UCL16-17-D3-ロストフ.vs.アトレティコマドリード
UCL16-17-D3-Rostov.vs.AtleticoMadrid
まずはスタメンから
ロストフはいつもの5-3-2
WBのスタメンだったカラチェフとテレンティエフは怪我のためお休み。したがってクトリャショフとキレーフがWBとなっている。それ以外の変更に関して、フォーメーション上はなかった。
グリーズマン、F.トーレス、カラスコのポジションは固まりつつあるものの、もう1人の選手は決まっていない。それ以外のポジションはほぼ埋まっているのが現状。
試合の概要
試合はアトレティコマドリードが0-1で勝利する。60分に、ファンフランのクロスを大外のカラスコがうまく合わせてこれが決勝点となった。試合全体としてはロストフの5-3-2はバイエルン戦以上によく機能していた。ただしロストフのカウンターの危険性をほぼ的確に積んでおり、ファンフラン、F.ルイスの攻撃性能が高く守りきれない場面も多かったため、結果はよく内容を表していたと思う。
ロストフのボール保持攻撃
順番は前後してしまうが、ロストフのボール保持攻撃の大半は自陣深くから開始することが多かった。この時ショートパスとランでつなぐようなロングカウンターをロストフはもっていないので、前線、特にアズモンをターゲットにロングボールを蹴ることになる。ただしこの攻撃に精度は皆無だった。(Fig.2)
Fig.2 ロストフのエアバトル
青で囲った部分がロストフが多くロングボールを供給したエリアだが、ほとんどうまくいっていない。というかそもそもアズモンはポスト能力があるタイプではないので、ゴディンやサビッチとエアバトルするのは勝ち目が薄いのは明白ともいえる。
ロストフのチャンスメイク
ロストフのチャンス
17m50P(16-7-20M)Grade4
85m40P(30-16M)Grade4
89m10(10-89-10)
正直いってこの試合のロストフの攻撃において話せる部分は少ない。まずアトレティコマドリードは被カウンターを嫌っており、アトレティコマドリードのボール保持攻撃時もゴディンとサビッチは常にアズモンとポロズを逃さなかった。そしてロングボールも前述のように完璧に対応していたので、ロストフはチャンスというチャンスをほとんどつくれなかった。
ロストフはバイエルン戦ほとんどの時間帯を引きこもって過ごしていた。しかしアトレティコマドリード戦では一定の条件が整えば前線から少しアトレティコマドリードのビルドアップを妨害するような動きが見られた。
一定の条件とは
・ロストフのフィールドプレーヤー10人がコンパクトにまとまりつつ全体のポジションが中盤まで押しあがっている時
・アトレティコマドリードがボールを奪取した瞬間でポゼッション、ポジションが不安定な時
この2つが満たされるときには前から守備を行った。
具体的には以下のような形である。(Fig.3)
Fig.3 ロストフの前線守備
この形はEURO2016のイタリアの前線プレスにそっくりである。具体的にはWBのキレーフ、クトリャショフがSBを監視するために前線へ、エロヒン、ノボアはコケ、ガビを監視するという形である。
しかし5-3-2⇔4-2-4に可変することで、相手にビルドアップをさせないような形となっている分、最終ラインはロングボールを必ず跳ね返せるような選手でなければいけない。
結論から言うとアトレティコマドリードはこのプレスに少し苦戦していたが、ロングボールを前線に蹴った時に高い確率でF.トーレスがマイボールにしてくれていたため、アトレティコが全くボールを進めないという状況にはならなかった。またロストフの攻撃パートでも書いたように、ロストフはアトレティコマドリードを押し込むことができなかったので、前線プレスの回数自体もそれほど稼げなかった。
ロストフの中盤守備、アトレティコマドリードのゲームメイク
おそらくこの光景がこの試合でもっとも目にすることが多かっただろう。アトレティコマドリードがハーフラインを超えるとロストフはバイエルン戦でも行っていた5-3-2になり、撤退する。(Fig.4)
Fig.4 ロストフの中盤守備
ロストフの守備の約束事は以下のようである
・1列目の2人はCHを守りつつ、中央のゾーンを死守
・2列目の3人はボールの動きに合わせて全体がスライド、特にSBがボールを持った時にはISHが前に出ることで5-2-3となり対応。
SBの位置の選手がゲームメイクすることが流行っているが、これへの対応もEURO2016のイタリアとそっくりだった。バイエルンはこの守備に対してあまり苦労していなかった。それは以下のようなことが大きな要因であると思う
・D.コスタのようにアウトサイドをスピードで突破できる選手の存在
・CBがゲームメイクの中心になれる
・SBが大きくオーバーラップする
この守備は中央への突破に厚い。しかし一旦中央に切り込まれると左右のポジションチェンジが間に合わず後手後手になってしまう。実際D.コスタやキミッヒの中央への突破+サイドチェンジはかなり効果的なゲームメイクだった。
もう1つの弱点はSBが大きくオーバーラップして来た場合、WBの選手が最終ラインにピン止めされてしまうことである。これを可能にしているのはバイエルンのCBがゲームメイクに参加できるからである。
一方でアトレティコマドリードは?
アトレティコマドリードはゲームメイクにCBはほとんど参加しない。そのためゲームメイクはガビコケ、ファンフラン、F.ルイスの4人となる。この時ポロズ、アズモンはガビ、コケをマーク、ノボアはファンフラン、エロヒンはF.ルイスをマークすることでゲームメイク時にも完璧に噛み合わせてきたロストフの守備(Fig.5)
Fig.5 ロストフの中盤守備
正直これをされるとアトレティコマドリードとしてもかなり困る。コケ、ガビを経由しにくい以上この形からいいゲームメイクをする場合にはF.ルイスやファンフランがドリブルやサイドでのコンビネーションをうまく使っていかなければいけない。またはガビやコケをSBの位置にポジションチェンジさせることでガビやコケをマークから解放しているシーンも多々見られた。(Fig.6)
Fig.6 コケをSBのポジションにポジションチェンジ
確かにこの守備に苦戦はしていたが、今期の強みはコケがCHにいること。ワンタッチで正確にかつ長短のパスを出せる選手が中央にいるとボール保持攻撃は一気に活性化する。(Fig.7)
Fig.7 コケ、ガビのパス挙動
かなり中長距離のサイドチェンジを何度も繰り返していることがわかる。そして成功率が恐ろしく高く、ロストフの5-3-2を左右に揺さぶることで最終的にサイドから崩すシーンが多かった。
ロストフの可変守備について
ロストフは4-2-4と5-3-2を使い分けることでアトレティコマドリードの攻撃に対応していたわけだが、時間がたつにつれてこの変換が曖昧になってしまうこと増えていた(Fig.8)
Fig.8 ロストフの守備の変換ミス
本来この場面ではキレーフは最終ラインで守備をしなければならないが、前に出てきてしまっている。この時最終ラインとアトレティコマドリードのアタッカーの枚数は4vs4になっている。こういう状況はロストフにとっては避けたいことだったと思うが連係不足感はあった。
1m10FK-P(6M)Grade4
1m20P(6M-11)Grade5
8m30P(13-9-7-9NoPenalty)Grade4
9m50P(6-20-14-9-7-10)Grade5
10m40P(6-3)Grade4
23m00P(6-7-6-11-20-10-3)Grade5
26m10P(14-20-9)Grade4
37m30P(6-14-20)Grade4
39m40P(20-7-11)Grade4
58m20P(6-20-9)Grade5
60m40P(6-9-20-7-15-7-20-10)Goal
71m30P(13-9-7-9)Grade4
80m50P(6-14-7-6-7-9)Grade4
82m30T(7-10-7)Grade5
83m10CK-P(10)Grade4
84m10T(6-9)Grade4
アトレティコマドリードはカウンターに最大の強みを持っているが、この試合ではF.トーレスへのロングボールもかなり有効打になっていた。EURO2016のイタリアのカーボンコピーだったが、守備時にはボヌッチ、キエッリーニ、バルザーリのような対人守備能力はなく、攻撃時にはボヌッチのロングボール、キエッリーニのビルドアップ能力、ジャッケリーニの飛び出し能力、ペッレのポスト能力を持つ選手はいなかった。かろうじてノボアの縦パス能力位だろう。
前述したようにコケ、ガビのパス能力は素晴らしかったし、相変わらずF.ルイスのドリブル、ファンフランのクロス精度は高く、相手が撤退した時にも対応していた。ただしこれは両チームの個人能力に大きな差があるために成り立っている話だと思う。もしアトレティコマドリードが今後アッレグリのユヴェントスやコンテのチェルシーと当ることがあればアトレティコマドリードはかなり苦戦すると思う。
ぜひ2017-2018UCLではこのカードが見てみたい。
余談
バイエルンのように少しのリスクを犯して攻撃の精度をあげるか、アトレティコマドリードのように無失点を最大のプライオリティーを置くべきが正解なのかはわからないが、アトレティコマドリードはどんな相手、戦術に対してもかなり柔軟に対応できるようになっている。