UCL16-17-C5-セルティック.vs.バルセロナ
UCL16-17-C5-Celtic.vs.Barcelona
まずはスタメンから
セルティックは4-1-4-1を選択した
K.トゥーレとティアニーが怪我のため、ジムノビッチとイサギレが代役として抜擢されている。前回の試合では5-4-1のどん引きシステムでボコボコにされてしまったが、この試合ではどうだろう。
バルセロナはいつもの4-3-3
J.ピケとJ.アルバは負傷から回復したがウムティティが怪我のためマスチェラーノがLCBにはいっている。引き続きイニエスタは怪我のためA.ゴメスがインテリオールとなっている。
試合の概要
試合は0-2でバルセロナが勝利する。24分にはネイマールの浮き球を完璧な動き出しとフィニッシュでL.メッシが決め、そのご55分にはL.スアレスが狡猾にPKを誘い、L.メッシがPKを沈め最終スコアを0-2とした。1節とは違いバスを停めることはなかったセルティックは特にL.メッシの裏のスペースをついたりと効果的な攻撃もあったが、選手の質の差が結果に響いた感じでこれ以上はどうしようもない感じがあった。
マンチェスターシティのバルセロナ対策が成功した理由は、どんなときでも最終ラインにプレッシャーをかけることでビルドアップまたはゲームメイクを妨害できたことが大きかった。
セルティックもゴールキックや押し込んだあとのボールリカバリー時などかなり限定的ではあるが、マンチェスターシティのハイプレスを模倣したような形になることが多かった。
(Fig.2)
Fig.2 セルティックのハイプレス
セルティックのハイプレスの特徴はほぼマンチェスターシティと同じく、アームストロングまたはロギッチとM.デンベレがCBにプレスし、残りのインテリオールがブスケッツを監視する。ボールサイドの逆側のSHは内側に絞り、ボールサイドの選手はSBへのプレスとSHの監視を行う。
ただし、マンチェスターシティとの決定的な違いはハイプレスの頻度と強度だった。
セルティックのハイプレスはぼんやりとマーク相手が決まっているのだが、マンチェスターシティのようなシステマチックな部分はあまりなく、どこかフリーになってしまうことも多かった。そのためハイプレスを躱される場面も多く、ディティールまでこだわった守備とは言い難かった。
また、シティは押し込まれたとしてもバックパスでバルセロナの最終ラインまでボールが戻れば、マンチェスターシティの最終ラインを含めた全体が即座にラインの位置を回復しようとしていた。しかしセルティックはある程度押し込まれてしまうとハイプレスをやめてリトリート型にシフトし、バルセロナのゲームメイクを潰していこうとした。
セルティックはバルセロナのゲームメイクに対して、M.デンベレがいつもの通りデスコルガードの4-5-1で対応した。
バルセロナはインテリオールをサイドに開かせてゲームメイクすることが多いが、セルティックの中盤5人はしっかりとスライドすることで対応していた。こうなった時の対処方法は2つある。
・ライン間にいるインテリオールとのコンビネーションで2列目を突破
・サイドチェンジでスライドが間に合わないようなプレーをする
1つめに関してはL.メッシが中央でプレーしてた時代やイニエスタ、シャビが存在するのであれば簡単にクリアできると思うが、ラキティッチ、A.ゴメスコンビだとその成功頻度は全盛期時代と比べるとうまくいかないことが多い。
(ほかのチームと比べれば圧倒的にうまいのだが)
(Fig.3)
Fig.3 A.ゴメスのミス
もちろんこれだからA.ゴメスがダメというわけではなく、イニエスタやシャビといった黄金期を支えたインテリオールがいかにすごい選手達だったかということ。中央での崩しに関して2008-2009あたりのバルセロナを超えるチームは出てくるのだろうか。
当然だが、バルセロナのインサイドハーフをサイドラインいっぱいに張らせておこなうゲームメイクはセルティックのボールリカバリーエリアにかなりきれいにでていた。(Fig.4)
Fig.4は特に今のバルセロナのゲームメイクのエリアを表していると思う。サイドで数的優位を作ってボールを進めることが多いバルセロナは、必然的にボールが奪取されてしまうエリアも中央を除いたエリアとなる。別にセルティック相手であれば攻めることができているので全然問題ないが、しっかりと守備統制が整った強豪と当った時にこのゲームメイクでいいのかという疑問は残る。
2つめに関しても高精度なサイドチェンジをできる選手はJ.ピケかL.メッシに限られる。他の選手もサイドチェンジを行うのはうまいがそこまで頻度は高くない。
マンチェスターシティ戦と同じくゲームメイクがうまくいかなくなるとL.メッシが下がってきてサイドチェンジや中盤とのコンビネーションを使ってゲームメイクするようになる。
序盤、特にセルティックの運動量が高い状態のときはメッシ→ネイマールへのサイドチェンジ→ネイマールの1vs1という形はよくみられた。(Fig.5)
Fig.5 バルセロナのゲームメイク
セルティックの攻撃
対するセルティックの狙いはカウンター1本に絞っているようだった。1節とは違い、どん引きせず中盤で守ろうとすることでカウンターチャンスを増やし、S.シンクレア、M.デンベレの個の力をたよるという感じだった。
ただし、M.デンベレは戦術的にほとんど守備をしないため、セルティックは押し込まれてしまうと、ボールを奪取してもバルセロナのハイプレスに曝されるためほとんど前進できないような時間帯が前半だけでも半分ほどあった。(Fig.6)
Fig.6 バルセロナのハイプレス
基本は今までと一緒で4-2-4になりつつ、ブスケッツが高いところまでS.ブラウンをマークし、ラキティッチ、ネイマールの運動量でSBを最終的に捕まえるというものだった。
後半戦
45-55分のセルティックのハイプレス
Fig.7 左: S.シンクレア、右: J.フォレスト
40分にS.シンクレアが負傷してしまったためハーフタイムを機にJ.フォレストがLSHでプレーすることとなった。それと同時に前半の序盤に行っていたハイプレスも10分間復活させる。形はFig.3に示したものと一緒なので省略するが、この時間帯はセルティックにとって一番いい時間帯となった。ただし結局その後はハイプレスも曖昧になってしまっていたため本当にこの時間帯だけだったが・・・
バルセロナの撤退守備問題
この時間帯はS.ロベルトのミスなどミスを起点にしたチャンスも多かったが、そもそもバルセロナの撤退守備は4-4-2であり、L.メッシとL.スアレスはデスコルガードとして前線に残していおり、撤退守備で8人で守ることは結構難しいと思う。
実際にセルティック相手でもS.ロベルト側はかなり狙われていた。(Fig.7)
Fig.7 セルティック1vs1の成否とエリア
もちろんバルセロナの対戦相手が前がかりになりすぎれば、L.メッシを中心としたカウンターの餌食になるかもしれないので一概にデメリットだけではないが、いまのバルセロナはかなり諸刃の剣な気がする。
55-90分
セルティックのハイプレスが曖昧になってくると特にS.ロベルト、ラキティッチ、L.メッシのコンビネーションを生かしてハイプレスを破壊していくシーンが目立った。
セルティックのチャンス(前半)
6m10P(8-18-3-11-10)Grade4
17m30T(23-42-14-10-42)Grade4
25m10P(3-18-11-18-10)Grade4
26m10P(3-10-18)
35m40T(18-11-10)Grade4
セルティックのチャンス(後半)
45m50FK-P(3-5-42-10)Grade4
47m50T(42M)Grade4
52m10T(23-10-49-18-49-10)Grade5
L.メッシは中央にいることが多いので、S.ロベルトの守備負担は特に被カウンター時にとても大きくなるからS.シンクレア側でL.メッシの裏を突くがセルティックの狙い。
実際のスタッツを見ても明らかで、S.ロベルトのエリアで多くの1vs1を行っている。
ただしM.デンベレを除いた攻撃陣の攻撃精度は低く、バルセロナは大事には至らなかった。52分のM.デンベレのフィニッシュは決めたかった。ドリブルもエアバトルも強く得点力もあるのでM.デンベレは本当に約束された成長株である。
バルセロナのチャンス(前半)
3m00P(10-11)Grade4
8m00P(4-10-4-5-10-11-10)Grade5
9m20P(11-9-18-5-10)Grade5
15m00P(10-21-18-11-10-18-10)Grade4
18m20P(10-20-10-9-18-4)Grade5
20m50P(21-18-11-18)Grade4
21m30CK-P(11-21)Grade5
23m10P(20-9-18-11-10)Goal
34m50T(10-11)Grade4
40m20P(20-9-4-10-9)Grade5
Grade3以上のチャンスが17、Grade5のチャンスが5ということで、もう少し得点を伸ばしたかったところではある。L.メッシが万能すぎるのでゲームメイカーとしての顔も見せつつあるが、やっぱり最も輝くのはアタッカーとしての1vs1の時のプレーであったり、スペースにランするときである。(Fig.8)
Fig.8 メッシのスタッツ
毎試合L.メッシはすごい。スーパーな日はもっとすごいが、この試合でも1vs1の勝率100%、サイドチェンジを利用した長いパスも行い、エリア内で5本のシュート、アシスト性のパスを2本出している。
バルセロナのチャンス(後半)
53m30P(5-20-9Penalty)Grade4
55m00PK(10)Goal
56m20P(14-21-18-11-21-11-4-21-10-9)Grade4
66m30P(21-19-11-10)Grade5
68m40T(5-10-21-11)Grade4
77m10P(22-4-20-10-20)Grade4
78m50P(5-20)Grade4
82m40P(20-4-20-10-9)Grade5
87m30T(10-9-10)Grade4
スコア上離れていたこともあって後半のほうがカウンターのチャンスは多かったが、結局得点はPKによるものだけにとどまった。(Fig.9)
Fig.9 L.スアレスの狡猾なプレー
こういうプレーが南米の選手は本当にうまいとどっかで書いた気もするが、L.スアレスはPK獲得時にイサギレの両腕をロックしている。これでL.スアレスは自分から倒れることで、相手に腕を使って倒されたように見える仕組みになっている。褒められたプレーじゃないかもしれないが、トップクラスの選手はこういう何気ないプレーがうまい。
今後を見据えたバルセロナ?
計画されたイエローカード?
正直75分を過ぎた時点でほぼバルセロナの勝利は確定していた。気持ちを切らさないことは大事だが、この試合勝利すれば勝ち点12なのでグループリーグは突破確定となるため、今後の展開を少し考える余裕がでてきていた気がする。
特にネイマールとラキティッチはこの試合でイエローカードをもらうと次戦出場停止となる。仮にこの試合をイエローカードなしで過ごせたとしても6節でイエローカードをもらえばRound.of.16で出場できなくなる。すなわち5節でイエローカードを貰うのがこの2人にとっては最も都合がいいということになる。
ネイマールはルスティグと度々小競り合いしていたのでワザとなのか計画的なものなのかはわからなかったが、ラキティッチのファールはワザとだったと思う。
J.ピケ、J.アルバの交代
Fig.11 左: マルロン、右: ディーニェ
負傷明けの2人は60分を超えたあたりでそれぞれマルロンとディーニェに交代した。マルロンはやや危なっかしかったため、戦力として数えるのはまだ難しそうな感じだった。
余談
グループリーグ突破確定し、理想的な形でRound.of.16に臨む形を作れたことはとても大きい。ただしチームとしての圧倒的な強さというよりもL.メッシ依存度が大きくなって歪なチームとなっている部分もあるのでどういうチーム作りをしていくか興味深い。