UCL16-17-A4-バーゼル.vs.パリ・サンジェルマン
まずはスタメンから
バーゼルはお馴染み4-1-4-1。
右サイドバックのM.ラングが足首の軽傷のためガベルがスタメンとなっている。
パリサンジェルマンも4-3-3。
中盤の構成を3節のバーゼル戦と変えており、T.モッタをピボーテ、ヴェラッティ、マテュイディをインサイドハーフに置いている。またオーリエも負傷のためムニエルに変更している。
試合の概要
試合は1-2でパリサンジェルマンが勝利した。41分にルーカスのファーへのコーナーキックからムニエルがシュートかパスかわからないようなボールをエリア内にいれマテュイディがうまく合わせて先制する。75分にはツフィが35mほどの位置からうったロングシュートが入り、試合を振り出しに戻したが、89分にラビオのクロスからムニエルがエリア外からハーフボレーし、ゴールに吸い込まれた。この試合の後半の2ゴールは間違いなくゴラッソだった。試合としては相変わらずバーゼルの守備に苦労しているような様子があったパリサンジェルマンだったが、均衡を破ってからの後半は前がかりになったバーゼルのスペースをよく突いてチャンスを作り続けていた。
バーゼルの守備
バーゼルの守備の基本は第3節と同じで、ディエとデルガドが交互にピストンすることで相手のビルドアップ、ゲームメイクを妨害していた。(Fig.2)
Fig.2 バーゼルの4-1-4-1システム
この方式についての詳細は前の試合で述べたので割愛するが、とくに前の試合と異なった部分についてみていく。
そもそもこのグループにおける第3節と第4節ではチームの事情が全く変わってきている。
3節終了時点での勝ち点はアーセナル、パリサンジェルマンが勝ち点7、バーゼル、ルドゴレツが勝ち点1という状況である。そのため、第4節で勝ち点差を縮めなければ、すなわち勝利しなければグループステージ突破は事実上不可能となる。したがってバーゼルは第3節とくらべるとよりリスクを負わなければいけない部分もでてくる。
バーゼルがとったリスクはサイドハーフをできるだけさげないだった。
メリットは純粋にボール奪取したときにカウンターに関与できる選手を増やせること。
デメリットはSBやCBの負担が増えてしまい失点の可能性が増えること
これについては結果論になってしまうが、メリットよりもデメリットのほうが強く出てしまっていた。(Fig.3)
Fig.3 パリサンジェルマンのボール保持攻撃の例
サイドハーフを高い位置に保つためには最終ラインにより的確な判断が求められる。
例えば6バックになるのであればサイドバックはディマリアとルーカスのマークを行い、サイドハーフがサイドバックの動きをみればいい。
しかし4バックのまま守るのであれば、内側に絞ってきたディマリアやルーカスに対してバランタもしくはスヒーが監視しなくてはならない。このときサイドバックのガベルもしくはトラオレはムニエル、クルザバのオーバーラップに備えつつ中央のエリアをケアしなければならない。
この判断を間違えればパリサンジェルマンに攻めるスペースができるため、そういった部分を攻めれればパリサンジェルマンはボール保持攻撃成功となる。うまくチャンスにつながることはなかったが、第3節よりもパリサンジェルマンのボール保持攻撃はすこしだけ質があがっていた。
バーゼルの攻撃
ここでは守備からのカウンターとボール保持攻撃に分けてみていく
まずはカウンター
正直第3節のようにチャンスを多く作ることはできていなかった。守備システムやシステム遂行能力は確かに高いが、欧州の強豪相手にカウンターで脅威を作るためには最低でも1人はカウンターに優れた選手がいないと厳しい。
ディエもデルガドもシュテフェンもビャルナソンもよく走るが、ボールを持った時のプレー精度や個人能力の強さというのはあまりみられなかった。そういう意味ではサイドハーフに素晴らしい個人能力を持つ選手がバーゼルから生まれたらチャンピオンズリーグレベルでも活躍できるチームになると思う。
Fig.4 左からビャルナソン、S.ディエ、デルガド、シュテフェン
ボール保持攻撃
こちらについては3節と同様だが、基本的にパリサンジェルマンのハイプレスをみるとすぐにロングボールを蹴ってしまう。当然これもうまくことはなかった。
ロングボールもクルザバ側に蹴ることが多かった。これは純粋にムニエルとクルザバのエアバトル能力を考えた時にクルザバに蹴ったほうが有利になるであろうという計算だったと思うが、クルザバは結構競り勝っていた。したがってほとんど前半のバーゼルの攻撃は無効化されていたといっても過言ではない。守備面では非常に整理されたチームだと思うが、攻撃面ではちょっと物足りない部分も多い。
こんな感じで前半のバーゼルのチャンスはわずかに1つのみ。
バーゼルのチャンス
14m20P(34-4-10)Grade4
パリサンジェルマンのチャンスメイク
第3節ではあまりクローズアップしなかったが、パリサンジェルマンはボール保持攻撃では苦労していたもののカウンターの場面では自分たちの色をしっかりと出していた。カウンターアタックの脅威についてはこの試合でも同じことがいえた。一方で前述したようにバーゼルは少しリスクを負った守備を行っていたのでボール保持攻撃からも一定のチャンスを作り出すことはできていた。
パリサンジェルマンのチャンスメイク
15m00P(8-12)Grade4
18m10T(11-6-9)Grade5
19m50T(8-6-14-7-6)Grade4
41m10CK(7-12-14)Goal
ルーカスもディマリアもボール保持攻撃においてあまり影響を与えられるような選手ではなかったが、カウンターの場面ではとにかく厄介な選手になる。
一方でボール保持攻撃においては相変わらずヴェラッティの浮き球もしくはマテュイディの裏抜けが基本の形となっていた。
チャンス量は決して多くなかったが、41分にムニエルのシュート性のボールをマテュイディがうまくずらして先制する。毎回いっているかもしれないが勝ち越しゴール、特に先制点は非常に重要である。
後半の変更
パリサンジェルマンの選手変更
前半のうちにA.アレオラとT.シウバが衝突しT.シウバが負傷したようなので、後半開始からクリホビアクがCBを務めた。
特にパリサンジェルマンも後半おしこまれるような展開にもなっていなかったので、この試合でのT.シウバやマルキーニョスとの比較は難しいので割愛する。
バーゼルの守備システムの変更
バーゼルは基本的にハイプレスをしないで、相手に気持ちよくボール循環させないような守備をしている。ただし勝つためには最低2点が必要なバーゼルにとってこの守備は守備的すぎる。そのため後半からバーゼルは高い位置からでもプレスを行うようになった。(Fig.5)
Fig.5 バーゼルのハイプレス
結果から言うとバーゼルのハイプレスが連動していたかというと非常に微妙だった。もちろん人数を割いているのでうまくいくこともあったが、躱されてしまえば中盤の広いスペースをただ相手に提供しているだけである。
実際ヴェラッティやT.モッタがプレスを受けている選手をサポートすることでバーゼルのプレスを躱すことに成功していたし、あまりうまくいっているとは言えない状況だった。
したがって後半のパリサンジェルマンはボール保持した状態でもハイプレスを躱したときには中盤に広いスペースをマテュイディ、ディマリア、ルーカスに提供することができるようになっていた。これに加えて元々のカウンターアタックからのチャンスメイクもあるので後半はパリサンジェルマンが多くのチャンスを作り続けた。
https://www.youtube.com/watch?v=HsI64OHjk8I
バーゼルのシステム変更
バーゼルは58分にドゥンビア、デルガドをヤンコとツフィに変更した。それぞれ同じポジションで同じ役割をになっていたことから、この交代は前線をフレッシュにする狙いがあったのだと思う。
一方で69分のガベル : RSB⇔シュボラル : FWの変更はより攻撃的にいくよという合図になった。この時のフォーメーションは以下のようになった。(Fig.6)
主な変更は4-1-4-1から4-4-2へと変更したこと。T.ジャカがRSBにはいり、ツフィとディエがCHとしてプレーし始めた。
実際にこのシステム変更が嵌ったという印象はなかったが、75分のツフィのゴラッソでチームが息を吹き返したのはいうまでもない。それから2度大きなチャンスを作ったバーゼルだったが逆転には至らなかった。
ちなみにこのうちひとつはツフィのフリーキックからファーのヤンコが撃ったシーンと、シュボラルがエリア内で倒されたシーンになるが、いずれもムニエルのミスが関与していた。さいわいシュートは外れPKの判定にもならなかったが、その部分についてはパリサンジェルマンはかなりラッキーだった。
パリサンジェルマンのチャンス(後半)
46m20T(6-9-11-9-7)Grade5
51m10T(11-6-11-12)Grade4
56m50P(5-12-8-12-11-20-7-9)Grade4
63m00T(11-6-11)Grade5
78m10FK(7)Grade4
80m20T(6-11-7-11-9)Grade4
86m20T(?-22)Grade4
89m00P(11-25-12M)Goal
92m00T(8-9-11)Grade5
後半のチャンスの数は前半の倍以上。質も高かったにも関わらず、後半のゴールは89分まで待たなければならなかった。1ついえることはカバーニの決定力がやっぱり物足りないということ。しかしバーゼルの守護神バツリークの存在はこのグループの相手チームを常に悩ませてきたのも非常に大きい
この試合に限らず、アーセナル、パリサンジェルマンに作られた決定機で毎試合のようにかなりセーブしているのはもはや調子の良いレベルを超えている気がする。
現在27歳だがもしかしたら4大リーグで今後活躍する機会があるかもしれない。
ちなみに足元の技術についてはそこまでなく、特にミドルレンジ以上のパスの精度は低いが、単純なシュートストップ能力が高い。
Fig.7 バツリーク
余談
この試合が終わった時点でバーゼルの決勝トーナメント進出の可能性は消え、パリサンジェルマンは突破が確定した。ただしチャンピオンズリーグはグループリーグで3位以内にはいればヨーロッパリーグの決勝トーナメントに回れるので、ここから一気に手を抜き始めるということはないだろう。