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UCL16-17-D6-バイエルン.vs.アトレティコマドリード

UCL16-17-D6-Bayern.vs.AtleticoMadrid

まずはスタメンから
赤がバイエルン、黒がアトレティコマドリード(Fig.1)

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Fig.1 バイエルンvsアトレティコマドリード

 

バイエルンは4-2-3-1

遂にシステムを変更したバイエルン。今まではT.ミュラーをかならずSHに配置させていたため、左右非対称の形になることが多かった。またT.ミュラーが得点感覚を失っていること、撤退守備の強度などいくつかの問題点があった。そういったこともあってかフォーメーションは4-2-3-1へと変化させた。

 

アトレティコマドリードはいつもの4-4-2

ゴディン、ガビ、コケ、カラスコグリーズマンといった外せない選手はそのままだが、F.ルイス、ファンフラン、F.トーレスなど一部の選手の休養にあてた。なおアトレティコマドリードは今まで5戦連勝、バイエルンは3勝2敗のため、この試合負けても1位突破は確定している。

 

試合の概要

試合は1-0でバイエルンが勝利する。28分にベルナトが獲得したFKをレヴァンドフスキが直接決め、これが決勝点となった。この試合UCL2016-2017のバイエルンではほぼ初めて4-2-3-1を導入。変幻自在のビルドアップによってアトレティコマドリード10人を完璧に押し込んで終始試合を進められた。この試合に関してはバイエルンの完勝。

 

2節のおさらい

2節はアトレティコマドリードの完勝、6節ではバイエルンの完勝となり、なぜここまで内容に差が出てしまったかを確認していく。そのためには2節はどういった試合だったかを確認しなければならない。

2節でのバイエルンは4-3-3。この時のビルドアップはISHをSBの位置に落とし、SB、WGを利用した攻撃を行おうとした。一方のアトレティコマドリードバイエルンのISHがSBに落ちたタイミングでCHを前に上げ一時的に4-4-2→4-3-3へと変化し対応した。この守備はとてもうまくいき、アトレティコマドリードはボールを持たれつつも押し込まれなかったため、ボール保持攻撃、カウンターでバイエルンを圧倒出来た。

 過去記事貼り付け

バイエルンのビルドアップ-ゲームメイク、アトレティコマドリードの守備

この試合あまりにもアトレティコマドリードミドルサードでのバイエルンの進撃を止めることができなかったが、それはこの試合のバイエルンがあまりにも変幻自在になっていたからであろう。


バイエルンのビルドアップI

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Fig.2 バイエルンのビルドアップI

バイエルンはオーソドックに4-4-2のままビルドアップを行うこともあったが、この時のアトレティコマドリードのマーク相手、対応はしっかりしていた

カラスコグリーズマンはR.サンチェス、A.ビダルへのパスコースを防ぎつつCBを警戒

バイエルンのSBにボールが渡った段階でコケまたはガイタンがSBにプレス

・SBへのプレスに合わせて1列目の2人がハイプレスにシフト

アトレティコマドリードの守備は常に守備的で、Fig.2のような場面でも3人しかハイプレスに参加しない。試合の序盤はこのような形でバイエルンが前に進めない場面もあったが、この試合のバイエルンの強みはビルドアップが非常に多彩であったこと。


バイエルンのビルドアップII

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Fig.3 バイエルンのビルドアップII

これがこの試合のメインのビルドアップとなる。4-4-2に対して4-2-3-1のビルドアップはあまりうまくいかなかったので、A.ビダルをCB間に落としてアトレティコマドリードの1列目を混乱させようとする。この時のアトレティコマドリードの対応はただ下がるのみ。これはPSV戦でも見られたが、基本的にアトレティコマドリードはビルドアップ段階で数的同数をあまり作らない。一方でバイエルンは2vs3であれば安全にボールを回すことができるし、ビルドアップ問題はこれでほぼ解決していた。


バイエルンのビルドアップIII

 

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Fig.4 バイエルンのビルドアップIII

いつでもA.ビダルがCBをサポートできるわけではないが、そういった時にもアラバ、フンメルスはとてもよく対応していた。両CBが大きく開くことでドライブするエリアを確保し、CBがドライブする際にはA.ビダルがCBのエリアをカバーするという感じで、特にアラバはSBのようにタッチライン付近を何度もドライブしていた。


バイエルンのビルドアップIV

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Fig.5 バイエルンのビルドアップIV

このビルドアップ自体はあまり確認されなかったが、特に後半何度かはラフィーニャがCBの横をサポートする3バックのビルドアップもあった。基本はビルドアップIIと同じ役割なのでこういったビルドアップがあったということだけ紹介。

 

試合後のフンメルスのインタビューの中で、「今日は様々なシステムを切り替えながら戦っていた。ものすごくいい試合ではなかったかもしれないけど、でもいい試合だったし、試合の大半で主導権を握っていたと思う」kicker日本語版引用http://kicker.town/muenchen/2016/12/42821.htmlと語っているが、システムの切り替えとは間違いなくビルドアップの方法を指している。

 

バイエルンのゲームメイク、アトレティコマドリードの撤退守備

バイエルンはビルドアップをうまくコントロールしていたからこそ、ゲームメイクにもいい影響が出ていた。ハーフライン付近ではCBがフリーでボールを持つことができていたので、あとは従来通りサイドからゲームメイクを行い、崩せそうにない場合は戻すという動作をひたすら繰り返していた。


ここでポイントなのは、CB間に落ちていたA.ビダルはハーフラインを超えるといつのまにか元の4-4-2の位置に戻っていること。これによってアトレティコマドリードの1列目はバイエルンのバックパス時にプレスに行きづらくなってしまっていた。(Fig.6)

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Fig.6 アトレティコマドリードがプレスしづらい理由

Fig.6のようにプレスしてしまったら多分中央をバイエルンが蹂躙することになってしまうため、アトレティコマドリードの1列目は下がるしかない。ちなみに2節でもアトレティコマドリードが押し込まれることは当然あったが、それ以上にミドルサードバイエルンの進撃をよく妨害していたためここまで一方的に押し込まれるシーンは目立たなかった。

 

アトレティコマドリードのボール保持攻撃、バイエルンのハイプレス

攻守は一旦入れ替わって、アトレティコマドリード側の攻撃について。アトレティコマドリードが2節にボール保持攻撃をうまく行えた理由は、「ミドルサードでの守備が成功→ビルドアップをせずにゲームメイクに移ることができた」が大きいと思う。2節でもバイエルンが押し込んだ時のオブラク、ゴディン、サビッチのビルドアップのレベルは高いとは言えなかった。

 

ではこの試合は?といえば、バイエルンはほぼ完璧にビルドアップおよびゲームメイクを成功させてきた。したがってアトレティコマドリードの攻撃開始地点は自陣深い位置となってしまった。つまり、ビルドアップをあまり得意としていないアトレティコマドリードはロングボールを蹴ることがほとんどとなってしまった。ただし前線はカラスコグリーズマンなのでロングボールでボールを前進させることはほとんどできなくなる。

 

また、アトレティコマドリードが得意としているカウンターもそれほど披露する機会はなかった。やっぱり押し込まれている以上カウンターの成功確率は低くなるし、カラスコや途中出場のガメイロ、A.コレアは最終ラインの裏抜けを何度か試みていたもののアラバのスピードに完封されていた。正直この試合をみただけだと、アラバはスピード、ビルドアップ能力を兼ね備えていることから押し込んでいる時の最適CBのように思えた。ただしバイエルンのCBは他にフンメルス、J.マルティネス、J.ボアテングバトシュトゥバーがいること、LSBには基本ベルナトしかいないことを考えるとアラバのCBを見る機会はそれほどないのかもしれない。

 

両者の強み、弱み

バイエルンの強みは相手を押し込んだ状態でのハイプレス、ボール保持攻撃におけるロッベンレヴァンドフスキの個の優位性だが、逆に弱みは撤退守備、カウンター対策。

撤退守備の弱みを隠すためには相手を押し込みハーフコートでプレーしなければならない。少なくともこの試合ではそれができていたし、カウンター対策もほぼばっちりだった。

一方でアトレティコマドリードの強みはミドルサードからディフェンシブサードでの全員守備、前線の速いカウンター、逆に弱みはビルドアップ

ビルドアップを省略できた2節はいいサイクルで試合に臨めたが、この試合では全くと言っていいほど攻撃はうまくいかなかった。

 

バイエルンのチャンス

16m30P(23-27-6-11-18-6-11)Grade4

18m20P(23-6-35-11-35-11)Grade5

22m30P(5-13-16-9-23M)Grade4

27m40FK-P(9)Goal

 

47m10T(9)Grade4

53m40T(6-9-35-10)Grade5

54m40P(11M-11)Grade4

57m20P(18-6-18-10-9)Grade4

58m20P(23M-18)Grade5

58m40P(6-10)No penaly

60m30P(23-11-18-11-9)Grade4

64m40P(13-35-10-35-10-6)

71m50T(6-10)Grade4

72m20T(23-6-10-9)Grade5

76m40P(18-11-6)Grade5

 

Grade3以上のチャンスは30個、前後半15個ずつだったが、後半より質の高いチャンスメイクができていた。理由としては前半得点出来たバイエルンは前がかりにならざるを得ないアトレティコマドリードのスペースをカウンターでつくことができたからだろう。

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Fig.7 レヴァンドフスキ(左)、ロッベン(真ん中)、T.アルカンタラ(右)

レヴァンドフスキ

この試合唯一ゴールを決めたのがレヴァンドフスキで、直接FKは見事だった。しかしほかのプレーを見てみると特にカウンターのシーンなどいつものパワフルさはなく精度を欠いたパスも何度かあった。おそらくレヴァンドフスキがいつもの調子であれば追加点が入っていたと思う。

 

ロッベン

相変わらずロッベンのスピードは素晴らしかった。特にカウンター時にフリーで前を向ければほぼ確実にチャンスメイクしてしまうほど圧倒的だった。サビッチはかなりうまく対応していたが、それでも後手後手になるシーンも多かった。惜しむらくはペナルティエリアで簡単に倒れすぎてしまいPKを得られなかったことぐらいで攻撃において最高級の駒となっていた。

 

T.アルカンタラ

4-2-3-1において、トップ下をT.ミュラーにするかT.アルカンタラにするかという問題があったが、バイエルンにおけるトップ下の役割はビルドアップを時としてサポートすること、中盤でパスやターンなどを駆使して違いをもたらすことが求められる。いずれの役割についても今日のT.アルカンタラの出来を見ればT.ミュラーより優れているのは明白だった。もちろんかなり高いレベルの争いであることには変わりないが、T.ミュラーがT.アルカンタラのポジションを奪うためにはもともと最大の武器だった得点への嗅覚を取り戻すしかなさそうだった。

 

アトレティコマドリードのチャンスメイク

アトレティコマドリードのチャンス

08m50P(8-6-7-10)Grade5

14m40P(23-7-6-19-10)Grade5

 

73m10P(11-21-11)Grade4

Grade3以上のチャンスは12個のみ。そのうち決定的だったのは前半2個のみ。ここでカラスコが決めきれていれば試合は全く違うものになっていただろう。それでも5個以内のチャンスを決めきるのはとても難しく、守備で押し込まれてしまったことがすべてだった。

 

余談

これでアトレティコマドリード勝ち点15、バイエルン勝ち点12でグループリーグ突破となった。この試合は順位づけにおいては全く意味がない試合だったが、バイエルンの意地を見ることができたいい試合だった。