サッカーを視る

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UCL16-17-B2-ナポリ.vs.ベンフィカ

UCL16-17-B2-Napoli.vs.Benfica

 

まずはスタメンから

薄青がナポリ、赤がベンフィカ(Fig.1)

 

Fig.1 ナポリvsベンフィカ

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ナポリはいつもの4-1-4-1。

ディナモキエフ戦と同じメンバーで挑む。

 

ベンフィカは4-2-3-1に変更。

最終ラインに変更はなし。

GKはエデルソンからJ.セザールに変更

怪我明けのミトログルが復帰した。

 

試合の概要

試合は4-2でナポリが勝利する。19分にグラムのコーナーキックからハムシクが決めてナポリが先制する。50分にメルテンスの直接FK、53分にミリクのPK、56分にカジェホンのクロスからメルテンスが押しこみ4点差とする。その後ベンフィカが69分、85分にG.グエデス、サルビオがナポリのミスをついて2点返した。正直ベンフィカはすべての局面でナポリに負けており、特にナポリゾーンプレスとボール保持攻撃に対してほとんど無力だった。結果がよく内容を表していると思うが、4点リードしてから気が緩んだためかナポリは局面でのミスが少し多かった。

 

 

ナポリの守備、ベンフィカのビルドアップ-ゲームメイク

この試合では開始10分でR.アルビオルが怪我をしてマクシモビッチと交代している。

 
   


ナポリの守備の形は4-1-4-1でディナモキエフ戦と同じゾーンプレスを使う。ディナモキエフは3センターであったため、ジョルジーニョが高い位置から守備に参加している様子が確認されたが、ベンフィカは2センターであるため、ジョルジーニョ-オルタ、ハムシク-A.アウメイダ、アラン-フェイサとがっちり噛み合っていた。(Fig.2,3)

 

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Fig.2 インサイドからベンフィカがビルドアップを始めようとした時

 

インサイドからベンフィカがビルドアップをしてくるときはハムシクもしくはアランがプレスを開始し、それに伴って2列目の選手はボールサイドにマークチェンジを行っていく。

 

 

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Fig.3 アウトサイドからベンフィカがビルドアップを始めようとした時

一方でSBもしくはCBが開いた場合にはメルテンスもしくはカジェホンがプレスする。ここからCBにボールを戻すようであればメルテンスもしくはカジェホンがそのままプレスし追っかける。

 

いずれにしても4-1-4-1⇔4-4-2のナポリゾーンプレスの対応にベンフィカは非常に苦労していた。リンデロフは得意のドライブで何度かプレスを躱すシーンは目撃されたものの、ほとんどのビルドアップではスムーズに前に進めることができず、結局ロングボールでボール保持攻撃を終了していた。

 

じゃあロングボールを前線で収められる選手がベンフィカにいたか?といえばいなかった。体を張れるのはミトログル位だったはずだが、クリバリに完封されていた。

 

 

 

 

 

ナポリのビルドアップ、ベンフィカの守備


ナポリのビルドアップはディナモキエフ戦でも書いたように最終ラインから縦パスを多用し、ショートパスでつなぐものの縦に早い攻撃を志向している。

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Fig.4 クリバリ(左)、マクシモビッチ(右)

この時ビルドアップにおいて重要なのは最終ライン、特にCBの縦パス能力である。クリバリはディナモキエフ戦でもベンフィカ戦でもその能力が高いことを示していたが、交代で入ってきたマクシモビッチはどうもそういった能力が乏しいような感じがあった。結局この試合もディナモキエフ戦と同様に左サイドの攻撃に偏ることとなった。

 

ベンフィカの守備


ベンフィカの守備の基本形は4-4-2。(Fig.5)

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Fig.5 ベンフィカの4-4-2

ベンフィカの守備はとにかくハムシクとアラン、ジョルジーニョを自由にさせないようにしようという感じが、これら3人に対してマンマーク気味でそれぞれA.アウメイダ、フェイサ、オルタがついていた。

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Fig.6 グラム(左)、ハムシク(中央)、メルテンス(右)

ただし、ナポリのボール保持攻撃はこれだけでは防げない。というのもクリバリが本当に躊躇なく縦パスをマークされているハムシクやマークを外したメルテンスに供給する。そしてハムシクメルテンス、グラムは少ないタッチでうまくボールを前に進めることができていた。

 

両チームの出来をまとめると、ベンフィカナポリの守備にほとんど対応できず、うまくボールを前に進めることができておらず、ナポリベンフィカの守備をほとんどものともせずアタッキングサードまですんなりと運べていた。

 

ナポリのチャンス、ベンフィカのチャンス(前半)

ナポリのチャンス

0m10T(31-99)Grade4

18m00P(26-17-31-14)Grade4

19m00CK(31-17)Goal

29m00FK(8-99)Grade4

31m10P(31-14-7-17)Grade4

 

ナポリは前述のとおり前線からの守備も機能していたため、何度かカウンターを演出する機会があった。ボールを奪取した時にまず狙うのはミリクの裏抜けを生かしたカウンター。とくに序盤こういったプレーが頻発した。

やっぱりナポリの強みは守備の規律がしっかりしておりカウンターを得意としながらもボールを保持した時にしっかり前進できることにある。こういったあらゆる局面で苦手がないことは現代サッカーにおいてとても重要だと思う。

結局19分のグラムのコーナーキックハムシクがうまく合わせて先制する。ナポリとしては内容も結果もともなった前半だった。

 

ベンフィカのチャンス

4m20P(3-15-11-21-50-11)Grade5

8m50P(14-15-3-11)Grade5

 

前半のベンフィカは攻めれず、守れずという感じだったので、非常に単発的なチャンスメイクとなっていた。ただし4分のセメドのクロスのこぼれ球が偶然ミトログルの前に転がってきたり、8分のグリマルドのクロスの際にR.アルビオルが怪我をしてしまいフリーでミトログルがシュートを撃てたりと、運は向いているような感じはあったが、いずれもブロックまたは素晴らしいセーブによって得点することはできなかった。

 

同点で折り返せばベンフィカにもチャンスがあった可能性はあるが、この2本の大チャンスを決めきれなかった代償は大きかったと思う。

 

後半戦

ハーフタイムでの戦術や選手の変更は特になく、前半と同様に後半開始からナポリはチャンスを作り続けた。

 

ナポリのチャンス

49m10T(31-14)Grade4

50m20FK(14)Goal

52m20P(26-5-26-17-8-17-8-26-31-17-5M-7)Grade4

53m20PK(99)Goal

56m50P(26-17-7-99-14)Goal

61m30P(31-14)Grade5

61m30P(99)Grade5

 


J.セザールのミス

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Fig.7 レイナ(左)、J.セザール(右)

ナポリは後半の立ち上がり15分の間に3点を決めて4-0とした。もちろんこのチャンスはナポリが前半から続けてきた縦に早い攻撃を繰り返していた賜物だと思うが、3点決めることができた理由はJ.セザールのミスが大きく関与していると思う。

ハイライト

50分に自身の突破から得たFKをメルテンスが直接決めて2点差とする。

このFKではJ.セザールは一歩も動けていない。方向を読み誤ってしまったのなら仕方ないかもしれないが、コースはそこまで厳しいものではなかったのでセーブしたい部類のFKであったことは間違いない。

53分にカジェホンをJ.セザールが倒してしまいPK。これをミリクが決めて3点差とした。もちろんこのプレーの直前ではクリバリ、グラム、ハムシクのコンビネーションでかなりうまくボールを前に進めることができているのでJ.セザールの飛び出しのみを批判することはできないが、できればPKにはしたくなかった場面。

 

56分にはハムシクのサイドチェンジからカジェホンのクロスをミリクが折り返し、最終的にメルテンスが押し込んで4点差。

この失点はJ.セザールが大きく関与している。深い位置でカジェホンにクロスをあげられてしまっていたが、エリア内の人数やマーク関係はそこまでひどい状況になっていなかったが、カジェホンのクロスをJ.セザールがパンチングし損ねてしまった。

 

繰り返しになるがJ.セザールだけが悪いだけではない。ただこういった個人の少しのミスが不運にも連続失点の原因になってしまった。

またレイナとJ.セザールではゴールキーパーの能力としてかなり決定的な差があった。

 
   


(Fig.8,9)

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Fig.8 レイナのゴールキック

 

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Fig.9 J.セザールのゴールキック

 

ここ数年のサッカーにおいてゴールキックの重要性は顕著にあがっている。というのも従来のようにロングボールをあるエリアに蹴るだけではなく、場合によってはビルドアップ時のレシーバーもしくはパサーになる必要がある。これだけではなくFig.nやmのようにゴールキックからショートパスを出させないために高い位置に前線に置きっぱなしにするチームも多くなっているため、キーパーはショートからミドルレンジのパスを正確に行える選手が求められている。

 

レイナは自陣深い位置までプレッシャーをかけてきたとしても近くにパスも出せるし、ミドルレンジのパスも躊躇なく出せていた。

一方でJ.セザールは基本的にロングボールばかりだった。もちろん前線にロングボールの競り合いが強い選手がいるのであればそれでも問題はないかもしれないが、少なくともこの試合のベンフィカは前線にボールを収めることができる選手はいなかったため、ゴールキックから出発の攻撃の質はとても低かった。

 
   

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ベンフィカのチャンス

69m50T(20)Goal

85m20P(21-3-21-34-18)Goal

 

対するベンフィカは4-0とされてから2点を取り返した。

1点目はジョルジーニョのバックパスをG.グエデスがカットしそのままゴールする。

2点目はA.アウメイダのクロスからサルビオがうまく抜け出して決めた。2点目に関しては完全に対面のグラムが見失ってしまったのが原因だったと思う。

 

おそらく、4点先行していたナポリには少し気にゆるみがあったのかもしれないが、60分間完璧にゲームを進めていたので、この失点はもったいなかった。ただし失点シーン以外は後半もナポリの守備はほぼ完璧で、ゾーンプレスの強度は試合終盤でも保たれていたし途中出場の選手もしっかり整理できていた。

 

 

余談

ナポリはこのグループだと群を抜いて完成度が高い。特にこの試合でも強さを見せ、ビルドアップで効率的なパスを供給し続けたクリバリや、守備、チャンスメイク、フィニッシュと幅広く活躍していたメルテンスハムシクは本当にこのチームにとって重要な存在。

 

正直ベンフィカは何が強いのかよくわからない。ただしグループリーグの重要なところは強いチームに負けず、弱いチームに勝つことなので、3節、4節のディナモキエフ戦は重要になる。