UCL16-17-C4-マンチェスターシティ.vs.バルセロナ
UCL16-17-C4-ManchesterCity.vs.Barcelona
まずはスタメンから
マンチェスターシティは4-1-4-1
アグエロが1トップとして復帰し、デブライネはサイドハーフの位置をスターティングポジションとした。デブライネ、D.シルバ、ギュンドアンを生かすとしたらこの形が最もしっくりきそうである。また、GKはブラーボが前節退場したため今節はカバジェロが担当。
バルセロナは通常通りの4-3-3
J.ピケ、J.アルバはそのまま負傷のため、マテューは出場停止で、最終ラインにはマスチェラーノとディーニェが代役として選ばれている。イニエスタも膝の負傷ためA.ゴメスが中盤を担当している。地味に中盤から最終ラインにかけて出場できない選手が多く、選手のやりくりは少し大変な状況である。
試合の概要
試合は3-1でマンチェスターシティが勝利する。20分にネイマールとL.メッシの完璧なカウンターからバルセロナが先制するが、相手のビルドアップのミスから38分にギュンドアンが、51分にはデブライネの直接FKが、74分にはカウンターでギュンドアンが決めて最終スコアを3-1とした。マンチェスターシティは計画されたハイプレスを90分間しっかりとこなし、とくに守備からのカウンターではデブライネの個の力が光った。後半頭からデブライネを真ん中に持ってきた采配がすべてだったかもしれない。
両チームとも確固たるスタイルを持っているチームなので、基本は3節と変わりはない。ただしマンチェスターシティはハイプレスの方法と強度を少しだけ変化させていたように見えた。(Fig.2,3)
Fig.2 マンチェスターシティのハイプレス(3節時)
Fig.3 マンチェスターシティのハイプレスI(4節時)
同じ点はギュンドアンとD.シルバが担当するエリアごとにゾーンプレスを行ったこと
一方で一番の違いは3節よりもプレスの人数を少なくしていたことがであろう。
特にブスケッツへのマークを緩め、代わりにスペースが大きくなりがちだった中盤のサイドのスペース(ここではA.ゴメスのエリア)を埋めた。ちなみにブスケッツに渡った場合にはD.シルバ、デブライネ、アグエロのいずれがカバーすることで対応していた。
当然プレスの枚数が少ないということは、それだけバルセロナがビルドアップしやすくなっているということであり、実際バルセロナは3節の時よりもビルドアップ成功の回数は増えていた。しかし3節のようにビルドアップの成功=ゲームメイクの成功というほど中盤にスペースはなかったので、今度はバルセロナのゲームメイク力が試されることとなった。
マンチェスターシティはバルセロナが前進してくると4-1-4-1の本来の形に戻っていった。(Fig.4)
Fig.4 バルセロナの主なゲームメイク
ところで、L.メッシは近年下がり気味のサイドハーフのような位置からゲームメイクに参加したり、中央に切り込んで行ったりと、守備以外何でもする選手になっている。ラキティッチもA.ゴメスもボールを扱える選手ではあるが、イニエスタのようにすり抜けるようなドリブルは持ち合わせていない。結局バルセロナのゲームメイクの中心はL.メッシになることが多くなってきている。
しかしL.メッシがボール保持攻撃におけるゲームメイクの中心になってしまうと、L.スアレスの裏抜けやネイマールの1on1が主なチャンスメイクになってしまう。もちろんそれらも普通のチームからしたら十分脅威なのだが、3節に比べるとバルセロナはボールポゼッション率は10%も高くなっていたにもかかわらずボール保持攻撃のチャンスメイクの質は明らかに下がっていた。こういったことを踏まえても、グアルディオラは3節での反省をきっちりハイプレスに反映しているように思えた。次にマンチェスターシティのボール保持攻撃を見ていく
3節でも行っていたが、マンチェスターシティがボールを奪取すると強度の高いプレスを行ってボールを奪取してくるのがバルセロナの特徴だ。(Fig.5)
Fig.5 バルセロナのハイプレス(3節時)
ただし、L.メッシのリソースを守備で使いすぎてしまうのは勿体ないとバルセロナは考えているのか、L.メッシとL.スアレスのプレスはそれほど執拗ではない。落ち着いた時のマンチェスターシティのビルドアップはボルシアMG戦、3節と一緒で、コラロフ、ストーンズ、オタメンディの3人によって行わ
れる。(Fig.6)
Fig.6 バルセロナのハイプレス
今までと同じように、ブスケッツがフェルナンジーニョをマークしている分、中盤にスペースができることが多い。こういったときにGKがこのエリアにロングボールを正確に蹴ってくれると非常に助かる。
しかしこの試合のマンチェスターシティのGKは
カバジェロだった。(Fig.7)
Fig.7 カバジェロ
ブラーボは調子を落としているもののボールの扱いはうまい。一方でカバジェロの足元は改善傾向にあるものの正GKになるほどのレベルでは明らかにない。実際この試合でもカバジェロはビルドアップに参加することはほとんどなかったし、蹴っ飛ばしてしまうことが大半だった。そのため前半にビルドアップがうまくいったケースは、コラロフやオタメンディのサイドチェンジもしくはロングパスからのセカンドボール奪取など、とても限定的なものであった。
バルセロナのチャンス(前半)
20m20T(10-11-10)Goal
27m10T(5-10-21-11)Grade5
33m00P(19-21-11)Grade4
34m00FK(10-21)Grade4
34m10P(20-10-9)Grade5
35m00T(10-4-9)Grade5
42m00T(21-10)Grade5
両チーム共にハイプレスに苦戦していたためボール保持攻撃の精度は低かったといえる。逆に言えばハイプレスからボール奪取しカウンターの形が非常に多かった試合ともいえる。最初にカウンターのチャンスをモノにしたのはバルセロナだった。FKから奪ったボールをメッシ→ネイマール→メッシでロングカウンターを成功させてしまった。パス、ラン、ドリブル、シュートすべてにテクニックが凝集されていたL.メッシが改めて異次元の存在であることを思い出させるようなプレーだった。
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マンチェスターシティは失点してから3節と同じ4-1-3-2の形でハイプレスを行う。もちろんこれは3節でも示されたように諸刃の剣だ。実際失点してから35分までは完全にバルセロナの時間帯であり追加点を取るべきだったが、ここでとどめを刺すことはできなかった。
マンチェスターシティのチャンス(前半)
2m00P(11-8-11-8-21-17-10)Grade4
10m00T(11-10-7)Grade5
20m10FK(21-17-10)Grade4
23m10CK(17-21-7-8M)Grade4
38m40T(10-7-8)Goal
40m40T(25-21-25)Grade5
3節同様カウンターからチャンスを多く作っていたことは一貫している。20分のFKも23分のCKも直前のプレーはカウンターであったことも決して偶然ではないだろう。
前述したように失点してからのマンチェスターシティは、ハイプレスを躱されたりカウンターを浴びたりといい時間帯とは言えなかった。それでも38分にS.ロベルトのミスをきっかけにカウンターの形でマンチェスターシティは同点弾を決めることができた。これは3節から続けたハイプレスの成果といってもいいだろう。
後半戦
マンチェスターシティはデブライネを中央に配置し、D.シルバをLSHとし、さらにハイプレス方式をすこしだけ変化させた。(Fig.8)
Fig.8 マンチェスターシティのハイプレスII
ゾーンプレスをやめて、マスチェラーノ、ウムティティをアグエロとデブライネでほぼマンマーク監視することにした。また、前半以上にブスケッツに入ったら徹底的にフェルナンジーニョとギュンドアンでプレスすることで前線でのボール奪取の機会を増やそうとしたマンチェスターシティだった。
・不調のブスケッツ
ブスケッツはこの試合かなり散々だった。ここまでミスが多い試合はなかなかないと思う。パスミスやインターセプトから多くのカウンターの基点になってしまっただけでなく、守備時には多くのファウルを犯してしまいチャンスを相手に与えてしまっていた。
ブスケッツ狙いが明らかになった後半だが、60分ごろからはついにプレスを嫌ったブスケッツがCB間に入ってビルドアップに参加するようになるが、これがバルセロナにとって致命的だった。(Fig.9)
Fig.9 バルセロナのビルドアップII
バルセロナのゲームメイクはインサイドハーフがサイドに絞ることで中央にスペースを作ることだったが、中央のスペースにブスケッツがいないのであれば、後は下がってくるMSNにうまく対応するだけで十分となる。ブスケッツがCB間に落ちてしまったことで結果的にボール保持攻撃の精度も下がってしまった。さらにブスケッツがCB間に落ちることで被カウンター時に中央のスペースがフリーになってしまいがちというデメリットも浮き彫りになった。
もちろんブスケッツが落ちることでウムティティやマスチェラーノがドライブするエリアは稼げるのだが、J.ボアテングのような完璧なサイドチェンジを持っている選手たちではないのでゲームメイクにはあまり貢献できていなかった。
マンチェスターシティのチャンス(後半)
46m10T(25-10-7)Grade5
46m50T(8-10M) Grade4
50m10FK-T(17M)Goal
52m10FK-T(17-30)Grade5
52m30CK(21-17-7-30)Grade4
56m20FK-T(21-10)Grade5
62m20T(11-21-11-17)Grade5
64m50T(21-17-7-17M)Grade4
66m20T(10-8-21)Grade4
73m10T(8-17-10-17-15-10-8)Goal
79m20P(17-21-17-21-10)Grade4
82m50T(15-17)Grade4
92m10T(11-10)Grade4
マンチェスターシティの後半の立ち上がりはほとんど完璧だった。度重なるカウンターからチャンスを作り、73分までにデブライネの直接FKとカウンターからのギュンドアンで一気に2点差まで広げる。
Fig.10 スターリング、フェルナンジーニョ、J.ナバス、フェルナンド
試合のペースを下げないために、負担が大きくなっていたスターリングとフェルナンジーニョをJ.ナバスとフェルナンドに変えることでチームの運動量を保とうとしたマンチェスターシティだった。特にJ.ナバスは持ち前のスピードを生かしたハイプレス時の守備とカウンターへの参加はかなり効いていた。
オタメンディとストーンズはビルドアップはまだまだな部分も多いが、ハイラインで守ることができるCBであり、特にオタメンディのインターセプトの上手さはカウンター向きのチームであるマンチェスターシティにかなりフィットしている。
3つの誤審
今回の主審はV.カッサイ
得点につながる部分で3つの誤審があったので一応記載。
・10分のスターリングvsウムティティ
確実に足を引っ掛けていたウムティティだったが、判定はスターリングのシミュレーションでイエローカード
・42分のメッシvsフェルナンジーニョ
非常に曖昧な判定なので難しいが、PKでも全然おかしくない。
・3点目のシーンである73分のアグエロのハンド
故意ではないにせよ腕に当たっているのでハンド判定だとしてもしかたがない。
試合自体はあまり荒れてはいなかったが、決定的な部分で大きなミスが目立ってしまった。
余談
マスチェラーノとウムティティのポジションが最初の15分間逆だったのはなぜなのか、よくわからない。マンチェスターシティはしっかりと準備してきたのに対してバルセロナは素材で勝負している感じがある。