読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

サッカーを視る

主にCLやビッグマッチについて。リーグ戦はEPLが中心

EURO2016-F2-POR.vs.AUT

EURO2016-グループF2-ポルトガルvsオーストリア

 

まずはスタメンから

赤がポルトガル、白がオーストリア(Fig.1)

f:id:come_on_UTD:20170111021001p:plain

Fig.1 ポルトガルvsオーストリア

 

ポルトガルはシステムを4-3-1-2(4-4-2)から4-3-3に変更。

システム変更に伴ってダニーロ⇔ウイリアム、J.マリオ⇔R.クアレスマと選手を変更する。アイスランド戦であまりよくないプレーをしていたダニーロの代わりに入るウイリアムは結構注目してもいい選手。

 

オーストリアは3人変更。

ドラゴビッチ⇔プレドル、ユヌゾビッチ⇔イルザンカー、ヤンコ⇔サビツァーとしているが基本は4-2-3-1。最大の変化は中盤の底をバウムガルトリンガー、イルザンカーにしたところ。アラバをより攻撃的に使うためにトップ下にしている。

 

試合の概要

試合は0-0で引き分けで終える。ポルトガルはC.ロナウドを中心に再三チャンスを作ったが、PKも含めてゴールはなぜか決まらない。ただしオーストリアのビルドアップもポルトガルの前線からのプレスに壊されてしまい、ほとんど有効な攻撃はできない。内容としてはポルトガルが圧倒的優勢だったが、アルマーのビッグセーブ連発で勝ち点1を得たオーストリア

 

 

1. ポルトガルのビルドアップ、オーストリアの前線からの守備

 

オーストリアはハイプレスを盛んに行うチームであることから、ポルトガルの最終ラインのボールの運び方が試合を分かつ重要なポイントになると思っていた。

 

しかし、

オーストリアはハイプレスを行うことはなかった。

理由はいくつか考えられる。

 

ハンガリー相手にも通用していないハイプレスが、R.ゲレイロ、モウチーニョ、A.ゴメスなどボール運びに適した選手がいるポルトガルに通用するのか?という問題

 

そもそも初めからこの試合で勝ち点3取りに行く必要があるのか?という問題

何回も言っているが勝ち点4で突破確定であるため、この試合は引き分け以上であれば問題はない(勝つに越したことはないが負けると突破はかなり難しくなる)

 

2つのことを考慮すれば、オーストリアがハイプレスをやめたことも理解できる。したがってポルトガルはビルドアップ段階では問題なくボールを前に進めることができた。

 

2. ポルトガルのゲームメイク、オーストリアの撤退守備

オーストリアとしてはポルトガルのゲームメイクをどれだけ妨害できるかが焦点になってくる。

オーストリアの撤退守備は4-4-2であり、ハルニクとアラバを1列目に置いている(Fig.2)

 

f:id:come_on_UTD:20170111021014p:plain

Fig.2 ポルトガルのゲームメイク直前の状態

アイスランドと同じゲームメイク妨害型4-4-2だが、

アイスランドとは異なる部分がある。

 

まずオーストリア側の問題から

 

オーストリアはアイスランドのようにプレスをかけるタイミングが決まっていない。

ポルトガルの選手が1列目の脇でボールを受けようとしたらアルナウトビッチ、サビツァーが妨害しなくてはならないが、時間が経つごとに曖昧になっていく。

 

さらにアラバ、ハルニクもCBにそれほどプレッシャーをかけないため、精度の低いロングボールを蹴らせることはできていなかった。

 

とくにオーストリアのプレスタイミングが決まってないことは結構問題で、ポルトガルは時間に余裕がある中でゲームメイクを行うことができてしまっていた。

 

さらにポルトガルアイスランド戦に起用していたダニーロをウイリアムに変更しており、ウイリアムダニーロよりも格段にパススキルが高く、ゲームメイクに貢献していた。(Fig.3)

 

f:id:come_on_UTD:20170111021022p:plain

 

Fig.3 ポルトガルのゲームメイク方法I

 

あくまで数あるゲームメイクの内の1種類であることを理解してほしいが、

例えば、R.クアレスマがインサイドレーンにポジショニングすることで、ヴィエリーニャのオーバーラップするスペースを作りだし、ウイリアムがロングボールを出すシーンがあった。

もちろんウイリアムピルロ、X.アロンソスコールズよりもロングボール精度は低いが、ダニーロにはないレンジのパスをもっていた。

 

この場合ヴィエリーニャのオーバーラップにはアルナウトビッチがついていくこともあるが、そういった時にはR.クアレスマが下がることでボールを受ける選手を作り出すこともあった。(Fig.4)

f:id:come_on_UTD:20170111021030p:plain

Fig.4 ポルトガルのゲームメイク方法II

 

ポルトガルの強みは、ペペ、R.ゲレイロ、ウイリアムモウチーニョ、A.ゴメスとゲームメイクの基点になれる選手を多く擁していること、C.ロナウド、R.クアレスマのように下がってボールを受けられる選手がいるので、多種多様な形でボールを進めるルートがある。

 

しかもポジションチェンジが多い割には攻守のバランスがあまり崩れることがないため、危険なカウンターを受ける回数が非常に少なくなっている。

 

ただしオーストリアもハーフコートを10人+GKで守っているので中央から崩されることは少なく、ポルトガルはサイドからチャンスメイクを行うことになる

 

3. ポルトガルのチャンスメイク

4-3-3がスタートポジションだが、C.ロナウドはフォワードとしてプレーすることが多く、R.クアレスマはウイングとしてプレーすることが多いため、サイドでチャンスメイクを行っていくのは基本的にR.クアレスマヴィエリーニャ、R.ゲレイロとなる。(Fig.5,6)

 

f:id:come_on_UTD:20170111021039p:plain

Fig.5 ポルトガルのクロス回数とその成否

 

アイスランド戦でもポルトガルのクロス回数は41回とかなり多かったが、この試合でも36回ととても多い。また1on1の位置もサイドに集中している。

 

ポルトガルの特徴として、浅い位置からでもバンバンクロスを入れてくるというのがあり、スペインやドイツのように人数をかけて相手の陣地で攻撃することはあまりないため、チャンスメイクの質は低いが量がとても多くなる傾向になる。

 

f:id:come_on_UTD:20170111021048p:plain

Fig.6 ポルトガルの1on1の位置とその成否

 

特にR.ゲレイロはクロスだけでなく周りとのコンビネーションでチャンスメイクしたりとLSBとしてかなり優秀な立ち回りをしていた。(Fig.7)

 

f:id:come_on_UTD:20170111021059p:plain

Fig.7 R.ゲレイロ

2016-2017ではドルトムントでプレーし始めたらしいが、おそらくこれはかなりいい買い物になったと思う。

(2016-2017UCLのドルトムントはまだあまり見ていないので推測だが・・・)

 

4. C.ロナウドの憂鬱

チャンスメイクの質つまりクロスの質は高いはいえなかったが、ボックス内で待ち受けるのはC.ロナウドとナニなので、クロスの試行回数を増やされるとチャンスの数が相対的に増えていく。

 

チャンス

5m00P(8-17)

11m50P(17)

12m00P(11M)

21m00P(5-7)

28m30CK(20-15-17)

28m30P(8M)

34m20T(20-17-7)

37m00P(20-7)

54m30T(3-7M)

55m20CK(20-7)

77m20P(5-15-5-7)PK

78m40PK(7)miss

84m40FK(5-7)offside

 

12回のチャンスはいずれもゴールになってもおかしくないプレーであった。

 

5分のナニのヘディング

21分のC.ロナウドの右足のシュート

28分のモウチーニョミドルシュート

はわずかに枠外で。

 

28分のナニのヘディング

78分のC.ロナウドのPK

はポストに阻まれる。

 

それ以外のシュートはオーストリアのGKアルマーがセーブした。特にC.ロナウドは54分のミドルシュートを除いてすべてGKとエリア内での1on1だったことを考えれば、外しすぎてしまった。

 

ただしC.ロナウドアイスランド戦でもGKとの1on1の時に空振りしており、あまり調子がよくない時期なのかもしれない。

 

5. オーストリアのビルドアップ-ゲームメイク、ポルトガルの前線からの守備

実はポルトガルのメインは攻撃ではなく、

前線からの守備にある。

 

アイスランドは基本ロングボール攻撃だったので、ポルトガルの前線の守備はあまり印象に残らなかったが、これ以降のほとんどの試合でポルトガルの前線からの守備はキーワードになっていく。

 

基本的にオーストリアはイルザンカーかバウムガルトリンガーが下がることでビルドアップを安定化させようとする。またCBはワイドにポジショニングできるため、両SBはビルドアップの段階から中盤と同じ位置まで前に進むことができる。

ポルトガルの守備の基本形は4-3-1-2だが、相手のポジションによってポルトガルの前線はいろいろな形を見せる。

 

おそらくこの試合において最もベーシックな形は4-2-2-2のプレス。(Fig.8)

 

f:id:come_on_UTD:20170111021112p:plain

Fig.8 ポルトガルのプレスI

 

アルマーがゴールキックを蹴ろうとすると、バウムガルトリンガーもしくはイルザンカーが下がって受けにくることが多い。

この時オーストリアの最終ラインは疑似3バックのようになる。(Fig.9)

 

f:id:come_on_UTD:20170111021125p:plain

Fig.9 ポルトガルのプレスII

 

アルマーがヒンテレッガーにボールを渡すと、A.ゴメスはヒンテレッガーにプレスをかけていく。

ここでナニやモウチーニョがプレス要員でない理由は、

ナニのエリアにはフックスが、モウチーニョのエリアにはバウムガルトリンガーがいるため。

 

すなわちヒンテレッガーのパスコースを潰しつつプレスをかけられるのがA.ゴメスであるため、この場面ではA.ゴメスがプレスをかける。

 

f:id:come_on_UTD:20170111021136p:plain

 

Fig.10 ポルトガルのプレスIII

 

このシーンではモウチーニョがナニにフックスのマークをするように指示している。

本来ナニがフックスのマークをすればモウチーニョがイルザンカーに対するプレス要員となれるが、それができなかったシーン。

 

このようにプレスを回避されてしまうこともあったが、ほとんどのビルドアップを無効化していた。

 

これはポルトガルがかなりの精度で連携を高めているためだろう。予選は見ていないが、予選からコツコツ積み上げてきたものだと思う。

 

ポルトガルのハイプレスは非常に気持ち悪い

というのもほかのチームのように明確な相似性がなく、何を基準として守っているのか何回見てもよくわからない。さらに守備時のR.クアレスマやナニ、A.ゴメス、モウチーニョのポジションは時間ごとに目まぐるしく変化していくのだが、なぜかバランスだけは崩れない。多分ここで書いているプレスの法則も間違っている可能性があるので、これについては時間があればあとでまた5~6例更新するかもしれない。

 

こんな感じでほとんど有効な攻撃ができなかったオーストリアだったが、ボールを前に進めることができた時は決まってアルナウトビッチのワンタッチプレーかアラバのオフザボールの動きからだった。ただしその頻度は非常に少なく、チャンスの数は相対的に減っていった。

 

2m40P(20-11)

40m20FK(8-11)

45m30P(4-7-11-6M)

 

 


余談

f:id:come_on_UTD:20170111021154p:plain

ポルトガルというかポルトガルの監督の哲学がよくわかる試合だったと思う。

とにかく失点は許されないという感じで、チャンスメイクも簡素なプレーが多く、何よりもバランスを重視している。ただし守備は少しアグレッシブで、とにかく相手に気持ちのいい形でビルドアップをさせないことを目標にしているように感じる。

 

だから、

ポルトガルのボール保持攻撃(サイドから確率の低いクロス)→相手のビルドアップ(全力で妨害)→苦し紛れのロングボール→ボール奪取→ポルトガルのボール保持攻撃(サイドから確率の低いクロス)・・・

というパターンの試合が多くなってしまい、ポルトガルは塩試合メーカーとしてサッカーファンからは少し嫌われたのかもしれない。

twitter.com