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UCL16-17-E4-モナコ.vs.CSKAモスクワ

UCL16-17-E4-Monaco.vs.CSKA

まずはスタメンから
白がモナコ、黒がCSKAモスクワ(Fig.1)

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Fig.1 モナコvsCSKAモスクワ

 

モナコは4-4-2

B.メンディがLSBに定着し、ルマー、B.シウバがSHコンビを組み、ファルカオがCFに復帰したことで今季の基本的な形ができ始めた。CL3節終了時点ではリーグ戦6勝1分2敗とそこまでいい成績ではないが、ここから特に攻撃陣が爆発していくことが予想される布陣である。

 

CSKAモスクワは4-4-1-1

3節モナコ相手にゴールを決めたL.トラオレはお休み。正直ゴールを決めた以外のプレーはあまり芳しくなかったため、ストランドベリが代役を任されることも納得できる。一方でそれ以外のメンバーは3節でも十分なプレーを見せていたので大きな変更はない。怪我のV.ベレズスキに代わってA.ベレズスキがRCBに入っていることくらいだろう。

 

試合の概要

試合は3-0でモナコの勝利で終える。11分にFKのこぼれ球からジェルマンが抜け出しモナコが先制する。さらに27分にはB.メンディのドリブル突破からの鋭いクロスをファルカオが決め2点目、41分にはショートカウンターでジェルマン→ファルカオとつなぎファルカオが決めて3点目。試合のほとんどをモナコが支配していたが、前半よりも後半のほうがモナコのチャンスの質はむしろ高かった。モナコの個人の質の高さは欧州でも抜けたレベルになってきている。

 

CSKAモスクワの攻撃、モナコの守備

この試合においてCSKAモスクワのチャンスメイクはほとんどないわけだが、CSKAモスクワがボールを保持した時のモナコの対応を見ていく。


まずゴールキックの場合はCFのストランドベリをターゲットにしたロングボールがほとんどで、その効果はL.トラオレがスタメンだった時よりも効果は薄いものだった(Fig.2)

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Fig.2 ストランドベリのエアバトル

ポジティブトランジション時も押し込まれてしまっていることが多く、カウンターに結びつけることはほとんどできていなかった。そのためポジティブトランジション時のほとんどは低い位置からのボール保持攻撃となる。この時のCSKAモスクワのビルドアップは最終ライン4枚によって行われるが、モナコは3節よりも高い位置からCSKAモスクワの守備を潰しにかかった。モナコの守備は、とにかくCSKAモスクワのビルドアップに関与するであろう6人に対してほぼマンツーマンに近いような形で行うことだった。(Fig.3)

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Fig.3 モナコの前線守備


当然モナコの最終ラインは4人または5人(ファビーニョまたはバカヨコが下がっているような形)で4人相手しなくてはいけないため、思わぬロングボールからCSKAモスクワが数回ボールを前に運ぶことはあった。しかしモナコの前からのプレッシャーに屈するような形でのロングボールを出すことが多かったCSKAモスクワの攻撃の質は低かった。(Fig.4)

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Fig.4 モナコのボールリカバリー位置

Fig.4のように自陣浅い位置でのリカバリー回数が多い要因は、間違いなくロングボールを蹴らせたことによる寄与が大きい。

CSKAモスクワのチャンスメイク

14m50T(7M)Grade4

18m40P(3-2-7-42-2)Grade4

24m00P(66-7-2-7-17-23)Grade5

24m20P(66-3-11)Grade5

42m10P(3-66-3-23)Grade4

 

59m00P(3-7-2)Grade4

そもそものチャンス量が少なかったのは確かだが、やはりモナコは高い位置から守備を開始している分、CSKAモスクワにも突然チャンスが降ってくることはあり、24分の2つのチャンスはまさしくそういったものだった。ただし決めていたとしてもモナコは2点目、3点目を取るだけの力は間違いなくあったのでいずれにしても負けていたとは思うが。

モナコのビルドアップ、CSKAモスクワの守備


モナコのビルドアップはCB2人とCH2人で行われる。誤解を恐れずに言えば2-4-2-2というのがこのチームの本来の姿である。(Fig.5)

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Fig.5 モナコのビルドアップ

モナコのビルドアップの特徴は以下の通りである

・ジェメルソン、グリックは左右に大きく開く傾向にある

・ドライブできる場合には特にジェメルソンはドライブする。その際バカヨコが最終ラインのフォローをかかさない

・基本的にCBからルマー、B.シウバ、ジェルマン、ファルカオにめがけてロングボールという形

一方でCSKAモスクワの守備の特徴は以下のとおりである

・3節と同じ4-4-1-1が基本

・ストランドベリはボールを持ったCBにプレス

・ゴロビンはボール保持者に近いほうのCHを監視

・ディフェンスラインはそこまで高く設定されていない


結果から先に言うとモナコは3節以上にうまくボールを前に運べていた。

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Fig.6 ファルカオ(左)、ジェルマン(右)

理由の大半はおそらくファルカオの復帰と復調による部分が大きいと思う。まず、大前提としてファルカオへのロングボールがかなりの頻度で収まっていた。これはモウチーニョやB.シウバなどCFをファーストポジションにしていない選手では絶対にできないレベルで復調の証とみていいだろう。また、ファルカオはロングボールを浮いて受けることもあったが、ディフェンスラインの裏を狙うような動きを何度もしており、A.ベレズスキとイグナシュビッチはファルカオの動きにかなり手を焼いていた。

ファルカオが裏抜けをねらってディフェンスラインにプレッシャーを与えることができた時は、ジェルマンがロングボールを受けにいったりとお互いの存在が相乗効果となっていた。

じゃあナチョやバーンブルームがファルカオのスペースを制限しようとすると今度は一番ボールを持たせたくないB.シウバとルマーがフリーになってしまう。結局こんなジレンマからモナコはロングボールでもスムーズに前に運ぶことができていた。

 

モナコのゲームメイク、CSKAモスクワの守備

3節のおさらい

3節時のCSKAモスクワはハーフラインまでボールを運ばれた時4-4-1の9人で対応し、L.トラオレがデスコルガードとなっていた。前半はそれでも守れていたが、後半B.メンディの投入、シディベが本来のRSBへポジションチェンジ、B.シウバのSH起用によって完全に一方的な状態となっていた。

 

4節の対応

当然、3節であれだけ一方的に殴られていたCSKAモスクワは4-4-1ではなく4-4-2でしっかりとディフェンスをしようとする。(Fig.7,8)

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Fig.7 CSKAモスクワの4-4-2

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Fig.8 モナコの2択

 

ただしCSKAモスクワの4-4-2はモナコのサイド攻撃の破壊力の前ではほとんど意味がなかった。

モナコのゲームメイクの特徴は以下のとおりである

・B.シウバとルマーがインサイドにポジショニング

・ジェルマンとファルカオは最終ラインと常に駆け引き状態

・B.メンディとシディベのSBコンビは高い位置を維持

ナチョとバーンブルームは当然B.シウバとルマーを監視することになるが、Fig.8の場合イオノフの位置取りは結構難しい。シディベに近すぎればB.シウバが受けるスペースを増やしてしまうし、中央に寄り過ぎればシディベはフリーになる。

基本的にCSKAモスクワは中央を固めることを優先したが、シディベとB.メンディがこの位置でボールを受けた場合、ほとんどの確率でクロスまで持って行ってしまっていた。

 


B.メンディとシディベの躍動

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Fig.9 B.メンディ(左)、シディベ(右)

B.メンディは左利き、シディベは右利きなので対面するディフェンダーがいてもおかまいなくクロスを上げてくる。そしてクロスの質が異常に高く、オーバーラップ時のスプリント距離、回数などとにかく身体能力が高い。(Fig.10,11)

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Fig.10 B.メンディ、シディベのクロス回数

 

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Fig.11 モナコのクロス回数

とにかくこの2人のクロス攻撃はシンプルでありながらモナコにとってもっとも優れた武器となっていた。実際にB.メンディのクロスからファルカオがゴールしているが、当然の結果ともいえた。

 

失点後のCSKAモスクワのリアクション

11分にジェルマンが先制点をあげると、CSKAモスクワも前線から積極的に守備を行うようになる。ただしモナコの前線守備でも述べたように、高い位置からの守備はうまく嵌らないとチーム全体が間延びしてしまいかえって守備が不安定になる。最初の失点をしてからのCSKAモスクワは前線守備によってB.メンディ、シディベ、B.シウバ、ルマーにスペースを提供してしまい、そこから守備は本当にボロボロになってしまった。

 

モナコのチャンスメイク

01m40P(19-10-9-2-19-10-27)Grade5

06m50P(10-19-9)Grade4

10m50T(23-10-23)Grade4

11m00P(23-27)Grade4

11m50P(25-18)Goal

13m20P(19-2-9)Grade4

23m00P(10-19-18-19)Grade4

27m40T(10-23-9)Goal

32m20T(10)Grade4

32m50CK-T(27-25)Grade4

34m30P(19-10-2-10-18)Grade4

40m50T(2-9-18-9)Goal

 

51m30P(27-9-27-23-9)Grade5

52m40P(1-27-2-19-18)Grade5

54m20T(23-27-23-9)Grade5

55m20T(19-10-19-9)Grade4

56m30P(2-9-18M)Grade4

57m00P(19-2-27-23-9)Grade5

63m50T(9-27-23)Grade4

67m30P(14-18-19-10-19-10)Grade4

69m40P23-14-2-14-2-14M)Grade4

80m00P10-19-18)Grade5

84m30P(2-29-14)Grade5

85m20T(19-29-19-10)Grade4

87m40P(19-29-19-10-29-11)Grade5

90m00P(19-27-11)Grade4

92m00P(11-10M)Grade4

 

チャンス量の違いは明らかで、Grade3以上のチャンスが37個、Grade4以上のチャンスが27個、Grade5のチャンスが11個と今期のモナコのUCLの試合の中では圧倒的に一番良かった。ファルカオはボックス内でのクロスへの対応が素晴らしく、ロングボールの受け方も同様によかったためこの調子が続けば世界最高レベルのCFに復帰したといっても差し支えないだろう。

 

後半は20分を過ぎたあたりから両者の試合に対するモチベーションが低下していったが、モナコのSBはチャンスと見るや試合終了まで爆発的なスプリントを何度も披露していた。

 

余談

3節の後半から感じたとおりの試合が4節に確認できたという感じだった。システムが素晴らしいというよりかは個の能力がとても高いため、このチーム相手にシステムで止めるチームは出てくるのかが今後興味深い。