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UCL16-17-C2-BorussiaMG.vs.Barcelona

UCL16-17-C2-BorussiaMG.vs.Barcelona

まずはスタメンから


黒がボルシアMG、緑がバルセロナ(Fig.1)

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Fig.1ボルシアMGvsバルセロナ

 

ボルシアMGは3-4-1-2

T.アザールが先発復帰。前節スタメンじゃなかった理由はよくわからない。ラファエウ、T.アザール、I.トラオレを中心にスピードに優れた選手を多く配置しているので、中盤でボール奪取してからカウンターにどれだけつなげられるかが勝負のカギとなる。

 

バルセロナはいつもの4-3-3。

メッシ、ウムティティが怪我で欠場のため、アルカセルとマスチェラーノがスタメンとなっている。A.トゥランではなくアルカセルをスタメンに選んだ理由はよくわからない。

 

試合の概要

試合は1-2でバルセロナが勝利する。33分にカウンターからT.アザールが押し込んでボルシアMGが先制する。しかし、64分にはネイマールからの浮き球をA.トゥランがうまく押し込み、76分にはネイマールからのCKをL.スアレスがシュートし、最終的にはこぼれ球をJ.ピケが押し込んで逆転した。前半のボルシアMGの守備→カウンターは素晴らしかったが、後半になると守りに入ってしまって自滅してしまった。

 

ボルシアMGの守備、バルセロナのビルドアップ

バルセロナは世界最高レベルに個人能力が高いL.メッシ、L.スアレスネイマールを前線に擁してため押し込まれてしまえば、バスを停めたとしても失点は免れられないだろう。

したがって、バルセロナを相手にする時、最も重要になるのは押し込まれないことだと思う。

 

セルティックは5-3-2で自陣に引きこもったが、ボコボコにされてしまった。対してこの試合のボルシアMGの守備の基本形は3-4-1-2だった。(Fig.2)

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Fig.2 ボルシアMGのハーフライン付近での守備

ボルシアMGのハーフライン付近での守備の約束事は以下のものだった

ラファエウ、T.アザールはJ.ピケ、マスチェラーノを牽制しつつも自分の持ち場は離れないようなゾーンディフェンス

・シュティンドルはブスケッツを徹底マーク

・O.ベント、I.トラオレはハーフラインを超えてボールを受けたらプレス

・M.ダフド、C.クラマーはボール側にスライドしつつラキティッチイニエスタを監視

普通守備側は最終ラインのリスクヘッジを行うために相手の前線+1人という状況を作りたがるが、ボルシアMGは最終ラインでの攻防を同数で行った。

 

当然最終ラインでリスクを取っているボルシアMGは中盤の守備で優位に立つことができる場面が多かった。前半の序盤は選手がフレッシュだったということも相まって、中盤でボール奪取→カウンターといういいサイクルを作っていたボルシアMGだった。

 

ただしボール保持攻撃で常にトップクラスだったバルセロナは当然こういった中盤でのアグレッシブな守備に対しての解答を何個か用意していた。

・ビルドアップの人数の変更

・ゲームメイクの省略

 

ビルドアップの人数の変更

バルセロナは3バックでも4バックでもビルドアップできる。ボルシアMGのように前線に2人の選手をハーフラインより少し高い位置に置いてくる場合には、バルセロナはCB2人+ブスケッツorS.ロベルトの3人でビルドアップを行うことも多かった。(Fig.3)

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Fig.3 バルセロナのビルドアップI

・S.ロベルトが第3のCBとなり、ラキティッチがサイドに開く

ネイマールが中央のスペースでプレー

 

S.ロベルトもマスチェラーノも隙があればドライブする能力をもっている。こういう布陣になると守備側は不利な2択を常に迫られることになる。

例えば、

ラファエウが自分のゾーンを無視してしまえばJ.ピケに簡単に前に進められてしまう

・O.ベントがS.ロベルトのマークをしてしまうとラキティッチのマークをエルベディがしなくてはならなくなるので、最終ラインの枚数が足りなくなる可能性が高い

・M.ダフドがS.ロベルトがドライブするゾーンを埋めてしまうとネイマールがフリーで受けられるエリアが増えてしまう

 

結局この中で一番被害が少ないのは「ラファエウがS.ロベルトの侵入を防ぐ」なので、この陣形をもとにバルセロナはハーフラインまでは押し込めることができることも多かった。

 

ハーフラインまで押し込んだ時のボルシアMGの守備の陣形は3-4-3のようになった。(Fig.4)

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Fig.4 ボルシアMGの自陣での守備

・シュティンドルはJ.ピケをマークして相手のボール循環を妨害

ラファエウとT.アザールのうち、ボールから遠い選手がブスケッツをマークすることで中央からのボール循環を妨害

ボルシアMGの守備で興味深かったことはハーフラインより押し込まれても3バックを維持したことだった。普通バルセロナを相手にして押し込まれ始めたら3バックから5バックにして最終ラインのリスクヘッジを行うが、ボルシアMGはこの段階でも行わなかった。

 

こういった状況に対して、バルセロナは前述で示した「ゲームメイクの省略」と普通のボール保持攻撃を行った。

ゲームメイクの省略

これについては簡単なことだが、最終ラインが3vs3になっているのであれば、狭いスペースでボールを回し続けるよりもL.スアレスネイマールの裏抜けを狙った方が効率がいい場合が多い。実際ラキティッチブスケッツイニエスタから裏抜けを狙うようなパスがいつもよりも多くなっていた。

 

このように書くとバルセロナはしっかりと攻めれたのかな?という印象にもなってしまうかもしれないが、ボルシアMGの中盤の守備はかなりバルセロナを苦しめていたと思う。セルティックを相手にした1節は相手を限界まで押し込んでいたので、ほとんど被カウンターの危険性はなかったが、この試合では中盤でボールを奪取されることも多かった。(Fig.5)

 

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Fig.5 ボールリカバリー(左 : ボルシアMG、右 : セルティック)

単純比較は難しいが、ボルシアMGのほうが押し込まれていないことが明らかであるし、ハーフライン付近でのボール回収回数も多い。

 

こんなことからもボルシアMGの守備はハイリスクハイリターンではあるものの、概ね計算通りだったと思う。

ちなみにボルシアMGバルセロナゴールキック時にもハイライン+最終ラインを3人で守るという勇敢(無謀)な選択をしていた。(Fig.6)

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Fig.6 バルセロナゴールキック

J.アルバとS.ロベルトはあえてフリーにしているが、中盤でのセカンドボールの取り合いには負けないように中央に選手を集めている。当然これくらい露骨だとバルセロナゴールキックもロングボールになる。基本はL.スアレスが自陣側に動いてA.クリステンセンを動かしつつ、ネイマールが裏を狙うという形が多かった。

 

バルセロナのチャンスメイク(前半)

バルセロナのチャンス(前半)

6m10P(20-11-20-8-9-18-11)Grade5

6m50P(4-9)Grade4

10m30P(3-9)Grade5

20m30P(5-8-11-9)Grade5

22m20FK(11-4M)Grade4

38m00P(8-11-5-4-9)Grade5

38m10P(9-)Grade4

 

Grade3以上のチャンスは9つ、ただしGrade5のチャンスが4つあったことを考えれば前半のうちに得点しておきかった。ボルシアMGの守護神ゾマーのセーブが重要だった場面も多かったが、そもそもバルセロナにチャンスメイクの試行回数を減らしたのも前半無失点で切り抜けられた大きな要因だろう。

 

ボルシアMGの攻撃(カウンター)

前述のようにバルセロナ相手に押し込まれることが少なかったボルシアMGの守備は割と機能していたと思う。しかしボルシアMGのストロングポイントは守備以上に前線のスピード+M.ダフドの攻撃参加にあった。

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Fig.7 左からM.ダフド、I.トラオレ、T.アザールラファエウ

 

ボルシアMGは中盤でボール奪取すると前線の選手やI.トラオレはスペースに走りカウンターの準備をする。そしてボール回収を常に行い、的確なパスと攻撃参加でカウンターの基点になり続けたM.ダフドは前半のMVPだった。

 

逆に、ボールを保持した時の攻撃はあまり得意ではなさそうで、基本的にボールを保持するとロングボールが中心だった。

 

ボルシアMGのチャンスメイク

ボルシアMGのチャンス(前半)

2m10T(13-10)Grade4

15m20T(8-13-10-16-11)Grade4

21m30P(10-16-6-16-13-16)Grade4

33m00T(8-11-8-10)Goal

39m40P(27-13-10-8-17)Grade4

44m30T(10-13-11)Grade4

 

ほとんどのチャンスはカウンターから生まれたといっていいだろう。ボールを保持した時のチャンスもI.トラオレのスピードを使ったサイドアタックが多かったので、かなりフィジカル寄りのチャンスメイクが多かった。Grade3以上のチャンスは13こ、そのうちカウンターによるものが9つということを考えても前半はかなり狙い通りのサッカーができていたと思う。

 

後半戦

結果から先に言うと、ボルシアMGの後半はダメダメだった。問題の1つは、カウンターの要だったラファエウがハムストリングの負傷で後半開始直後に交代してしまったことだろう。そして1点リードしているということもあって守備がかなり消極的になってしまった。具体的にはハーフライン付近での守備は3-4-3から3-5-2に近い布陣に変更したこと(Fig.8)

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Fig.8 ボルシアMGの後半の守備

要はビルドアップ妨害をやめてバスを停めることで失点のリスクを減らしに行ったのだと思う。これはラファエウが負傷したことによる戦術変更なのか、後半からの既定路線だったのかは不明だが、いずれにしてもいい戦術変更ではなかった。

 

よくない理由はセルティック戦で述べたことと同じで、押し込まれてしまうとカウンターが成功する確率は極端にさがってしまう。ましてやカウンターの要だったラファエウがいなくなってしまったことで、前への推進力をほぼ失ってしまったといってもよい。

 

これによって後半は一方的にバルセロナが相手陣地で殴る展開となった。

ボルシアMGのチャンス(後半)

88m00P(6-19)Grade4

 

バルセロナのチャンス(後半)

56m40P(5-18-9-4M)Grade4

60m50P(8-11-9-11-5)Grade4

69m30P(5-11-7)Goal

72m50CK(11-9)Grade4

72m50CK(11-9-3)Goal

76m30P(8-7M)Grade4

91m00P(5-12-11)Grade4

 

押し込んでいる分前半のような決定的なチャンスはあまり見られなかったが、ボルシアMGにほとんどカウンターをさせなかったという意味で、後半は完璧にバルセロナペースだった。したがってバルセロナが逆転できたのもあまり驚きではなかった。

 

余談

L.メッシ不在がバルセロナの攻撃を停滞させてしまった。代役として投入されていたアルカセルはかなり低調なパフォーマンスだったこともあり、ネイマール、L.メッシ、L.スアレスのいずれかが負傷したときにどう埋め合わせるかというのは今後の課題かもしれない。