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サッカーを視る

主にCLやビッグマッチについて。リーグ戦はEPLが中心

EURO2016-Round.of.16-WAL.vs.NIR

EURO2016-Round.of.16 ウェールズvs北アイルランド

まずはスタメンから

赤がウェールズ、白が北アイルランド(Fig.1)

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Fig.1 ウェールズvs北アイルランド

 

ウェールズはいずれの試合も3バックで臨んでいる。

一方で前線のベイルの相方は定まっておらず、ヴォークス、J.ウイリアムス、ヴォークスが相方の候補である。この試合はヴォークスが先発を勝ち取る。

 

北アイルランドは3バック、4バックを可変的に使うことができる。

亀のように自陣でひきこもることもあれば、ハイプレスでボールを奪いに来たりと、試合によって見せる表情が異なる。このチームを統率するのはマイケルオニール監督であり、試合の展開を予測および対策するのに長けていると思っている。

 

試合の概要

試合は1-0でウェールズの勝利で終える。得点は74分、ベイルのクロスを北アイルランドのマコーリーがオウンゴールしてしまい先制する。試合内容にかぎっていえばRound.of.16の8試合の中で一番つまらなかった試合だったといえる。いずれのチームもビルドアップを苦手としており、ロングボールが飛び交う試合となる。ただし北アイルランドの前線からの守備はよく準備されており、この試合の唯一の注目ポイント。

 

 

 

1. ウェールズのビルドアップ、北アイルランドの前線の守備

北アイルランドグループリーグの時のボールポゼッションは

ポーランド戦が40%、ウクライナ戦が34%、ドイツ戦が29%

一方でウェールズグループリーグのボールポゼッションは

スロバキア戦が44%、イングランド戦が36%、ロシア戦が52%

となっている。

 

試合を見れば一目瞭然だが、データを見ても両チームはボール保持からの攻撃が得意ではないことは明白だった。

 

そういったチーム同士の試合だったが、この試合はウェールズのボール保持率が58%で、ボールを保持していく。

 

この時ウェールズがボール保持した時にどういったプレーをするのか?もしくは北アイルランドがどう対応するのか?がこの試合の一番のキーポイントとなっていく。

 

基本的にウェールズのビルドアップは3バックによって行われる。時々ラムジー、ベイルがサポートにくるがその場合ついてはもう少し先に述べることにする。

 

ウェールズの3バックに対して北アイルランドは左右非対称の形のDFシステムを採用する。(Fig.2)

 

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Fig.2 北アイルランドのビルドアップ妨害

 

かなり歪な形に見えるが、

B.デイビスにはワード、

A.ウイリアムスにはラファーティー、

テイラーにはヒューズ、

J.アレンにはS.デイビス

レドリーにはノーウッド、

グンターにはダラスをあてる単純な形。

 

このときフリーになるのがチェスター。

というか北アイルランドはあえてフリーにさせていたといったほうが正しいだろう。

 

実際にウェールズの3バックのグループリーグのタッチ数を比べてみても明らかで、かなり偏っている(Table.1)。

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ェスター、ウイリアムス、B.デイビスのうち最もビルドアップ能力が低いチェスターにビルドアップをさせる、という北アイルランドの守備の狙いは完璧に嵌っており、

チェスターはフリーになっても、効率的なビルドアップが全くできなかった。

 

ウェールズはボール保持攻撃が得意なチームではないが、北アイルランドのビルドアップ妨害によってさらにボール保持攻撃の精度は下がっていく

 

ウェールズはビルドアップでうまく前に進めなくなると、ラムジーまたはベイルが中盤に下がってきてサポートするという形がグループリーグでもよくみられた。

 

この時ラムジーが下がる場合はC.エヴァンスが、ベイルが下がるときはJ.エヴァンスマンマークでほぼどこまでもついていく。(Fig.3, Fig.4)

 

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Fig.3 ベイルへの対抗策I

ベイルが下がった時、ハーフラインよりウェールズ側だったとしても、J.エヴァンスマンマークする。これによってこの位置でベイルに前を向かせないという目標を達成しようとする。

 

もちろんベイルはかなり自由に動いてくるので、完全に前を向かせないというのは不可能だったが、かなり制限できていたのは確かだった。

 

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Fig.4 ベイルへの対抗策II

一方で前を向かれてしまった場合

この時はJ.アレンが前線に顔を出しているので、S.デイビスがベイルを、J.エヴァンスがJ.アレンを監視する。このときベイルは4人に囲まれているので、ドリブルという選択肢はまずない

したがって、サイドチェンジを行うことになるが、ウェールズウイングバックに対して北アイルランドウイングバックをぶつけているため、効果的なサイドチェンジは生まれなかった。

 

北アイルランドの前線の守備のコンセプトは、ビルドアップが一番苦手なチェスターにいかにプレーさせるかだった。実際にこれはかなりうまくいっていた。

 

しかしこの守備において最も称賛されるべきポイントは、ウェールズが行ってくる対策、例えばラムジー、ベイルが下がってきたパターンをしっかり読み切ったうえで、マークの受け渡しや担当する選手をしっかりと準備しきったことだと思う。

 

そういった意味で北アイルランドの監督は守備面において非常に優れた監督だと思った。

 

最後のページにあるボールの動きと局面におけるプレー状況の記述をみれば一目瞭然だが、ウェールズはGKまたは最終ラインからのロングボールか、チェスター側からビルドアップを進めて、クロスという形がウェールズの基本的な攻め方となる。

 

いずれにしてもウェールズの前半のチャンスは2つのみ。そのうち1つはオフサイドであったことを考えても、攻撃がうまくいっていないことをよく表している。

 

2. 北アイルランドのビルドアップ、ゲームメイク、ウェールズの前線守備

一方で北アイルランドの攻め方は非常に単純である。

 

北アイルランドはボールを保持することを得意としないため、カウンターができる場面を除いては、前線のラファーティーもしくはワードにロングボールを当てるというのが主流になっていく。(Fig.5)

 

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Fig.5 ラファーティーのエアバトルの成否とエリア

 

ラファーティーとワードならラファーティーのほうにロングボールが蹴られる可能性が非常に高く、その勝率はこの試合では非常に高かった。

 

実は北アイルランドは前半でロングボール以外でボールを前に進めた例はカウンターを除いてたったの1回しかなかった。

 

ウェールズの守備は前線から積極的に守備を行うわけではなかったが、北アイルランドは愚直にロングボールを蹴り続けていた。

 

しかしラファーティーのようなロングボールを収めてくれる前線がいたとしてもロングボールだけでボールを前に進めることができる確率はやっぱり低い。

 

当然北アイルランドの前半のチャンス数も2回とかなり限られてしまっていた。

 

仕方のないことだが、

北アイルランドは守備がとても整備されているにもかかわらず、攻撃の駒が圧倒的に不足していた。こういうチームに守備のバランスを崩すことなく圧倒的な個をもつ選手をいれることができれば!と思ってしまう。

 

3. 後半戦

どちらのチームもハーフタイムで陣形をいじるようなことはなかった。

 

ウェールズはビルドアップでうまく前に進めなくなると、ラムジーまたはベイルが中盤に下がってきてサポートするという形がグループリーグでもよくみられた。この時ラムジーが下がる場合はC.エヴァンスが、ベイルが下がるときはJ.エヴァンスマンマークでほぼどこまでもついていく。(Fig.3, Fig.4)

 

ただし62分にレドリーをJ.ウイリアムスに変更してからは戦況が一変する。(Fig.6)

 

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Fig.6 60分以降の陣形

 

前半はヴォークスとベイルが前線でロングボールの受け手になったり、ベイルが下がってきて前線にボールを供給しようとしていたが、正直機能していたとは言い難い状況だった。

 

そこでラムジーとベイルのポジションを少しさげることでボールをよりうまく運ぼうというのが後半のウェールズの狙いだったように思える

 

また、北アイルランド側もこの時間帯になってくると少し疲労が見え始めて前線ほどの強度を持つ守備が保てなくなってくる

 

ウェールズにとっては露骨にチャンスが増えたわけではなかったが、少しだけチャンスの質があがっていた。

 

ならば最初からこのフォーメーションでいいのでは?という人もいるかもしれないが、ウェールズが守備にまわったときJ.アレン、ラムジーが中盤の底を担当するのは非常に勇気のいる決断なので、仕方のない部分は大きいと思う。

 

この試合ではウェールズがボールを持つシーンが多いが、本来堅守からのカウンターチームであるということは忘れてはいけない。

 

 

徐々に均衡が崩れ始めた74分に試合が動く

 

前線に2人残した状態で、ベイルが左サイドから放ったグラウンダーのクロスを北アイルランドのCBマコーリーがオウンゴールしてしまう。

 

試合の明暗を分けたのは攻撃陣の質の差というほかなかった。

というのも、

北アイルランドのダラスやワードは何回かクロスを上げるシーンがあったが、クロスの質が非常に悪く、チャンスには到底つながりそうにないものがほとんどだった。

しかしベイルのクロスは回数ほど多くないが、いずれのクロスも危険度は高かった

 

とはいっても90分のゲームの中でウェールズが得点出来たのは幸運だったとは思う。

 

スイスvsポーランド戦と同様にこの試合もすべての試合のボールの動きと事象を記録した。この試合では前半に35回の攻撃、35回の守備、後半に39回の攻撃、39回の守備が行われた。つまり74回お互いのチームに攻撃チャンスがあったわけだが、試合経過を見ればわかるように緑もしくはLと書かれたボールロストが非常に多い。これは両チームがボール保持した時のビルドアップにおいてロングボール以外の選択肢がなかったことを表している。正直こういうチーム同士の試合は分かりやすいが、娯楽として見るには非常に退屈なものだったといわざるを得ない。

(個人的には守備戦術に集中して見れたので楽しかったが)

 

緑がビルドアップ失敗黄がビルドアップ成功

青がゲームメイク成功ピンクがゲームメイク成功

オレンジがチャンスメイク成功紫がチャンスメイク失敗

となっている。

コメントはどうやってボールを前に進めたor失敗したかを表す。

選手についている○はいいプレーをした選手につけている。

 

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