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UCL16-17-B1-ベンフィカ.vs.ベシクタシュ

UCL16-17-B1-ベンフィカvsベシクタシュ

 

まずはスタメンから

赤がベンフィカ、白がベシクタシュ(Fig.1)

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Fig.1 ベンフィカvsベシクタシュ

 

ベンフィカは4-4-2

ポルトガルリーグで1位になることができればUCLのポット1に入れるようになったのはベンフィカにとって非常に大きな変化だったといってもいいはず。ただしUCLで活躍するとすぐに草刈り場になってしまうため、いい選手を供給し続けなければならないといけない。

ベシクタシュは4-2-3-1

R.クアレスマが攻撃の中心であるが、インレルやアドリアーノなど少しだけ全盛期を超えてしまった選手や当然だがトルコ代表選手が多い。

 

試合の概要

試合は1-1-の引き分けで終わる。11分にオルタのロングボールに抜け出したサルビオが挙げたクロスをセルビが押し込んでベンフィカが先制する。しかし92分に後半から出場したタリスカが直接FKを決めて土壇場で引き分けに持ち込んだ。前半はベンフィカの狙い通り進んでいたような試合だったが、後半バランスを捨てたベシクタシュの攻撃をコントローすることができず、ベンフィカの後半の内容はよくなかった。内容をみても引き分けは結構妥当な結果だと思う。

 

ベシクタシュの守備、ベンフィカの対応

この試合は非常に整理しにくかった、というのもベシクタシュの守備システムがたびたび変わるためだが、おそらくオルタ、フェイサのポジショニングに合わせた守備システムを用いていた。守備のパターンは大きく分けて2種類あった。

オルタ、フェイサが比較的ビルドアップに参加していないとき


1つは1列目をアブバカル、エジャクップにした4-4-2(Fig.2)

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Fig.2 ベシクタシュの4-4-2プレス

 

この場合はサイドバックにボールが渡った時にR.クアレスマもしくはエルキンがプレスし始めて最終ラインのビルドアップを妨害するという方式をとっていた。連動するのはボールサイドのアブバカルまたはエジャクップだが、Fig.2のようにグリマルドがボールを持ってる時にはアブバカルがリンデロフ、エジャクップがオルタを監視するという状況になっていた。もちろんリンデロフにボールが渡ったら、エジャクップはL.ロペスにプレスに行く形になるのが基本形だった。

 

ただし、プレスが連動するときとしないときの差が非常に曖昧で明確な約束事が決まっていたわけではなかったのかもしれない。

オルタ、フェイサのいずれかもしくは両方がビルドアップに参加した時

2つめはハッチンソンを底においた4-1-4-1の守備(Fig.3)

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Fig.3 ベシクタシュの4-1-4-1プレス

 

基本はアブバカルがボールサイドのCBを牽制し、(Fig.3の場合はL.ロペス)受け手となるCB(Fig.3の場合はリンデロフ)は比較的フリー。ただしインレルはフェイサをエジャクップはオルタを監視するという関係性は変えない。

いずれにしてもベンフィカのフェイサ、オルタへのポジショニングに伴う約束事は大体決まっていたが、例えばサルビオやピッツィがライン間で受けようとした時は誰がマークにいく?やリンデロフがフリーの時に度々ドライブしてきてしまうなどいくつか曖昧な部分も曖昧な部分も多かった。

 

ベンフィカのボール保持攻撃は微妙な部分とよかった部分があった。

 

ビルドアップ-ゲームメイク

前述のようにフェイサ、オルタを基準点として守備をしているベシクタシュはサルビオとピッツィのポジショニングに対して後手後手になってしまうことが多かった。

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Fig.4 ピッツィ(左)、サルビオ(右)

 

というのもサイドバックアドリアーノやA.ベックがマンマークのような形でついて行ってしまうと、今度は最終ラインのリスク管理が危うくなってしまうため、そこまで露骨にマンマークはできない。ハッチンソンもすべてのエリアをカバーできるわけじゃないのでどうしてもフリーになるタイミングがでてきてしまうのは、基準点を中盤の2人に置いている時点である程度仕方なかったのかもしれない。

 

そのため、ベンフィカのボール保持攻撃の鍵は、最終ラインがベシクタシュの牽制に屈しないこととサルビオとピッツィのボールの受け方およびその後のチャンスメイクが重要になってくる。このうちサルビオはライン間でボールを受けつつ前を向いてプレーすることができていたので前半のボール保持攻撃を支えていたとおもう。

 

前半の得点は下がってきたオルタのロングパスにサルビオがダイアゴナルランで抜け出し、サルビオのシュート性のクロスをセルビが押し込んで先制したが、サルビオの動きだしやポジショニングは特に前半結構よかったと思う。

 

ベシクタシュの攻撃、ベンフィカの守備

ベンフィカの守備は4-4-2(Fig.5)

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Fig.5 ベンフィカのハイプレス

 
   

 

 

基本的に前線の2人は結構高い位置から守備することが多いが、特にボール保持攻撃で押し込んだ後や、ゴールキックをショートパスから始めた場合には中盤の4人やサイドバックも含めたハイプレスを行っており、明確に強度を上げるシーンもあった。

 

オーソドックスなハイプレスだったが、ベシクタシュはビルドアップも満足にできないような感じだった。ハッチンソンとインレルとエジャクップはの解決策はインレルのロングボールだったが、ボール保持攻撃はかなり厳しい感じだった。

 

ベンフィカのチャンスメイク、ベシクタシュのチャンスメイク(前半)

 

ベンフィカのチャンス

11m30P(8-18-22)Goal

37m50P(3-8-50-18-20)Grade4

45m30P(8-21-8M)Grade4

 

ベンフィカはハイプレスからのボール奪取→カウンター攻撃を行っていたが、おしいところまではいくもののチャンスにまでいくことはなかった。またボール保持攻撃においても度々前に進めてはいたものの違いを作れる選手がおらず、チャンスにまでつながるシーンは皆無だった。

ベシクタシュのチャンス

29m30FK(7)Grade4

 

ただし、ベシクタシュはカウンター自体もほとんどできておらず、ボール保持攻撃もベンフィカのハイプレスに屈してしまっていたので前半のチャンスはベンフィカ以下だった。ベシクタシュは前半常に右サイドハーフもしくはウイングの位置にいたR.クアレスマのプレーにボールを集めていたが大きなチャンスを作ることはできなかった。

 
   


ハーフタイムの変更ベシクタシュはエジャクップをタリスカに変更する。更にいくつかのポジションについて少し変更があった。(Fig.6,7)

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Fig.6 後半のベシクタシュのフォーメーション

 
   


これの意味は後述するが、アドリアーノとエルキンの位置が逆転していた。

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Fig.7 ベシクタシュのフォーメーション(62min以降)

後半開始直後はこんな形だったが、アドリアーノサイドハーフというよりもインサイドハーフの位置でプレーしていた。

しかし58分を境にR.クアレスマは左サイドでプレーをし始め、アドリアーノは左インサイドハーフの位置にいた。62分になるとアドリアーノをトスンに変更することでFig.8のようなさらに歪な形となった。


前半はR.クアレスマが右にいたため、右サイドにボールを集めるようなパスが多く確認されているが、後半はR.クアレスマが左サイドに移動したことなどが影響して左サイドを攻撃の中心とした(Fig.8)

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Fig.8 ベシクタシュファイナルサードでのパスについて

 

結果から先に言うとベシクタシュは後半は前半とは別の試合のようにうまくボール保持攻撃ができていた。理由はいくつかある。

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Fig.9 エルキン(左)、タリスカ(右)

 

エルキンの特性

前半はサイドハーフでプレーしていたが、本来は攻撃的なサイドバックという位置づけの選手。縦パスを受けたり裏に抜け出したりというプレーがうまいわけではないため前半は全くと言っていいほど活躍できていなかった。

しかし、後半からエルキンがSBの位置でプレーし始めてからはプレー内容は一変した。そもそもエルキンはオーバーラップのタイミングなど攻撃の参加タイミングはうまく、ロングパスの精度がいいという特徴があるため、後方から攻撃に参加したほうがプレースタイルとあっている感じだった。後半の追い上げは確実にエルキンの功績が大きい。

 

リスカのポジショニング

リスカは基本的に左からのボール保持攻撃の時にはサルビオとセメドの間に位置していた。(Fig.n)

前半よりもベシクタシュのポジショニングは左に偏っていたため、ベンフィカは少しマーク相手を見失っているような感じがあった

こういったことも影響してか後半のベシクタシュの攻撃は明らかによくなっていた。

 

ただし左右のバランスを崩してしまっているため、守備は前半よりも悪くなっていた。幸いにも92分にタリスカが直接FKを決めて同点としたが、個人的には運だけでなく後半しっかり攻めてチャンスを多く作ったからこその結果だと思う。両チームともUCLのベスト16レベルのチームではないが、両チームのレベルはほとんど拮抗しているかベンフィカが少し勝っている程度なので両チームにも突破の可能性はあると思う。

 

 

余談

このグループで明らかに抜けているのはナポリのみその下にベンフィカベシクタシュディナモキエフが拮抗しているというような状態になっている気がする。ただしこのグループのポット1はベンフィカ

2014-2015までは純粋な欧州大会過去5年間の実績でポット分けがされていたが、2015-2016以降はスペイン、イングランド、ドイツ、イタリア、ポルトガル、フランス、ロシアのリーグ王者+前年度UCL王者がポット1にはいる。したがって、バルセロナレアルマドリーアトレティコのうち必ず1つはポット2に回るし、欧州で全く実績がないレスターシティもポット1、明らかに能力不足のCSKAモスクワもポット1になる。

 

この方式は2017-2018まで続くが、あまりいい分け方ではないと思う。