サッカーを視る

主にCLやビッグマッチについて。リーグ戦はEPLが中心

UCL16-17-C6-バルセロナ.vs.ボルシアMG

UCL16-17-C6-Barcelona.vs.BorussiaMG

まずはスタメンから

青がバルセロナ、白がボルシアメンヘングランドバッハ(Fig.1)

f:id:come_on_UTD:20170506171230p:plain

Fig.1 バルセロナvsボルシアMG

 

バルセロナはいつもの4-3-3

5節終了時点で1位突破が確定したため、この試合ではスタメンの多くを変更した。GKのシレッセン、SBのA.ビダル、インテリオールのD.スアレスは今期のUCL初出場。負傷明けのイニエスタ、出場時間が短いP.アルカセル、A.トゥランがスタメンとなっている。A.ゴメスが中盤の底でプレーするのも1節のセルティック戦の後半以来(あくまでUCLの中での話)となる。

 

ボルシアMGは5-4-1

正直5節終了時点で3位確定のボルシアMGにとって、この試合へのモチベーションはあったのだろうか?3バックではなく5バックという部分は1節にボコボコにされたセルティックを思い出させてしまう。メンバーはF.ジョンソンやラファエウといった選手は外しているものの多くは中心メンバーとなっている。

 

試合の概要

試合は4-0でバルセロナが勝利する。15分にA.トゥランからいつものようにL.メッシが決めて先制すると、後半には49分、52分、66分にそれぞれD.スアレス、A.ビダル、アルカセルが右サイドからクロスをあげてA.トゥランがハットトリックを達成する。ボルシアMGには持ち前の運動量はなく、モチベーションもほとんどなかったため、ほとんどの時間を押し込んでカウンターもさせなかったバルセロナの完勝と言って差し支えないだろう。

 

試合に入る前にこのグループの状況を確認する。

5節終了時点でバルセロナは勝ち点12、マンチェスターシティは8、ボルシアMGは5、セルティックは2。ちなみに順位決定条件は勝ち点に準拠するが、勝ち点が同じ場合は該当チーム同士の対戦結果に依存する。マンチェスターシティはボルシアMGに勝ち越しており、ボルシアMGセルティックに勝ち越している。したがってグループCの6節の結果は最終的な順位に影響を与えない。これはグループC全てのチームにとってモチベーション低下になる要因だった。

 

バルセロナのビルドアップ、ボルシアMGの守備


2節のようにボルシアMGはハーフラインで守備をすることもなく、徹底的な撤退守備を行った。1列目のA.ハーン、2列目のT.アザール、シュルツ、シュトローブル、M.ダフドは守備時にいつものような運動量はなかったため、バルセロナは何の問題もなく前に進むことができた。(Fig.2)

f:id:come_on_UTD:20170506171241p:plain

Fig.2 ボルシアMGのやる気のない前線の守備

 

試合前のプランがどうだったかは定かではないが、少なくとも中盤の4人やA.ハーンはもう少し前線から守備をしなければいけなかったと思う。

 

バルセロナのサイドからのゲームメイク、ボルシアMGの撤退守備

ボルシアMGが中央に非常に人数をかけて引きこもってしまっていたので、バルセロナはサイドから崩していくしかない。特にバルセロナはA.ビダル側から勝負していくことになるが、これにはいくつかの理由があったと思う。


まずボルシアMGの撤退守備の約束事をみていく。(Fig.3)

f:id:come_on_UTD:20170506171254p:plain

Fig.3 バルセロナのゲームメイク

A.ハーンがA.ゴメスを監視するシュトローブル、M.ダフドは中央のエリアで受けようとするイニエスタやD.スアレスに対しては積極的に監視することでボルシアMGは中央を固めた。そのため、バルセロナはSB、インテリオール、ウイングの3人を使ってサイドから崩すことを目指すことになる。ちなみにマスチェラーノやウムティティは対角へのロングボールなどは積極的に行わなかったため、基本ボールサイドのショートパスで崩そうとするシーンが目立った。

 

一方で、ボルシアMGバルセロナのSBに対する対応は左右で少し異なっていた。


右サイドのA.ビダルのオーバーラップに対してはシュルツが徹底的にマンマークすることで対応していた。すなわち、A.ビダルがオーバーラップしてくると6バックの形のようになることが多かった。(Fig.4)

f:id:come_on_UTD:20170506171313p:plain

Fig.4 ボルシアMGの6バック

 


一方でディーニェがオーバーラップした時

f:id:come_on_UTD:20170506171349p:plain

Fig.5 ボルシアMGの6バック

 

このようにコルブがディーニェをマークしていた。おそらく2列目のRSHがT.アザールであったことが大きな理由だと思う。ボルシアMGにモチベーションがなかったとはいえ、勝つチャンスがあるとしたら押し込まれた状態でボール奪取しロングカウンターを成功させるしかない。その場合、T.アザールをロングカウンターのアタッカーの中心にするのが一番適切だろう。こういう理由もあってか左右のサイド攻撃に対する守備の方法に差異があったものと思われる。

 

バルセロナのチャンスメイク

03m20P(8-19-7-19)Grade4

07m50P(6-22)Grade4

12m30P(10-7)Grade5

15m00P(10-21-10-7-10)Goal

17m50P(7-10)Grade5

21m30P(22-6-22)Grade4

24m30P(21-8-10-8M)Grade4

26m30P(8-7M)Grade4

35m20P(21-10)Grade4

36m10P(23-8-7)Grade4

42m00P(21-22-6-22-10)Grade5

 

48m10T(14-6-17)Grade4

49m10P(14-6-22-6-7)Goal

52m40P(10-22-7)Goal

57m00P(8-10-8-17)Grade5

57m40T(10)Grade4

66m00P(19-17-10-17-12-17-7)Grade5

72m20P(14-21-6-7-19-10)Grade5

84m40P(29-6)Grade4

 

総合的にGrade4以上のチャンスは19個(前半11個、後半8個)、ただし、前半のGrade3以上のチャンスは24個、後半は11個とチャンスの密度に大きな差があった。これはハーフタイムを境にボルシアMGの中盤が少し運動量を高めて守備を始めたからである。(Fig.6)

これによってバルセロナのゲームメイクは前半ほどスムーズではなかったもののチャンスメイク時には前半よりもスペースを確保できていた。

 

バルセロナのチャンスメイクは前半後半いずれも大きく分けて2つの手法で行われた。

・L.メッシを使った中央突破

・サイドを攻略してクロス攻撃

 

L.メッシを使った中央突破

バルセロナの中で一番崩しがうまいのは言うまでもなくL.メッシだ。それもサイドから1vs1を仕掛けるわけではなく中央に相手が密集しているエリアを切り裂けるだけのクオリティをもっている。それだけではなくFig.5のようにシュルツがA.ビダルのオーバーラップに引っ張られるため、L.メッシは比較的中盤でフリーな状態でボールを持つことができたことが大きな要因だろう。文章だけではわからないと思うが、L.メッシの質は異次元なのでこの試合のL.メッシの好プレー動画をみていく。

動画編集

12m30,15m00,17m50,18m40,22m20,24m30,25m40,28m00,35m30,43m30

とにかくほかの選手とはレベルが違う。ただし、CFとしてプレーしていたアルカセルは本来のスタメンであるL.スアレスよりも著しくプレーレベルが低く、何度もチャンスを失ってしまった。前半バルセロナは1点しか得点できなかったが、ここら辺がネックになってしまったと思う。

 

サイドを攻略したクロス攻撃

バルセロナは主にA.ビダルを使ってサイド攻撃を行った。理由はシュルツの守備能力にあった。シュルツの役割はA.ビダルの侵入を防ぐだけだったはずだが、本当に何度も何度も突破を許してしまっていた。

せっかく人数をかけて守備を行っているにもかかわらず、最終ラインがこんなにも簡単にマークを外してしまっていたことはかなりの問題だった。ちなみにシュルツは58分までに4回マークを外してしまい、そのうち1回は失点シーンにつながっている。

 

7m50, 21m30,42m10,49m10

 

ボルシアMGの攻撃、チャンスメイク

バルセロナはトータルでボールポゼッションが73%、ポジションも72%と完璧に押し込むことができていた。こういったデータになるためにはボルシアMGがボール奪取した時にバルセロナがうまくハイプレスを成功させ、相手の攻撃の芽を摘んでいたということでもある。

 

インターセプトとタックル

特にタックルの場所はA.ビダル側に偏っていることがわかると思う。これはA.ビダル側からバルセロナは多くの攻撃を仕掛けたことに起因している。(Fig.7,8)

f:id:come_on_UTD:20170506171501p:plain


Fig.7 バルセロナのタックル

 

f:id:come_on_UTD:20170506171507p:plain

Fig.8 バルセロナインターセプト

また、個人でいえばマスチェラーノはボールリカバリーが9、タックルが4/5、インターセプトが4とスタッツが素晴らしいだけでなく、ハーフラインよりも前で守備していたということがとても印象的だった。(Fig.9)

f:id:come_on_UTD:20170506171520p:plain

Fig.9 マスチェラーノのスタッツ

 

こんな感じで試合を通してボルシアMGは押し込められてしまい、カウンターの芽もつぶされ、チャンスをほとんど作ることはできていなかった。

 

シューベルト監督の解任

f:id:come_on_UTD:20170506172200p:plain

Fig.10 シューベルト監督(左)、ヘッキング監督(右)

 

2016年12月21日にシューベルト監督は解任されるが、この試合の2週間後である。

この試合の後のコメントでは「我々の方はあまりに相手をリスペクトしすぎていたし、十分に意欲的にプレーすることができていなかったよ。うまく組織化しなくてはならなかったし、あんなにも受け身になってはいけないよ。もっと対人戦に積極的に望んで相手の嫌がるプレーをしなくてはならなかったのだが、深く構えすぎて、そこから打開することもできなかった」

 

まあこの試合はボルシアMGにとってあまり価値のない試合だったことは確かだが、モチベーションのコントロールができなくなってきていたシューベルト監督が解任されたのは仕方なかったのかもしれない。ちなみに後任はウォルフスブルクの一時代を築いたヘッキング監督。

 

余談

この試合はボルシアMGのモチベーションがなかったに尽きると思う。そのせいであまりバルセロナの控えメンバーの実力を測ることもできなかった。A.ビダルの裏抜け能力が高いというよりシュルツの守備能力の方が明らかに問題だったし、A.ゴメスのピボーテとしてプレス回避能力があるかは確認できなかった。当然GKのシレッセンもビルドアップ能力などあまり力を試せなかった。