サッカーを視る

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EURO2016-C3-UKR.vs.POL

EURO2016-グループC3-ウクライナvsポーランド

 

まずはスタメンから

黄がウクライナ、白がポーランド(Fig.1)

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Fig.1 ウクライナvsポーランド

 

ウクライナ前節までスタメンだった、ラキツキ⇔クチェル、シェフチュク⇔ブツコ、シドルチュク⇔ロタン、コバレンコ⇔ジンチェンコと変更。

またトップのゾズリャはセレズニオフの代わりに再びスタメン。選手のことを知らな過ぎるためこれらの交代がどういった意味をもっているのかまったくわからなかった。なかでもカチュリディを残してラキツキ交代は一番の謎だった。

 

対するポーランド4枚替え。ピスチェク⇔チオネク、モンチニスキ⇔ヨドウォビエツ、ブワシュコフスキ⇔ジェリンスキ、グロシツキ⇔カプストカと変更。

サイドハーフについては、守備に重きを置く場合はではグロシツキ、攻撃に重きを置く場合はカプストカと変更してる気がする。それ以外の選手についてはターンオーバーとみて間違いないだろう

 

試合の概要

試合は0-1でポーランドの勝利で終える。53分にブワシュコフスキがセットピースからのトリックプレーを成功させる。またしてもセットピースから失点したウクライナだったが、3試合の中ではウクライナの良さも垣間見れた試合ではあった。

 

 

1. 両チームの状況

ポーランドは勝ち点4をすでに得ているためグループリーグの突破は確定している。

対するウクライナは勝ち点0得失点差-4、したがってグループリーグ突破のためにはすくなくとも4点差以上で勝たなければならない。(Table.1)

 

Table.1 2試合を終えた時点での各チームの状況

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ウクライナの突破の可能性はわずかに残っているが、試合前のアップから察するにすでにウクライナ側は諦めているようだった。ラキツキは北アイルランド戦で貴重なビルドアップ要因だったが、この試合では外される。ラキツキを含め外された一部の選手はアップの間も明らかに態度が悪く、チームとしてまとまりがないのは一目瞭然だった。

 

2. ウクライナのビルドアップ、ポーランドの前線からの守備

ボールを保持することに圧倒的な強みをもつドイツと

ボールを保持することが全くできない北アイルランド

と同じ組にいるということもあって極端な試合展開が続いた。

 

そういうこともあってこの試合のボールポゼッション率はもう少し拮抗したものになると思っていたが、ウクライナがボールを持つ展開になる。

 

今までの2試合でも行ってきたように、ウクライナは最終ラインからでもボールを保持しようとする。基本的にはCB2人とセンターハーフ2人がビルドアップに関与していくが、やっぱりカチュリディはビルドアップで味方に大きな負担をかけることになる。

 

基本的にビルドアップを行う時は両CBとセンターハーフは適切な距離を保ち続けなければならない。選手間の距離が近すぎるとプレスを受けた際に対応することが難しくなってしまうし、逆に遠すぎればパスが長くなってしまいビルドアップの精度が落ちてしまう。

 

ポーランドは前線から積極的にプレッシングを仕掛けるときと仕掛けないときがあり、カチュリディと周りの選手の距離が遠いときには積極的にプレッシングを行っていた。(Fig.2)

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Fig.2 ポーランドの前線からの守備

 

カチュリディはサイドバックとの距離が遠くなってしまうとサイドバックには決してパスを出さない

 

カチュリディはパスの選択肢がそもそも少ないにもかかわらずギリギリまでビルドアップを行おうとするため、ポーランドはカチュリディが孤立した時を狙ってハイプレスを数回仕掛けていた。

ポーランドは前線からプレッシングをかける回数自体は少なかったが、仕掛けた時にはほとんどボールをものにしていた。

 

しかしポーランドは常に高い位置からディフェンスをするわけではなく、基本的にはボールを保持されると撤退していくことが多かった。理由はよくわからないが、120%を出す試合ではないのであまり無理をする必要はないということだと思う。

 

3. ポーランドの撤退守備

ウクライナvs北アイルランド戦におけるウクライナは、ハーフラインまでボールを進めてもゲームメイクをする選手がいなかった。またチャンスメイクするはずのヤルモレンコやコノプリャンカも狭い場所では全く真価が発揮されなかった。

 

そういったこともあってポーランドは撤退守備を選択した可能性は高いが、前半はポーランドの狙い通りに進まない部分も多かった。

 

ポーランドは撤退時に4-4-1-1のディフェンス。デスコルガードはレヴァンドフスキ。したがって9人+GKで守備をすることになるが、スタメンが今までと異なっているため配置も少し違った。(Fig.3)

 

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Fig.3 ポーランドの撤退守備

 

ポーランドの特徴としては、ステパネンコ、ロタンがボールを持った時はジェリンスキがプレスをかけつつもジェリンスキ、レヴァンドフスキをカウンター要員として前線に残していることだろう。実際のポーランドの守備の人数は8人だったということになる。

 

ただしそういった守備のデメリットとして、ヤルモレンコとコノプリャンカが比較的自由にプレーしてしまうという問題点があった。

コノプリャンカ、ヤルモレンコともにドリブルからのカットインを武器にしているが、しばしばカットインからミドルシュートといったロッベンの十八番のプレーを繰り返しポーランドのゴールに迫る。

 

また、ジンチェンコの存在もポーランドのの計算を少し狂わせたと思う。

2試合スタメン出場していたコバレンコにかわって登場したジンチェンコは弱冠19歳。ジンチェンコを見るようになったのはEURO2016からだが、トラップしてから前を向くまでのスピードがかなり速い。トラップ時のボールの置き所がとてもよく、ドリブルであまりつっかけたりせずシンプルにチャンスメイクを行うタイプのように感じた。特に楔のパスを受けてからターンするまでの一連の流れが本当に綺麗で、ウクライナの選手に少しの時間と空間を与えることに成功していた。

 

ジンチェンコは2016-2017シーズンにマンチェスターに移籍後、PSVにローン移籍をして修行中。全試合スタメンとはいかないが結構出番はもらっているらしい。この試合を見た感じではかなり好印象だったので今後の期待が高まる。

 

ここまでいうとウクライナがチャンスを作り続けていたかのような錯覚に陥るが、ウクライナの前半のチャンスは4つ。

 

ハイプレスをうまくかわしたコノプリャンカとジンチェンコのスルーパスから作ったチャンス。8m40(10-21-8)

コノプリャンカとブッコのコンビネーションからブッコがクロスをあげたシーン

,15m30(10-2-7)

セカンドボールをうまく拾ったヤルモレンコの大チャンスシーン16m50(7)

カプストカとの1on1からコノプリャンカがカットインを行い、そのままシュート。

29m00(10)

コノプリャンカのドリブルからブッコへのスルーパス38m30(10-2)

 

大きなチャンスは,15m30(10-2-7)と16m50(7)と38m30(10-2)の3つで、どれもトランジションから生まれている。

コノプリャンカ、ヤルモレンコとの1on1では負けていたが、ボール保持攻撃に関してはよく守れていたと思う。やっぱりウクライナはカウンター主体のチームなんだろうなと思った試合だった。そういう意味ではこのグループのなかで唯一ボール保持をしたがる相手がドイツというのはかなり災難だったと思う。

 

4. レヴァンドフスキについて

まずは簡単に前半のスタッツから(Fig.4)

 

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 Fig.4 前半のスタッツ

前半ウクライナはボールを支配していたにもかかわらず、イエローカードウクライナからロタンとクチェルに1枚ずつ出ている。2つともポーランドのカウンター時のレヴァンドフスキに絡んでしまいイエロー判定となる。

 

カウンター攻撃においてCFは起点になることが多いが、レヴァンドフスキはターンできないときにもしっかりとイエローを出させるようなプレーができる。こういったプレーはもっと評価されてもいい。

 

5. ポーランドの攻撃

ポーランドの攻撃は今までと同様に、ボールを保持してしまったときはロングボールを中心としてボールを前進させ、カウンターができるときはレヴァンドフスキ、ミリクを中心として速い攻撃を仕掛ける。

 

前半のチャンスはトランジションから2つ、ボール保持から1つだったが、いずれのチャンスも質が高く、どれか1つでも得点に結びつくことができれば!というシーンばかりだった。

 

ボールポゼッション率は圧倒的にウクライナの優勢だったが正直5分5分の試合内容の前半だった。

 

 

6. 後半戦

後半開始とともにジェレンスキをブワシュコフスキに交代した。初めから45分で交代ということだったのかもしれないが、コノプリャンカサイドから崩されるシーンが多かったので、守備を強化するという意味で投入したのかもしれない。

 

したがって後半の形は以下のようになる。(Fig.5)

 

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Fig.5. 後半のフォーメーション

 

後半のコノプリャンカの対面はチオネクとブワシュコフスキ。前半チオネクとカプストカははコノプリャンカのドリブルに苦労していた。

一方で後半からはいってきたブワシュコフスキはしっかりと抑えていた。多分ピスチェクも完封できるだけの守備力はあると思うので、右サイドのスタメンがブワシュコフスキとピスチェクである理由はよくわかった。

 

 7. 修正されないウクライナのセットピースの守備

ウクライナのセットピースの守備はおそらく参加しているチームの中でもっともひどい。図は73minにおけるポーランドのFKのシーン(Fig.6)

 

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Fig.6. ポーランドのFKのシーン(73 min)

本来赤で囲った部分をカバーすることができればこの位置のフリーキックコーナーキックから失点する可能性を抑えることができる。

2011-2012のCLの決勝のドログバのヘッドや同年の女子W杯決勝の澤の同点ゴールなどたまにゾーン外から強力なシュートを撃ちこんでくる例外もあるので、100%マンマーク守備だけが正しいわけではない。マンツーマン守備のいいところもある。

 

しかしこのマンツーマン守備は明らかにおかしい。

本来守るべきゾーンが全くカバーされていない。このシーンではクリホビアクがミリクのマンマーク相手にブロックをかけることでミリクがフリーでクロスに触れることに成功している。(Fig.7)

 

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Fig.7 マンマーク守備のデメリット

 

 結局こんなに簡単なスクリーンプレーでも、簡単に選手をフリーにしてしまっている現状がウクライナ

 

53minの失点シーンもセットピースにおけるマンツーマンDFのよくないところが。(Fig.8)

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ショートコーナー後マークミスが起きる。本来ブワシュコフスキのマークはコノプリャンカのはずだが・・・

ブワシュコフスキのゴールは素晴らしかったが、ウクライナのミスがなければ失点にはならなかったはず。結局 5失点の内3失点はセットピースがきっかけで、残りの2つは後半のロスタイムにカウンターから。何とも悲しい結果で終わってしまったウクライナだった。

 

余談

これを書いている時点で2018年のロシアW杯予選が4試合ほど消化されている。EURO2016時点ではフォメンコ監督だったが、EURO2016敗退とともに辞任する。新監督はシェフチェンコ。ちなみにW杯予選ではカチュリディは呼ばれてはいるものの試合には1回も出場していない。またコバレンコとジンチェンコが中盤をまかされているのも少し興味深い。

同組にはクロアチアアイスランド、トルコがいるが、クロアチア以外はかなり拮抗していると思うのでW杯に出てくる可能性も0ではない。それでもEURO2016のサッカーはかなり残念だった。