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UCL16-17-A2-ルドゴレツ.vs.パリ・サンジェルマン

UCL16-17-A2-ルドゴレツvsパリサンジェルマン

まずはスタメンから


緑がルドゴレツ、白がパリサンジェルマン(Fig.1)

 

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Fig.1 ルドゴレツvsパリサンジェルマン

 

ルドゴレツは4-4-2。試合をみたことはないがチャンピオンズリーグを通して4-4-2であったことからおそらく従来通りのフォーメーションなのだと思う。

 

パリサンジェルマンは4-1-4-1。アーセナル戦と最も異なる部分はマテュイディインサイドハーフでプレーし、ルーカスがウイングでプレーしていること。

試合の概要

試合は1-3でパリサンジェルマンが勝利する。先制点は14分にナタエナウからの直接FKによって生まれた。しかし40分ヴェラッティのスルーパスからマテュイディが決めて同点にすると、

 

 

 

 

 

パリサンジェルマンのビルドアップ、ゲームメイク、ルドゴレツの守備

ルドゴレツの先制点


ルドゴレツは前半かなり守備に重きを置いていた。というのも14分にナタエナウが直接FKを決めたからである。(Fig.2)

 

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Fig.2 ナタエナウのFKによるゴールーシーン

 

FKもたしかによかったが、壁であるカバーニが避けてしまったのがきつかった。どんな形にしてもルドゴレツは先制することに成功した。ルドゴレツというチームは2014-2015のUCLが初出場でその時はレアルマドリーバーゼルリバプールと同組で勝ち点1で敗退しているチームである。もともとUCLレベルで地力を発揮できるほど能力があるチームでもないので、こういった先制点を守り抜くことが非常に重要となる。

 

こういった経緯があったため、失点するまでのルドゴレツは自陣に引きこもることになる。

 

パリサンジェルマンのビルドアップ

ルドゴレツの守備は4-4-2だが、前線から積極的にプレスをかけるチームではない。したがってパリサンジェルマンはハーフライン付近までは簡単にボールを運べた。

 

パリサンジェルマンのゲームメイク

ここからルドゴレツの守備が始まる。ルドゴレツの狙いはとにかく中央を崩されないように守るだった。(Fig.3)

 

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Fig.3 ルドゴレツのハーフライン付近の守備

 

ルドゴレツの守備の約束事は以下の通りである

マルセリーリョとJ.カフーアベル、ディアコフはゾーンを守る。

一方でSHのバンデルソンとミンジャンはSBの位置に忠実にあわせて動く。

 

したがって大げさに言えば6-2-2のようになっているときもあった。この時ヴェラッティマテュイディがフリーになってしまうが、この位置からヴェラッティマテュイディが出し手になる分には特に問題ではないと考えていたようだった。

 

この形だとルドゴレツがボール奪取できるようには設計されていないため、パリサンジェルマンが次第に押し込むことになるが時間稼ぎとしてはありなのかなという印象だった。

 

ルドゴレツは押し込まれると4-4-2から6-3-1へと変化する。(Fig.4)

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Fig.4 ルドゴレツの守備(押し込まれた時)

 

2トップのうちJ.カフーを中盤に落とすことでマテュイディヴェラッティに当たれるようにしている。正確に言えばヴェラッティアベルがプレスかけはじめたらJ.カフーが落ちるといった方が正しいかもしれないが。

 

この形にしてもルドゴレツはボールの回収点を決めていなかった。もちろんパリサンジェルマンとしてはここまでバスを停められてしまうとスペースを探すのがかなり難しかったことは否めない。

 

こうなった時はヴェラッティが最終ラインの裏にスルーパスを出すことがほぼ唯一の攻略法だったが、裏抜けするスペースもかぎられていたため、あまり効果的ではなかった。

 

ルドゴレツのロングカウンター

逆に回数はそれほど多くなかったが、ルドゴレツは何回か自陣から3,4人のロングスプリントを生かしてロングカウンターを仕掛ける場面もあった。

実際同じレベルのチーム同士の試合でルドゴレツが行ったようなロングカウンターが発生したらパリサンジェルマンにとってかなり致命傷だった可能性は高いが、フィジカル的にもテクニック的にも劣っていたルドゴレツのカウンターはうまくいかなかった。

 

 

パリサンジェルマンのチャンスメイク

パリサンジェルマンのチャンス

5m00P(5-11-7-9M)Grade4

11m00P(14-8-6-11)offside

28m10P(5-8-6-8-7M)Grade4

39m50P(6-17-8-6-14)Goal

 

前述のようにパリサンジェルマンはほとんどうまく攻めれていなかった。サイド深くまで攻め込んだとしても6バック相手に効果的なクロスを上げることは難しい。ペナルティエリアの外からミドルシュートを撃つことも多かったが、ゴールが決まることはなかった。

(ミドルシュートに関してはディマリアもルーカスも結構フリーで打ててたので決まる日だったら何の問題もなく決まってた可能性は高い)

 

しかしルドゴレツも守備の時間が長くなるとミスもかならずでてくる。

40分のヴェラッティのスルーパスに反応したマテュイディのゴールもまさにそういった部分があった。(Fig.5)

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Fig.5 パリサンジェルマンの得点シーン

 

オフサイドトラップをしかけたモツィとそのまま残ってしまったパロミノ。正直チーム戦術がわからないのとオフサイドトラップをこういった場合仕掛けるのが正しいのかよくわからないが、少なくとも2人のCBが違った対応をしてしまってることはミスといえる。

 

パリサンジェルマンとしては前半ほとんど効果的なチャンスを作れていなかったので、この得点は非常に重要なターニングポイントになった。

 

ルドゴレツのビルドアップ、パリサンジェルマンの前線守備

一方でルドゴレツについては非常に単純だった。というのもほとんど押し込められた状態からビルドアップを開始することが多かったので、大部分はロングボールを蹴って陣地回復が精一杯という感じだった。

 


また、ルドゴレツの最終ラインが十分にボールが持てるときでもパリサンジェルマンは前線からしっかりとプレスを行っていた。(Fig.6)

 

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Fig.6 パリサンジェルマンの前線守備

 

仕組みは簡単で、

まずはカバーニがプレスをCBの片方にかける。

そのごボールサイドのルーカスまたはディマリアがプレス

CHはヴェラッティマテュイディが監視

落ちてくるSHにはオーリエもしくはマクスウェルがそのままマンマーク

 

これだけで簡単にルドゴレツは簡単にボールを手放してしまう。基本的に前線に確率の低いロングボールを蹴ることが多かったが、ルドゴレツの前線もロングボールに滅法強いCFというわけではなさそうだったので仕方がない。

 

またゴールキック時にも高い位置に3人の選手を配置することでボール保持できないような環境を作った。(Fig.7)

 

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Fig.7 ルドゴレツのゴールキック時のパリサンジェルマンの対応

パリサンジェルマンの前線からの守備はかなり統率がとれていたが、そもそもルドゴレツも先制しているためリスクを伴うようなボール保持はしたくないという雰囲気があり、パリサンジェルマンもボール奪取→カウンターアタックときれいにつながることもあまりなかった。

 

パリサンジェルマンの攻撃が停滞してしまった理由

1戦目のアーセナル戦を見てからだと信じられなかったが、2016年の11~12月にかけてエメリのことを解任したがっているサポーターが多かったらしい。おそらくこの試合と似たようなことがリーグアンでも起きているのだと思う。

つまり、パリサンジェルマン相手に正面から殴り合う必要ないというのが、リーグアンのチームの共通解になってるんじゃないかと思う。(もしかしたら全く違うのかもしれない)

 

いままではイブラヒモビッチがいたから強引に攻撃できた部分も多く、ボール保持した状態でもある程度攻撃が機能したはず。イブラヒモビッチの1トップでもカバーニと2トップにできるという攻撃の幅の広さも影響しているかもしれない。

 

また、エメリ監督自身も守備を基本軸に置いている監督でボール保持攻撃に関してはあまり改善させるのが得意な監督ではないのかもしれない。

後半の試合展開

後半に入る前に

そもそもUCLのグループリーグはホーム&アウェイの計6試合でグループ2位までが決勝トーナメントに進める。最大獲得勝ち点数は18だが、勝ち点10を獲得すればほぼ確実に突破できるといわれている。しかし勝ち点8や7では突破できないこともある。いずれにしても最低2勝しないと突破は危うくなる。

 

したがってEURO2016のように勝ち点1でいいという試合ももちろんあるが、勝ちにいかなければならない試合を作らなければならない。少なくともルドゴレツ側はこの試合を勝ちにいく試合と認識していた。

したがって後半は前半に比べてオープンな試合展開となった。

つまり、ルドゴレツはある程度ボールを保持し、前線からも守備を行うようになったということ。これはパリサンジェルマンにとっても好都合な展開であり、ハイプレスからのカウンターアタックや、ボールを保持した状態での攻撃もスムーズにいくようになってきていた。

 

試合がオープンになればなるほど両者が得点する可能性は増えていくが、その分両チームの戦力差がチャンスの量と質にはっきり表れるようになってしまう。すなわちパリサンジェルマンが一方的にチャンスを作り続ける展開に後半はなってしまった。

 

パリサンジェルマンのチャンスメイク(後半)

勝ち越しゴールがきまるのは時間の問題だったが、55分に得たディマリアのFKにカバーニが合わせて2点目を決めた。


このシーンに関してもルドゴレツのミスは致命的だった。(Fig.8,9)

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Fig.8 パリサンジェルマンのFK(50min)

 

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Fig.9 パリサンジェルマンのFK(55min)

 

 

実は50分にもパリサンジェルマンは近い位置からFKを得ているが、なぜかこの時もカバーニのランをだれも見ていない状況になっていた。幸いこのときはファーサイドに蹴っていたので問題が表面化することはなかった。

 

しかし55分のFKでも同じようにカバーニにフリーで走られ、ディマリアも完璧なエリアにクロスを供給し、ゴールが決まった。非常に簡単な形で2失点してしまったルドゴレツ。

 

ルドゴレツのPK

しかし、その直後ルドゴレツもマルセリーニョ、ミンジャンのコンビネーションで右サイドを攻略し、ミンジャンからのクロスをオーリエがクリアし損ねるとエリア内にいたマルセリーニョがこぼれ球を拾い、T.モッタのファールを誘発し、PKを獲得した。

 

この時のキッカーはモツィだったが、PKはアレオラにストップされた。明らかに挙動がおかしかったので緊張していたんだと思う。

 

最大のピンチを脱出したパリサンジェルマンはその直後マルキーニョスのロングボールに反応したルーカスがクロスで折り返し、カバーニがしっかり決めてスコアを1-3とした。

ルドゴレツは得点チャンスについてはPK失敗、失点シーンではライン調整ミスやマークミスなど大事な場面でのミスが目立った。

 

パリサンジェルマンのチャンスメイク

48m30T(14-11-6-11M)Grade4

50m40T(14-9-11)Grade5

51m10P(14-17-14-11)Grade4

54m50FK(11-9)Goal

60m40P(5-7-9)Goal

62m10P(8-6-14-11-14-7-9)Grade4

66m20T(8-6-8-11-9-14)Grade5

78m10FK(11)Grade4

90m00T(36-7-19-36-19)Grade5

 

ルドゴレツには直接FKからのゴール、少ないチャンスの中でのPKなど運はあった試合だと思う。しかしうまく勝ち点に結びつけることができなかった。

 

 

余談

パリサンジェルマンは自分たちの土俵(守備からのカウンター)で戦えれば欧州でもトップクラスに位置すると思う。ただし自分たちの土俵にもってくるまでのプロセスが確立していないのが今季の弱点かもしれない。