UCL16-17-A2-アーセナル.vs.バーゼル
UCL16-17A2-Arsenal.vs.Basel
まずはスタメンから
アーセナルはいつも通りの4-2-3-1。
ただし2センターに関しては、G.ジャカ、S.カソルラ、コクランの3人の中から試合毎に2人選択し、シーズン中にコンビは何度も変わる。
バーゼルは5-3-2。
試合をほとんど見ていないので定かではないが、基本はT.ジャカを除いた4バックを採用しているにもかかわらず、なぜかこの試合だけ3バックを採用した。アーセナル対策と言い切れないのは全く守備が機能していなかったから。
試合の概要
試合は2-0でアーセナルが勝利する。6分にA.サンチェスのクロスに反応したウォルコットが先制点を決め、25分にもA.サンチェスとウォルコットのワンツーからウォルコットが再び決めて2点差とする。幾度もチャンスを作り続けたが、アーセナルは得点することができなかった。本来もっとスコアに差がついてもおかしくなかったが、バーゼルのGK : バツリークが踏ん張った。
アーセナルのビルドアップ、ゲームメイク、バーゼルの守備(前半)
バーセルの守備の形は5-3-2。(Fig.2)
Fig.2 バーゼルの守備
バーゼルの守備の約束ごとは以下の通り
バーゼルの理想形は以上のとおりであるが、うまくいっていた時間は非常に限られていた。
その理由はいくつかある
まずウイングバックがイウォビとウォルコットを監視してしまっていること。これのせいで中盤を3人で守る必要が出てくる。Fig.2のように理想的な形であればいいが、中盤の3人はボールの位置に合わせてマークチェンジと運動量を常に伴っていなければいけない。
しかしバーゼルの5バックは急造システムだったからか、そもそもシステムとして破綻していたからかは定かではないが、バーゼルの中盤はかなり混乱していた。(Fig.3)
Fig.3 アーセナルの攻撃方法
アーセナルのビルドアップは非常に簡単で、G.ジャカを最終ライン付近まで落とすだった。
このときのバーゼルはツフィがG.ジャカを監視するだった。
本来アーセナルの6人をバーゼルの5人で守るために中盤のスライド(運動量)を生かしていたのに、中盤の3人のうち2人がマンマーク要因(フランソン→ベジェリン、ツフィ→G.ジャカ)になってしまうとアーセナルのポジションチェンジに対応できなくなってしまう。
この試合でいえばS.カソルラはフリーになることができていた。本来ウイングバックがサイドバックを監視する形式であればこういった守備も理解できるが、なぜかバーゼルのウイングバックは常にイウォビとウォルコットを監視して中盤の守備にはほとんど参加していなかった。
バーゼルは中盤からボールを回収してカウンターというのがこの試合の目指した形だったと思うが、中盤からボールをほとんど回収できていなかったため、カウンターの形はほとんどなかった。
したがって最終ラインからボールを運ぶ必要があるが、アーセナルのハイプレスによって簡単に壊れてしまった。(Fig.4)
Fig.4 アーセナルのハイプレス
アーセナルの守備の基本形は4-4-2だが、バーゼルの3バック相手にはボールサイドのイウォビもしくはウォルコットが前線にでる。これによって3バックに対してA.サンチェス+エジル+αで相手に自由にビルドアップさせない。
当然その動きに連動してサイドバックとセンターハーフも高い位置から守備を行う。これに対してバーゼルはロングボールを蹴る以外解決策を見いだせてなかった。
ロングボールに対してもコシールニーとムスタフィがハーフライン付近で競り合うことでほとんど負けていなかった。したがってアーセナルは前線でボールを回収し続けることに成功していた。(Fig.5,6)
Fig.6 コシールニー(左)、ムスタフィ(右)のエアバトルの位置と成否
Fig.5の黄色で囲った部分はアーセナルがハイプレスを生かして回収したボール位置である
Fig.6 はCBのエアバトルの位置だが、異常に高い位置で競り合いしていることがわかる。
いずれにしてもアーセナルのハイプレスはかなり機能していた。
アーセナルのチャンスメイク(前半)
前述のように、アーセナルがボールを持った時にはバーゼルの中盤の守備を躱すことに成功し、バーゼルがボールを持った時にはアーセナルがハイプレスでビルドアップを破壊し続けたおかげで前半はアーセナルがチャンスメイクできるシーンがとにかく多かった。
こういう状況になるとアーセナルの攻撃的な布陣はとにかく相手の脅威になる。まずバーゼルの大きな問題はA.サンチェスの動き出しに対してまったく対応できてなかった。(Fig.7)
Fig.7 バーゼルの最終ライン
少なくともT.ジャカがこんな高い位置にいてはいけない。もともと中盤の選手だからこそこれくらいの位置にいってしまうのかもしれないが、こんな状態ではA.サンチェスは抜け出し放題だし、とにかくバーゼルの最終ラインは脆かった。ほぼすべての局面でボロボロだったバーセルは当然、アーセナルにチャンスを作り続けられた。
アーセナルの前半のチャンス
3m50FK(29-7)Grade4
6m10P(29-17-7-17-18) Grade5
6m30P(19-7-14)Goal
25m00P(29-11-19-11-19-11-14-7-14)Goal
32m40P(6-24-14-24-14-19-7) Grade5
35m00P(19-17-11-14-24) Grade5
35m40T(20-11) Grade5
37m20P(18-7) Grade5
40m30P(11-19-14-24-19-17-7-18-7-11) Grade5
前半のうちに2点決めていることと内容の差からいってこの試合はほぼ前半でケリがついたといってもいい。欲を言えばあと1点とりたかった。
ちなみにバーゼルのチャンスは0。
バーゼルの守備(後半)
さすがに前半の内容はやばすぎたので、バーゼルも守備を修正する。(Fig.8)
Fig.8 バーゼルの後半の守備
バーゼルは前線からボールを奪取しようとはせずに、2トップのうちシュテフェンを中盤のラインに加える。すなわち5-4-1になった。これによってアーセナルのボール保持攻撃にたいしてそれなりに対応できるようになった。
一方で前線の1人を中盤のラインに下げるということは、バーゼルがボール奪取してから即座にロングボールでカウンターで攻撃することをほとんど不可能にしていた。本来バーゼルは5-4-1をベースにしつつ、場合によっては5-3-2に変化しながらアーセナルと対戦するべきだったかもしれないが、前半の間に修正することはできなかった。
アーセナルのボール保持攻撃はたしかに停滞してしまったが、バーゼルもまたアーセナルのハイプレスを攻略できていなかったので、後半もアーセナルはボール奪取からのカウンターを中心にしてチャンスを作り続けた。
アーセナルの後半のチャンス
50m10T(11-7-14) Grade4
51m40T(7-11) Grade4
56m20T(19-11-17) Grade5
66m50P(20-19-14-7) Grade5
87m50T(13-29-24-15) Grade5
88m50CK(11-20-7) Grade5
後半のチャンスが前半に比べて少なくなった理由は確実にバーゼルが守備システムを修正したからであるが、それ以外にも多分もう1つ理由がある。
アーセナルは69分を境にウォルコット⇔チェンバレン、イウォビ⇔エルネニー
この交代にともなってアーセナルは以下のような形となる。(Fig.9)
2センターから3センターに変わったかどうかは非常に微妙だったが、重要なことはエジルが左サイドに移ったこと。いままでもアーセナルはエジルを左サイドにおくことはあったが、エジルの良さを最大限に引き出すためにはエジルは中央のほうが確実にいい。
確かにエジルのクロスの質は高いので、サイドでプレーすることもできるが、最大の特徴は中盤と前線をつなげるリンクマンのようなプレーをかなり高いレベルでこなせること。
いうなればゲームメイクからチャンスメイクへの移行が本当にうまい。
しかし、サイドではそういったリンクマンとしてのプレー機会はかぎられてしまうし、エジルが中央に行き過ぎればエジルがいたであろうサイドからカウンターを受ける可能性が高くなる。
前半に2得点しているのであまり無理してもしょうがないという部分はアーセナルとしてあったと思うが、69分を境にぱったりと攻撃が停滞した理由はエジルのポジションチェンジが大きな理由だと思う。
いずれにしてもバーゼルはどの時間帯においても得点できるようなチャンスはほとんどなかった。
バーゼルのチャンス
61m50P(7-15-5-8M)Grade4
63m20CK(7-8)Grade5
87m30P(17-24-9)Grade5
余談
アーセナルはやりたいサッカーをきちんとしており、バーゼルレベルだとほとんど太刀打ちできていなかった。ただしバーゼルは試合の入り方をかなり間違えていたのであまり参考になる試合ではなかった。