UCL16-17-C3-バルセロナ.vs.マンチェスターシティ
UCL16-17-C3-Barcelona.vs.ManchesterCity
まずはスタメンから
青がバルセロナ、オレンジがマンチェスターシティ(Fig.1)
バルセロナは通常通りの4-3-3
S.ロベルトではなくマスチェラーノをRSBにした理由はよくわからない。それ以外の選手はいつもどおりで、L.メッシも復帰したのでほぼ万全といってもよい
マンチェスターシティは4-1-4-1
この試合ではデブライネをワントップにした実質0トップのような布陣。アグエロは怪我で離脱しているわけではないが、怪我しやすい選手ではあるので布陣の選択肢を増やしておくことはとても重要。
試合の概要
試合は4-0でバルセロナが勝利する。15分、60分、68分にメッシが圧倒的な個人技を披露してハットトリックを達成すると、88分にはネイマールも決めてバルセロナが勝利する。53分にブラーボが退場するまではかなり拮抗したゲーム展開だったが、53分以降は一方的な展開となってしまった。結果的に大差となってしまったが、マンチェスターシティの姿勢は正しかったと思う。
両チームともにポゼッションが高くなる試合が多いが、これはボールを奪われてから奪取するまでの時間が短いからである。すなわち前線からの守備が機能しているからともいえる。
ちなみにバルセロナはボールを奪われてから即奪うための攻撃的なプレスにたいして、マンチェスターシティは相手のビルドアップを妨害することが主目的の守備よりのハイプレスという違いはある。
バルセロナのハイプレスは4-4-2のような形になる(Fig.2)
Fig.2 バルセロナのハイプレス
バルセロナのハイプレスの特徴は最終ライン4人に対してL.メッシ、L.スアレス、ラキティッチ、ネイマールがそれぞれ自分のマークに即座にプレスにいくことである。さらにブスケッツまたはイニエスタがフェルナンジーニョをマークすることでマンチェスターシティの最終ラインに選択肢を与えないようにする。マンチェスターシティの最終ラインもこれだけはやくプレスされてしまうとビルドアップできないという状況が続いた。バルセロナのハイプレスはほぼうまくいっていたと思うが、かなり前がかりに守備を行うため、コラロフのロングボールやサイドチェンジなど大きな展開が成功したときにはマンチェスターシティもチャンスを作ることはあった。
マンチェスターシティの前線守備
一方でマンチェスターシティは4-1-3-2のようなゾーンプレスを行った。(Fig.3)
Fig.3
マンチェスターシティのハイプレス
この守備の特徴はナポリ、バーゼルと同じで与えられたエリアの選手がボールを持つとプレスを行うというものだった。具体的にいえば、デブライネがCBのうち1人を監視し、残りの1人をD.シルバまたはギュンドアンが交互に監視することで4-1-3-2の形を作っていた。
そしてほかのチームと同様にボールサイドから遠い選手(Fig.3でいうノリ―ト)は中央のエリアを守りつつ、マスチェラーノにボールが渡ればノリートがプレスを開始する。
また、イニエスタやネイマールが浮いてきたときにはオタメンディもストーンズも果敢に前に出ていたのが特徴的だった。これによって最終ライン3人vsL.メッシ、L.スアレス、ネイマールという状況になることも多かったが、そういったデメリット以上に中盤でボールを回収したいというマンチェスターシティの強い意志を感じた動きだった。
実際バルセロナも最初の15分間はほとんど前に進めることができず、まともな攻撃は数えるほどしかなかった。
バルセロナのビルドアップ
しかしながらこれだけエネルギーの大きいハイプレスに対しても、バルセロナはショートパスでかわす場面とロングボールを使うことで徐々に対処できるようになっていた。
特にショートパスでビルドアップを成立させたときにはサイドエリアから出発することが多かった。(Fig.4)
Fig.4 バルセロナのハイプレス回避方法I
バルセロナはビルドアップ時にFig.4の形になることが多かった。すなわち最終ラインの位置関係はそのままで、ボールサイドのISHのみ(Fig.4でいうとイニエスタ)がSHの位置に移動する。
スターリングとJ.アルバが正対した場合
この時のスターリングはイニエスタへのパスルートを塞ぐためにJ.アルバとイニエスタの間の位置からプレスをかけにいった。このときJ.アルバは波線の方向にドライブすることでスターリングのプレスを躱し、ビルドアップを成功させた。
内側からスターリングがプレスを行った場合
当然イニエスタがフリーになるので、あまりプレスの効果はないといえる。
フェルナンジーニョがいった場合には中央のスペースがフリーになり、サバレタがいった場合は最終ラインが3vs3の状態になる。
大体いずれかの3択になるが、特にJ.アルバはスターリングと正対したときにドライブすることができていたのでプレスを躱すシーンも多かった。最近のトレンドというと乱暴だが、ハイプレスに対する一つの解答としてビルドアップ側の選手がエリアに不均衡を作ることが流行っている気がする。
ファルソラテラルの3-2-2-3も中央に人を密集させて、サイドのフリースペースをデブライネやD.シルバが使うという発想と、バルセロナのようにサイドラインにインサイドハーフを置くことで中央のフリースペースを前線の3人が使うという発想の根本は同じだと思うからである。
マンチェスターシティは主にSBに対してパスコースを消すような形でプレスをかけにいっており、場合によってはサイドの位置にいたイニエスタ、ラキティッチに対してもフェルナンジーニョがついていくことで、サイドの位置からのビルドアップに対してもある程度対応していたと思う。
ロングボールを用いたハイプレス回避方法
ただし、バルセロナはT.シュテーゲン、L.スアレスのラインを効率的に使っていた分、マンチェスターシティよりもハイプレスの対応がうまかったといえる。(Fig.5)
Fig.5 バルセロナのハイプレス回避方法II
フェルナンジーニョが自分のエリアを放棄してハイプレスに行くことが多かった分、マンチェスターシティの最終ラインは、中央の広大なスペースでボールを受けようとするMSNトリオの対応に迫られた。その中でもT.シュテーゲンのロングボールをL.スアレスが収めることで、結果的にハイプレスの回避&広大なスペースを3人で使えるという疑似的カウンター状態を作ることにつながった。
ちなみにマンチェスターシティはこういったプレーが少なかったが、ネイマールとL.メッシのサイドでの影響力の大きさとL.スアレスのロングボールを受ける能力、T.シュテーゲンのロングボール精度がそろってこそなので、簡単なようにみえても実現できるチームは僅かだろう。
バルセロナの幸運と不運
正直にいって最初の15分間はバルセロナのボール保持攻撃→マンチェスターシティが中盤でボール奪取→カウンターという形が多かった。すなわちマンチェスターシティ寄りで進んでいたと思うが、バルセロナは一瞬のスキを見逃さなかった。
失点シーンはT.シュテーゲンのロングボールをL.スアレスが収め、L.メッシがフリースペースを活用できたことが大きいが、それ以上にフェルナンジーニョがエリア内でスリップしなければ防げたシーンでもあった。ただしこういった小さな隙を見逃さないL.メッシはやっぱりすごい。
バルセロナの幸運はL.メッシがいることだが、それ以上に押されている時間帯に理想通りの形で得点できたことは幸運だったと思う。
逆に、序盤にJ.ピケとJ.アルバが負傷し、それぞれマテュー、ディーニェに交代しなければいけなかったというのは、バルセロナにとって不運な要素だったといえる。
試合の転換点
確かに失点してしまったマンチェスターシティだったが、プレスの強度やボール回収後のカウンターなど正しいアプローチかつプラン通りのサッカーができていたと思う。しかし、53分にマンチェスターシティのGKブラーボがやらかしてしまった。
Fig.6 ブラーボのエリア外でのハンド
自陣でのボール処理をミスし、L.スアレスにボールを譲渡、慌てたブラーボはエリア外で故意のハンドで1発退場をもらってしまった。今シーズンの調子の悪さを象徴するような出来事だった。
この時点ではPKなどなかったので1-0のままだったが、明らかにこの退場は流れを変えてしまった。
マンチェスターシティのハイプレスも1人少ない状況ではほとんど効果がなかったし、逆にマンチェスターシティのビルドアップ時には1人少ない状況となったため非常に苦しくなった。
結局2点、3点目はマンチェスターシティのビルドアップをバルセロナがハイプレスで破壊し、カウンターからL.メッシが沈めた。
73分にはスターリングに対応できていなかったマテューが退場して10vs10となったが、すでに勝負はついておりどうにかなるような状況ではなかった。最終的にネイマールが88分に4点目を決めてバルセロナは気持ちよく試合を終えることができた。
バルセロナのチャンスメイク
バルセロナのチャンス
00m50P(18-11-10-9-4-11)Grade4
15m40P(1-9-10-14-10-8-10)Goal
20m00P(14-10-11-10-9) Grade5
22m50P(10-23-11-9) Grade4
30m10P(23-11) Grade4
31m10FK(10-4) Grade4
40m20P(11-10) Grade4
45m10P(1-9-10-9) Grade5
50m30T(11-23)Grade5
51m50CK(19-9) Grade5
59m40P(23-5-10-9) Grade4
60m10T(8-10M)Goal
68m10P(1-9) Grade4
68m20T(9-10)Goal
71m40T(19-11-10-9)Grade4
80m50P(4-21-11-4-11) Grade5
85m20P(10-11-19-11-10) Grade5
86m4-PK(11) Grade5
88m30P(11-10-11)Goal
Grade3以上のチャンスは前半で14、後半で15。特筆すべきはT.シュテーゲンのロングパスがゲームメイクになっていること、90分間の試合を15分間に区切っていくと、やはり前半の終盤のマンチェスターシティのハイプレスが弱まったタイミング、ブラーボの退場以降のトランジションから多くのチャンス、ゴールを生んでいることが分かる。
マンチェスターシティのチャンス
02m20T(11-7-21-7)Grade4
07m00T(24-9-21-17-9) Grade4
36m30P(11-8-21-9)Grade4
37m30P(21-9-8)Grade5
37m50P(7-25-8M) Grade4
43m10FK(9-8) Grade4
44m50CK(21-24) Grade5
46m30P(7-17) Grade5
46m00T(30-7-17)Grade4
46m30P(25-5-17) Grade4
63m30T(8-17) Grade5
67m30P(25-17) Grade5
71m10FK(11M) Grade4
Grade3以上のチャンスは前半で15、後半で6。特に前半はハイプレスからのカウンターやセットピースからチャンスメイクできていたが、得点には至らなかった。スターリングは相変わらずグアルディオラの元で進化している気がする。逆にノリートは足枷になっていたような気がするが・・・
デブライネをワントップにすることでプレスの強度を高めたということと、デブライネがサイドに流れてチャンスメイクという形はできていたが、エリア内にはいってくる選手がもう少し得点力に長けてこないと少し厳しそう。
余談
4点差ほどの内容差があったとは思えないが、このレベルのチーム同士がガチンコでやった場合、バランスが崩れたほうは大破することが多いのも事実ではある。そういう意味で、T.シュテーゲンのセービング、ロングパス精度、L.メッシの個人技はこのレベルでも抜けていた。