EURO2016-E3-SWE.vs.BEL
EURO2016-グループE3-スウェーデンvsベルギー
まずはスタメンから
黄がスウェーデン、白がベルギー(Fig.1)
Fig.1 スウェーデンvsベルギー
スウェーデンは2戦目と同じメンバー。
オーソドックスな4-4-2という布陣もかわらない
ベルギーも2戦目とほぼ同じ。
アイルランド戦でデンベレが足首の靭帯を負傷してしまったためナインゴランがスタメンになっているだけ。
試合の概要
0-1でベルギーの勝利で終える。83分にナインゴランが豪快なミドルを叩き込み逃げ切る。スウェーデンは相手の嫌がる局面で戦うことで個人能力の差を埋めようとしていた。スウェーデンのほうがチャンスの量は少なかったが、質は高かったことを加味すればどちらが勝ってもおかしくなかった。試合の結果を分けた要因はわずかな運の差だったと思う。
1. 両チームの状況
スウェーデンは勝ち点1得失点差-1、ベルギーは勝ち点3得失点差+1となっている。
したがってスウェーデンは勝利以外でグループリーグの突破の確率は0で、
ベルギーは引き分け以上でグループリーグ突破確定
2. スウェーデンのゲームメイク、ベルギーの前線の守備
ベルギーは今までと同じようにデブライネとルカクが1列目となる4-4-2で守備を行う。
(Fig.2)
Fig.2 スウェーデンのゲームメイク
スウェーデンに対するイタリアとアイルランドには共通項があった。
それはスウェーデンの最終ラインに対して比較的高い位置から前線の選手が高い運動量でプレスをかけたということである
アイルランドはその強度が強かったが90分は持たず、
イタリアは適度なバランスで90分間相手の攻撃を塩漬けにしていた、
しかしベルギーの前線は守備に重きを置かない。
さらにナインゴランとヴィツェルがシェルストレーム、エクダールを抑えるためにマンマーク気味で守ってしまい、たびたび中央の持ち場を放棄してしまう。
ベルギーの前線は守備をさぼりがちなので、結果としてグランクビストとヨハンソンは比較的自由にボールを持つことができる。ここからナインゴランやヴィツェルが持ち場放棄したエリアにロングボールを供給するという形がスウェーデンの基本になる。
しかしグランクビストはプレスをかけられていなければ、黄色の破線方向に大胆にドライブをおこなうようなゲームメイクもあり、ベルギーの中盤を攻略するのに有効な武器を持っている感じだった。
こうやってできた中央のスペースに浮いてくるイブラヒモビッチを中心としてスウェーデンの攻撃は展開していく。
今までの試合はうまくビルドアップやゲームメイクができていないこともあってイブラヒモビッチの影はとても薄かったが、この試合はそういった局面をうまく攻略する場面が多かったのでイブラヒモビッチは比較的目立つ。(Fig.3)
Fig.3 イブラヒモビッチのオールスタッツ
勝利が緑、敗北がオレンジ、成功が青、失敗が赤(山がエアバトル)
イブラヒモビッチはロングボールを前線で収めるようなポストプレーをしたかと思ったら、偽9番のようにプレーして潤滑油のようになったり、エリア内でボールを受ければきわどいシュートを撃っていくような感じで非常に危険だった。
スウェーデンのチャンス
4m10FK(9-11)
23m10P(10-7)
25m10P(11-10)
62m00P(8-11-10MissJudge)
74m50FK(10)
82m10CK(9-10)
85m30P(8-10)
ただしスウェーデンのボール保持攻撃は守備的な問題をいくつか抱えていた(理由は後述)
ベルギーの守備は全体的によくないが、カウンターに持ち込める場面もあった。
例えばGKからのロングボールを回収した時。
スウェーデンのGKはゴールキック時にほぼ確実にロングボールを蹴る。(Fig.4)
Fig.4 イサクソンのオールスタッツ
ちなみにイサクソンのゴールキックのうち、ロングボールの成功回数が9回、そのうちイブラヒモビッチに収まった回数が6回。ただしボールが収まらなかった回数も12回とそれなりに多い。
ロングボールを奪取してからベルギーのカウンターというシーンが何度かあった。
もちろんカウンターに発展する場面はさまざまなので、あくまで一例としてGKからのロングボールがあったということ。
再現性があったカウンターの形は
スウェーデンのセットピース→クルトゥワキャッチ、ロングスロー→カウンターという形
スウェーデンの左サイドの攻撃→ムニエル、カラスコボール奪取→カウンターという形
など結構自陣深くからでもロングカウンターを仕掛けてくるベルギー
ベルギーのカウンター
2m20,4m20,5m40,12m10,26m30,32m10,52m20,57m40,72m10,90m00
この中でシュートまで持って行けたシーンは4つ、
そのうち本当に大きなチャンスは72m10、90m00の2つ。
この試合もデブライネ、アザール、ルカクの3人のカウンターはとても脅威だった。
ただしスウェーデン側にも構造上の問題と、個人能力的な問題がそれぞれ存在した。
3.1. 構造上の問題とは、ボール保持攻撃におけるサイドハーフのポジショニング
スウェーデンのボール保持攻撃の狙いはヴィツェルとナインゴランを釣りだし、
空いたスペースを攻略するというもの。
その時サイドハーフは高いポジショニングを取ることでベルギーのサイドバックのポジショニングを限定し、広い4vs4をしようというのがスウェーデンの狙い
このボール保持攻撃の問題は、主にトランジションで顕著になる。
サイドハーフが高い位置をとりすぎることでベルギーは自陣深い位置でボールを奪取してもカウンターにつなげるスペースを確保することができていた。
これがスウェーデンの守備置ける1つめの問題
3.2. シェルストレームとエクダールのトランジションの際の守備
広い6vs6のカウンターになった時にシェルストレームとエクダールがうまく時間稼ぎをしてくれれば致命的なカウンターの回数はおのずと減少していくが、シェルストレームとエクダールのトランジションにおける守備は軽いシーンも多かった。(Fig.5)
Fig.5 ベルギーのカウンター
4. スウェーデンの撤退守備、ベルギーのビルドアップ、ゲームメイク
スウェーデンはアイルランド戦、イタリア戦でもわかるようにハイプレスを行わないし、前線の運動量も高くない。
ただしゲームメイクの段階になるとそれを妨害しようとし始める。
スウェーデンの守備の基本は4-4-2(Fig.5)
Fig.6 スウェーデンのゲームメイク妨害
スウェーデンは下がってきたSBはラーションとフォルスベリが監視し、
ナインゴランとヴィツェルもシェルストレームとエクダールが監視することで
徹底的にゲームメイクの妨害を行おうとする。
ヴィツェルやナインゴランが最終ラインまで下がってゲームメイクすることはないので、この守備は効果的だった。
ただし、こういう状況になるとアルデルワイレルトがロングボールを蹴ることが多かったが、精度が高かったし、またスウェーデンのCBとくにヨハンソンはルカクの裏抜けとポストプレーに非常に苦労していた。
また閉塞してしまった時にアザールやデブライネがハーフライン付近まで下がって受けることもあり、そういった時にだれがどのマークをするかということが明確に定まっていなかった。
そんな感じでスウェーデンのゲームメイク妨害は一定の効果はあったものの、すべての状況に対応できているとは言えなかった。
ベルギーのチャンス
2m20T(10-6M)
5m40T(7-9)
24m00(10-7M)
28m50P(7)
34m50P(7-9)
44m10CK(7-10-7-16)
65m30T(2-7M)
72m10T(7-9))
78m30P(14-9)
79m30P(14)
83m30P(10-4M)Goal)
90m00T(10-20)
5. 勝敗を分けた少しの差
今回の試合展開に限ればスウェーデンが勝利する確率は4割、ベルギーが勝利する確率は6割くらいだったと思う。多分引き分けになることはほとんどないような試合展開。
なんだかんだでベルギーのカウンターの破壊力は高いし、スウェーデンももう一人ワールドクラスがいれば・・・というようなシーンが多かった。
ベルギーは83分にナインゴランが豪快ミドルをきめて先制する。引き分け以上でベルギーの突破を考えればこの時間帯でのゴールは決定的だった。
が、
スウェーデンにも63分にビッグチャンスが訪れている。
エクダールからのグラウンダーのクロスをベリがフリックし、イブラヒモビッチがハーフボレーでゴールをネットを揺らしている。
しかしこれはベリのハイキックでノーゴール判定となる。
Zlatan Ibrahimovic vs Belgium (EURO 2016) HD 720p by Ibra10i
多分この判定は少し厳しい。(7分23秒から)
もしこの時点でスウェーデンが先制したとしても、同点にされる可能性もあるのでたらればになってしまうが、これがゴール判定ならベルギーは敗退していたかもしれない。
余談
ベルギーはメディアで騒がれるほど圧倒的な強さをもっていない。
カウンターという武器を封じ込められれば、中堅国でも十分に勝利することができそう。
アイルランド戦の内容と結果が悔やまれるスウェーデンだった。ただしラーション、シェルストレーム、フォルスベリのパフォーマンスレベルは低かったので、妥当な結果ともいえる。