サッカーを視る

主にCLやビッグマッチについて。リーグ戦はEPLが中心

UCL16-17-C6-マンチェスターシティ.vs.セルティック

UCL16-17-C6-ManchesterCity.vs.Celtic

薄青がマンチェスターシティ、黒がセルティック(Fig.1)

f:id:come_on_UTD:20170506144753p:plain

Fig.1 マンチェスターシティvsセルティック

 

マンチェスターシティは3-5-2

バルセロナと同様に6節の結果に関わらず、2位が確定しているマンチェスターシティ。そんなこともあってかいつもと違うメンバーで、3バックにはクリシー、アダラビオヨ、サニャを、WBにはマフェオ、サネを敷いた布陣となっている。

 

セルティックは4-1-4-1

セルティックも結果に関わらず4位が確定しているチーム。グリフィス、ティアニー、S.シンクレアが怪我をしているためベストなメンバーとはいかないが、メンバーはしっかりと揃えてきた。あとはボルシアMGのように無気力になっていないかが焦点となる。

 

試合の概要

試合は1-1の引き分けで終える。4分にP.ロバーツがクリシーを突破しそのままゴールを決める。一方で8分にはハイプレスを躱したマンチェスターシティは最終的にイヘアナチョが決めて同点とする。メンバーを落としただけあってマンチェスターシティはすべての局面で苦戦していた。セルティックは敗退確定していたにもかかわらず前線から上手くディフェンスを行い、うまくプレーしていた。

 

EURO2016におけるイタリアの3-5-2と今回のマンチェスターシティの3-5-2について

両者の守備システムはとてもよく似ていた。(Fig.2,3)

f:id:come_on_UTD:20170506144804p:plain

Fig.2 マンチェスターシティの3-5-2のハイプレスI

 イタリアのハイプレス

前線の2人ノリート、イヘアナチョがCBを監視し、ボールサイドのSB(ルスティグ、イサギレ)にはWB(サネ、マフェオ)がプレスする。そしてアームストロング、ロギッチをギュンドアンサバレタ、フェルナンドが監視する。

 

このとき肝なのは、ボールサイドと逆側のWBは4バックの一角としてプレーすること。ボールの位置に合わせてWBが上下動を繰り返すことでハイプレスの強度を保っていた部分はEURO2016のイタリアとそっくりだった。ただし、スタートポジションにおける3バックの両脇にいるクリシーとサニャは本来SBの選手なので、スライドした時のポジションはやりなれているが、サニャはともかくクリシーが3バック(4バック)のCBの1角としてプレーできるのかは非常に疑問だった。

 

最初の20分間のマンチェスターシティのハイプレスはFig.2のように1列目の2人によって行われた。しかしこの試合のセルティックのビルドアップは、S.ブラウンをスビアチェンコとジムノビッチの間において3人で行われた。またGKもビルドアップに参加するため、セルティックのビルドアップを中々捕まえることができていなかった。


そこで20分以降は、落ちてきたS.ブラウンにギュンドアンマンマークすることでビルドアップを妨害しようとした。(Fig.4)

f:id:come_on_UTD:20170506144837p:plain

Fig.4 マンチェスターシティのハイプレスII

 

ギュンドアンが前線に出ていることが多い分、フェルナンド、サバレタがカバーするエリアが増えるが、マンチェスターシティのハイプレスはうまく嵌っておりショートパスによる前進は防げていたと思う。ただしセルティックもショートパスだけではなくロングボールでの攻撃が多かったので、セカンドボールをマンチェスターシティが回収できないときにはそれなりにボールを進めていた。

 

マンチェスターシティのビルドアップ、セルティックのハイプレス

マンチェスターシティの攻撃をみていく。

EURO2016のイタリアと最も異なった、というか質に差があったのはビルドアップの部分だった。いずれのチームも3バックでビルドアップを行っていくが、マンチェスターシティのクリシー、サニャ、アダラビオヨはお世辞にもビルドアップがうまい選手ではなかった。一方でEURO2016時のイタリア(現ユベントスといってもいい)のボヌッチバルザーリキエッリーニはそれぞれタイプは違うものの、ハイプレスに対してもうまく対処していた。

 
セルティックマンチェスターシティの3バックのビルドアップに対して、ハイプレスで対処した。(Fig.5)

f:id:come_on_UTD:20170506144856p:plain

Fig.5 セルティックのハイプレス

 

3バックに対してはM.デンベレと、SH(P.ロバーツ、J.フォレスト)の計3人がプレスし、WBに対してはSB(ルスティグとイサギレ)が当たることでかなり攻撃的なプレスを前半から続けていた。もちろんハイプレスが嵌っていたことも確かだったが、特にカバジェロ、サニャはミスを何度もしており、セルティックは前半からカウンターのチャンスを多く作っていた。

 

一方で頻度は少なかったものの、ハイプレスを躱し、特にインテリオールがうまくマークを外した時にはマンチェスターシティにとって大きなチャンスとなった。EURO2016のイタリアも前線のクオリティ不足を補うためにインテリオールのジャッケリーニの飛び出しをストロングポイントとしていたが、ボヌッチデロッシのロングパス能力に頼っている部分が大きかった。しかしマンチェスターシティには特に出し手が存在しなかったため、チャンスは僅少となってしまった。

 

3-5-2におけるインテリオールの役割は運動量、守備能力、飛び出しと多岐に渡るが、マンチェスターシティにはあまり適した選手がいない気がするので、あまり機能する未来が見えなかった。

 

マンチェスターシティ、セルティックのチャンスメイク

マンチェスターシティのチャンス

07m20P(8-9-72)Goal

10m30P(6-8-5-72)Grade4

23m10P(22-9)Grade4

27m50T(13-72-9)Grade4

36m50P(8-3-72)Grade5

37m00P(9)Grade4

 

48m20P(22-19)Grade4

63m10P(6-72-8-72)Grade4

65m40T(13-8-72-9-15-9)Grade5

85m50FK-T(19M)Grade4

86m40T(8-19)Grade5

 


ビルドアップは全然うまくいっていなかったマンチェスターシティだったが、ハイプレスを躱したときやカウンターのチャンスではイヘアナチョの瞬間的なスピードが輝いていた。特に36min~37minまでのチャンス、65minのオフサイド判定のチャンス未遂は非常に惜しかった。(Fig.6)

f:id:come_on_UTD:20170506144908p:plain

Fig.6 65分のマンチェスターシティのチャンス

 

セルティックのチャンス

02m30T(10)Grade4

02m30T(27-18M)Grade4

03m40T(23-27)Goal

15m50P(14-18-14-10)Grade5

17m10T(49-10)Grade5

27m40P(3-14-3-10)Grade5

30m20P(8-3-27-18M)Grade4

43m10P(23-10-18-27)Grade4

 

58m20CK(14-23)Grade4

59m20P(18-23-18-23)Grade4

63m50P(27-16-27-23-18-16M)Grade4

77m20T(18-16-9)Grade4

81m30T(14-16-9-14)Grade5

マンチェスターシティの撤退守備の問題点

セルティックがボールを前進させることに成功したときには、マンチェスターシティは5-3-2となる。(Fig.7)

f:id:come_on_UTD:20170506144917p:plain


Fig.7 マンチェスターシティの守備の問題点

EURO2016のイタリアと異なった部分はもう一つある。前線の選手はハーフラインよりも自陣側まで侵入されたときにはそこまで熱心に守備に参加しなかったことだ。そしてセルティックのSHまたはSBがオーバーラップしてきたときにはどうしてもWB+インテリオールがサイドに開いてしまうため、ペナルティアーク付近のスペースがフリーになってしまうことがあった。

 

そのためセルティックのインテリオールであるロギッチやアームストロング、途中出場のM.スティーブンは隙あればミドルシュートという形はよく見られた。やはり5バックになってしまうと中盤をコントロールできなくなるという問題は古今東西一緒だなと感じた。

f:id:come_on_UTD:20170506144926p:plain

Fig.8 左からクリシー、アダラビオヨ、サニャ

さらに、危惧されていたマンチェスターシティの最終ラインの1vs1の守備はとても軽かった。中央のアダラビオヨは20歳の選手だが、両脇のサニャ、クリシーはサポートすることがあまりできていないようだった。もちろんアダラビオヨ自身も何度もM.デンベレに裏抜けを許してしまっていたので、いい出来とは言えないが、状況もかなりよくなく、いいデビュー戦とはいかなかった。

 

余談

両チームともハイプレスに苦戦していたため、チャンスメイクはロングボールやカウンターが中心となったが、メンバーを落としていた分マンチェスターシティが割りを食った感じになった。まあこの試合は他の試合に比べて重大な試合ではなかったが、サニャやクリシーを3バックの1角として使うのは諦めざるを得ないだろう。