サッカーを視る

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UCL16-17-B6-ベンフィカ.vs.ナポリ

UCL16-17-B6-Benfica.vs.Napoli

まずはスタメンから

赤がベンフィカ、黒がナポリ (Fig.1)

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Fig.1 ベンフィカvsナポリ

ベンフィカはA.アウメイダが復帰し、R.ヒメネスをCFの一角とした。理由はよくわからないが、ミトログルが守備にあまり貢献しないからかもしれない。

 

ナポリは前線の3人をメルテンス抜きの構成にした。この試合引き分けの場合ナポリが敗退する可能性もあったのでこの編成は意外だったが後半に焦点を絞っていたのかもしれない。

 

試合の概要

試合は1-2でナポリが勝利する。R.アルビオルからの縦パスをメルテンスが絶妙にコントロールし、58分にカジェホンが決める。続いて78分にはグラムからのクロスをメルテンスが受け、エリア内から決めて2点差とする。しかし、86分にはR.アルビオルがバックパスの処理をミスし、R.ヒメネスが決めてベンフィカが1点を返す。前半の20分間を除いてはほぼナポリの時間帯といってよかった。特に、最後の失点を除けば後半の出来はかなり理想的だったと思う。ベンフィカは敗北したものの2位で決勝トーナメントへの進出が決まった。

ベンフィカの守備、ナポリのビルドアップ

ベンフィカは今までと同様に、ハイラインかつコンパクトな4-4-2の守備→カウンターを第一目標とするサッカーを行う。そしてナポリはつないでくるチームなので、2節と同様にゴールキック時にはベンフィカはハイプレスを行いショートカウンターを狙う。(Fig.2)

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ナポリゴールキック時のベンフィカの配置

Fig.2 ナポリゴールキック時のベンフィカの配置

 

中央のエリアにはマンマークを行い、唯一A.アウメイダはゾーンで守り、ヒサイがフリーという状態になっている。2節の時よりもおそらくかなり攻撃的に守っていたためかレイナもロングボールを蹴らざるを得ないことが多かった。

 

こういう時にレイナはヒサイにミドルパスを蹴りこむ精度と能力を持っている。ただしヒサイがA.アウメイダとのエアバトルに負ければそれだけで致命的になる可能性もある。したがってボールをもって攻め込むようなチームは今後SBにエアバトルが強い選手いるとより安泰になるかもしれない。(もちろんビルドアップ能力)

 

マーク相手はその都度状況によって変わったが、とにかくハムシクをフリーにしないというのがベンフィカの約束事の1つのようで、フェイサはゾーンを無視してでもハムシクを妨害することにリソースを割いていた。

 

ナポリのゲームメイク、ベンフィカのハーフライン付近での守備

ナポリゴールキックでボールを前線で回収できないときは、ベンフィカはコンパクトな陣形へと変化していく(Fig.n)。

 

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ベンフィカのハーフライン付近での守備の特徴は4-4-2であること、1列目がプレスをあまり行わなかったこと、最終ラインが異常に高かったこと。

したがってナポリはハーフライン付近までは簡単にボールを運べたが、ハーフライン付近でのボールの進ませ方に問題が生じた。ナポリのゲームメイクはディアワラ、アラン、ハムシクを経由し、手数の少ないショートパスで前に進むことが基本だが、ベンフィカはかなりコンパクトな守備を敷いていたため、通常の方法でボールを進めるのは苦労していた。

 

しかしコンパクトな守備をするということはラインを高く設定しているということでもあり、サイドの選手がフリーになりやすいという側面もある。こうなった時のナポリは狭いところをショートパスで無理やりつないで攻撃することも多かったが、クリバリ、R.アルビオルハムシクベンフィカの最終ラインの裏にロングボールを送ることや、純粋にサイドバックのオーバーラップを生かしたサイド攻撃からチャンスを作ろうとしていた。特にハムシクのロングボール、ドリブル、ショートパスはすべての分野において卓越しており、ボールを保持した時の攻撃において最も重要な存在であることを再三示していた。

 

ナポリのチャンスメイク

ナポリのチャンス(前半)

19m50P(33-17-24-17) Grade4

20m00P(33-17-24-17-23) Grade4

33m50P(17-31-7M) Grade4

35m30P(5-17-23)Grade5

 

ナポリはボールを運べているし、それなりにチャンスメイクの数は多い。それでもなぜか得点できない、勝ちきれないという試合が続いている。決定力や運も大きく絡んでいるが、どう考えてもポスト、ペナルティエリアでクロスを待てるCFの不在はナポリの大きな問題となっている。

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インシーニェやカジェホンは独力で突破を狙っていく選手ではなく、基本的にサイド攻撃の場合はサイドバックのサポートを必要とする。R.アルビオルもクリバリもコンパクトな守備に対しては外側から攻略していこうという狙いでゲームメイクしていた。

 

実際、サイドの深い位置までのボール運びは流石ナポリ、という印象を受けたがやっぱりペナルティエリアにいる選手がガッビアディーニということもあってか得点に結びつかない。

 

また、ミリクがCFをやっていた時のように、本来のゲームメイクの選択肢としては、ガッビアディーニに一回ボールを当てて中央でポスト役という形も当然望ましい。そうすればハムシクやインシーニェ、カジェホンの攻撃をもっと活性化できるはずだが、ガッビアディーニはほとんどポストプレーをしない。

 

こういった状況からナポリはボールを前に進めるもののチャンスができないという、少し悲しい前半になってしまった。Fig.nはベンフィカのボールリカバリーの位置を示しているが、リカバリー位置がハーフラインを超えているものが多いこと、インシーニェサイドでトランジションが起こっていることが明白だった。

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これまでに示したことの繰り返しになってしまうが、ゴールキック時のマンマークハイプレス、ハーフライン付近でのコンパクトな守備、インシーニェの個人能力不足が原因でこういった結果になったと思われる。

 

転換期は56分

 

ガッビアディーニをメルテンスに交代しチャンスメイクの強化を図った。

メルテンスが投入されてからはチャンスの質がいつも通り向上していく。56分プレーしたガッビアディーニのボールタッチ数が15、それに対してメルテンスは34分で16回を記録していることからも、ガッビアディーニがいかにボールに絡んでないかはわかると思う。

 

さらに前半開始から特にゲームメイクにおいてかなり輝き続けていたハムシクが後半になってさらにギアが上がる。

 

ナポリのチャンス(後半)

45m40T(42-17-7-23)Grade4

47m50P(42-17-24-7)Grade5

55m40P(33-17-7)Grade4

58m50P(33-14-7)Goal

65m30P(5-24-31-17-24-7)Grade4

66m20CK(7-5-24)Grade4

66m40T(42-14)Grade4

69m30P(17-33-5-42-24)Grade4

78m00P(42-31-7-31-14)Goal

83m10T(42-14-7-14-20)Grade5

87m10P(26-31-20-14)Grade4

 

チャンスの数を考えても、後半2点決めることができたのは必然だった。前半からチームを支え続けてきたハムシク、後半投入時から輝いていたメルテンスの存在はナポリに多くのクオリティをもたらしていた。

 

ベンフィカの攻撃、ナポリの守備

続いてベンフィカの攻撃について

ベンフィカはビルドアップがうまい選手はそれほどいない。だからこそビルドアップの時にはフェイサがCB間に落ちることでボール循環を安定化させようとする。

しかし前線の個人能力もそこまで高くないので、結局カウンターを主体にしないとチャンピオンズリーグレベルだと戦うことができない。なので攻撃方法はナポリよりもロングボール主体で、前線のスピードに頼ることとなった。

 

まず、ゴールキック時のマンマークハイプレス、ハーフライン付近でのコンパクトな守備からのトランジションを生かしてチャンスメイクするというのがベンフィカの狙いだった。前述のようにナポリも序盤はショートパスを中心とした攻撃だったので、前半20分間はベンフィカの時間帯だったといってもいいと思う。

 

ただしカウンターサッカーを志向するうえで必ず問題になるのは、全体の運動量が低下すると悪いサイクルに入ってしまいがちになってしまうということ。

相手のボール保持攻撃→ハーフライン付近でボール奪取→カウンター→相手のボール保持攻撃・・・が理想だが、例えば守備がうまくいかなくなればカウンター時に走る量は増えてしまう分、疲労はたまりやすくなってしまう。

 

そういう意味では、前半のうちに得点できなかったのはベンフィカにとってかなり重篤な問題だったと思う。

ベンフィカのチャンスメイク

20m50T(9-20)Grade5

22m30P(18-50-5-18-9)Grade4

29m20P(34-14-18-50M)Grade4

57m30P(50-18-50-27M)Grade4

57m40P(27M-21)Grade4

75m60FK(21M)Grade4

86m30T(9)Goal

Grade4以上のチャンス自体は後半のほうが多いが、Grade3以上のチャンスは前半に11、後半に7であることからも、前半のほうがフレッシュに攻めることができていたと思う。

 

しかし、時間がたてばたつほど疲労もたまっていきカウンターの鋭さはなくなり、押し込まれる時間帯も増えていった。しかし86分にR.ヒメネスがR.アルビオルのパスを掻っ攫って1点を返す。

 

ハイライトを見ればわかるように、86分のR.ヒメネスの得点はグラムのバックパスの処理をミスしたR.アルビオルが直接の原因だった。ただし、よく見ればわかるようにグラムがバックパスした理由もよくわからなかった。

 

これでチャンピオンズリーグ6試合のうちナポリジョルジーニョのバックパスミスで2失点、この試合で1失点したため、計3点を無駄にしている。ナポリは自陣ペナルティエリア付近でボールを回収してもロングボールを蹴ることなくボールを保持しようとするためこういったミスが増えるわけだが、それでも多すぎた。

 

余談

ハムシクを71分にジエリンスキと交代させているが、これには理由がある。ディナモキエフvsベシクタシュが71分の時点で5-0。すなわち、ベンフィカが勝ってもナポリが勝ってもナポリベンフィカの突破はほぼ確定していたことが大きな理由だと思う。結果としてこの試合は1位、2位を決める消化試合であった。だからこそベンフィカも後半あまり慌てていなかったのかもしれない。ベシクタシュのサッカーは突破に値するレベルだったと思うが、6試合中4試合引き分けで終えてしまったことが結果として大きく響いてしまった。