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UCL16-17-D4-アトレティコマドリードvs.ロストフ

UCL16-17-D4-AtleticoMadrid.vs.Rostov

赤がアトレティコマドリード、青がロストフ (Fig.1)

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Fig.1 アトレティコマドリードvsロストフ

 

アトレティコマドリードは4-4-2

3節はアウェーでロストフと戦った時と比べていくつかの変更点がある。1つはサウール.NをCHにコケを疑似SHとした。2つめはファンフランをブルサリコに変更した、現時点ではターンオーバー要素が強いと思うが、将来的にファンフランを押しやる可能性がある逸材である。

 

ロストフはいつもの5-3-2

3節との変更点はRWBのカラチェフが怪我からあけてスタメン復帰したことくらい

 

試合の概要

試合はアトレティコマドリードが2-1で勝利する。28分にカラスコのクロスからのこぼれ球をグリーズマン超反応で押し込むが、ロストフは失点直後29分にカラチェフ→ポロズ→アズモンとロングカウンターを成功させ同点にする。最終的には92分にコケのロングボールからのこぼれ球をまたもグリーズマンが押し込み2-1とした。前回の試合とまったく同じ内容だったかというと全然そうでもない。むしろアトレティコマドリードは前半自分たちの少しの変更が仇となって苦戦する。後半は持ちなおしたがグリーズマンを筆頭に個人能力に助けられた形となった。

 

シメオネの試合後のコメント

今回は趣向を変えて監督のインタビューから試合を見ていく。

試合後のコメントは以下の通りだった。

「事前の予測通り、この試合はタフなものになった。ロストフはとても組織的で、容易に失点を許すチームではなかったよ。具体的な内容は公にしたくないが、今日の試合で私が悪い采配を振るったのにも関わらず、選手たちは目の前の試練を乗り越えてくれた。このグループは厳しい組み合わせだったが、選手たちの頑張りを誇りに思う」

 

シメオネ監督が考える今日の悪い采配とはなんだったのかを中心にしてこの試合をみてみるとこの試合は非常にわかりやすいものとなった。

 

アトレティコマドリードのゲームメイク、ロストフの中盤守備

3節ロストフvsアトレティコマドリードのおさらい

3節とほぼ同じ部分については割愛するが、ロストフは基本5-3-2の撤退守備を行う。時と場合によっては前線からプレスをかけることもあるが試合を通して継続しているわけではない。

3節のロストフの守備の基本は、ゲームメイク役であるコケ、ガビを攻撃参加させないことだった。

3節もアトレティコマドリードはロストフを押し込むことはできていたが、押し込んだ後のチャンスメイクの形がどうしても決定的かつ狙い通りなものになることは少なく、むしろ個人能力の差がチャンスの質を決めてしまっている部分があった。

 

そういった中でも3節では、コケがゴールに近い位置でプレーするとチャンスメイクの質は上がっていたことから、おそらくシメオネ監督はこの試合後にコケをもっと前でチャンスに絡ませることができればより決定的なシーンが増えると考えたのだと思う。

 

この試合の特に前半の基本布陣は以下のようになることが多かった。(Fig.2)

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Fig.2 アトレティコマドリードのゲームメイク(0~35min)

アトレティコマドリードの約束事

・ブルサリコ、F.ルイスは高い位置でプレー

・CHはサウール.N、ガビ

・コケは初期位置をSHにしながらもOMFとしてより中央でプレー

最大の変更点はコケが3節時には出し手だったのに対し、4節では受け手になっていることだろう。おそらくこの変更がアトレティコマドリードの攻撃を完全に狂わせてしまった。(Fig.3)

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Fig.3 サウール.Nのパス(左:4節 34分まで)、コケのパス(右:3節 34分まで)

それぞれ異なった試合の34分までのパスを比較したのがFig.3であるが、コケは明らかにサイドチェンジを多用していた。これによって3節でも示したように5-3-2のスライドが間に合わない間にサイドを攻略するという手法を可能にしていた。

一方で、この試合のサウール.Nはサイドチェンジを使うことは全くなかった。では近くの選手とのコンビネーションで崩せたかといえば、それもほぼなかった。そしてこの試合のアトレティコマドリードはボール保持攻撃のゲームメイクにおいてCBが関与する機会が多かった。(Fig.4)

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Fig.4 ロストフの5-3-2について

4節のアトレティコマドリードはボール保持攻撃でよりリスクを取った。つまりCHを1,2列目間におき、コケはさらに前目の中央にポジションをとった。こうなった時に最終ライン4人はプレスに対して解決策をあまり見いだせる選手ではなかった。F.ルイスはもっと前のポジションであればドリブルでチャンスメイクできるが、この位置で仕掛けるのはリスクが大きすぎる。これが前半35分間有効なボール保持攻撃ができなかった理由の1つだと思う。

 

こんなこともあって34分にコケとサウール.Nのポジションをチェンジする。すなわちコケ、ガビのCH、カラスコ、サウール.NのSHという形にした。この変更を境にアトレティコマドリードは3節と同様にうまくゲームメイクが行えるようになる。(Fig.5)

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Fig.5コケのパス(左:4節 34分まで)、コケのパス(右:4節 35~90分まで)

ここまで明確にデータとして出ることはかなり珍しいと思うが、34分まで受け手としてプレーしていた間はパス数が22、CHとして35~90分まで出し手としてプレーした時はパス数が76。比較している時間は1.6倍だが、パスは3.4倍まで増加している。またFig.3のサウール.Nと比べてもパスの供給エリアはとても広い。

 

サウール.Nがすべて悪いというわけではなく、どちらかというと守備からのカウンターで輝くタイプの選手という印象が強いので、ロストフのように押し込んだ時にパスの出し手となるのはあまり得意ではないのかもしれない。

 

したがって冒頭で述べたシメオネのミスとは、

「コケの初期配置をミスしてしまい、34分までのボール保持攻撃の時間を無駄にしてしまったこと」と自分は解釈した。

 

アトレティコマドリードのチャンスメイク

アトレティコマドリードのチャンス

4m00T(16-6)Grade4

5m40T(16-6-9-10)Grade4

10m30P(7-8-6-7-3-10)Grade5

16m50T(16-6-7-10)Grade5

19m20P(13-7-10)Grade4

27m40P(10-7)Goal

31m40P(14-16)Grade4

32m40P(14-16-6-7)Grade4

36m00CK-P(10-2)Grade4

38m50P(6-10-3-7-16)Grade4

41m10P(14-7-16-9)Grade5

47m00P(8-7-10-8)Grade4

47m10P(8-7)Grade4

47m10P(7-10-3)Grade5

 

46m50FK-P(10-9-6M)Grade4

51m10CK-P(6-10M)Grade4

54m30P(6-10-7-16-9)Grade5

55m30P(10-2)Grade4

59m00P(14-7-21)Grade4

61m50CK-P(6-3-6M)Grade4

63m40P(6-16)Grade4

66m10P(3-6-2)Grade5

66m40P(2-21-9)Grade4

70m40P(6-14-16-14-16-7)Grade4

79m00P(16-21-16)Grade4

80m40P(3-21-9-21M)Grade4

86m30T(3-11-21-3-16-11M)Grade4

88m20FK-P(6-15)Grade4

89m50P(2-9-7-21-9-6-16M)Grade4

92m30P(14-2-6-2-7)Goal

 

35分を境目にチャンスを見比べてみると明らかに違うことがわかる。1つは、最初の35分間はカウンターからのチャンスがとても多い。理由はロストフを押し込めていないのでトランジション時にスペースができやすかったことが原因だろう。2つめ、残りの55分間はセットピースからのチャンスが増加していること。3つめはブルサリコの存在感がポジションチェンジ後に大きくなっていること。

 

35分間のアトレティコマドリード

基本的にあまり押し込むことができていなかった時間帯だが、押し込めなかったことで逆にカウンターが有効打になることもあった。また、3節同様にF.トーレスへのロングボールが非常に効いていた。(Fig.6)f:id:come_on_UTD:20170607205633p:plain

 

6/13とそこまで圧倒的な数字ではないが、F.トーレスへのロングボール→ロングボールをフリック→カラスコorグリーズマンが抜け出すという形はとてもよかった。

 

55分間のアトレティコマドリード

一方でロストフを押し込むようになると、今度はブルサリコの存在感がでてくる(Fig.7)

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Fig.7 左:F.ルイスのクロス、右:ブルサリコのクロス

もともとF.ルイスはボールを持った状態でインサイドでもアウトサイドでも切り抜けて行けることがストロングポイントで、ファンフランはクロス精度をストロングポイントとしていた。しかし今回ファンフランの代わりに入ったブルサリコのクロス精度はとにかく高く、危険なエリアへの供給能力はおそらくアトレティコマドリードの中でも1番と思わせる出来だった。

 

グリーズマン、F.トーレスの決定力

結局いくらチャンスを作ったとしてもゴールになるかならないかという問題だが、その点はやはりグリーズマンの決定力は素晴らしかった。いずれのゴールもロングボールをロストフの選手が逸らし、それに反応したものだったがとにかく嗅覚がするどい。逆にF.トーレスは正当な形でロストフのディフェンスラインをかいくぐった場面が2回あったが、いずれも得点には結びつかなった。

 

ロストフのチャンスメイク

ロストフの攻撃についてここで述べるほど新たな要素はなかったといっていい。基本的には最終ラインからのロングボール→アズモンのポストプレースクランブルプレーという形はいつも同じ。

ロストフのチャンス

14m40P(84-16M)Grade4

29m10T(2-7-20)Goal

44m40FK-P(2-30M)Grade5

 

62m30P(84-28-20-28)Grade4

3節と同じようにチャンスは非常に限られたものだったので、1点入っただけでもかなり上出来だったと思う。

 

余談

ロストフの守備は確かに硬いが、攻撃手段がほとんどないのでかなり正直このレベルだとかなり厳しい。それでもこの戦い方しかないわけだが・・・