UCL16-17-C5-ボルシアMG.vs.マンチェスターシティ
UCL16-17-C5-BorussiaMG.vs.ManchesterCity
黒がボルシアMG、オレンジがマンチェスターシティ(Fig.1)
Fig.1 ボルシアMGvsマンチェスターシティ
ボルシアMGは4-4-2
コルプ、クラマーの出場停止にともない、ヤンチュケ、シュトローブルがそれぞれ代役として出場している。T.アザールもプライベート関連で欠場となっている。ここまで勝ち点4であることを考えれば大一番の試合だが、主力を多く欠いてしまっている。
マンチェスターシティは3-4-3
サバレタは休養のためか召集外、インサイドでもアウトサイドでもプレーできるサバレタがいないのであれば初めから3バックにしようという意図なのかよくわからないが、本職RSBのサニャの心中は穏やかではないだろう。ウイングバックにスピードのあるスターリングとJ.ナバスを置いており、デブライネ、D.シルバが自由に動いていくスタイル
試合の概要
試合は1-1の引き分けで終える。22分にロングボールをうまく収めたシュティンドルのクロスをラファエウが決めてボルシアMGが先制、しかし45分にうまく抜け出したデブライネのクロスをD.シルバが押し込み同点とする。試合は審判によって壊されてしまったが、引いた相手を崩すすべを持たないというマンチェスターシティのにとって非常に悩ましい問題がまた足枷となってしまった。
シティの強み、弱み、ボルシアMGの強み
シティの強みはデブライネ、D.シルバ、アグエロ、スターリングのカウンター攻撃だろう。
例えば、バルセロナのようにボールを保持してくる相手にはハイプレスとカウンターで理想的なサッカーができる一方で、ボールを保持して押し込んだ時に有効な攻撃手段がないことが弱みである。
1節ではボルシアMGはハイプレスを行ったが、3-2-2-3のファルソラテラルと4-1-4-1を見事に使い分けたマンチェスターシティはボルシアMGのハイプレスを躱すことに成功していた。
こういった背景があってか、ボルシアMGは4-4-2で自陣に引き気味で守備を行い、かつボールを奪取した時はカウンターにいくか、ロングボールを使うことで、なるべくカウンターされないようにゴールに迫ろうとした。
ボルシアMGのロングボール攻撃、マンチェスターシティのハイプレス
まずはボルシアMGがカウンターに行けなかった場合の話。
Fig.2 マンチェスターシティのハイプレス
基本的に押し込められた状態でボルシアMGがボール奪取するとマンチェスターシティの前線はバルセロナのようにハイプレスを行ってくる。ボルシアMGの最終ラインにはハイプレスを躱すだけのボールスキルがないためか、ハイプレスをぎりぎりまでひきつけてロングボールを蹴る。(Fig.2)
このときマンチェスターシティのちょっとした工夫はボールサイドと逆側のWBは最終ラインに吸収されて4バックになっていることだろう。
また、GKスタートの場合も同じだが、マンチェスターシティはとにかく自分たちの攻撃時間を稼ぐためにボルシアMGにロングボールを蹴らせようと高い位置からディフェンスを行う。(Fig.3 )
Fig.3 マンチェスターシティのハイプレス(ゴールキック時)
本来、マンチェスターシティの最終ラインがロングボールを回収するのであればこれで一件落着だが、特にマンチェスターシティの最終ラインは、シュティンドルとのエアバトルに全体的に苦労しているという感じがあった。
もちろんロングボールが通る確率はあまり高くはなかったが、通った時にはハイプレスを行っていた分だけスペースができるため、ボルシアMGにとって割に合わない計算ではなかったと思う。
次はマンチェスターシティのビルドアップ、対するボルシアMGの対処法を見ていく。
基本的にはマンチェスターシティのビルドアップは3-4-3で行われ、ボルシアMGの守備は4-4-2で行われた。(Fig.4)
Fig.4 マンvへスターシティのビルドアップ-ゲームメイクI
ボルシアMGはハイプレスを行わず、中央のエリアをCBにドライブさせないような守備をしていた。しかしながら1列目の外側へのCBのドライブに関しては割と寛容的だったため、ハーフラインまでマンチェスターシティはスムーズに進めていた。
問題はここからで、CBがドライブした時のパスコースはシュトローブルとM.ダフドがかなり中央を固めていたため、インサイドのギュンドアンやフェルナンジーニョではなく、WBや外に開いたD.シルバやデブライネに限られていた。これによってチャンスメイクの手法は外側からのクロスにほぼ限られてしまった。
1節はサバレタがうまくインサイドとアウトサイドにポジショニングを取りながらバランスをとっていたが、この試合ではそういったことができる選手がいなかったのがゲームメイクをスムーズにすることができなかったのかもしれない。
特に前半30分間は中央で崩したり、カウンターの場面は皆無で、ひたすらJ.ナバスがクロスをあげては跳ね返されとボルシアMGの予想通りの動きをしてしまっていたと思う。
時間がたってくるとあまりにもゲームメイクができないマンチェスターシティはJ.ナバスをRSB、スターリングをRSH、D.シルバをLSHに移動させて4-1-4-1とする。(Fig.5)
Fig.5 マンチェスターシティのゲームメイクII
単純に1節と同様に中央のエリア、特にフェルナンジーニョ周辺を優位な状況にすることが目的だと思う。このようにポジションチェンジしてからはJ.ナバスを使った外からのサイド一辺倒ではなく、すこし中央を使った攻撃などバリエーションが出てくる。
ボルシアMGのチャンス(前半)
04m20P(16-11-17-11-19-8-13-19)Grade4
06m20T(30-11-19M)Grade4
22m40P(1-24-13-11)Goal
27m00P(11-8-5)Grade4
29m40P(17-11-13-16)Grade4
37m30P(30-8-30)Grade5
37m50T(17)Grade5
41m00T(30-11-13-8M)Grade5
チャンスとなったほとんどの攻撃はロングボールまたはカウンターに分類され、シュティンドルのエアバトル、F.ジョンソン、ラファエウ、I.トラオレの縦へのスピードは脅威だった。それ以外ではM.ダフドの攻撃参加時の質がやっぱり素晴らしかった。
Fig.6 左: シュティンドル、右: ラファエウ
1点目はヤンチュケのロングボールをシュティンドルがうまくストーンズに勝利し、ラファエウが最終的に決めたが、ボルシアMGの狙いががっちり嵌ったゴールだったと思う。
37分にはブラーボがまたもミスを犯し、O.ベントとの1vs1となったが、なんとかセーブし戦犯になることを食い止めた。実際37分の時点で2点差ついてしまっていたらおそらくマンチェスターシティは追いつくことができなかったと思う。
マンチェスターシティのチャンス(前半)
30m10T(11-8-17)Grade4
33m20P(11-25-7)Grade4
33m50CK-P(17-8M)Grade5
44m10P(21-17-7-10)Grade5
45m00P(15-21-8-7-17-21)Goal
Grade3以上のチャンスは18個あるものの、マンチェスターシティは前半30分まではチャンスらしいチャンスを全く作れなかった。これは前述のように崩していない状況でJ.ナバスがクロスを上げてしまいチャンスの質が落ちてしまったことが原因だろう。(Fig.7)
Fig.7 左: J.ナバスのクロス、右: マンチェスターシティ全体のクロス
それでも30分以降はポジションチェンジに伴ってうまくチャンスを作れるようになっていったが、アグエロは自分のところにほとんどいいボールが入ってこなかったのでかなりフラストレーションがたまっているような感じだった。
ただ、結果的には45分にデブライネがうまく抜け出し、グラウンダーのクロスをD.シルバがうまく逸らして同点にすることができてしまった。
前半の内容は明らかにボルシアMGのほうがよかったが、結果としては同点で折り返すことになってしまった。
全体としてはストーンズが自陣でのパスミス、ロングボールの処理ミス、1vs1での対応など前半はかなりよくなかった。そして隣のコラロフも1vs1では軽い場面も多く、最終ラインはかなり危なっかしかった。
後半戦
ボルシアMGの不運
後半戦に入る前に実はI.トラオレが怪我でJ.ホフマンと40分に交代している。
前半の内容は圧倒的にボルシアMGのほうが良かったと思うが、45分の失点および負傷交代とあまり運には恵まれていない模様、そして後半直後にも不運が続く。
シュティンドルが50分にオタメンディの進路を妨害したとして2枚目のイエローカードを貰い退場する。ルール上正しいかもしれないが、これで2枚目を出すのはあまりにも厳しすぎる判定だった。
退場以降の守備は4-4-1に変化し、9人のフィールドプレーヤーではマンチェスターシティのゲームメイクを防げないと考えたためか、9人でバスを停めていた。(Fig.8)
Fig.8 ボルシアMGの10人のディフェンス(4-4-1)
特記事項は特にないが、シュトローブルとM.ダフドがデブライネとギュンドアンを監視し続け、中央を割られないようにし、外側からの攻撃を誘い込もうとしていた。
O.ベントはボールリカバリー8回、タックル4/4、インターセプト3回、クリア5/5
エルベディはボールリカバリー8回、タックル3/3、インターセプト3回、クリア5/5
とサイド攻撃を本当にうまく防いでいたと思う。
また攻撃面でも変化があり、GKはショートパスではなくロングボールを一番フィジカルがあるF.ジョンソンに向けて蹴りだすようになる。(Fig.9)
Fig.9 ゾマーのゴールキック(左: 前半、右: 後半)
ただし、オタメンディがこのエリアのエアバトルをかなり制していたのでボルシアMGにとってあまり有効な攻撃手段とは言えなかった。(Fig.10)
Fig.10 エアバトルの成否(左: オタメンディ、右: マンチェスターシティ全体)
タイミングの悪いM.ダフドの交代とフェルナンジーニョの謎退場
話は変わるが、59分にはM.ダフドをベステルゴーアに変更する。正直勝ちに行くのであれば意味わからないが、この試合引き分けで終えることができればボルシアMGはヨーロッパリーグへの出場権である3位が確定するのでおそらく現実を見たのだと思う。(Fig.11)
Fig.11 10人同士のそれぞれのフォーメーション
CHをシューベルトとヤンチュケのCBもできる選手にしたため中央はかなり固くなったかもしれないが、M.ダフドがいなくなったことで攻撃面はほぼ壊滅した。
その交代の直後にフェルナンジーニョが退場する。なにに対してイエローを出したのか全く理解できなかったがとにかく退場になった。
これで両チームともに10人となってしまったが、ボルシアMGはM.ダフドを交代してしまったため引きこもるしか選択肢はなくなってしまい、非常にもったいなかった。
ボルシアMGのチャンス(後半)
63m30P(21-11-30-23-11)Grade5
68m20P(5-11-23-11)Grade4
マンチェスターシティのチャンス(後半)
48m40FK-P(17-24)Grade4
49m30T(10-7-17-7)Grade5
62m00P(17-11-21)Grade4
66m10P(7-8-17M)Grade4
72m20P(24-21-15-21)Grade4
84m20CK-P(11-30)Grade4
85m20P(24-10-21)Grade5
マンチェスターシティは勝てるチャンスがあれば勝ちたかったと思うが、負けてしまえばグループリーグ突破は6節に持ち越しになってしまう。したがって、そこまでリスクを取った攻撃をする意味もなかった。ボルシアMGも3位狙いということであればこのまま終わりたいはずなので、両チームは終盤になればなるほどおとなしくなっていき85分からの5分間はほとんど茶番だった。
またもやらかした主審
流石不評の審判である。イエローの基準もめちゃくちゃで帳尻合わせもめちゃくちゃ。
余談
マンチェスターシティは2位確定、ボルシアMGは3位確定と両チームwin-winで終えることができた。ハイプレスをしてこない相手に対するマンチェスターシティのボール保持攻撃が目下の課題であるが、決勝トーナメントまでに解決するだろうか?