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UCL16-17-E1-トッテナム.vs.モナコ

UCL16-17-E1-Tottenham.vs.Monaco

まずはスタメンから

白がトッテナム、黒がモナコ(Fig.1)

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Fig.1 トッテナムvsモナコ

 

トッテナムは4-2-3-1

K.ウォーカー、デレアリ、ダイアー、H.ケインにとっては苦い思い出となったEURO2016。ぽちぇっティーのが来てから特にビルドアップの精度が上がっており、圧倒的な個はないもののベイル、モドリッチがいた黄金時代に近づきつつある。

 

モナコは4-4-2

怪我からトップフォームに戻りきれていないファルカオ、新星B.シウバ、バカヨコや、モウチーニョやグリック、スバシッチといったEURO2016でも中心メンバーだった選手を擁している。

 

試合は1-2でモナコが勝利する。15分にB.シウバがカウンターでうまく独力で運びゴールまで決めてしまった。続く31分にもトッテナムの守備陣の少しのミスを突いてシディベのクロスからのこぼれ球をルマーが押し込んで2点目を決める。前半終了間際にラメラからのCKをアルデルヴァイレルドが決めて1点返すが、追いつくことはなかった。試合自体はトッテナムが終始ボールを持つ展開となったが、うまくビルドアップできた時間帯とそうでない時間帯が明白だった。内奥と結果を総括するとチャンスが少ないながらもしっかりと得点につなげたモナコとそうでないトッテナムという構図になってしまった。

 

ディラルの怪我

開始5分にトッテナムのCKを守っている最中にディラルがハムストリングを痛めてしまい、ルマーと交代した。これが幸か不幸かモナコに大きな影響を与えることとなった。

 

トッテナムのビルドアップ、モナコの守備(前半)


この試合の多くはトッテナムがボールを持つことになるため、トッテナムのビルドアップを見ていくことはこの試合を理解するうえで重要となる。(Fig.2)

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Fig.2 トッテナムのビルドアップ(前半)

トッテナムのビルドアップの基本

・ダイアーがCBの間もしくはCBの脇にポジションチェンジ

・SBはWGのようにプレー

・デレアリは割と自由にポジショニング

 

一方でモナコの守備の形は4-4-2

・B.シウバ、ファルカオの1列目はセンターサークル付近は死守するも基本リトリート

・ディラル、モウチーニョトッテナムのSBのポジションに釣られて1列目とのギャップが顕著

 

こんな感じでトッテナムは63分まではモナコのプレスをうまくかわしてハーフライン付近まで進んでいた。

 

トッテナムのゲームメイク、モナコの守備(前半)

トッテナムのゲームメイクはかなり縦への速さを意識しており、基本的にはアルデルヴァイレルドからのロングボールまたはFig.2の白のスペースへ楔のパスをだし、ワンタッチでエリアを攻略していく形だった。ラメラ、エリクセン、デレアリ、ソンフンミンはこの1列目と2列目の間のスペースを活用することでパスを引出し、チャンスはうまく作れていた。

 

トッテナムのビルドアップ、モナコの守備(後半)

一方で63分以降になるとモナコがうまく守備を変化させ、トッテナムに対応した。

まず後半になるとソンフンミンをM.デンベレに変更する。ソンフンミンがハーフタイムで変更されるほど出来が悪かったかというとそんなことはなかったと思うが、デレアリを前で使いたいという思いと、ソンフンミン、エリクセン、ラメラの3人のうち1人を外すとなればソンフンミンしかないだろうという感じだと思う。これによってフォーメーションは以下の形に変化した(Fig.3)

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Fig.3 後半の両チームのフォーメーション


この変化の意味は簡単で、M.デンベレとダイアーが柔軟にCBの間やSBの位置に入ることで、ゲームメイクの際にパスの出し手を増やすことや、ルマ、モウチーニョのマーク相手をずらすことが目的となっている。実際この交代は63分まで効果的だったといえる。(Fig.4,5)

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Fig.4 M.デンベレが3バックの1角になったシーン

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 Fig.5 アルデルヴァイレルドからのロングボールによるゲームメイク

 

いずれにしてもモナコの守備の基準点を破壊することトッテナムはゲームメイクを行いやすくし、これによって後半15分間はいいリズムを作れていた。

 

 

一方で63分を境目として、ルマーのマーク相手が変わる。今まではB.デイビスだったが、場合によってはビルドアップ時に疑似3バックの1角となるフェルトンゲン、M.デンベレをマークするようになる。これによって1列目のファルカオ、B.シウバはスライドの負担が軽減され、アルデルヴァイレルドのロングボールを制限できるようになる。つまりモナコは4-4-2を基本としながらも一瞬ルマーが前線に顔を出すことで4-3-3へと変化し、トッテナムのビルドアップに対応した。

この変化に伴いトッテナムはこの時間以降のチャンスは単発的なものになり、チャンスはカウンター性のものか最終ラインからのロングボールをうまくつなげた時にとどまってしまった。

 

トッテナムのチャンスメイク

07m40T(33-23-15-11-23-10-7)Grade5

13m50P(4-10-11-20)Grade5

16m30P(2-23-11)Grade4

18m50P(4-11-2-10)Grade4

28m10T(20-10)Grade4

44m40CK-P(11-2)Goal

47m20P(4-2-11-20)Grade5

 

47m10P(19-33-23-20-23)Grade4

47m40P(15-20M)Grade4

53m10P(4-2-10)Grade5

56m50P(33-23-33-23)Grade4

74m30P(33-9-10)Grade5

78m10P(2-9-10)Grade5


86m40T(19-23-9-17)Grade4

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Fig.6 H.ケイン(左)、アルデルヴァイレルド(右)

何度か決定機を迎えたH.ケインだったがこの試合はノーゴールだった。ストライカーであれば少なくとも1点は決めてほしかったところだった。一方で動き出しの質などは高く、後はフィニッシュの精度だけという感じだったので、シーズンの間には戻っていくだろうということが予想できる。

アルデルヴァイレルドはロングボールの精度が高く、セットピース時にも脅威となっており、トッテナムの中では一番目立っていた。

 

モナコのボール保持攻撃、トッテナムの守備

前述のようにモナコは前線でボールを取る機会があまりなかったため、自陣深くからが攻撃のスタート位置となる。GKはほぼロングボールを蹴ってしまうし、かといってモナコの最終ラインはつなげるようなタイプではなかった。トッテナムはそこまでプレスはかけないものの、監視対象を見失わなければ特にトッテナムに問題を与えるような動きはなかった。

 


モナコのカウンター

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Fig.7 バカヨコ(左)、ルマー(真ん中)、B.シウバ(右)

むしろ問題はカウンターだった。もちろんトッテナムがゲームメイクをうまく行っている間はうまい形でカウンターを行うことはできていなかったが、一旦ビルドアップを制限し、トッテナムのゲームメイクが見えるようになってくると守備面において対人能力の鬼のバカヨコ、攻撃面において快速のルマー、速さとテクニックを両立させたB.シウバが特に輝き始める。逆にファルカオはやっぱり怪我明け以降迫力が落ちてしまっているような感じだった。

 

モナコのチャンスメイク

14m40T(10)Goal

18m00T(9-10)Grade5

30m10P(19-10-19-27)Goal

35m00FK-P(8-25)Grade4

 

73m30P(27-10-27M)Grade4

77m40T(8-9-10-27)Grade4

79m50P(19-8-19)Grade4

82m50P(1-18-27)Grade4

 

とにかくチャンスメイクにおいてルマーの爆発的な加速力は脅威だった。この試合ではうまくボールを回収してカウンターにつなげる機会やボール保持攻撃の頻度が少なかったため披露する機会は限られていたが、とにかく危険な選手だった。

 

今回特に大きなチャンスにはつながっていないが、バカヨコは何度かそのストライドを生かしたぬるっとしたドリブルを披露していた。全盛期のディアビのようなプレーが今後効果的にチャンスメイクに生かされるようになればかなりモナコの攻撃の脅威性は増していく感じがする。

 

余談

トッテナムはうまく攻めてはいたもののデレアリの守備の緩みなど一瞬の隙が失点につながってしまっており、若いチームの特徴がでていた。一方でモナコはそこまで試合の出来はよくなかったと思うが、トッテナムのホームで勝てたという事実はグループステージ突破を考えるうえで非常に重要になってくるだろう。