はそこまで堅固ではないので、マンチェスターシティが前半のうちに2得点したことはあまり驚きではなかった。
後半戦
セルティックのチャンス(後半)
46m00P(6-63-10)Goal
67m00P(1-10-6-14-11)Grade5
マンチェスターシティのチャンス(後半)
48m40P(7-30-10-21-8-9)Grade4
50m10P(8-5-21-7-9)Grade4
51m50FK(8M)Grade4
54m00P(5-7-10-21-10)Grade5
54m10P(10-9)Goal
62m00P(22-21-10)Grade4
77m50P(21-11)Grade4
82m20P(30-5-30-7-25M)Grade4
88m00P(24-21-8-7)Grade4
89m50P(24-11-7-8M)Grade5
92m20P(10-8-6-5)Grade4
後半はM.デンベレにあまり質の高いロングボールも入ることが少なかったため、マンチェスターシティがボールを持つ展開が多くなった。マンチェスターシティはGrede3以上のチャンスを19個作っているがほとんどはミドルシュートかスターリングの個人技によるものだった。
ロギッチ-アームストロング-グリフィスのトップ下リレー
セルティックが後半1失点に抑えられた大きな要因はGKのゴードンがよくセーブしていたというのもあるが、もう1つにトップ下にフレッシュな選手を何度も投入したことにあると思う。
56分にロギッチをアームストロングに変更する。
この変更の理由は明白だった。セルティックの勝ち筋はM.デンベレのポテンシャルを攻撃でフル活用することであり、前半からロギッチはM.デンベレの分まで守備の負担を行っていた。さらに83分にはビトンを下げてグリフィスを投入する。ビトンのポジションにアームストロングが、グリフィスがM.デンベレがアームストロングのいたエリアを担当する。(Fig.9)
Fig.9 セルティックの4-4-1-1とグリフィスの担当エリア
もちろんマンチェスターシティのゲームメイクの展開力がなかったのも一因だと思うが、後半のセルティックはよく耐えていた。
コラロフCB起用のメリット、デメリット
コラロフはグアルディオラがマンチェスターシティの監督になってから再び輝き始めた選手。特に長いパスやSB起用時のオーバーラップからのグラウンダーのクロスはスピード、精度共に素晴らしい。さらに長身であることを考えるとCBとして使用したいという気持ちは痛いほどわかる。ただしCBとしてプレーした経験が浅いこともあってか、守備範囲であったり、裏抜けを意識した守備というのは現状トップレベルでは通用しない感じである。だからこそ72分にクリシーをストーンズに変えて、コラロフをRSBに移動させたのだと思う。どのポジションで活用させるか結構難しい選手。
余談
マンチェスターシティは引かれた時に対処できる選手が少ない。1つはスターリングの突破だが、もうすこし広いレンジかつ精度が高いサイドチェンジができる選手が育ってこないとすこし苦しい。
UCL16-17-C2-BorussiaMG.vs.Barcelona
UCL16-17-C2-BorussiaMG.vs.Barcelona
まずはスタメンから
Fig.1ボルシアMGvsバルセロナ
ボルシアMGは3-4-1-2
T.アザールが先発復帰。前節スタメンじゃなかった理由はよくわからない。ラファエウ、T.アザール、I.トラオレを中心にスピードに優れた選手を多く配置しているので、中盤でボール奪取してからカウンターにどれだけつなげられるかが勝負のカギとなる。
バルセロナはいつもの4-3-3。
メッシ、ウムティティが怪我で欠場のため、アルカセルとマスチェラーノがスタメンとなっている。A.トゥランではなくアルカセルをスタメンに選んだ理由はよくわからない。
試合の概要
試合は1-2でバルセロナが勝利する。33分にカウンターからT.アザールが押し込んでボルシアMGが先制する。しかし、64分にはネイマールからの浮き球をA.トゥランがうまく押し込み、76分にはネイマールからのCKをL.スアレスがシュートし、最終的にはこぼれ球をJ.ピケが押し込んで逆転した。前半のボルシアMGの守備→カウンターは素晴らしかったが、後半になると守りに入ってしまって自滅してしまった。
バルセロナは世界最高レベルに個人能力が高いL.メッシ、L.スアレス、ネイマールを前線に擁してため押し込まれてしまえば、バスを停めたとしても失点は免れられないだろう。
したがって、バルセロナを相手にする時、最も重要になるのは押し込まれないことだと思う。
セルティックは5-3-2で自陣に引きこもったが、ボコボコにされてしまった。対してこの試合のボルシアMGの守備の基本形は3-4-1-2だった。(Fig.2)
Fig.2 ボルシアMGのハーフライン付近での守備
ボルシアMGのハーフライン付近での守備の約束事は以下のものだった
・ラファエウ、T.アザールはJ.ピケ、マスチェラーノを牽制しつつも自分の持ち場は離れないようなゾーンディフェンス
・シュティンドルはブスケッツを徹底マーク
・O.ベント、I.トラオレはハーフラインを超えてボールを受けたらプレス
・M.ダフド、C.クラマーはボール側にスライドしつつラキティッチ、イニエスタを監視
普通守備側は最終ラインのリスクヘッジを行うために相手の前線+1人という状況を作りたがるが、ボルシアMGは最終ラインでの攻防を同数で行った。
当然最終ラインでリスクを取っているボルシアMGは中盤の守備で優位に立つことができる場面が多かった。前半の序盤は選手がフレッシュだったということも相まって、中盤でボール奪取→カウンターといういいサイクルを作っていたボルシアMGだった。
ただしボール保持攻撃で常にトップクラスだったバルセロナは当然こういった中盤でのアグレッシブな守備に対しての解答を何個か用意していた。
・ビルドアップの人数の変更
・ゲームメイクの省略
ビルドアップの人数の変更
バルセロナは3バックでも4バックでもビルドアップできる。ボルシアMGのように前線に2人の選手をハーフラインより少し高い位置に置いてくる場合には、バルセロナはCB2人+ブスケッツorS.ロベルトの3人でビルドアップを行うことも多かった。(Fig.3)
Fig.3 バルセロナのビルドアップI
・S.ロベルトが第3のCBとなり、ラキティッチがサイドに開く
・ネイマールが中央のスペースでプレー
S.ロベルトもマスチェラーノも隙があればドライブする能力をもっている。こういう布陣になると守備側は不利な2択を常に迫られることになる。
例えば、
・ラファエウが自分のゾーンを無視してしまえばJ.ピケに簡単に前に進められてしまう
・O.ベントがS.ロベルトのマークをしてしまうとラキティッチのマークをエルベディがしなくてはならなくなるので、最終ラインの枚数が足りなくなる可能性が高い
・M.ダフドがS.ロベルトがドライブするゾーンを埋めてしまうとネイマールがフリーで受けられるエリアが増えてしまう
結局この中で一番被害が少ないのは「ラファエウがS.ロベルトの侵入を防ぐ」なので、この陣形をもとにバルセロナはハーフラインまでは押し込めることができることも多かった。
ハーフラインまで押し込んだ時のボルシアMGの守備の陣形は3-4-3のようになった。(Fig.4)
Fig.4 ボルシアMGの自陣での守備
・シュティンドルはJ.ピケをマークして相手のボール循環を妨害
・ラファエウとT.アザールのうち、ボールから遠い選手がブスケッツをマークすることで中央からのボール循環を妨害
ボルシアMGの守備で興味深かったことはハーフラインより押し込まれても3バックを維持したことだった。普通バルセロナを相手にして押し込まれ始めたら3バックから5バックにして最終ラインのリスクヘッジを行うが、ボルシアMGはこの段階でも行わなかった。
こういった状況に対して、バルセロナは前述で示した「ゲームメイクの省略」と普通のボール保持攻撃を行った。
ゲームメイクの省略
これについては簡単なことだが、最終ラインが3vs3になっているのであれば、狭いスペースでボールを回し続けるよりもL.スアレスやネイマールの裏抜けを狙った方が効率がいい場合が多い。実際ラキティッチ、ブスケッツ、イニエスタから裏抜けを狙うようなパスがいつもよりも多くなっていた。
このように書くとバルセロナはしっかりと攻めれたのかな?という印象にもなってしまうかもしれないが、ボルシアMGの中盤の守備はかなりバルセロナを苦しめていたと思う。セルティックを相手にした1節は相手を限界まで押し込んでいたので、ほとんど被カウンターの危険性はなかったが、この試合では中盤でボールを奪取されることも多かった。(Fig.5)
Fig.5 ボールリカバリー(左 : ボルシアMG、右 : セルティック)
単純比較は難しいが、ボルシアMGのほうが押し込まれていないことが明らかであるし、ハーフライン付近でのボール回収回数も多い。
こんなことからもボルシアMGの守備はハイリスクハイリターンではあるものの、概ね計算通りだったと思う。
ちなみにボルシアMGはバルセロナのゴールキック時にもハイライン+最終ラインを3人で守るという勇敢(無謀)な選択をしていた。(Fig.6)
J.アルバとS.ロベルトはあえてフリーにしているが、中盤でのセカンドボールの取り合いには負けないように中央に選手を集めている。当然これくらい露骨だとバルセロナのゴールキックもロングボールになる。基本はL.スアレスが自陣側に動いてA.クリステンセンを動かしつつ、ネイマールが裏を狙うという形が多かった。
バルセロナのチャンスメイク(前半)
バルセロナのチャンス(前半)
6m10P(20-11-20-8-9-18-11)Grade5
6m50P(4-9)Grade4
10m30P(3-9)Grade5
20m30P(5-8-11-9)Grade5
22m20FK(11-4M)Grade4
38m00P(8-11-5-4-9)Grade5
38m10P(9-)Grade4
Grade3以上のチャンスは9つ、ただしGrade5のチャンスが4つあったことを考えれば前半のうちに得点しておきかった。ボルシアMGの守護神ゾマーのセーブが重要だった場面も多かったが、そもそもバルセロナにチャンスメイクの試行回数を減らしたのも前半無失点で切り抜けられた大きな要因だろう。
ボルシアMGの攻撃(カウンター)
前述のようにバルセロナ相手に押し込まれることが少なかったボルシアMGの守備は割と機能していたと思う。しかしボルシアMGのストロングポイントは守備以上に前線のスピード+M.ダフドの攻撃参加にあった。
Fig.7 左からM.ダフド、I.トラオレ、T.アザール、ラファエウ
ボルシアMGは中盤でボール奪取すると前線の選手やI.トラオレはスペースに走りカウンターの準備をする。そしてボール回収を常に行い、的確なパスと攻撃参加でカウンターの基点になり続けたM.ダフドは前半のMVPだった。
逆に、ボールを保持した時の攻撃はあまり得意ではなさそうで、基本的にボールを保持するとロングボールが中心だった。
ボルシアMGのチャンスメイク
ボルシアMGのチャンス(前半)
2m10T(13-10)Grade4
15m20T(8-13-10-16-11)Grade4
21m30P(10-16-6-16-13-16)Grade4
33m00T(8-11-8-10)Goal
39m40P(27-13-10-8-17)Grade4
44m30T(10-13-11)Grade4
ほとんどのチャンスはカウンターから生まれたといっていいだろう。ボールを保持した時のチャンスもI.トラオレのスピードを使ったサイドアタックが多かったので、かなりフィジカル寄りのチャンスメイクが多かった。Grade3以上のチャンスは13こ、そのうちカウンターによるものが9つということを考えても前半はかなり狙い通りのサッカーができていたと思う。
後半戦
結果から先に言うと、ボルシアMGの後半はダメダメだった。問題の1つは、カウンターの要だったラファエウがハムストリングの負傷で後半開始直後に交代してしまったことだろう。そして1点リードしているということもあって守備がかなり消極的になってしまった。具体的にはハーフライン付近での守備は3-4-3から3-5-2に近い布陣に変更したこと(Fig.8)
Fig.8 ボルシアMGの後半の守備
要はビルドアップ妨害をやめてバスを停めることで失点のリスクを減らしに行ったのだと思う。これはラファエウが負傷したことによる戦術変更なのか、後半からの既定路線だったのかは不明だが、いずれにしてもいい戦術変更ではなかった。
よくない理由はセルティック戦で述べたことと同じで、押し込まれてしまうとカウンターが成功する確率は極端にさがってしまう。ましてやカウンターの要だったラファエウがいなくなってしまったことで、前への推進力をほぼ失ってしまったといってもよい。
これによって後半は一方的にバルセロナが相手陣地で殴る展開となった。
ボルシアMGのチャンス(後半)
88m00P(6-19)Grade4
バルセロナのチャンス(後半)
56m40P(5-18-9-4M)Grade4
60m50P(8-11-9-11-5)Grade4
69m30P(5-11-7)Goal
72m50CK(11-9)Grade4
72m50CK(11-9-3)Goal
76m30P(8-7M)Grade4
91m00P(5-12-11)Grade4
押し込んでいる分前半のような決定的なチャンスはあまり見られなかったが、ボルシアMGにほとんどカウンターをさせなかったという意味で、後半は完璧にバルセロナペースだった。したがってバルセロナが逆転できたのもあまり驚きではなかった。
余談
L.メッシ不在がバルセロナの攻撃を停滞させてしまった。代役として投入されていたアルカセルはかなり低調なパフォーマンスだったこともあり、ネイマール、L.メッシ、L.スアレスのいずれかが負傷したときにどう埋め合わせるかというのは今後の課題かもしれない。