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サッカーを視る

主にCLやビッグマッチについて。リーグ戦はEPLが中心

EURO2016-impressions and Technical report-3

EURO2016

UEFA加盟55カ国のサッカー協会から代表チームの監督とテクニカルディレクターによる会議を基に刊行されたEURO 2016テクニカルレポート(英語)について。

テクニカルディレクターのトップはあのアレックス・ファーガソンだったらしい。

 

このEURO 2016テクニカルレポートはUEFA.comで無料で配布されているのでよかったら見てみると面白いかも。内容は各試合の簡単なレポートと本大会の傾向、各チームのフォーメーション、出場時間などをまとめている。

http://www.uefa.org/MultimediaFiles/Download/TechnicalReport/competitions/EURO/02/40/26/69/2402669_DOWNLOAD.pdf

 

ここでは本大会の傾向、すなわちテクニカルレポートについて簡単にではあるが紹介する。

 

いくつかの試合と選手のインタビューを基にして、本大会は守備がとても重要であったことを示す。そして明暗を分けたのは、相手の守備戦術に対応した攻撃を行えるか、または相手の攻撃に対応した守備戦術を整えられるかは非常に重要であった。

アイスランド戦後のイングランドのケーヒル

「我々は大部分の時間ボールを支配し続けたが、アイスランドの守備ブロックを崩すことはできなかった

come-on-utd.hateblo.jp

 

フランス戦後のアイルランドのコールマン

「前半は何とか対応できていたが、後半になるとフランスの攻撃を全く防げなくなってしまった

come-on-utd.hateblo.jp

 

クロアチア戦後のポルトガルのF.サントス監督

「この試合は非常に戦術的な試合だった。ポルトガルは試合を支配しようとしたが、クロアチアがそれを許さなかった。しかし、こちらもクロアチアに試合を支配させなかった。相手はとても優れたチームなので、緊迫した激戦になるとは思っていたよ。この試合への準備を整え、相手の強みには抵抗し、弱みを突こうとした。カウンター攻撃は許さなかったが、こちらの攻撃に関しては改善の余地があったのは確かだ。もっと速くパスを回すべきだったが、そこにクロアチアが立ちふさがった」

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北アイルランド戦後のウェールズのコールマン監督

我々のプレーはまったく良くなかったが、これは北アイルランドが非常に良かったからだ。向こうの奮闘で、こちらにとっては厳しい試合展開になった。いつも通りのプレーをさせてもらえなかった。美しい勝利とは言えないが、それが何だというのだろう? フランスに来て以来、さまざまな勝ち方をしてきたが、これは選手たちの強さを大いに物語るものだ。それにしても、素晴らしい仕事をしてきたオニール、北アイルランドの監督には感服するね。(敗退に)失望しているだろうが、負けたとはいえ見事な戦いぶりだった。おかげで激戦になったよ。こちらはいいプレーをさせてもらえなかっただけに、今日の試合ではチームスピリットが必要だった。多くのものが懸かった試合で、勝利には運も必要だったが、それがめぐってきたのはこちらだった。戦い続けなくてはならなかったとはいえ、道を見失ってもおかしくない展開だったね。」

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イタリア戦後のレーブ監督

「イタリアのサッカーは予想しやすい。中央と両サイドに2人ずつアタッカーを配し、高い位置から仕掛けてくるので、4対4で対応するのはあまりにも危険と判断した。イタリアはサイドから中へボールを入れ、そこから深くえぐろうとする。それを非常にうまくやるが、我々はさせなかった。」

come-on-utd.hateblo.jp

 

 

こういった本大会の背景があるため、テクニカルレポートでは

カウンターアタック

フォーメーションチェンジ

ロングボール

クロス

といった観点から本大会を分析した。

 

ここからはUEFA.comで和訳されていたので、本文についてはそちらを引用した。

 

1. カウンターアタック

UEFA EURO 2008では、流れのなかで生まれたゴールに占めるカウンター攻撃からの得点の割合は46%だった。その後、カウンターの脅威がコーチングの世界で認識されるようになり、戦略が見直されるようになった。上記の割合はUEFA EURO 2012で23%に半減し、フランス大会でも同程度の低水準となった。

また、本大会のカウンター攻撃からの得点の多くは試合終了が近づいた時間帯に生まれている。

 

終盤に生まれたカウンターからのゴール:

 

・ドイツはエジルを中心としたカウンターからバスティアン・シュバインシュタイガーが決めて2-0とし、ウクライナに対する勝利を決定的にした。

 

・イタリアは右サイドのクロスからグラツィアーノ・ペッレが決めるという形で、ベルギーとスペインのいずれも後半ロスタイムに突き放した。

 

ハンガリーオーストリア戦の87分にスルーパスから生まれたゾルターン・シュティエベルのゴールで2-0とし、勝利を確実にした。

 

アイスランドは後半ロスタイムに右サイドでのカウンターからファーポスト付近へクロスを入れて得点。これでグループFを2位で終え、歴史的快挙への舞台を整えた。

 

ポルトガルクロアチア戦の延長27分にカウンターから決勝点を奪った。

 

・ベルギーはハンガリー戦の終盤にカウンターで2点を追加し、勝利を締めくくった。

 

カウンター攻撃からの得点の大半は、試合終盤にゴールを必要とする相手が前掛かりになった状況で生まれたものだった。

均衡を破ったものは非常に少ないが、そういった例も大会序盤にはいくつかあった。

 

トルコのチェコ戦での先制点、ポーランド対スイス戦で生まれたゴール、

そしてアイルランドのマーティン・オニール監督を悔しがらせたベルギーの1点だ。

 

オニール監督は試合後にこう語った。

「我々の攻撃からだった。うちがFKをペナルティーエリアに入れたが、そこから相手のカウンターが始まり、得点した。あのゴールは極めて大きかった。そのあと追う展開になり、逆に何度かやられてしまったわけだからね」

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全般的に、リスクマネジメント戦略の主眼は相手のカウンターを防ぐことに置かれた。

 

グループCのドイツ戦のあと、ポーランドのナバルカ監督はこう語った。

「ドイツが主導権を握っていたことも何度かあったが、あれは意図的に与えたものだ。カウンターでつけ入るスペースをつくるためにね」

これに対し、ドイツのヨアヒム・レーブ監督は、

「我々はポーランドに強みを出させないようにし、カウンターで我々にダメージを与えることを許さなかった」

と話している。

come-on-utd.hateblo.jp

 

フランス大会では、出場チームのほとんどがカウンターを重要な武器として持っていたが、

相手にダメージを与えられたのは基本的に相手が攻めざるを得ない状況になったときだけだった。

 

2. フォーメーションチェンジ

本大会の24チームの中で最も採用されたのは4-2-3-1だったものの

EURO2012に比べてフォーメーションの多様性が生まれた。

 

EURO2012に出場した16チームのうち、

4-2-3-1(7チーム)、4-3-3(5チーム)、4-4-2(4チーム)であった。

(イタリアはEURO2012の開幕戦で3-5-2を使用したがそれ以降では4バック採用のため3-5-2は除いている)

 

一方でEURO2016では、

4-2-3-1(10チーム)、4-3-3(4チーム)と14チームが占めていたが、トルコ、フランスはこの2つのシステムを使い分けていた。

 

アルバニア北アイルランド4-5-1を用いることが多かったが、

北アイルランドポーランド戦やウェールズ戦で3-5-2を用いていた。

 

イタリアはいずれの試合でもブッフォンキエッリーニボヌッチバルザーリユヴェントスコンビを生かした3-5-2を基本としていた。

 

ウェールズはロブソンカヌまたはヴォークスの後ろにベイルとA.ラムジーを配置した3-4-3を用いていた。

 

ドイツの基本は4-2-3-1だったが、イタリア戦では3-4-3を用いてキミッヒとヘクターをウイングバックのポジションに用いた。

 

ハンガリーポーランド4-2-3-1を好んで用いていたが、M.オニール率いるアイルランド4-1-4-14-4-2を使い分けていた。

アイスランドスウェーデンは常に4-4-2を使い続けた。

 

一方でポルトガルは古典的なフォーメーションで語れる様なチームではなかった。

というのも試合中に複雑なポジションチェンジを何度も行った。例えばナニやC.ロナウドのサポートをするために、インサイドハーフがワイドに開いてウイングのような役割をおこなっていたりした。

 

このようにチームに合わせた守備の多様性が確認された大会だった。

 

3. ロングボール

かつてオールボーやオーフス、ビボーの監督を務めたペーター・ルドバク氏は語った。

「奇妙な例外があったね」

 

異なる数試合を分析したテクニカルオブザーバー、デイビッド・モイーズ氏は異を唱える。

「しかし私が見た試合では、多くのチームが後方から攻撃を組み立てようとしていた」

 

ミクス・パーテライネン氏も付け加えた。

「その一方で、後方からの組み立てがうまくいったチームは多くなかった、後方から組み立てられるかどうか、相手にコントロールされている試合が多かった」

 

ハイライト:イタリア vs スペイン

スペインとイタリアが対戦したラウンド16の一戦は、その実例として恰好のサンプルになる。

この試合の前半、アントニオ・コンテ監督率いるイタリアが高い位置から組織的なプレスをかけたため、スペインは後方からのビルドアップに苦労した。

スペインのGKダビド・デ・ヘアグループステージの3試合で記録したロングパスは20本だったが、その数はイタリア戦だけで19本に達した。

自由なプレーを許さない、あるいは正確なパスを出させないために、ほとんどのチームが相手のボールホルダーへ積極的にプレッシャーをかけ、身体を寄せていたとテクニカルオブザーバーは指摘する。

 

モイーズ氏とガレス・サウスゲイト氏は、

「プレッシングの強度によって、相手にリスクの低いプレーを選択させている」

との意見で一致した。

 

すなわち、後方から前線へのロングパスが増えることを意味する。ただし両氏は、“ロングパス=精度の低いプレー”とみなされることを危惧していた。

 

「ドイツが相手エリア内へ達するスピードには目を見張るものがあった」と語ったのはサウスゲイト氏。「それに素早いパスワークや正確なクロス、コンビネーションやスルーパスなど、さまざまな方法を駆使している。彼らはポゼッションを志向するチームだが、私の意見ではどのチームよりも多く突破口を切り開いていた」

(本文、和訳中には記載されていなかったが、ドイツはクロース、ボアテングなど精度の高いロングパスも攻撃の一部に組み込んでいたということを言いたいのだと思う。)

 

テクニカルオブザーバーが受けた全体的な印象は、スペイン代表やバルセロナ、さらにジョゼップ・グアルディオラ監督が率いたバイエルン・ミュンヘンなど、ポゼッション主体のサッカーに注目が集まった数年間を経て、自陣深くでブロックをつくって守りつつ、より直線的に攻撃へ転じるスタイルへの回帰だった。

 

この傾向はデータで立証されている。

EURO2012でロングパス率が10%を下回ったのは16チーム中5チーム。つまり全体の31%だったが、フランス大会ではゼロになった。

 

EURO2012でロングパスを最も多用したのは、アイルランド(19%)とウクライナ(18%)だった。

一方、EURO2016でこの数値を上回ったのは4チームしかない。また、EURRO2012のロングパス率は平均12.8%で、EURO2016では24チームの平均で15.88%に増加した。

 

言い換えれば、ロングパスの頻度が24%増加したことで、徹底的な守備ブロックを敷いて組み立てに時間をかけず、後方から一気に展開する戦術へ逆行している傾向が浮き彫りになる。長いボールを活用する戦術において、GKに果たすべき役割があったのは明らかだった。

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4. クロス

 

テクニカル・オブザーバーズの1人、U-21イングランド代表監督でもあるギャレス・サウスゲイト氏は話した。

「このようなコンパクトな、深い位置でブロックをつくる守り方と、素早い攻守の切り替えにより、ディフェンスの裏のスペースが見つけにくくなった」

「よって、攻撃的な選手と攻撃のメソッドをどうチョイスするかが、監督にとって非常に重要なポイントとなった」

 

トーマス・シャーフ氏は次のように指摘する。

「CBたちは、明らかに中央の突破ルートを封鎖することに力を注いでいた。そのため相手は、たとえ前がかりになっているときでさえ、あまり中央を攻略しようとしなかった。そのエリアではボールを失うリスクが非常に高かったからだ」

 

ミクス・パーテライネン氏も続ける。

「多くのチームが規律の取れた守備でスペースを狭めていた。このため、相手攻撃陣は守備ブロックに突っ込むのではなく、裏に回り込む道を探さなければならなかった。その結果、多くのクロスが供給されることになったのだと思う」

 

この分析はデータに裏付けられている。今回のフランス大会には24チームが出場したため、16チームで戦われたEURO2012より多くのクロス数が記録されているのは当然だ。そのことを鑑みて、公平に比較するには1試合平均のクロス数で見てみるといい。

 

EURO 2012では合計811本、1試合平均26.16本のクロスを記録。

これに対し、EURO2016では合計2079本、1試合平均40.76本となった。

つまりクロス数は56%も上昇しており、どのチームもサイドからの攻略に重点を置いていたことは明らかだ。

 

これは2015-16シーズンのUEFAチャンピオンズリーグのトレンドにもなっており、クロスからのゴールが24%増加。さらに切り返しを含めると、オープンプレーからのゴールのうち35%がサイドからのボールで決まっている。

EURO2016で得点機の多くがクロスから生まれたことはある種の必然だった。

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プレーするサイドと反対の足で入れるインスイング(ゴールに近づく方向に曲がる)クロスは、ディフェンダーとキーパーの間のゴールデンエリアにボールを入れるための貴重な武器となった。アイルランドのウェス・フーラハンは右サイドからインスイングクロスを入れ、ロビー・ブレイディーが頭で合わせてイタリアから得点。

これが決勝点となり、アイルランドは決勝トーナメントに駒を進めることができた

アイスランドのビルキル・ビャルナソンも右アイドから左足でファーポスト付近へ送ったクロスでゴールを演出し、ポルトガルと戦ったチームに貴重な勝ち点1をもたらした。スペインのアンドレス・イニエスタチェコとの初戦で、左サイドから右足でクロス。これをジェラール・ピケが頭で押し込み、終了が近づいていた試合はようやく均衡が破れた。

 

サウスゲイト氏は説明する。

「今までと違うのはクロスを入れるエリアとクロスの種類だ。インスイングクロスが非常に多かった。これは、ウインガーを利き足と反対のサイドで起用するチームが増えている傾向と一致する。また、切り返しがますます主流になり、タッチラインまで持ち込んでサイドぎりぎりからクロスを入れるウインガーはあまりいなかった」

 

選手別では、イタリアのサイドハーフだったアントニオ・カンドレーバが、負傷で戦列を離れるまでの2試合で右サイドから22本を入れた。ベルギーのケビン・デ・ブルイネも1試合につき10本超のクロスを送り、成功率、つまりチームメートに届いた割合は37%に達した。

 

クロアチアの右SBダリヨ・スルナもこれに近い数字を残し、4試合で43本を入れて成功率35%。イングランドとスペインのライバルを大きく上回った。

カイル・ウォーカーフアンフランはそれぞれ14%と12.5%)

 

ドイツのサイド攻撃は、クロス成功率の低さが顕著な特徴となった。最多42本のクロスを入れたトニ・クロースの成功率は21%。トーマス・ミュラーは12.5%にとどまり、両サイドバックの成功率がそれを挟む形となった。

ヨシュア・キミッヒが23%、ヨナス・ヘクターが6%)

 

ペーター・ルドバク氏はこう指摘した。

「明らかにサイドバックウインガーが最大のクロス供給元になっている」

「サイドの選手は、サイドバックが入っていけるスペースをつくるためのカットインを求められている。だが、クロスの数を増やしても、クロスの質はまた別の問題だ」

「だから我々監督としては、ドリブルで駆け上がった最後に良質なクロスを届ける能力を磨くことに注意を払う必要がある。その能力がチームの攻撃力にとって極めて重要な要素になっているわけだからね」

 

後半はまた明日。

内容はどのようにしてゴールは決められたのか?と各試合のMOMと本大会のベストイレブンについて。

明日でEURO2016についてすべて終わりにする予定です。

今後取り扱っていくコンペティションについてはそこで。