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UCL16/17-E3-CSKAモスクワ.vs.モナコ

UCL16-17-E3-CSKA.vs.Monaco

まずはスタメンから
赤がCSKAモスクワ、白がモナコ(Fig.1)

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Fig.1 CSKAモスクワvsモナコ

 

CSKAモスクワは4-4-1-1

ザゴエフが怪我で欠場のためナチョが代役として出場している以外に特筆するべき点はない。

 

モナコは4-4-2

こちらもスタメンは2節と変わらない。苦しい試合が続いているがなぜか勝ち点を手にしている不思議なチーム。

 

試合の概要

試合は1-1で引き分けで終える。33分にZ.トシッチのシュートをはじいたスバシッチだったがL.トラオレに押し込まれてCSKAモスクワが先制する。86分にはカリージョのシュートをはじいたアキンフェエフだったが、B.シウバがしっかりと押し込んでモナコが同点に追いつく。前半のモナコのボール保持攻撃はレベルが低くCSKAモスクワのロングカウンターの餌食になる場面が多かったが、後半のモナコはカリージョ、B.メンディーといった選手が入ることでボール保持攻撃の精度と破壊力があがり結果的に同点に追いつくことに成功した。

 

モナコのビルドアップ


ここまでの2試合からもわかるようにモナコの最終ライン勢はビルドアップを得意としていない。ファビーニョやバカヨコがサポートすることでビルドアップすることが多いが、ビルドアップに人数をかけすぎてしまうことで、前線が独力でチャンスメイクしなければならないという状況が増えてしまう。CSKAモスクワは4-4-1-1を守備の基本とした(Fig.2)

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Fig.2 CSKAモスクワの4-4-1-1

CSKAモスクワの守備の約束事は以下のとおりである

・L.トラオレはグリック、ジェメルソンを遠ざけるようにプレス

ファビーニョもしくはバカヨコがビルドアップに参加しようとした時はゴロビンがプレス

・シディベ、ラッギがビルドアップに参加しようとした時はZ.トシッチ、イオノフが監視

CSKAモスクワはゴロビン、L.トラオレの2人でファビーニョ、バカヨコ、グリック、ジェメルソンを監視することでビルドアップの妨害を図り、これまでと同様やはりそれはうまくいっていた。もちろん4人を2人で守っているのでハーフラインまで進まれてしまうことはあるが、十分ビルドアップを制限できていたと思う。(Fig.3)

 

f:id:come_on_UTD:20170723203135p:plainFig.3 CSKACSKAモスクワのボールリカバリーエリア

モナコのゲームメイク-チャンスメイク、CSKAモスクワの中盤守備


CSKAモスクワはハーフラインまでボールを運ばれるとL.トラオレがデスコルガードとなり、4-4-1の9人で守備を行う。基本的にゴロビンがバカヨコ、ファビーニョを牽制しつつ、オーバーラップ頻度が高いモナコのSBにしっかりZ.トシッチとイオノフが守備をするという設計となっていた。モナコは押し込むとFig.1の形から少し変化し、モウチーニョはより中央でプレーし、B.シウバはサイドに開くことが多い。(Fig.4)

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FIg.4 B.シウバとモウチーニョの得意プレーエリア

モナコのチャンスメイクがうまくいかない理由~

B.シウバはとてもボールキープ力があり、クロス精度もかなり高くインサイドでプレーをした時には周りとのコンビネーションを生かせるためかなり前線での使い勝手がいい選手である。

一方でモウチーニョはビルドアップやロングボール能力は確かに優れているものの、前線で体を張ったりすることは得意ではなく、ライン間でボールを受け周りとのコンビネーションを必須とする選手である。現状モナコのビルドアップは人数をかけすぎる傾向があるので、もっと個の能力で前に進める選手のほうがモナコのSHとしては適切であるといえる。(ルマーやムバッペ、B.シウバのような)

 

B.シウバのクロス精度は確かに正確だが、エリア内に飛び込んでくる選手は基本ジェルマンのみとなりモウチーニョはエリア内でのプレーを得意としていない。いくらクロス精度が高くてもエリア内にいる選手が少なければ当然チャンスメイクしづらくなってしまう。

 

モウチーニョ、B.シウバのポジションチェンジによる弊害

デスコルガードとしてL.トラオレを前線に置いていることからもわかるように、CSKAモスクワはロングカウンターしかかつ道はないと考えていたと思う。実際ゴールキックも十中八九L.トラオレへのロングボールだったし、カウンター時のイオノフ、Z.トシッチの前線へのスプリントは尋常じゃなかった。

 

 


ここでモナコのボール保持攻撃方法がCSKAモスクワにとってつけ入る隙となった。基本モウチーニョインサイドでプレーするため、横幅はシディベのオーバーラップによって補うことになるが、一旦CSKAモスクワがボールを奪取するとシディベの裏のス広大なスペースは、CSKAモスクワにとって大きなチャンスエリアとなる。これ以外にも以下に上げる理由からCSKAモスクワは前半カウンターからチャンスを量産する。

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Fig.5 左からゴロビン、Z.トシッチ、イオノフ、L.トラオレ

CSKAモスクワがロングカウンターを量産した理由

モウチーニョ、シディベのポジショニング問題

・イオノフ、Z.トシッチのスプリント能力

・ゴロビンのカウンター時のプレー精度と判断能力

なお、L.トラオレはそのフィジカルでカウンターを成功させることに貢献していたものの、足元のスキルが全くないためチャンスメイクの質を著しく落としてしまっていた。他にいいCFがいればCSKAモスクワは前半のうちに2点入れてもおかしくなかったと思う。

 

ゴロビンは21才でありながらすでにCSKAモスクワの中心選手となっており、特にカウンター時のプレーは素晴らしかった。おそらく2018W杯でもロシアの中心メンバーになること間違いなしなので名前だけでも覚えておいて損はない選手である。

 

CSKAモスクワモナコのチャンス(前半)

CSKAモスクワのチャンスメイク(前半)

10m10T(7-3-11-17-11-9)Grade5

13m30T(17-11-17-11-17-7)Grade4

17m40T(2-17-7-9-17-9)Grade4

22m40P(9-17)Grade4

24m50P(3-2-3-66-7)Grade5

27m40P(3-17-66-17-11-4-42-11-7)Grade4

30m50P(3-2-7-2-9)Grade4

33m20P(4-66-2-7)Grade5

33m30P(7-9)Goal

35m10P(35-42)Grade4

42m10P(7-2-66-7)Grade4

 

モナコのチャンスメイク(前半)

14m10P(2-27-24-27)Grade4

15m50P(2-10-18M)Grade4

16m20P(25-18-10-27M)Grade4

19m40T(2-18-10)Grade4

21m50P(19-10)Grade4

28m50P(8-24-10-2-10offside)Grade4

39m00FK-P(27-18)Grade5

40m40P(2-27)Grade5

41m00CK-P(27-24)Grade5

42m40T(18-27)Grade5

基本的にモナコのチャンスは前述のようにルマーやB.シウバのクロス精度に頼ったものが多く、単発的なものが多かった。また、ルマー、B.シウバ、モウチーニョプレースキッカーをそろえているというのも大きな強みであり、セットピースからいくつかのチャンスを作っている。

後半にむけた変更点

前半の終盤にモウチーニョが負傷のためカリージョと交代し、CSKAモスクワはハーフタイムにイオノフをミラノフに変更した。イオノフを変更した理由については不明。このため後半は以下のようなフォーメーションとなる。(Fig.6)


モナコのフォーメーションは4-4-2といってもよいが、SBのオーバーラップ、SHがインサイド気味でプレーしていたことを考えるとFig.5のような2-4-2-2といっても差し支えないだろう。

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Fig.6 後半の両チームの形

 

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Fig.7 B.メンディ、シディベ、B.シウバ、カリージョ

後半45分間モナコが押していた理由

ファビーニョ、バカヨコへのプレス強度低下

・L.トラオレの守備放棄

・B.シウバ、ルマーのサイドハーフコンビ

・B.メンディーの登場

前半CSKAモスクワがうまく守れていた理由はゴロビンがファビーニョとバカヨコを自由にさせなかったためであるが、後半になると運動量が落ちてあまりこの2人を監視することがチーム全体として難しくなってくる。73分までゴロビンはトップ下の位置で守備、攻撃の中心となり、その後はナチョがトップ下となるが完全に撤退することを選んでしまっていた。

また、撤退するのであれば、L.トラオレはデスコルガードではなく4-4-2で10人で守るべきだったと思うが、CSKAモスクワがそういったアクションにでたのは83分になってからだった。

前半モウチーニョが攻撃にうまく参加できていなかったが、後半はB.シウバ、ルマーがSHになること、カリージョがCFとしてプレーすることで単純なクロス攻撃でも大きな脅威となった。そういった意味でモウチーニョの怪我による交代はモナコにとって怪我の功名となった。

 


そして68分にB.メンディがラッギと交代することで、最終的にLSBにB.メンディ、RSBにシディベという構成になったモナコ。(FIg.8)

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Fig.8 最終的な両チームの形

 
超攻撃型の布陣だが、B.メンディのクロス精度も高く、シディベもRSBとしてプレーしている時の方がクロス精度が上がっていた。(Fig.9)

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Fig.9 モナコのクロス数とエリア

 

CSKAモスクワモナコのチャンス(後半)

CSKAモスクワのチャンスメイク(後半)

51m50P(2-7-2-17-66-7-8-17)Grade5

77m40P(66-17-66-9)Grade4

84m10T(72-17-66M)Grade4

 

モナコのチャンスメイク(後半)

59m10P(14-27-19)Grade4

63m50T(2-19-10)Grade4

64m10P(10-27-18)Grade4

64m40P(14-5-14)Grade4

67m00P(14-2M)Grade4

67m10P(27-18)Grade5

71m30T(14-23)Grade5

73m10T(2-11-19)Grade4

76m40P(19-27-10-27-18)Grade5

76m50P(18-10)Grade5

77m00P(19-2-25offside)Grade4

78m20P(27-2-14-27-23)Grade4

80m30P(2-14-23)Grade4

81m20P(10-23-14-23)Grade4

84m00P(27-19-18)Grade4

86m00P(27-10-11-29-11)Grade5

86m10P(11-10)Goal

89m20P(27-19-10-19-10-19-18)Grade5

90m30T(10-19-11)Grade4

 

余談

とにかくジェルマンが決定機を外しすぎたわけだが、後半はしっかりとモナコの攻撃の形を作っていた。だんだんと今季のベスト布陣に変化してきているモナコだが、この試合は一つのターニングポイントとみてほぼ間違いないだろう。