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UCL16-17-B4-ベシクタシュ.vs.ナポリ

 

まずはスタメンから

白がベシクタシュ、薄青がナポリ(Fig.1)

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Fig.1 ベシクタシュvsナポリ

 

ベシクタシュはいつも通りの4-2-3-1

攻撃の駒として非常に重要だったエルキンが重傷で戦線から外れてしまったため、LSBにD.トシッチ、LCBにロドウフォ、LSHにアドリアーノという構成に変更している。それ以外の部分にほとんど変更はなかった。

 

ナポリもいつも通りの4-3-3

R.アルビオルはハムストリングを怪我したままなのでこの試合ではマクシモビッチがLCBに、メルテンスはおそらく休養のためCFはガッビアディーニが務めている。チームを牽引しているメルテンスがこの大一番でスタメンから外れたのは個人的に驚きだった。

 

試合の概要

試合は1-1の引き分けで終える。77分にアブバカルのクロスをマクシモビッチがハンドしてPK、これをR.クアレスマが決めてベシクタシュが先制する。しかしその直後81分にハムシクがエリア外から完璧なミドルシュートを決めて同点にし、試合は終了する。前半はベシクタシュナポリ対策が相変わらず嵌っていたが、後半からインシーニェがチームの中でうまくプレーできるようになり、ナポリのペースへと変わっていった。引き分けもあり得る内容だったが、2試合合計でナポリベシクタシュから勝ち点1しか得られなかったのは不運といっていいだろう。

 

ナポリの前線守備、ベシクタシュのビルドアップ


基本的にナポリゾーンプレスで相手のビルドアップを妨害する。(Fig.2)

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Fig.2 ナポリのゾーンディフェンス

この部分は第前節ナポリvsベシクタシュとほとんど同じであるので、飛ばしてもらっても構わない。

まずはガッビアディーニがビルドアップのサイドを限定する。その後インサイドから前進してくるようであればハムシク、アランがプレス、アウトサイドを使うようであればインシーニェ、カジェホンがプレスするいわゆるゾーンプレス

 

システム自体は今までと何ら変わりはなかったが、シーズンが進むにつれて微妙に問題が表面化してきている。

1つめは選手の勤続疲労。特にハムシクカジェホンはこのチームだと代えが効かず、インシーニェもミリクの怪我後は出ずっぱり状態になっている。試合開始直後はゾーンプレスの強度も保たれていたが、開始25分を超えたあたりからは今までのような強度のプレスができなくなっていた。

 

2つめは選手の質。これは前の試合でも言ったかもしれないが、ミリク、メルテンスのコンビに比べてガッビアディーニ、インシーニェは運動量が低い。特にガッビアディーニの守備貢献度の低さはナポリゾーンプレスの質を大きく低下させた。

 

3つめはロングボールへの対応。このゾーンプレスの目的は相手のビルドアップを妨害してロングボールを蹴らせてボールを回収するところにある。ただし前述のようなガッビアディーニのさぼり、ゾーンプレス強度の低下はベシクタシュのCBにより簡単にロングボールを蹴らせてしまう場面が確実に増えていた。(Fig.3)

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Fig.3 ベシクタシュのビルドアップ

もちろん、ロドウフォやD.トシッチは精度の高いロングボールを供給できるタイプという感じではなかったが、アルスラン、アブバカルがアドリアーノのエリアをサポートすることでセカンドボールをモノにする機会も多かった。

こんな感じで完璧とは言えないものの、ナポリゾーンプレスに対して時間がたつごとに徐々に順応している感じがあったベシクタシュだった。

 

ナポリのビルドアップ-ゲームメイク、ベシクタシュマンマーク守備

結果から先に言うとナポリのボール保持攻撃は今までの試合と比べても明らかに質が下がっていた。そしてボール保持攻撃の質の低下はナポリの守備問題にも直結する。なぜならナポリゾーンプレスは相手のボール保持攻撃にのみ使用するため、自分たちの攻撃をしっかりと終了させなければそもそもゾーンプレスができない。

 

つまり、ナポリの理想の流れは以下のような形である。

ナポリのボール保持攻撃(成功)→ベシクタシュのボール保持攻撃(ナポリゾーンプレスで妨害)→ナポリのボール保持攻撃orカウンター→・・・

だが、この試合では

ナポリのボール保持攻撃(失敗多め)→ベシクタシュのボール保持攻撃orカウンター(ナポリゾーンプレスで妨害しきれないことも多め)→ナポリのボール保持攻撃→・・・

となった。

 

ナポリのボール保持攻撃に対してベシクタシュは前節同様中盤マンマークを用いた。(Fig.4)

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Fig.4 ベシクタシュの中盤マンマーク

前節と同じ部分はハムシクジョルジーニョ、アランに対してハッチンソン、インレル、アルスランがそれぞれほぼマンマークで守ること。

前節よりも少し変更した部分は、インシーニェ、カジェホンインサイドのポジショニングに対してもA.ベック、D,トシッチは可能な限りマンマークしたこと。


アブバカルがよりクリバリ側を注意した守備をしていたため、マクシモビッチがフリーになりがちであったこと。(Fig.5)

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Fig.5 ベシクタシュが捨てたエリア

 

こういった状態になるとマクシモビッチは度々ドライブしていたし、場合によってはロングボールもしくはガッビアディーニに縦パスを入れていた。この部分に関してはクリバリと同じようなことをしていたが、クリバリに比べてマクシモビッチは裏抜けの一発を狙ったロングボールが多かった。さらにCFのガッビアディーニ、LSHのインシーニェはメルテンスのように狭いエリアでボールを受けつつ効果的なプレーができていなかった。特にガッビアディーニはロングボールも受けれない、下がって受けても効果的なプレーができるわけでもない感じでナポリと完全にあっていなかった。こんな感じで得意のボール保持攻撃も明らかに今までよりも影を潜めてしまっていた。

 

ベシクタシュの不運と幸運

D.トシッチが前半のうちに負傷してしまい、23分にトスンとの交代を余儀なくされた。早い時間帯での交代ということもあってこの部分はベシクタシュにとって不運だったが、トスンの投入によってベシクタシュのバランスはより良いものになった。(Fig.6)

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Fig.6 トスン投入後の形

LSBはアドリアーノ、CFはトスン、R.クアレスマはLSH、アブバカルはRSH

まず、ロングボールの受け皿としてアブバカルだけでなくトスンも候補にいれることができることが非常にベシクタシュの攻撃にとって大きかった

 

もうひとつはハムシク、インシーニェ側の攻撃に対するベシクタシュの守備の安定(Fig.7)

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Fig.7 アブバカルのカバーリング

前述のようにインシーニェに対してもマンマーク気味に守っていたA.ベック。この時できてしまうスペースをRSHのアブバカルはしっかりとカバーしていた。もちろんR.クアレスマも行っていたが、アブバカルのほうがより献身的でフィジカルも強いためしっかりとボール奪取できた場面が増えていた。

 

ベシクタシュナポリのチャンスメイク(前半)

こんな感じで序盤のナポリゾーンプレスに苦しんでいる時間以外は概ねベシクタシュは守備も攻撃も想定通りのプレーができていたと思う。

ベシクタシュのチャンス

5m00P(5-9)Grade4

20m10P(44-6-18-9)Grade4

28m20P(13-18-13-80-7-13)Grade5

39m00P(44-9)Grade4

 

ナポリのチャンス

1m00P(31-24-31-23)Grade5

10m20P(5-23)Grade5

12m40P(19-5-2-7)Grade4

40m30P(19-5-2-24)Grade4

 

お互いつくったチャンスは4つずつだったが、Grade3以上のチャンスを数えてみると、ベシクタシュは6コ、ナポリは14コと大分差があった。

これはナポリのカウンターやチャンス一歩手前でインシーニェやガッビアディーニのミスが多かったためで、もう少しチャンスメイクの部分でうまくプレーできないと得点するのは難しいだろうという状況だった。

 

逆にベシクタシュは前に進めた回数自体は少ないものの、インレルのロングボール精度やR.クアレスマのクロスは確かな武器であり、戦術的にもうまくいっていたことを示していると思う。

 

後半戦

ハーフタイムにナポリのサッリ監督が修正したためか、ゾーンプレスの強度が回復し、さらにガッビアディーニをメルテンスに変更することでその質も向上した。ゾーンプレスがうまくいき始めるとベシクタシュの最終ラインは時間がない中でロングボールを供給しなくてはいけなくなり、結果としてアブバカルやトスンが収められる回数も減少していった。

また、インシーニェは後半に入ってから特に攻撃面でかなり良くなり、不必要なボールロストもかなり減ったため、後半の流れはナポリの理想通りになった

 

ナポリのボール保持攻撃→ベシクタシュのボール保持攻撃(ナポリゾーンプレスで妨害)→ナポリのボール保持攻撃orカウンター→・・・

 

例えばこれはベシクタシュインターセプト回数にも表れている(Fig.8)

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Fig.8 ベシクタシュインターセプトのエリア(左 : 0~45min, 右 : 46~90min)

ベシクタシュは明らかに前半のほうが守備がうまくいっていることがわかる。

サッカーは流れのスポーツなので、ナポリのボール保持攻撃がうまくいくようになったからなのか、ゾーンプレスの強度と質が回復したのが直接的な原因なのかはわからないが、とにかく後半のナポリの姿勢はよかった。

 

ベシクタシュナポリのチャンスメイク(後半)

ベシクタシュのチャンス(後半)

77m50PK(7)Goal

 

ナポリのチャンス(後半)

47m50-26-23)Grade4

50m40T(5-24-7)Grade5

55m40P(31-24-31-7)Grade4

67m40P(26-8-24-31-14-24)Grade4

73m10P(2-7)Grade4

81m00P(42-14-17M)Goal

91m20T(42-17-20-14M)Grade4

92m20P(24-14-31-24M)Grade4

 

ベシクタシュのチャンスは1コのみだったが、ナポリのチャンスは8コ。Grade3以上のチャンスは、ベシクタシュ : 6コ、ナポリ : 13コと前半とほぼ同じ数だった。

 

ベシクタシュはほとんどボールを前進させることができていなかったが、77分にPKを奪取するまでのハッチンソン、トスン、エジャクップのコンビネーションプレーは素晴らしかった。ただしPKの判定は非常に怪しいものだった。(Fig.9)

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Fig.9 マクシモビッチのハンドシーン

まあ体から手は離れているので反則は反則だが、至近距離ということもあってこれでPK判定は結構きつい。

 

結果的にはPK判定、R.クアレスマがこれを決めてベシクタシュがリードする。ベシクタシュナポリに対して2試合ともそこまでチャンスを作ってはいないが、なぜか得点できてしまっている。

 

一方でナポリのチャンスメイクの中心はインシーニェ、メルテンス。前述のようにインシーニェが後半本当によくなっており、得点できなかったという意味では残念だったが、チャンスメイクの部分でしっかりとプレーできていた。結果的にハムシクのエリア外からのミドルシュートで同点にした。その後もインシーニェ、メルテンスミドルシュートでチャンスを作り続けたが追加点を取ることはなかった。

余談

4節終了時点でナポリ : 7, ベンフィカ :  7, ベシクタシュ : 6, ディナモキエフ : 1とかなり拮抗した状態を維持している。エルキンの不在はベシクタシュを苦しめると思ったが、アブバカル、トスンが収めてくれるおかげで前半はイーブンに戦えていた。どのチームもディナモキエフとの戦績が非常に重要になりといえる。