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UCL16-17-E5-モナコ.vs.トッテナム

UCL16-17-E5-Monaco.vs.Tottenham

まずはスタメンから

白がモナコ、黒がトッテナム (Fig.1)

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Fig.1 モナコvsトッテナム

モナコは4-4-2

4節とスタメンは変わらず、現状これが考えうる最強のメンバーであることは明白で、特にB.メンディ、シディベの強力SBコンビがこのチームの要だ。

 

トッテナムは4-3-2-1

アルデルヴァイレルトは怪我のため欠場として、フェルトンゲン、K.ウォーカー、エリクセンをスタメンに選ばなかった理由は不明。代役としてはトリッピアー、ヴィマー、ウインクスが選ばれている。いずれにしてもこの試合負ければグループリーグ敗退が決定となるためこの試合はトッテナムにとって大一番。

 

試合の概要

試合は2-1でモナコの勝利で終える。48分にB.メンディのクロスからシディベのクロスでモナコが先制するが、52分にグリックがエリア内でデレアリを倒しトッテナムがPKを獲得する。これをH.ケインが沈めて同点に追いつくも、直後シディベのクロスからルマーが技ありシュートを沈めてモナコが逃げ切る。とにかくトッテナムはボールを保持することに成功してたが前に進めなかった。逆にモナコは中盤からボール奪取を何度も繰り返すことでビルドアップに頼らずにチャンスメイクすることに成功していた。モナコのSBコンビの攻撃性能がとにかく異常なレベルに高い。

 

モナコの前線守備、トッテナムのビルドアップ


トッテナムはボールをつなぐチームであり、それはCBがダイアー、ヴィマーコンビになったところで変わらない。トッテナムのビルドアップはここ何試合かのCLで行っているようにワニヤマをCB間に落とした3枚で行う。(Fig.2)

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Fig.2 モナコの前線守備

・守備の基本は4-4-2モナコの守備時の約束事モナコは運動量を使ってハイプレスを行うようなことはあまりないが、1列目は守備を全くサボらないのでトッテナムにとっては非常にビルドアップしづらい。

ファルカオ、ジェルマンはボールサイドのCB+ワニヤマをマークすることでセンターラインからボールを運ばれることを阻止

ファビーニョ、バカヨコはウインクス、デンベレの位置に合わせて高い位置から監視

・ボールサイドでないSH(Fig.2ではB.シウバ)は中央付近のスペースを埋める

・ボールサイドのSH(Fig.2ではルマー)はSBのオーバーラップに合わせたポジショニング

これらをすべて守ることで、両CBのボールの出しどころをロングボールに限定させることに成功し、トッテナムはボールを前に運ぶことに非常に苦労した。こういった場合CBが機を見てドライブしつつ

ミドルパスorロングパスで前に進めるかどうかが重要になるが、ダイアーもヴィマーも成功率が非常に低かった(ダイアーのほうがロングパス精度がある分いくらかマシだったが)。

 

トッテナムの狙い、モナコのハイライン守備のリスク


ただし、ちょっと視点を変えてチーム全体の位置を見てみるとモナコも大分リスキーな守備をしていることがわかる。(Fig.3)

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Fig.3 トッテナムの狙い、モナコのハイライン守備のリスク

前述のとおり確かにトッテナムのCBはモナコのハイライン守備に苦労していたが、ファビーニョとバカヨコがM.デンベレ、ウインクスに釣られることで2列目、3列目間にギャップができてしまうことが時々あった。こういったスペースにトッテナムがボールを供給できたときはスペースが多く存在する4vs3となり後は個人能力で打開していくというのがトッテナムの明らかな狙いだった。

今まではM.デンベレ、ウインクスの位置にデレアリ、エリクセンを、さらにそのポジショニングは2,3列目の間であることが多かった。しかし攻撃の精度の増加メリットと被カウンターの危険デメリットがあまり釣り合っていなかった。

一方で今回のISHにバランスタイプのM.デンベレ、ウインクスを置いた理由は、被カウンターのデメリットを抑えつつ、モナコの2,3列目のギャップを狙おうとしたということだろう。

 

つまり、両CBからデレアリ、ソンフンミンに如何に質の高いパスを出すかがトッテナムのチャンスメイクの質と量を決める要因になるといっても過言ではなかった。確かに何度かモナコの守備の穴を突くことに成功していたが、ポチェッティーノ監督が期待していたほどではなかったのは試合を見ていれば明らかだった。

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Fig.4 モナコのボールリカバリ
(左:前半、右:後半)

後述するが、モナコは2-1とリードしてからはハイライン守備を控えめにし、トッテナムが押し込む時間帯が増えたためボールリカバリー数は後半のほうが減った。しかし前半45分および後半最初の15分間のモナコのハイライン守備は素晴らしかった。ハイライン守備がうまくいくということは、モナコはビルドアップをせずトッテナムの陣地に攻め入れるということであり、カウンターでのチャンスも増えていくことを意味している。これはビルドアップが苦手なモナコにとってB.メンディ、シディベ、ファビーニョ、バカヨコのフィジカルを生かすうえでとても重要な戦術選択だと感じた。

実際トッテナムはボールポゼッションが67.5%に達していたがボールポジションは43.2%。後半押し込んでいたことを考えると前半は、かなりビルドアップに苦しみカウンターを受けていたことが容易に想像できる。

 

モナコのボール保持攻撃

モナコは前述のように、そして今までの4試合化rまおわかるようにビルドアップを得意としていない。この試合でもボールを保持した時は基本ロングボールでファルカオorジェルマンをターゲットにするというものだった。(Fig.5,6)

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Fig.5 スバシッチのゴールキック

一目瞭然だが、ほとんどは前線へのロングボールだということがわかる。

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Fig.6 モナコのエアバトルのエリア

ただしモナコも闇雲にロングボールを前線に配給しているわけではなく、モナコの右サイドに向けたロングボールが圧倒的に多かった。これはトッテナムのLSBおよびLCBのD.ローズとヴィマーの守備力がトッテナムの弱点であるためだろう。実際に若手のヴィマーは何度かB.シウバ、ジェルマンに裏を取られてしまいモナコにチャンスを作られていた。

 

モナコトッテナムのチャンスメイク

モナコのチャンス

03m10P(1-23-27-9-14-27-23)Grade4

09m20T(19-2-27-23-18-10-2Penalty)Grade4

10m40PK(9)Grade5

12m20T(23-9-23)Grade4

13m50P(19-18-10-18-27-23-18)Grade5

15m40T(19-10-18)Grade4

25m10P(19-2-18)Grade4

26m10T(14-2-9)Grade4

27m20P(2-27-23-10-19-2-19)Grade4

34m00T(10-18)Grade5

38m50T(10-18)Grade4

40m20CK-P(27-25)Grade4

41m20P(25-14-23)Grade4

 

47m10P(19-10-23-19)Goal

48m20T(14-27-23)Grade4

52m30P(14-27-19-27)Goal

61m50T(10-2-19-10M)Grade4

62m40T(27-23-18)Grade4

67m20FK-P(27-25)Grade5

67m50CK-P(27-9)Grade5

68m20P(10-23-10-27)Grade4

69m40T(25-18-14-27-14-23)Grade4

73m20P(19-10-9)Grade5

75m30T(19-18-19-27)Grade4

やはりモナコのチャンスメイクに関わってくる重要人物はB.メンディだろう。B.メンディは90分間通して長距離のスプリント、迫力のあるドリブルでの1on1、高精度の高速クロスを持ち合わせたフィジカルモンスターだ。B.メンディを見ているとブレイクし始めてLSBでプレーしていたベイルを思い出す人も多いと思う。

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Fig.7 B.メンディのスタッツ
(左:1on1、右:クロス)

トッテナム相手にサイドでの1on1にすべて勝利し、CKを含めないで11本のクロス(うち4本成功)をあげられる選手は現役で5人いないだろう。実際CKを含めたクロスの回数は25本であり、実に半分を占めているのはかなり異常である。

 

実際にモナコの先制点はウインクスを抜き去ったB.メンディのクロスをシディベがヘッドで押し込むものでありモナコの攻撃スタイルをよく表していたといっていい。その後の得点時も、シディベからのクロスをルマーが決めるという形なのも決して偶然ではないと思う。


この試合でのファルカオ、ジェルマンの出来

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Fig.8 左:ファルカオ、右:ジェルマン

ファルカオはこの試合ファビーニョが獲得したPKを外したり、カウンターで自分が特攻できる場面でも全盛期のような力強さはなくなっていた。ただし苦しいロングボールでもマイボールにできるだけの力があり、ハイライン守備でもさぼっていなかった。

 

ジェルマンはこの試合何度もチャンスが訪れたが、それを不甲斐ない形でロスとしてしまうことが多く歯がゆかった。ただしジェルマンも守備やエアバトルでうまくモナコを有利にしていた部分も確かにある。

 

モナコは確かに得点力があるチームだが、それはファビーニョのポジティブトランジション時のロングパスやB.シウバのドリブルそしてシディベ、B.メンディのオーバーラップによる部分が大きく、決して得点力の高いFWを備えているからではない。だからこそ安定感のある攻撃スタイルを維持できているという部分もあるが、CFに得点力を備えた選手がでてくるとモナコはもっと手が付けられなくなっていくだろう。

 

トッテナムのチャンス

05m10FK-P(3-7)Grade4

05m30P(3-20-7)Grade5

05m40P(7)Grade4

06m10P(12-29-16-3)Grade4

21m50P(1-10-7-10-7-19-27-20-19-7-20-9offside)Grade4

28m50P(29-19-16-3)Grade4

33m50P(12-3-20-7)Grade4

37m30P(12-3-10)Grade5

 

50m10P(29-16-20Penalty)Grade4

51m20PK(10)Goal

56m30P(20-12-16)Grade4

58m00FK-P(16-12-7offside)Grade5

61m10P(15-16-10-19-3)Grade4

66m00P(15-9-16-15)Grade4

70m00T(20-9-23)Grade4

70m50FK-P(23-15)Grade5

85m20P(17-20-10)Grade4

85m50CK-P(23-20)Grade5

 

トッテナムの前半のチャンスは基本的にデレアリが縦パスを受け取り、前線にパスを供給するという形が多かった。デレアリへの良質なビルドアップは少なかったにもかかわらず、デレアリはうまくチャンスメイクにつなげていたため、かなりトッテナムを個人で助けていたと思う。

またトリッピアーも後半押し込んだ展開などで高精度なクロスを何本か上げておりとてもよかった。

 

一方でソンフンミンがスバシッチとの1on1で外した場面、H.ケインとD.ローズがエリア内でシュートを空振りした場面など、フィニッシュでの精彩を欠いていたシーンが散見された。H.ケインは復帰して間もないこともあってか全体的に消えがちでプレーの質もあまり高くなく、この試合のトッテナムの攻撃のスタイルにフィットしていなかった。

 

後半はトッテナムが押し込む展開となったが、そのタイミングに合わせてM.デンベレエリクセンに変えてさらに攻勢を強めた意図は理解できる。実際にエリクセンが投入されてからセットピース、ラストパスの質は向上していた。しかし得点することはできず、トッテナムはここでCL敗退が決定した。

 

余談

1節に比べて段違いによくなったモナコが内容込みでトッテナムに勝利した。トッテナムは重要な選手が怪我やコンディション不足で出場できなかった部分が多く悔いが残る形となってしまった。