UCL16-17-A3-アーセナル.vs.ルドゴレツ
UCL16-17-A3-アーセナルvsルドゴレツ
まずはスタメンから
赤がアーセナルで緑がルドゴレツ(Fig.1)
Fig.1 アーセナルvsルドゴレツ
アーセナルはいつも通りの4-2-3-1
サイドバックをモンレアルからギブスに、2センターをコクラン、S.カソルラなどマイナーチェンジはしているが基本の形に変化はない。
ルドゴレツもパリサンジェルマン戦と同じ4-4-2。
チームの色は守備からのロングカウンター
試合の概要
試合はアーセナルが6-0で勝利する。13分にA.サンチェスの素晴らしいループシュートで先制後、42分にウォルコットのミドルシュート、47分にギブスのクロスをチェンバレンが押し込み、56分、83分、87分にエジルが決めた。アーセナルはボールを保持した状態でもある程度のチャンスを作っていたが、ハーフラインからボールを奪取し上手くカウンターにつなげていた。
1アーセナルのビルドアップ、ゲームメイク
アーセナルのビルドアップ
パリサンジェルマン戦でもそうだったように、ルドゴレツは前線から積極的にプレスをかけることはほとんどない。したがってアーセナルは簡単にハーフラインまでボールを運べた。
アーセナルのゲームメイク
パリサンジェルマンはルドゴレツの4-4-2に前半少し苦戦していた。アーセナルも序盤は苦労していたが、セオリー通りに崩すことで大きなチャンスは作れないものの小さなチャンスを作り続けた。(Fig.2)
Fig.2 アーセナルのゲームメイク
基本的に4-4-2は結構難しい。例えば2列目のサイドの選手がSB、3列目のサイドの選手がSHをマンマーク気味に監視した場合、中央のCH、CBはかなり多くの状況に対応しなければならなくなる。つまり全体の運動量といわゆるライン間に浮いてきた選手を誰がマークするのか?といった部分で問題が生じやすい。
しかもエジルはライン間でボールを受けるのがとてもうまい。たとえばFig.2のようにコクランからの縦パスをエジルが受け、チェンバレン、ギブス、エジルでサイドを攻略する。
もちろんこういった状態でのクロスは得点につながりにくいが、中央を無理やり崩そうとするよりかはリスクも小さく、得点の可能性はいくらかある。
ほかにもエジルをデコイとしてA.サンチェスにチャンスメイクさせたりしていた。(Fig.3)
Fig.3 A.サンチェスのチャンスメイク
このようにA.サンチェスはFalse9のようにも振る舞えるため、エジル以外を経由して攻撃することも可能にした。
ここらへんのボール保持時の攻撃のパターンは、同じ組のパリサンジェルマンと比べると大分アーセナルのほうが上だなと思った。
ルドゴレツのビルドアップ、ゲームメイク、アーセナルの守備
最初にアーセナルのボール保持攻撃について確認したが、そもそもアーセナルは保持した状態での得点にあまりこだわっていなかった。むしろ相手にボールを保持させてできたスペースをカウンターで潰そうという狙いが見えた。
これは全体のスタッツにも表れていて、前半のボール保持率はアーセナルが45%、ルドゴレツが55%。しかしボールポジション(試合中のボールの位置)はアーセナル側が54%、ルドゴレツ側が46%となっている。
すなわち、ルドゴレツがボールを保持する機会は多いものの、前に進めていないということがわかる。
ルドゴレツのゴールキックおよび最終ラインからのビルドアップに対してアーセナルは強者のチームらしくハイプレスで対抗する
まずはルドゴレツのゴールキックの時の対応(Fig.4)
Fig.4 ルドゴレツのゴールキックに対するアーセナルの対応
基本的にかなり高い位置から4人でプレスをかけていく。このような状態でもGKのストヤノフはロングボールを蹴ることがあまりなかった。しかしこのような場面でモツィがボールをもってもやれることは限られている。そもそもルドゴレツはアーセナルを躱し切るだけのテクニックを持っていないので、ゴールキックスタートの組み立ては非常に苦労していたといっていい。
一方で最終ラインからのビルドアップ(Fig.5)
Fig.5 アーセナルのハイプレス
正直こういったハイプレスはどのチームにとっても厳しい。実際にルドゴレツはアーセナルのハイプレスハイラインに対してほとんど解決策を見出していなかった。
ハイプレスをされた時のもっとも効果的な解決方法はショートパスでプレスを躱し切るだが、ルドゴレツにはそれができなかった。ならばロングボールを前線に蹴るしかないが、ルドゴレツはロングボールを蹴るチームの構成ではない。
というのもルドゴレツの前線の4人はスピードに特化した選手のみで構成されており、いわゆるロングボールの受け皿になってくれるような選手がいない。
具体的には
J.カフー : 173cm, 64kg
マルセリーニョ : 166cn, 65kg
ミシジャン : 173cm, 70kg
バンデルソン : 167cm, 61kg
もちろんテベスのように身長は低いがフィジカルが半端ない選手もいるが、少なくともルドゴレツの前線に特別ロングボールの受け皿になれる選手はいなかった。
こういった事実もあって、ルドゴレツはなるべくならつないでボールを運んでいきたいという感じがあった。当然アーセナルのハイプレスを躱すことはできずにこの試合はアーセナルのカウンターの嵐となる。
アーセナルのチャンスメイク
1点目はまさに相手の攻撃をギブス、ムスタフィがボールを奪取した後のカウンターアタックから生まれた。ムスタフィからチェンバレンA.サンチェスとつないで、A.サンチェスが完璧なループシュートで先制した。ボール奪取してから10秒かかってないカウンターはルドゴレツにとって脅威そのものだった。
ちなみにこのシーンでもオフサイドトラップをかけようとするモツィとラインの位置を上げようとしないパロミノというパリサンジェルマンでの失点時と同じようなチグハグさが見られた。
先制点を得てからのアーセナルは少しペースを落としつつ、ボール保持攻撃、カウンターアタックから追加点に迫ろうとした。前半の序盤ほどのチャンスはなかったが、ウォルコットがエリア外からのミドルシュートを決めて2点差とした。どんなレベルのチーム同士の試合でも1点差ならもしかしたらなにかが起きるかもしれないが、正直このレベル差での2点は非常に重い。逆にいえばアーセナルはあまり苦労せずに2点とれたことで後半非常に楽になった。
アーセナルのチャンス(前半)
8m30P(11-15-7-14)Grade4
11m30T(20-15-7)Goal
25m40P(19-14-11) Grade4
27m40P(24-6-34-7-15) Grade5
33m50T(34-14) Grade5
41m10P(15-11-14M)Goal
44m40P(11-15-7) Grade5
ルドゴレツのチャンスメイク
アーセナルはここまでみると完璧なようにも見えたが不安な部分もあった。
アーセナルは展開するサッカーの都合上オフサイドラインをかなり高い位置に設定している。だからこそ前線からアグレッシブにボールを奪取していたわけだが、最終ラインの裏に出してくるようなパスの対処はより厳しくなってしまう。(Fig.6)
Fig.6 アーセナルのハイラインのデメリット
もちろんほとんどはコシールニー、ムスタフィがきちんと対処していたが、やっぱり試合中に1,2回は裏を抜けられてしまうことが多いアーセナル。
強豪相手にも同じような戦術で臨んでいく場合には、こういったミスがより命取りになる可能性がある。
後半戦
正直2点差がついた時点でこの試合はほぼ終了している。実際ルドゴレツの選手にできることはほとんどなかったし、前半同様アーセナルがボール保持とカウンターからチャンスをつくった。よりルドゴレツは攻める必要があったこと、後半ルドゴレツの戻りが遅くなったためアーセナルにとってより簡単なゲームになった。
アーセナルのチャンス
45m50P(15-3-15)Goal
46m40P(11-14-7-14) Grade4
47m00CK(11-20-11-19-20-6) Grade4
55m10T(6-19-11)Goal
57m30P35-24-35-34-14) Grade4
65m50T(34-11-7) Grade4
67m00P(3-11-34-15-11-7-15) Grade5
70m40T(11-15-9) Grade4
81m40T(17-15-9-11)Goal
86m20P(24-9-11)Goal
87m40T(11-9-11) Grade4
90m40P(35-15-11-15-24M) Grade4
まあこれだけチャンスがあったらこれだけ点差がついてもおかしくないというゲーム内容になった。
♢がインターセプト
+がボールリカバリー
☆が1on1(自分がボールを持ってるとき)
×がタックル
^がエアバトル
を示している。緑が勝利、オレンジが敗北
Fig.7 コクランのスタッツ
Fig.8 S.カソルラのスタッツ
Fig.9 チェンバレンのスタッツ
Fig.10 ウォルコットのスタッツ
このなかだと中盤のコクランの守備貢献度が一番目立っていたが、ウォルコット、S.カソルラ、チェンバレンともに攻撃面で大きく貢献していた。
余談
ルドゴレツは残り3試合で全勝しなければ突破はほぼ不可能となった。逆にアーセナルはあと1勝で突破確定となる。
あまり見所のない試合だった。