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UCL16-17-D5-ロストフ.vs.バイエルン

UCL16-17-D5-Rostov.vs.Bayern

まずはスタメンから

青がロストフ、赤がバイエルン(Fig.1)

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Fig.1 ロストフvsバイエルン

バイエルンは4-3-3

ノイアー、J.マルティネス、A.ビダルロッベン、コマンを負傷欠場で失い、X.アロンソ、キミッヒを休養させているため、GKウルライヒ、CBバトシュトゥバーは今期のUCL初出場。R.サンチェスは途中出場が多いがここまでいいプレーを見せていないこともあって、この試合でアピールしないとかなりやばい状況

ロストフはいつもの5-3-2

けが人なしのためメンバーは相変わらず変更なし。堅守5-3-2と得点力を両立できるかがこのチームの最大の課題

 

試合の概要

試合はロストフが3-2で勝利する。34分にR.サンチェスの素晴らしい突破からのこぼれ球をD.コスタがうまくコントロールしてバイエルンが先制するが、43分にカウンターからアズモンが同点にすると53分にはノボアがペナルティエリア内で倒されてPKをポロズが沈める。その直後51分に左サイドからのコンビネーションでベルナトが決めて再び同点にするが、66分にノボアが直接FKを完璧にコントロールし、最終スコアを3-2とした。ロストフの5-3-2の練度はとても高かったが、後半運動量が落ちる時間帯でも「バイエルンに勝てる」という強い士気のもと守り続けた。バイエルンの被カウンター問題はまたも解決されないままとなった。

 

ロストフの前線守備、バイエルンのビルドアップ

ロストフの守備の強みはなんといっても1列目の運動量、2列目、3列目の連係だろう。一方でロストフの攻撃はロングボールからアズモン、ポロズの個人能力に頼るパターンが非常に多いため、攻撃時間が非常に短くディフェンスラインを上げ切れないという問題がある。

 

そういった問題はこの試合でも内包していたものの、ディフェンスラインを上げることができた時のロストフはしっかりと前線から守備を行っていた。(Fig.2)


バイエルンゴールキック

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Fig.2 バイエルンゴールキック時のロストフの前線守備I

初期配置は以下の通り

・ポロズ、アズモンがJ.ボアテングバトシュトゥバーをマーク

・ノボア、エロヒンがラーム、R.サンチェスをマーク

・ガツカンがT.アルカンタラをマーク

この時ラフィーニャ、ベルナトに出せるかがGKウルライヒの1つの仕事となる。

(そもそもバイエルンゴールキックになる回数はそれほど多くなかったので、試合全体に大きな影響を与えたわけではないが)

結論から言うとウルライヒノイアーほどうまくビルドアップに関与できていなかった。


基本的にウルライヒはJ.ボアテングまたはバトシュトゥバーに預けることが多かったわけだが、そうなった時はロストフもマーク相手を以下のように動かす。(Fig.3)

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Fig.3 バイエルンゴールキック時のロストフの前線守備II

J.ボアテングにボールが渡った場合

・ノボアはラフィーニャにマークチェンジ

・ポロズはラームへのパスコースをふさぎながらJ.ボアテングにプレス

・アズモンはウルライヒ、T.アルカンタラを監視

・ガツカンはT.アルカンタラを監視しつつ、ラームのポジショニングを警戒

このようにハーフライン付近での守備を前線でも行うことでバイエルンが前進しにくい状況をつくっていた。もちろんEURO2016イタリアのように相手にロングボールを蹴らせて回収したボールでショートカウンターという形は最も理想的だ。しかしバイエルンはこういった前線からのプレスを回避する術を持っていること、そもそもバイエルンゴールキック回数が少ないことが要因で、ロストフはカウンターまで発展させることはできなかった。

 

ロストフの中盤守備、バイエルンのゲームメイク

いわゆるハーフライン付近のエリアでの攻防が最も激しかったこの試合。まずはバイエルンのゲームメ
イク方法を見ていく。(Fig.4,5)

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Fig.4 ラフィーニャ側でのビルドアップ

ラフィーニャ側でのビルドアップはスタメン表通りに動くためそれほど難しい動きはない

・D.コスタがサイドに張り、ラフィーニャはSB、ラームはISHの位置からゲームメイクを開始

一方でロストフの守備は今までと同様に、


・ノボア→ラフィーニャ、クトリャショフ→D.コスタ、ガツカン→ラーム、アズモン→T.アルカンタラというように選手をコンパクトにまとめることでバイエルンのゲームメイクを妨害した。

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Fig.5 ベルナト側でのビルドアップ

こちらのビルドアップはバイエルンアトレティコマドリード相手に行ったゲームメイクと同じ

・ISHのR.サンチェスをSBの位置に下げ

・ベルナトをオーバーラップ、内側にリベリーがポジショニング

単純にリベリーはより内側でのプレーを好むからということだろう。

相手のポジショニングが変化してもゾーンディフェンスなのでそこまで迷うこともないロストフはしっかりとマーク相手を見失わずにいた。

 

バイエルンのチャンスメイク

バイエルンのチャンス

18m10P(6-13-11-9-11-35M)Grade4

20m40T(35-9)Grade4

21m20CK-T(11-28)Grade5

23m50P(28-7-35M)Grade4

25m20P(28-13-21)Grade4

31m30P(17-13-11M)Grade4

34m40P(18-7-35-11)Goal

 

46m10P(35-7-21)Grade5

51m30T(11-9-7-35-7-18)Goal

74m20P(21-11-21)Grade4

74m40P(6-25-13-11-13-11)Grade4

77m00P(6-18-7-18-25)Grade5

79m10P(6-13-21-25)Grade5

83m20P(28-5-13-25)Grade4

85m10P(28-7)Grade4

89m00P(11-28-7-6M)Grade5

89m40P(6-11-13)Grade4

90m00P(7-9-25-7)Grade5

 

こういった守備に対して非常に苦労していたバイエルンだったが、ボール保持攻撃時のノウハウはかなりあり、T.アルカンタラ、ラーム、J.ボアテングのようなサイドチェンジも楽々こなせますよという選手がいるため、時間は1節に比べてかかるものの押し込むシーンは当然あった。

 
しかし1節の時のように1列目と2列目をD.コスタ、キミッヒで中央に切り裂いていくプレーは皆無であったため、サイドからのクロス爆撃またはブロック外からのミドルシュートが主な攻撃となる。(Fig.6)

f:id:come_on_UTD:20170611163741p:plainFig.6 バイエルンのクロス

このうちラフィーニャが0/6、D.コスタが3/15、ベルナトが1/4、リベリーが1/4と右サイドからのクロス攻撃に偏っていたことがわかる。ロッベンが負傷したこと、ラームが右SBでなくなったことでサイドの攻撃の質は一気に低下した。D.コスタは中央に切れ込むようなプレーは何度か見られたが、結局ブロック外からのミドルシュートで終わってしまっていたし、リベリーに関しては前半はインサイドレーン、後半はアウトサイドレーンを主戦場にプレーするがいずれも全盛期のクオリティを見せることができていなかった。またラフィーニャのクロス精度はラームに比べて低くここも問題だった。

 

R.サンチェスの個人技

一方で前半ポジティブだった点の1つにR.サンチェスの個人技が挙げられる。18分のチャンスを除いて、20分、23分、そして得点シーンだった34分のチャンスシーンではいずれも個人技を見せていた。

それぞれミドルシュート、ロングパス、1vs1の強引なドリブル突破と種類はちがうものの19歳とは思えないパワフルなプレーを見せていた。ただし依然としてボールを持ちすぎる傾向にあり、その部分が改善されれば間違いなく2,3年でワールドクラスになることは間違いない。多分R.サンチェスがいなければバイエルンは前半得点できなかっただろうというくらい個人技が光っていた。

 

70分前後からのバイエルンのチャンスメイク

66分にノボアに直接FKを決められて3-2と逆転されてからのバイエルンは、被カウンターを気にせず攻撃特化のチームになった。72分にこの試合唯一の交代だったR.サンチェスをT.ミュラーに変更し4-4-2とした。実際のところリベリーをT.ミュラーに変更し、R.サンチェスをLSHにしてもいいのでは?と思ったが、アンチェロッティはそうしなかった。

 

T.ミュラーの憂鬱

この時間帯になるとロストフの守備も疲労が隠せなくなって後手後手になるシーンが増えていた。実際74分から多くのチャンスが生まれていることはこの事実と無関係ではないと思う。その中でもT.ミュラーには少なくとも2回ビッグチャンスが到来したが決めきれなかった。

 

ロストフの執念

またロストフの守備陣1人1人がこの疲労がたまる苦しい時間帯にも非常に集中していたのも大きかった。本来この時間帯になると運動量が落ちるのは仕方ないが、危険なシーンで体を投げ出すシーンが今までの負けている試合に比べて圧倒的に多く、そういった細かい部分が失点を防いだ要因にもなっていたと思う。

 

ロストフのチャンスメイク

ロストフのチャンス

08m00P(44-89)Grade5

28m50FK-P(2-44)Grade4

33m20P(84-20)Grade5

43m10T(7-20)Goal

 

47m20P(84-89-7-16)Penalty

48m50PK(7)Goal

53m30P(84-20-84-2-20)Grade5

 

 

ロストフがボール保持攻撃をするシーンは非常に希少で、試合を通しても2,3回程度だと思う。そのなかでも面白いシーンが1つあった。(Fig.7)

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Fig.7 ロストフのボール保持攻撃

8分のロストフのボール保持攻撃についてだが、この瞬間のみISHのノボアとエロヒンが前にでて3-3-4に変化している。まさにこれはEURO2016イタリア式ボール保持攻撃で、CBのロングボールから前線の4人が裏抜けを狙う形。この時はエロヒンの素晴らしい抜け出しが大チャンスとなった。

 

33分の大チャンスもガツカンからバトシュトゥバーの裏を狙ってアズモンが抜け出す形。この日のアズモンはトップフォームだったと思う、J.ボアテングバトシュトゥバーをスピードで完全に圧倒していた。

43分にはついにポロズとアズモンがショートカウンターを成功させて同点に追いつくことになるが、ショートカウンターになったきっかけはD.コスタのパスミスから。PSVに比べて運動量の高い守備をしているロストフの守備が実った瞬間でもあった。

47分もバトシュトゥバーの裏にポロズが抜け出し、J.ボアテングのクリアミスからノボアがエリア内でうまくプレーしPKを誘発。

63分にはまたしてもバトシュトゥバーの裏をアズモンが抜け出し、ポロズがペナルティエリア前でファールを受ける。このFKをノボアが沈めて3点目。

 

バトシュトゥバーが完全に裏抜けに対応できていなかった。ただしバイエルンのSBも被カウンター時には前線にいることが多く、ディフェンスエリアが非常に広大だったため少しかわいそうな状況ではあった。 

 

余談

5試合終わって勝ち点9となったバイエルンはグループリーグ突破を4節で確定させたものの2位で突破が5節で確定してしまった。撤退守備、被カウンター対策など特に守備に問題を抱えているバイエルンだが解決に向かうのだろうか。