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UCL16-17-C1-バルセロナ.vs.セルティック

せUCL16-17-C1-Barcelona.vs.Celtic

まずはスタメンから


青がバルセロナ、緑がセルティック(Fig.1)

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Fig.1 バルセロナvsセルティック

 

バルセロナは4-3-3

新加入のウムティティ、A.ゴメスが先発している。前線の3人の破壊力は相変わらず世界最高峰といって差し支えないないだろう。

 

セルティックは5-4-1

いつも通りのフォーメーションではなくバルセロナ対策の5-4-1を選択した理由は、前線の3人の破壊力を抑えるためであろう。注目はCFのM.デンベレ

 

試合の概要

試合は7-0でバルセロナが勝利する。開始2分にショートコーナーからメッシ、26分にもスアレスからメッシ、49分に直接FKをネイマール、58分にネイマールのクロスからイニエスタのハーフボレー、スアレスのクロスからメッシ、ネイマールのクロスからスアレス、メッシのスルーパスからスアレスが決めてバルセロナが大勝した。終始押し込み続けたバルセロナは素晴らしかったが、特にL.メッシのゲームメイク、1on1、クロス、シュートのすべてが異次元のクラスだった。

セルティックの守備、バルセロナのビルドアップ

セルティックは通常時は4バックのチームだが、バルセロナ相手には5バックで挑んだ。


バルセロナのビルドアップは基本ウムティティ、J.ピケを中心に行われるが、セルティックのM.デンベレは積極的にプレスをかけないため、ウムティティかJ.ピケがドライブすることで簡単にハーフラインまで運ぶことができた。(Fig.2)

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Fig.2 バルセロナのビルドアップ

 

J.ピケやウムティティがドライブしてきたときはP.ロバーツまたはS.シンクレアが牽制をかけることで対応しようとした。しかしセルティックは5バックにして最終ラインを安定にしようとさせた分、中盤に大きな負担がかかってしまった。

 

まずは通常時のマークを確認していく(Fig.3)

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Fig.3 セルティックの理想のマーク相手


ビトン、S.ブラウン、M.デンベレが中央のエリアを守りつつ、SBにはS.シンクレア、P.ロバーツが監視、ネイマール、L.メッシ、L.スアレスには5人で対応することで個人技を封じようというのがセルティックの理想だったと思う。しかし実際にはJ.ピケかウムティティが頻繁にドライブしてきたため、マーク相手を簡単にずらされてしまっていた。(Fig.4)

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Fig.4 バルセロナのビルドアップ方法

単純にCBのドライブによって、Fig.3の場合だとP.ロバーツがウムティティの監視をせざるを得ない状況になり、J.アルバがフリーになってしまう。このときC.ガンボアがJ.アルバを監視することになるので、ネイマール、J.アルバvsC.ガンボア、ルスティグの2on2を簡単に作ることができていた。

 

簡単に言っているが、これをするためには前提条件としてCBがビルドアップをうまくできること、SBがゲームメイクの基点になれることが必要だ。バルセロナであれば簡単にできるし、左右どちらからでもでも可能だが、最終ラインがこれだけビルドアップ能力が高いチームは欧州の中でもなかなか存在しない。Fig.3はJ.アルバ側を示したが、特にセルティックにとって問題となったのはL.メッシ側だった。

 

セルティックにとって致命的だったのは、L.メッシが中盤まで下がってボールを受けた時誰がL.メッシを監視するか決まっていないことだった。それのせいでハーフラインを超えたあたりのエリアでフリーでL.メッシが受けるシーンが頻発した。(Fig.5)

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Fig.5 L.メッシのボールタッチエリア

WGでありながらこれだけ広範囲のエリアでボールを供給している。もう少し世界最高の選手に対してマークを強める必要があったと思うし、この試合で好きなようにされてしまうのは割と仕方ないことだったと思う。

とにかくL.メッシはボールを持てば中央に運べるし、サイドチェンジの精度も完璧だった。結局5バックでは中央のエリアを守る選手がビトンとS.ブラウンしかいないので、ここにSBやL.メッシが侵入してくるとセルティックの中盤はオーバータスクになってしまうという状況になった。

 

つまりセルティックの5-4-1はどこでボールを奪取するのかなど全く設計されていなかったので、セルティックは終始押し込まれることとなった。ボール支配率はバルセロナが72.3%、ポジションは69.5%と完璧に押し込むことに成功していることがわかる。(Fig.6)

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Fig.6 セルティックインターセプトとボールリカバリーの位置

 

当然これだけ押し込まれた状態でボールを回収してもセルティックができることはすくなかった。

 

バルセロナのチャンスメイク(前半)

バルセロナのチャンス(前半)

2m30CK(11-18-10)Goal

5m10P(10-5-10-18)Grade4

15m10P(4-9-4-10M)Grade4

16m50P(9-10-9)Grade4

21m50P(10-5-4-10-21-11)Grade4

26m20P(10-9-10-9-10)Goal

31m10P(3-10-21-9)Grade4

32m30T(4-5-21-9-18-21)Grade5

33m30CK(9-4)Grade5

34m30T(21-5-4-21-10-9)Grade5

40m30P(5-11-9)Grade4

42m20P(3-9-10-9-10)Grade4

42m40P(5-18-11-10-11)Grade4

43m10P(5-21-18-21-9-10)Grade5

 

 
   


3分に1回はGrade4以上のチャンスを作っていたこと、Grade3以上のチャンスであれば22回もあったことを考えれば前半の間に2点決めたことは当然の結果だといえる。欲を言えばあと1点か2点前半のうちに決めたかったが、攻撃に関してはバルセロナは完璧な出来だった。

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Fig.7 ネイマール(左)、L.スアレス(中)、L.メッシ(右)

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Fig.8 ネイマールのボールタッチエリア

緑☆は1on1の勝利、オレンジ☆は1on1の敗北を示しているが、Fig.5に示したL.メッシとは対照的でかなりタッチライン付近でのプレーを行っており、1on1の回数が非常に多い。L.メッシとネイマールのワンツーは非常にきれいで、たとえ相手が5-4ブロックでバスを停めてきてもお構いなくエリア内に侵入することができていた。多分バルセロナ相手に撤退して耐え続けるというのは現実的ではないと思う。これだけ中盤を蹂躙していたこともあってL.スアレスがチャンス時以外はほとんど目立っていなかった。

 

セルティックの攻撃、バルセロナの前線守備

前述のようにセルティックは相当押し込まれていた。そしてバルセロナは押し込んだ状態でボールを奪取された時にはCBを除いたほぼ全員でハイプレスを行う。そのため、プレスを回避する術を持ち合わせていなかったセルティックは、ロングボールを蹴りこむことが多かったが、前線で収めることができた回数は皆無といってよかった。

 


それでもM.デンベレとS.シンクレアはこのチームの中で攻撃の能力が高い選手。特にM.デンベレはまだ20歳ということを考えれば、かなりすごい選手になる可能性もある。

 

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Fig.9 M.デンベレ(左)、S.シンクレア(右)

カウンターもしくはロングボールが前線まで通った回数は90分を通しても非常に少なかったが、通った時にはそのスピードで何度かゴールに迫った。

 

セルティックのチャンスメイク

セルティックのチャンス

22m30P(8-11-10)Grade5

23m50PK(10)Grade5

41m10P(8-6-11-63-11)Grade4

54m30P(63-11)Grade4

 

セルティックは22分にS.シンクレアのドリブル突破からM.デンベレがエリア内でT.シュテーゲンに倒されてPKを獲得する。このPKをM.デンベレが失敗してしまったので形勢が変化することはなかった。

 

後半戦

圧倒的な試合運びを前半に行ったバルセロナだったが、2得点しかできなかった。しかし2点ならば正直引き分けになる可能性もまだある。例えば前半にイエローをもらったラキティッチが退場してしまったら少し危ない。そういったこともあってか後半開始からはラキティッチイニエスタに変える。

 

いずれのチームも前半と同じ戦術を用いていたので、前半と同じ流れが続いた

 

バルセロナのチャンス(後半)

49m00FK(11)Goal

54m40T(21-20-21-11)Grade4

58m10P(21-18-11-8)Goal

59m30T(8-10-9-10)Goal

64m50P(10-8-10-11)Grade4

70m50P(18-11-12)Grade5

74m10P(11-18-11-9)Goal

86m50P(11-9-10)

87m20CK(11-10-8-10-9)Goal

 

後半最初の15分間で3ゴールを決めて5-0とした段階で勝利が確定したバルセロナだった。前半のチャンス数を考えればバルセロナが60分間で5点を決めたのは全然驚くことはなかった。

 

この時点でブスケッツラフィーニャに変更し、その後はバルセロナも少し攻めの手を緩めて試合を終わらせにいった。最終的にL.スアレスが2点の追加点を挙げたが、60分の時点でセルティックはほとんど死んでいた。

 

バルセロナの弱点

バルセロナの強さが3トップの強烈な個人技にあるとしたら、弱点もまた3トップの守備にあると思う。バルセロナはハーフラインまで押し込まれると4-4-2に変化する(Fig.10)

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Fig.10 バルセロナの撤退守備

バルセロナは守備時にL.スアレスとL.メッシをデスコルガードとする。したがってS.ロベルトがL.メッシ分の守備を行わなければならない。そういったことからかS.シンクレアがドリブル突破を目指し、S.ロベルトサイドからクロスを上げるシーンが目立った。

 

やはり現代サッカーにおいて8人で守備を行うというのはどれだけ実力差があったとしても危ういシーンが生まれがちになってしまう。同時にバルセロナはL.メッシ、L.スアレスのカウンターの可能性も上がるわけだが、決勝トーナメントではバルセロナホームでの失点が命取りになるケースが多いので、撤退守備が緩いというのはあまりいい傾向ではない。

 

余談

やはりバルセロナは強く、グループリーグでもかなり抜けている。それでもイニエスタの劣化や撤退守備問題など2010-2012あたりと比べれば脆い部分も多くなっている。