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UCL16-17-A3-パリ・サンジェルマン.vs.バーゼル

UCL16-17-A3-パリサンジェルマンvsバーゼル

まずはスタメンから

 
   

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青がパリサンジェルマン、白がバーゼル(Fig.1)

Fig.1 パリサンジェルマンvsバーゼル

 

パリサンジェルマンはいつも通りの4-3-3

LSBをクルザバにする以外の大幅な変更はなし。

 

バーゼルアーセナル戦で大火傷した5-3-2ではなく、4-1-4-1に変更。

おそらくこの形がバーゼルの基本形。ディエとデルガドがこの試合におけるキーマンとなった。

 

試合の概要

試合は3-0パリサンジェルマンが勝利する。40分にマテュイディのクロスからディマリアが先制した。62分にオーリエのクロスをスヒーがクリアミスしてしまいルーカスがこぼれ球を押し込む。93分にM.ラングがカバーニを倒してしまいPKとなる。これをカバーニが決めて3点差とした。試合結果からは、パリサンジェルマンの圧勝のようにもみえるが試合自体はバーゼルの守備に終始苦労していた。またバーゼルは3パリサンジェルマンのゴールバーを叩いていたことからもチャンスはしっかり作っていた。

 

パリサンジェルマンのビルドアップ、バーゼルの守備

 

バーゼルは敗北したが、この試合に対するバーゼルの姿勢は間違いなく正しかった。

 
   

 


その大部分はバーゼルの守備システムをみればよく理解できる。(Fig.2)

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Fig.2 バーゼルの守備その1

バーゼルの守備の基本形は4-1-4-1で、

ドゥンビアがヴェラッティ(中央にいる場合のみ)

ビャルナソン、シュテフェンがクルザバ、オーリエ

ディエ、デルガドマテュイディ、ラビオを監視する形となっている。

 

ヴェラッティが中央以外、すなわちラビオが中盤の底、ヴェラッティインサイドハーフというパターンもあったがそのパターンについては後述する。

 

 

 

当然これだけではCBは容易にドライブすることができてしまうため、Fig.2のようにT.シウバがドライブしてきたときには守備の形を変えて対処する(Fig.3)

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Fig.3 バーゼルの守備その3

T.シウバがドライブしてきた場合にはディエを1列目にし、T.ジャカがディエが担当していたスペースを埋めるという動きをおこなう。逆についても同様で、マルキーニョスがドライブしてきた際にはデルガドが1列目にあがるという方式を採用していた。

 

 
   


結果から言うとこの守備はとてもうまくいっていた。とにかくディエとデルガド(Fig.4)が1列目に上がるタイミングと中盤の選手がマークチェンジを行うタイミングがぴったりで、なかなかパリサンジェルマンの選手たちはパスコースを見つけることができないでいた。

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Fig.4 S.ディエ(左)、デルガド(右)

パリサンジェルマンの狙い(Fig.5,6)


図はマルキーニョス側からT.シウバ側にボールが移った時のバーゼルのマークチェンジの様子を示している

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Fig.5 パリサンジェルマンのゲームメイク(5m23)

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Fig.6 パリサンジェルマンのゲームメイク(5m26)

 

Fig.5ではマルキーニョスへの牽制のためにデルガドが出ていたが、T.シウバがボールを持つとディエが牽制をかけることになる。

 

このマークチェンジのときに生じるスペースを生かせばパリサンジェルマンはうまくボールをすすめることができそうだということがわかる。実際に何度かパリサンジェルマンはこの形でラビオ、マテュイディにボールを供給したが、T.ジャカもすぐに寄せてきてしまうため効果的なチャンスメイクになることはなかった。

 

ほかにもラビオが中盤の底に移動しヴェラッティインサイドハーフの位置でプレーすることもあったが、ヴェラッティに対してはより自由を与えないようにしており、ヴェラッティが効果的なプレーができない状態となっていた。

 

こうなった時のパリサンジェルマンヴェラッティがひたすら裏に浮き球を供給するのが鉄則のようになってるが、これはほとんど効果的ではなかった。

 

実際にボール支配率はパリサンジェルマンが65%、バーゼルが35%だったが、

ボールポジション(ボールの平均位置)はパリサンジェルマン側が48%、バーゼル側が52%となっていた。

 

さらにファイナルサードへのパスをみても押し込んでるような形ではなく最終ラインの裏に出すような縦パスが多いことがわかる。Fig.7

 

 
   


(バイエルンバルセロナのようなボール保持攻撃に強みを持つチームの場合はもっと横パスの数が多くなる)

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Fig.7 パリサンジェルマンファイナルサードへのパス

 

こんなかんじでバーゼルは押し込まれてないときはかなり優れた守備を行っていたと思う。

 

パリサンジェルマンのチャンスメイク、バーゼルの撤退守備

 
   


前述のようにパリサンジェルマンはほとんど効率よく前に進めていなかったが、ロングボールを通して前半のうちに数回だけ相手を押し込むことができた。この時のバーゼルの守備の形は6-3-1。(Fig.8)

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Fig.8 バーゼルの撤退守備

バーゼルは撤退した時にサイドハーフのシュテフェンとビャルナソンが最終ラインに落ちて6バックのようになっていた。これでワイドな動きを十分にカバーしようというのがバーゼルの狙いだったと思うが、前半40分にミスがでてしまった。

ラビオのスルーパスに抜け出したマテュイディはそのままクロスを放り込みディマリアが先制点をあげた。

 

この一連の得点シーンにおけるマテュイディの裏抜けはバーゼルにとって悔やんでも悔やみきれないミスとなってしまった。(Fig.9)

 

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Fig.9 パリサンジェルマンの得点シーン。

 

このタイミングではシュテフェンとビャルナソンのサイドがチェンジしてるがそこはあまり重要ではない。本来シュテフェンはマテュイディの裏抜けにしっかりついていかなくてはならないが、この時点で完璧にマークを外してしまっている。

 

やっぱり守備が本職ではない選手に最終ラインのワイドな位置を守らせるのは結構酷だと思う。

 

バーゼルのミスからだったが、マテュイディの裏抜けスキルはこういった均衡状態を破る本当に重要な武器であるし、ラビオのスルーパスも素晴らしかった。

 

前半のバーゼルは撤退守備のこのミス以外はほぼ完璧で、パリサンジェルマンにとってはボール保持攻撃でつくった最初のチャンスとなったがそれがゴールにつながったという意味では幸運だったといえる。

 

パリサンジェルマンのチャンス

29m40T(7-6-7-11)Grade4

35m30T(20-9-25-7-25M)Grade4

39m00P(20-14-20-25-14-9-11)Goal

46m40FK(11-9)Grade4

61m00T(9)Grade5

61m20P(6-7-14-19-7)Goal

90m00T(21-6-19-6-22)Grade5

92m10PK(9)Goal

 

バーゼルのチャンスメイク

バーゼルはボール奪取してからすぐにボールを前に運ぼうとしていた。カウンターという形でチャンスをつくることはなく、チャンスの数は多くなかったがなぜかチャンスの質は高かった。

バーゼルのチャンス

4m40CK(10-8-5)Grade5

9m50P(8-88-11)Grade5

10m00P(88)Grade5

35m10P(17-6-5-10-88)Grade5

65m00FK(10-17)Grade5

 

このうち4分のコーナーキックからのM.ラングのヘディング、35分のデルガドのクロスからのドゥンビアのヘディング、65分のデルガドのクロスからスヒーのヘディングはすべてポスト直撃の大チャンスだった。ほかの2つはGK : アレオラのナイスセーブだった。

 

これで1点も入らないのはあまりにも不条理すぎた。特に前半だけで4回作ったチャンスのうち1つでもきまっていればこの試合は分からなかったと思う。

 


パリサンジェルマンの中盤 : マテュイディ、ラビオ、クリホビアク、ヴェラッティ

 

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とにかくラビオが21歳だということが信じられない。成長が限りなくうまくいったフェライニのような印象。

大きな強みは体の大きさを生かしたフィジカル能力だが、カウンター時にも駆け上がれるだけの基本的なスピードを持っているし、スピードに乗った状態でもパス精度も判断もあまり落ちない。守備もちゃんとしてくれる。等この試合での印象はとてもよかった。

 

大きな怪我がなければまちがいなく世界最高の中盤になれるだけの素質を持っていると思う。

 

クリホビアクほどの選手がなぜ試合にでれないか結構考えてみたところ、この試合で少しわかってきた。ひとつはクリホビアクは2センターでプレーする機会が多く、多分3センターの底でプレーする機会はあまりなかったのだと思う。

2センターをトップレベルでこなすには守備のためのフィジカル、ビルドアップ能力(3センターに比べてロングボール能力も多分必要)、攻め上がるタイミングと運動量などバランスがとれた選手が求められるの。

 

3センターはいくらか分業できる。ピボーテは守備力とビルドアップ能力が必要でなによりも安定感があるとよく、攻め上がるためのダイナミックなプレーは必要ない。(ブスケッツ、X.アロンソ等)

一方でインサイドハーフにはヴェラッティのようなパス能力、マテュイディのようなダイナミックな動き出しといったより攻撃のスキルが求められる。

 

クリホビアクはボールを刈りに行くのが守備のプレースタイルだが、インサイドハーフを務められるような攻撃能力はない。しかしピボーテで使うにはリスキーなプレーもまだ多いように感じる。T.モッタは確実に総合力だけでいえばクリホビアクに負けているが、ピボーテとしてはクリホビアクよりは適任といえる。

 

もちろん来シーズン以降クリホビアクがフィットしていく可能性はあると思うが、ラビオの台頭は状況を難しくしてしまうかもしれない。

https://www.youtube.com/watch?v=nbaSCd2BPTE