サッカーを視る

主にCLやビッグマッチについて。リーグ戦はEPLが中心

EURO2016-impressions and Technical report-1

EURO2016-感想とテクニカルレポート-1

 

ここでは今大会の個人的な感想と個人的に面白かった選手を紹介していく。

また後日、UEFA加盟55カ国のサッカー協会から代表チームの監督とテクニカルディレクターによる会議を基に刊行されたEURO 2016テクニカルレポート(英語)の紹介を行う。

 

1. 個人的な感想

グループリーグ全36試合のうちグループA、Dの3位、4位の試合を除く34試合と決勝トーナメントの15試合の計49試合のレビューを3か月かけてUPしきることができました。

 

全部見た方は少数かと思いますが、たまにアクセスしてくださった方も含めてありがとうございます。もうちょっとブログトップを見やすいものにしつつ、今後も別のコンペティションを上げていこうと思いますのでよろしくお願いします。

(今後取り扱うコンペティションについては別の機会に書きます)

 

今回の大会ルールの変更とその是非について

今大会の最大の特徴は出場枠が16から24チームに増えたことだろう。

純粋なメリットとして出場チームが増加することで、今まで出場できなかったチームが本戦に出場することができた。

アイスランドウェールズスロバキア北アイルランドアルバニアは初出場であるし、ハンガリーは11大会、実に44年ぶりの出場である。

 

ただし、出場チームが増えたことで大会の形式は大きく変更した

1. 24チーム参加型の場合グループリーグの突破は16チーム。すなわち6グループの2位以上+3位から成績上位の4チーム

2’. 優勝までの試合数は6試合から7試合に増加。

 

やはりEURO2016からの大きな変化は3位でも十分に突破できる可能性が生まれてしまったこと。

 

グループリーグで勝ち点いくつ稼げば突破確定?

3試合における勝ち点は0~9までの範囲があるが、3位以上が確定する勝ち点と得失点差の組み合わせは意外と少ない。

 

勝ち点6で3位の場合

これは上位3チームが三つ巴かつ4位のチームがこれらのチームに全敗することが条件である。そもそもこれが起きる可能性は限りなく低い。最近だとUCLでドルトムントアーセナルナポリマルセイユが12,12,12,0と奇妙なこともおこったことがあるがなかなかない

 

勝ち点5で3位の場合

これも上位3チームがお互い引き分けで4位のチームが全敗という場合のみ。上の例と同じく限りなく起こる可能性は低い。

 

勝ち点4以下で3位の場合

勝ち点4は1勝1分1負のみ

勝ち点3は1勝2負または3分

勝ち点2は2分1負のみ

勝ち点1は1分2負のみ

 

勝ち点5,6で3位になるケースは稀であることから、勝ち点4あれば今大会のグループリーグ突破はほぼ確実となる。

 

3位の6チームのうち4チームが突破となるため、勝ち点4は安全圏だが、逆に言えば勝ち点3がボーダーラインになる可能性が非常に高い。

 

勝ち点3同士の争いは得失点差によって決まる。しかし得失点差問題は案外簡単に解決する。

3分の場合有無を言わさず得失点差は0

しかし1勝2負の場合、少なくとも2負の時点で-2以上が確定し、のこりの1勝でこれをカバーできるかどうかにかかってくる。+になる可能性もあるが-で終わる可能性のほうが高い。

 

今大会を例に挙げれば勝ち点3で得失点差0以上が突破条件となった(Fig.1)

 

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 Fig.1 EURO2016のグループリーグ3位の勝ち点および得失点

 

弱小チームがグループリーグを突破するためには勝利すること以上に負けないことが重要であるのはどんな形式のグループリーグでも同じだが、勝ち点3以上で突破の可能性が十分にあるため、1勝2負でもいいじゃん!というチームが多く出てくる。

 

勝ち点3の場合は得失点が非常に重要な要素になりえるので、負けるときは最少失点で!というのが弱小国の共通認識となる。

すなわち1点差で負けてるチームが引き分けに持ち込むために無茶な攻撃をすることはあまりみられず、むしろ守備にまわるというおかしな状況が生まれる。

 

本大会の傾向

これらの事実をまとめる。

1. 弱小国は強豪国に最少得点差なら負けても問題ない

2. 引き分けはとても重要な勝ち点になりえる

3. 最悪1回も勝たなくても突破できる可能性がある。

 

こういった事実は弱小国に勇気を与える。

実際にアルバニアウェールズ北アイルランドアイルランドアイスランドは守備にとてもプライオリティーを置いたチームになった。この中でアルバニアを除く4チームが次のステージに進んだことは記憶に新しい。

 

逆に守備にプライオリティーを置かなかった中堅国、 ルーマニア、ロシア、ウクライナチェコスウェーデンオーストリアグループリーグで4位になったことは、あまり驚くことでもなかった。

 

今大会の発見

前述したように守備に力を注いだチームが活躍しやすい大会ではあったので、さまざまな守備戦術を確認できたという意味ではよかった。特にアルバニアの4-1-4-1、ウェールズの3-5-2、ポーランドの4-3-2-1、北アイルランドの4-4-2、5-3-2、クロアチアの4-4-2、イタリアの3-5-2、アイルランドの4-3-3、アイスランドの4-4-2、ポルトガルの4-3-1-2。

もちろんアトレティコマドリードや一時期のチェルシーよりも堅守であるとは言わないが、守備の基本を学ぶ上で結構いいチームが多かった。

 

今大会の問題点

守備的な試合が増えすぎたことは、エンタテイメントを求めている層からはあまり支持を得られなかった部分だと思う。

また優勝までの 試合数が増えたことで過密日程が続き、準決勝あたりから選手の怪我や累積警告にともなう出場停止によって壊れてしまったチームも多かった。

 

2.中心選手and 有望な若手

2.1. グループリーグで敗退したチーム

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ヒサイ : アルバニア(Albania)

アルバニアは中盤にボールを運べる選手がほとんどいなかったが、その中でも右SBのヒサイはロングボール、ビルドアップの出口としてかなり好プレーを連発していた。さすがにナポリのスタメンだけあってこのチームのなかではかなりテクニックのレベルが抜けていた。

 

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D.アラバ : オーストリア(Austria)

今大会一のポリバレントな選手。守備も攻撃もこのレベルでこなせる選手はなかなかいないが、やっぱり2センターをまかせるには守備能力が少し物足りなかったきがする。バイエルンのようにまわりがいい感じに超人だと潤滑油としては最高だが、EURO2016では期待されていたほどではなかった。

 

 

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ジュバ : ロシア(Russia)

散々なサッカーをしてしまったロシアだが、スロバキア戦は勝つ可能性が十分にあった。ジュバが今後ビッグクラブにいくことはおそらくありえないが、ロシアというチームの中ではそのエアバトル能力でチームを牽引していた。

 

 

 

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イブラヒモビッチ : スウェーデン(Sweden)

もうすこし周りの選手がしっかりしていればもうすこし前線で活躍できたと思うが、如何せんボールを運べる選手がいなかったため、中盤に降りてくるシーンが多すぎた。

 

 

 

 

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E.モル : トルコ(Turkey)

トルコは若手枠。E.モルは出場時間が短かったが、ドリブルのキレとボールの受け方がとにかくすごかった。2016-2017シーズンはドルトムントに移籍しているが思ったほど出場できていない模様。ただし19歳なので今後の成長が期待される選手だと思う。

 

 

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ジンチェンコ : ウクライナ(Ukraine)

ウクライナも若手枠。2016-2017からはPSVに移籍しているが、こちらも所属クラブでは苦戦している模様。ポーランド戦では好プレーも多かったが、何とか伸びてほしい選手。

 

2.2 Round.of.16で敗退したチーム

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モドリッチ : クロアチア(Croatia)

おそらくEURO2016の中でもっともすぐれたセンターハーフだったが、ポルトガルの守備戦術にやられてしまった。ビルドアップ以外でもトルコ戦のミドルシュート、局面で絶対に負けないドリブル、インターセプトの正確さはまさにクロアチアの心臓だった。

 

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ペリシッチ : クロアチア(Croatia)

クロアチアのチャンスメイカーとして今大会調子が良かった選手の一人。カウンター時のスピードとカットインからのシュート、また身長以上にバネがあるので意外とエアバトルも強いのが特徴的。2016-2017はインテルでもすでに7Gをリーグ戦で獲得している。

 

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イェドバイ : クロアチア(Croatia)

クロアチアの若手枠。レヴァークーゼン所属の21歳のCB。EURO2016の出場時間は短かったが、ビダよりはビルドアップ能力があるので、今後のW杯、EUROではスタメンを得る可能性も十分ある。まずはレヴァークーゼンで年間2500分出場することが目標かも。

 

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ララーナ : イングランド(England)

イングランドは中盤の底から最終ラインにかけてかなり不安定だったが、ララーナはいい意味でイングランドっぽくない選手だった。唯一決定機でゴールを決められなかったのが残念だった。

 

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スタリッジ : イングランド(England)

ウェールズ戦の後半でスタリッジとヴァーディーの2TOPにしていなければイングランドは決勝トーナメントにすらいけなかったかもしれない。スタリッジはFWだが、

 

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ナジュ : ハンガリー(Hungary)

ハンガリーの若手枠。若手でありながら中盤の底からパスで運べるタイプの選手。パスで運べる部分が一番のストロングポイントだがドリブルも結構機敏な印象。ただし175cmと少し小柄で守備も不安要素がないわけではないので、インサイドハーフの位置で成長させることができるチームにいればあと2~3年後にCLで活躍している姿が見れるかもしれない。2016-2017はボローニャでスタメン獲得しているらしい。今後の成長が気になる選手

 

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クラインハイスラー : ハンガリー(Hungary)

EURO2016では左サイドハーフで出場していた。ベルギー戦の直前で怪我してしまい試合にでれず残念だった。プレーとしては特にトラップしてから前を向くまでの余計な動作があまりないところがいい部分。ただし局面まではいいプレーをするもののチャンスメイクに難を抱えている印象があったので、そこを改善できないとビッグクラブに行くことはまずない。

 

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S.デイビス :  北アイルランド(Northern Ireland)

北アイルランドは守備に特化したチームだったが、少ない攻撃チャンスのなかで目立ったのはS.デイビスだった。特にセットピースにおいてトリックプレーから作った攻撃チャンスは得点にはならなかったもののよく設計されていた。

 

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J.エヴァンス :  北アイルランド(Northern Ireland)

攻撃面ではボールを積極的に前に運ぶもののあまり効果的なロングボールを出すことができないシーンが何度かあった。しかし守備面。とくにウェールズ戦のベイルのマンマークはかなり完成度が高かった。

 

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ハムシク :  スロバキア(Slovakia)

スロバキアが決勝トーナメントに行けた半分以上の理由はハムシクの個人技がすばらしかったからに尽きる。特にロシア戦のゴールとアシストは完璧だった。攻撃面でほぼ完璧なインサイドハーフだが、スロバキアがさらに上に行くためにはもう一人ワールドクラスが出てくるか監督が変わらなければいけないと思う。

 

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イニエスタ : スペイン(Spain)

スペインのポジティブな要素でもありネガティブな要素。ドイツとスペインはボールを保持したがるチームだが、スペインはよりショートパスとポジションチェンジでチャンスメイクを行おうとする。今大会も結局イニエスタの1on1能力に頼る部分がおおく、イニエスタが代表引退したとするとちょっと困ったことになりそう。

 

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エンボロ : スイス(Switzerland)

スイスの若手枠。バーゼルからシャルケに移籍したフィジカルモンスター。シャルケでも活躍しかけてたが複雑骨折で2016-2017シーズンを棒に振った。脳筋の気配があるので伸びるかどうかは監督次第だと思うが確実に逸材。

 

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G.ジャカ : スイス(Switzerland)

パスの精度が高くそのレンジが広い。間違いなくスイスの心臓だがその分マークもかなり厳しかった。2016-2017ではアーセナルに移籍したが、ここでも主力として活躍している。守備で無茶なタックルも多いため守備はやや不安。ただしフィジカルも十分あるため守備が改善すれば本当の1流の選手になれる要素を兼ね備えていると思っている。

 

 

Round.of.8以降の選手の紹介は明日か明後日にアップします。