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UCL16-17-A6-パリ・サンジェルマン.vs.ルドゴレツ

UCL16-17-A6パリサンジェルマンvsルドゴレツ

まずはスタメンから

青がパリサンジェルマン、緑がルドゴレツ(Fig.1)

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Fig.1 パリサンジェルマンvsルドゴレツ

 

パリサンジェルマンは4-2-3-1。

リーグアンでは何回か試しているらしい2センターだが、UCL16-17でのお披露目は初。(第5節のアーセナル戦で20分ほど試してはいる)これはヴェラッティの累積警告に伴う欠場、ラビオが怪我をしていることが大きい。2センターならクリホビアクを選ばない理由はないと思うが、完全に調子を崩しているということだろうか。よくわからない

 

ルドゴレツはいつも通りの4-4-2。

ただし第5節バーゼル戦から右サイドバックミネフをシシーニョに変更しており、この試合でもパロミノをプラストゥーンに変更している。それにともなってモツィは右CBから左CBへとポジションチェンジしている。

 

試合の概要

試合は2-2の引き分けで終える。14分にナタエナウの完璧なクロスからミシジャンが頭絵決めて先制する。猛攻の末60分にはディマリアのクロスからこぼれた球をカバーニがオーバーヘッドで押し込んで同点にする。しかし68分にディマリアのミスからJ.カフーが抜け出し折り返した先のバンデルソンが押し込み再びルドゴレツがリードする。91分にマルキーニョス→ヘセ→ディマリアとつなぎディマリアがゴールを決めてなんとか同点に持ち込んで試合終了。試合自体はパリサンジェルマンがいつものように支配しチャンスを作っていたが、慣れない4-2-3-1の守備と攻撃のミスが目立ってしまいルドゴレツにつけ入る隙を与えてしまった。

 

パリサンジェルマンのビルドアップ-ゲームメイク

この試合に入る前に、第1節ルドゴレツvsバーゼルは0-0、第5節バーゼルvsルドゴレツは1-1。そして両チームともアーセナルパリサンジェルマンには全敗しているため5試合終了時点で勝ち点2同士。つまり第6節で両方とも敗北だった場合その内容にかかわらずアウェーゴール差でルドゴレツが突破となる。そして3位のチームはヨーロッパリーグの決勝トーナメントへと進める。

 

パリサンジェルマンはいつもと異なる4-2-3-1、すなわち2センターだった。これによってビルドアップの形もいつもとは少し異なるものとなった。さらにルドゴレツもこの試合に限っては敗北を恐れることなくふっきれていた。

 

ルドゴレツの守備の基本は4-4-2で今までと変わらないが、プレスできるタイミングでしっかりとプレスを行い、相手のビルドアップ、ゲームメイクを妨害しつつチャンスがあればカウンターアタックまでもっていこうという強気の姿勢があった。


一方でパリサンジェルマンのT.シウバとマルキーニョスはやっぱり自分でボールを運ぶのが苦手という感じがあった。(Fig.2)

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Fig.2 パリサンジェルマンのビルドアップ-ゲームメイク

Fig.2のようにマルキーニョスとT.シウバはあまり両翼に広がらず、ドライブもあまり仕掛けないタイプのCB。なのでT.モッタとマテュイディは頻繁にボールを受けるために下がってしまうことが多かった。

 


こうなってしまえばルドゴレツの2列目の中央ディアコフとアベルマテュイディとT.モッタのマークを気にすることなくこのエリアに受けにくる選手(ルーカス、ディマリア)をしっかり守ればいいという状況になる。ディマリア、ベンアルファ、ルーカスはボールを持って前を向いてから力を発揮するタイプなのでパリサンジェルマンにとってこれはあまり好ましくない状況だった。もちろんマテュイディやT.モッタがハーフラインを超えた位置でボールを受けることもあった。(Fig.3)

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Fig.3 ルドゴレツの中盤の守備

しかしこの位置でボールを受けようとするマテュイディ、T.モッタに対してはほぼ確実にルドレツカの選手は状況にあわせて誰かが寄せていた。

具体的には1列目、2列目の間で受けようとしたらアベルorディアコフ

1列目の外ならJ.カフーorマルセリーニョorバンデルソンorミシジャンというようにどのポジションで受けたら誰があるかがかなり明確だった。

ここが一つルドゴレツの勝負どころで、

マテュイディやT.モッタにバックパスさせたらルドゴレツのディフェンスの勝ち。

マテュイディやT.モッタに前を向かれゲームメイクされてしまったら撤退

という状態だった。

もちろんバックパスさせたらルドゴレツはハイプレスを前線が行なうがここでボール奪取まで行けた回数は数えるほどしかなかった。ただパリサンジェルマンのボール保持攻撃をスムーズに行わせないという意味で一連の守備はかなり効果的だったと思う。

 

ただしパリサンジェルマンの個の能力はやっぱりルドゴレツに比べるとすさまじい。ボールを保持しているとだんだん相手を押し込んでいくシーンも多かった。

 

パリサンジェルマンのチャンスメイク(前半)

今までと違う部分がチャンスメイクにもあった。基本的に引きこもった相手に対してパリサンジェルマンヴェラッティの浮き球をつかって攻略することが多く、次点でサイドバックのオーバーラップを使ったオーソドックスなサイドアタックを使う。

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Fig.4 左からルーカス、ベンアルファ、ディマリア

 

しかしこの試合にはヴェラッティはいない。マテュイディも2センターということもあって前線でプレーできないことが多くなっていた。こうなった時の頼りはベンアルファ、ルーカス、ディマリアのドリブル突破だった。特にベンアルファ、ルーカスのドリブルはかなり驚異となっており、チャンスメイクに大きく貢献していた。ただしベンアルファチェンバレンと同じくドリブルした後にどうするかまではあまり考えてないようなプレーも多くチャンスメイク一歩手前でとまってしまう惜しいプレーが多かった。

 

ルドゴレツの守備に対するパリサンジェルマンの攻撃をまとめると、

ハーフライン付近での守備には苦労していたが、一旦押し込むもしくはカウンターに持ち込めれば個人能力の差で得点できそうな雰囲気が確実にあった。

 

ルドゴレツの弱み

ルドゴレツの強みがアタッカーの俊敏性が高く前への推進力があることだとしたら、弱みは全体的にサイズが足りないことである。アタッカー4人は160~175と小柄な選手ばかりでセンターハーフも176、179とこのポジションにしては小さく、サイドバックも同様に160cm台である。よってセットピースは結構死活問題で、カバーニマルキーニョス、T.シウバ、T.モッタ、マテュイディ、ムニエルがエリア内にこられるとかなり困る。前の試合はディマリアのFKからカバーニという形だったが、この試合もコーナーキックで何度もT.シウバはゴールに迫った。

 

それでも前半を失点0に抑えたのはストヤノフのナイスセーブが多かったこと、最終ラインのブロックが冴えていたこと、そして運の要素も大きかったと思う。

 

パリサンジェルマンのチャンス(前半)

7m10T(7-21-7M)Grade4

7m20T(7M-9)Grade4

8m10CK(7-5)Grade4

18m00P(8-21-7)Grade4

19m00CK(21-7-8)Grade5

26m10P(2-8)Grade4

28m10T(7-11)Grade5

31m10CK(7-2)Grade5

34m20CK(7-2)Grade5

38m50P(21-9-11M)Grade4

41m30P(5-21-7)No Penalty

43m50P(21-11-14M)Grade4

 

これだけチャンスがあったにもかかわらず前半に決めきれなかったのは衝撃だった。

パリサンジェルマンの守備、ルドゴレツの攻撃

前半のルドゴレツの攻撃をまとめると、基本的にパスでボールを安全に回せる選手がいない。したがってロングボールを使ってサイドハーフまたはサイドバックがクロスを上げるか、カウンターアタックしかないというような状況だった。

パリサンジェルマンは前線からプレスを行うことももちろんあったが、ルドレツカはすぐにロングボールを蹴ってしまうのでここでは割愛する。

パリサンジェルマンの中盤の守備はいつもの4-1-4-1とはちがって4-4-2なので一応書いておく。

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Fig.5 パリサンジェルマンの中盤の守備

 

基本的にはベンアルファカバーニで相手のCBを監視する

そしてもツィサイドでボール保持した場合にはT.モッタがアベルを監視、マテュイディがゾーンで中央をケア。

いわゆるボールサイドに選手をよせて対角に振られた場合にはスライドで対処しよう!という感じ。J.ボアテングがいたら簡単にサイドチェンジされてしまうが、ルドゴレツにはそういった類の選手はいないのでこれで十分だった。

 

ルドゴレツのチャンスメイク

基本的には相手の攻撃に対応していたが、前半の失点シーンでは完全に守備の連係不足を見せてしまっていた。(Fig.6)

 

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Fig.6 ルドゴレツの得点シーン

 

この時ナタエナウのクロスからミシジャンが得点するが、T.シウバが目測を誤ったのが悪いだろうか、それともマクスウェルがT.シウバの背中をケアしきれていないのが悪いだろうか。たぶんマクスウェルもクロスが上がった時点でもう少しフォローするべきだったし、T.シウバももっと適切な位置があったのかもしれない。

 

でもそもそも2vs2になってる時点で特にマクスウェルはかなりいろいろなことを考えなければいけない状況になっている。本来T.モッタまたはマテュイディは最終ラインのフォローをしなきゃいけないと思う。これが4-1-4-1だと簡単で中盤の底の選手が最終ラインにはいればいい。けどドブレピボーレの場合はどちらが入るか状況ごとに決めておかないといけない。こういったフォーメーションごとの違いがパリサンジェルマンは少し整理できてないように感じた。

ラビオが怪我がち、ヴェラッティもイエロー貰いがち(累積警告による出場停止が多い)、クリホビアクがフィットしていないという状況ではドブレピボーテで戦うことも増えてくると思うが、ここらへんはパリサンジェルマンの隙になるかもしれない。

 

ルドゴレツのチャンス(前半)

14m30P(12-6-93)Goal

29m50CK(6-27-84)Grade5

 

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第2節のパリサンジェルマン戦でもナタエナウは直接FKから得点しており、前半も少ないチャンスではあったがクロスでアシストしているし、コーナーキックの質も高かった。守備が特にいい選手というわけではないが、フリーでボールを上げさせるとちょっと面倒な選手だった。

後半戦

ルドゴレツはアーセナルパリサンジェルマン相手に計4試合戦っているが、6-0で負けたアーセナル戦を除いた3試合で先制している。ただし先制後は撤退してリードを守ろうとするばかりで結局逆転されてしまうというケースばかりだったが、この試合の前半では撤退せずに相手のビルドアップを妨害し続けた。しかしルドゴレツも後半60分を超えてくるとトランジション後のリトリートは前半ほど早くなくなっていった。

 

これによってパリサンジェルマンは苦戦していた中盤の守備の攻略がより容易になり、あとは撤退したルドゴレツから点を取るのみという状況が多くなった。

 

ただし後半のルドゴレツは撤退してからの守備でとても集中していた。そしてパリサンジェルマンの攻撃もどことなくぎこちない場面が多かった。

 

パリサンジェルマンのボール保持攻撃問題


4-2-3-1と4-1-4-1の差

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Fig.8 ルーカスがボールを持った時の各々のプレーエリア

 

大前提としてルーカスとディマリアはウイングとしてもプレーできるが、得意なエリアはペナルティアークよりも少し内側の部分だと思う。今までの4-1-4-1ではルーカスとディマリアが比較的自由にポジションをとることができたが、4-2-3-1の時にはベンアルファが使いたいエリアとかなり被ってしまっており、両者の良さがあまり生かされなかった。

 

ムニエル、マルキーニョスコンビのサイドバック

 

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Fig.9 左からマルキーニョス、クルザバ、オーリエ、ムニエル

相手を押し込んだ時に重要なのはやっぱりクロスの質だと思う。この試合では基本的にムニエルサイドを使うことが多かった。ムニエルのほうが圧倒的に攻撃参加の回数が多いし、クロス精度は高いからだと思う。しかしこの試合ではそこまでいいクロスを上げられていなかった。そして対面のナタエナウの守備も結構よかったので特に後半はサイドからチャンスを作れていなかった。

 

結果論だが、スタメンはオーリエとクルザバの攻撃参加とクロス精度の高さを利用するべきだったのではと思う場面も多かった。実際に79分、87分にはクルザバとオーリエをそれぞれマクスウェルとムニエルに変更して出場させている。

 

後半はパリサンジェルマンが2点とったものの、ディマリアのスローインのミスから失点してしまい同点で終了した。結局この同点のせいでパリサンジェルマンは2位通過となってしまった。

 

パリサンジェルマンのチャンス(後半)

60m10T(21-11-9)Goal

62m10P(14-21-12-11)No Penalty

76m40P(17-11-14-21)Grade5

77m10CK(7-2)Grade4

91m40P(5-22-11)Goal

93m20P(8-22-9)Grade4

 

ルドゴレツのチャンス(後半)

68m20T(22-88)Goal

 

余談

ルドゴレツは少ないチャンスを生かして2ゴール決め、パリサンジェルマンは非常に多くのチャンスを作り続けたが同点にするので精一杯だった。アーセナルとの試合では結果は引き分けだったもののパリサンジェルマンの強さが出ていたが、ボールを保持した時どうするかというのが課題のチーム。