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UCL16-17-E3-レヴァークーゼン.vs.トッテナム

UCL16-17-E3-Leverkusen.vs.Tottenham

まずはスタメンから
黒がレヴァークーゼン、白がトッテナム(Fig.1)

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Fig.1 レヴァークーゼンvsトッテナム

 

レヴァークーゼンはいつもの4-4-2

特に大きなシステム、選手の変更はなし。変更点はキースリンク、メフメディがスタメンに復帰したくらいだろう。

 

トッテナムは4-1-4-1

ワニヤマがピボーテとなることでエリクセン、デレアリの中央での両立を可能としている。アルデルヴァイレルド、K.ウォーカー、H.ケインの欠場のためそれぞれダイアー、トリッピアー、ヤンセンが代わりを埋めている。

 

試合の概要

試合は0-0の引き分けで終了する。最初の15分はレヴァークーゼンが、15~45分はトッテナムが、後半45分間はレヴァークーゼンが完全にゲームの主導権を握りチャンスを量産していたがゴールには至らなかった。試合全体を見ればレヴァークーゼンのほうが内容はよかったかもしれないが、どっちに結果が転んでもおかしくなかった。

 

前半15分レヴァークーゼンが優位だった理由

レヴァークーゼンの前線守備、トッテナムのビルドアップ


トッテナムが2センターを採用していた時は、ダイアーまたはM.デンベレがCBのサポートをすることでビルドアップを行っていた。ただしSBはどの選手が出場したとしてもあまりビルドアップに関われる選手が多いわけではない。モナコ戦ではB.デイビスとアルデルヴァイレルドのロングボールが攻撃の基点となっていたが、この試合にはいずれの選手もいない状況となっている。また4-1-4-1を選択したにもかかわらずワニヤマはほとんどCB間に入ることはなかった(Fig.2)

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Fig.2 レヴァークーゼンのビルドアップ妨害

レヴァークーゼンの前線守備の約束事は以下の通りである

キースリンクまたはJ.エルナンデスがワニヤマ、ダイアー、フェルトンゲンを監視する

・メフメディ、チャルハノールがD.ローズ、トリッピアーを監視

・カンプル、アランギスはエリクセン、デレアリへのパスコースをふさぎつつ中央をカバー

 

単純なハイプレスだったが、ハイプレスの強度が高く、トッテナムもポジションチェンジなどが少なかったことから、ショートパスでプレスを回避するような場面は希少だった。したがってダイアー、フェルトンゲンによるヤンセンへのロングボールがトッテナムのこの時間帯のビルドアップとなる。ただし、特にフェルトンゲンロングフィード精度は低くこの時間帯のトッテナムのボール保持攻撃はボロボロだった。

 

トッテナムの前線守備、レヴァークーゼンのビルドアップ

レヴァークーゼンのビルドアップの基本はカンプルがLSBに落ち、ボール保持攻撃の中心となることである。そのため、モナコのようにカンプルの動きを制限することはレヴァークーゼンを攻略するうえで重要となるのは明らかだった。トッテナムの守備の基本形は4-1-4-1である(Fig.3)

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Fig.3 トッテナムのカンプル対策

 

トッテナムの守備の約束事は以下のとおりである

ヤンセンがター、トプラクを監視

・LSBの位置のカンプルをラメラまたはソンフンミンがマンマーク

・プレス開始し始めたらエリクセンまたはデレアリが追加でプレス

 

こんな感じでカンプルがLSBにポジションチェンジした場合にビルドアップに関与させないことで、トプラクまたはターがロングボールを蹴る展開が多くなった。ただしワニヤマ、ダイアー、フェルトンゲンというプレミアでもエアバトルに優れている選手がいるので、長身のキースリンクをもってしてもうまく収まることはほとんどなかった。

 

こんなことから少し時間がたつとカンプルはLSBの位置にポジションチェンジすることなくスタメンのポジションでビルドアップに関与しようとする。ただしこのビルドアップの場合はチャルハノールがよりアウトサイドでプレーに絡まなければならなくなる。チャルハノールは中央でのミドルシュートやラストパスに絡むようなプレーは得意だがサイドでのプレーはいまいちのため、前半のレヴァークーゼンのボール保持攻撃はビルドアップ、ゲームメイクの部分でチグハグしてしまっていた。

 

15分間の優位を勝ち取ったレヴァークーゼン

両チームともビルドアップが自由にできたわけではなかったが、レヴァークーゼンのほうが前線からの守備でボール奪取→カウンターアタックが嵌っていたことから前半15分間はレヴァークーゼンのペースとなった。もちろんレヴァークーゼンのプレスは質が高い分長時間維持することはできないので徐々にトッテナムも活路を見出していく。

 

 

前半15~45分までの30分間トッテナムが優位だった理由


エリクセン、デレアリの個人技~

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Fig.4 デレアリ(左)、エリクセン(右)

レヴァークーゼンのプレスの強みは高い強度とハイプレスにかける人数である。一方でこのハイプレスは90分間維持することは不可能で時間経過とともにプレス強度は低下していく。これに伴ってフェルトンゲン、ダイアーからエリクセン、デレアリへの縦パスが通り始めるようになる(Fig.5)

 

ハイプレスしている分、エリクセン、デレアリを守らなければならないカンプル、アランギスの守備範囲は膨大となる。またエリクセン、デレアリは縦パスを受けた後ラメラ、ソンフンミンにワンタッチで正確につなぐ技術を持ち合わせているため、ハイプレスをかわしてこの2人にボールを届けることができれば即チャンスメイクができるという状態になっていた。また、ボールが回り始めてからはワニヤマの軽快なボールさばきも見逃せないポイントだった。レヴァークーゼンとしてはハイプレスが弱まる時間帯で撤退守備に切り替えられるともう少し安定すると思うが、この時間帯は完全にトッテナムのものになってしまった。

 

レヴァークーゼントッテナムのチャンスメイク(前半)

レヴァークーゼンのチャンスメイク(前半)

04m10T(10-14-7-44-8)zGrade4

06m20T(14)Grade4

40m50P(21-39-14-39-11-10-44M)Grade4

43m20P(44-39-7M)Grade4

 

トッテナムのチャンスメイク(前半)

09m40T(12-23-11-7offside)Grade4

17m50P(12-15-16-12-11-20-7)

20m30T(11-12-23-16)Grade4

23m50P(5-7-20-7M)Grade4

26m10P(3-9-23-12-16-11-23-12-16-20)Grade5

37m40P(3-20-7-9-20)Grade5

38m00P(16-9)Grade5

38m00P(9-11)Grade5

40m10FK-P(23-7)Grade4

41m50P(3-9)Grade4

45m50P(15-16)Grade4

 

トッテナムとしては前半のうちに先制しておきたかった。特に38分の3つの大チャンスできめきれないあたり今季のチャンピオンズリーグでは運がない状況ともいえる。

 

後半に向けた変更点

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Fig.5 カンプル(左)、バウムガルトリンガー(右)


ハーフタイムでチャルハノール⇔バウムガルトリンガーの変更を行った。この変更によって前半なんとなくチグハグだったレヴァークーゼンは復活する。まず、ボールにあまり絡むことができていなかったカンプルがSHに移ることでビルドアップではなくゲームメイクに絡めるようになる。そしてポジティブトランジションの際にはカウンターの基点として正しいプレーをすることができるため、すべての攻撃の質が上がった。(Fig.6)

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Fig.6 後半のレヴァークーゼンの形

 

後半45分間レヴァークーゼンが優位だった理由

レヴァークーゼンの攻撃がうまく嵌りだすようになると、トッテナムはロリスがボールに触れる機会が増えてくる。ゴールキックやロリスへのバックパスの際にレヴァークーゼンはプレスの強度を明らかに強めることでロリスのミスを誘発しようとする。(Fig.7)

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Fig.7 トッテナムゴールキック

 

Fig,7は前半のシーンだが、レヴァークーゼンはこのようにゴールキックの際にショートパスを蹴らせないような陣形を保つことでトッテナムに自由を与えなかった。

たしかに、ロリスは相変わらず飛び出しやビルドアップではかなり不安定なプレーをすることはあるが、それを補うほどのシュートストップ能力があり、今回の試合でもその能力にトッテナムは助けられていたという事実はもちろん忘れてはいけない。

 

エリクセン、デレアリのインサイドハーフコンビについて

たしかに、ロリスは相変わらず飛び出しやビルドアップではかなり不安定なプレーをすることはあるが、それを補うほどのシュートストップ能力があり、今回の試合でもその能力にトッテナムは助けられていたという事実はもちろん忘れてはいけない。

トッテナムポチェッティーノが監督に就任してからビルドアップにとても力を入れている。それはトッテナムのなかでもクリエイティブなプレーを得意とするデレアリ、エリクセンを最大限生かすためである。ただし守備という側面からみるとデレアリ、エリクセンのディフェンスは少々危ういことが多すぎた。もちろん攻撃時のメリットを考えればエリクセン、デレアリが共存できるこのシステムは魅力的だが、そのためにはビルドアップの精度をもっともっと上げる必要があるように感じた。

 

レヴァークーゼントッテナムのチャンスメイク(後半)

レヴァークーゼンのチャンスメイク(後半)

45m10P(1-21-1-39-7-14)Grade5

47m40P(8-14-8-7)Grade5

54m30FK-P(20-11)Grade4

56m10FK-P(20M)Grade4

56m50CK-P(44-11-44-20)Grade5

57m00P(20-15-7)Grade5

61m40P(15-11-14M)Grade4

67m00P(20-44-11)Grade5

67m30CK-P(44-21)Grade5

71m30CK-P(44-21)Grade4

77m40T(16-7-15-44)Grade4

83m40T(15-14-7-44-11)Grade5

86m50P(20-44-19)Grade4

90m30P(44-19-15-19-14-20-14-16)Grade4

 

トッテナムのチャンスメイク(後半)

77m30P(15-16)Grade4

81m00P(20-23)Grade4

 

レヴァークーゼンはGrade4以上のチャンスが前半4、後半14、トッテナムは前半11、後半2と、本当に前半と後半で対照的な試合となった。特にレヴァークーゼンは後半何度も大きなチャンスを作り続けたがロリスのビッグセーブまたは決定力不足でゴールを得ることはできなかった。

 

余談

レヴァークーゼンはここまでの3試合いずれも内容はこのグループの中では最もいいのに勝ち点が伸びきっていない。75分以降キースリンクが完全にスタミナが切れていたようにもう少しだけ試合全体のリズム調整ができればもっといいチームになりそうな気配はある。