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サッカーを視る

主にCLやビッグマッチについて。リーグ戦はEPLが中心

EURO2016-F1-AUT.vs.HUN

EURO2016-グループF1-オーストリアvsハンガリー

 

まずはスタメンから

赤がオーストリア、白がハンガリー(Fig.1) 

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Fig.1 オーストリアvsハンガリー

 

オーストリアは予選を勝ち点28の9勝1分で1位で突破しており、得点22失点5と結果だけ見るとかなり強いチーム。予選を見たわけじゃないので正確には分からないが、全試合のスタメンはほぼ固定されており予選と同じような戦い方をしていると予想できる。ただ予選の時に同じ組だったのがロシア、スウェーデンと、本戦では残念なサッカーをしているチームというのは少し引っかかるポイント。

 

ハンガリーは予選で北アイルランドルーマニアに次ぐ3位。プレーオフノルウェーを下して出場が決まったチーム。ただし2年間のEURO予選の間にチームは少しづつ変化している。正直ハンガリーに有名な選手は在籍しておらずどの選手がどういったプレーをするのかもハンガリーのサッカーも全く知らない。

 

試合の概要

試合は0-2ハンガリーの勝利で終える。先制点は61分にクラインハイスラーとサライのコンビネーションでオーストリアの最終ラインを突破し最終的にサライが決める。直後不運な形でドラゴビッチが64分に退場し、オーストリアはバランスが悪い状態で試合を進めることになる。その後はハンガリーがバランスの悪さをついて再三カウンターでチャンスを作り、86分にはプリシュキンから始まったカウンターでシュティエベルが決めて試合を決定づける。前半はどっちに転ぶかわからない内容だったが、オーストリアは不安定な部分が多く、この試合では悪い部分が目立っていた。

 

 

1. オーストリアのビルドアップ、ハンガリーの前線からの守備

オーストリアのビルドアップはアラバもしくはバウムガルトリンガーがCBの間に入るオーソドックスな形。(Fig.2)

 

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Fig.2 オーストリアのビルドアップ(バウムガルトリンガーが下がるver)

 

この形は最終ライン3人でビルドアップが行えること、

両SBが高い位置を取れることが主な利点である。

 

ハンガリーは前線から激しいプレスはかけない4-4-2。

トップのサライとクラインハイスラーはセンターからゲームメイクされないようにゾーンを守りつつ、最終ラインに少しだけ負荷をかけていく。

 

したがって攻撃時に最終ラインを3人で形成しているオーストリアは、2トップの脇からCBがボールを配給していくことが可能になる。

 

この時のハンガリーの守備の特徴はフックス、F.クライン、アルナウトビッチ、ハルニク、アラバにはマンマーク気味で対応していること。

 

したがってCBのゲームメイク能力と前線の選手のオフザボールの動きがオーストリアのボール保持攻撃の質を決めることになる。

 

1.1. まずは前線の選手のオフザボールについて

オーストリアのアルナウトビッチとハルニクはウイングのように大きく開いた位置にポジションをとるが、ゲームメイク時にライン間で受けるために下がってきたり、中央にポジションを移動することはほとんどない。

したがってゲームメイク時の有効な受け手になることができなかった。

 

また、アラバはよくいろいろなエリアに顔を出していたが、チーム全体のバランスが崩れない程度にゲラがマンマークすることで対処していた。

 

したがってユヌゾビッチやヤンコがたびたび縦パスのターゲットになることが多かったが、いずれも効果的なオプションとは言えてない感じだった。

 

1.2. CBのゲームメイク能力

 

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Fig.3 ドラゴビッチ(左)、ヒンテレッガー(右)

ドラゴビッチはスペースがあるとドライブしたり、有効な縦パスを供給していたが、

ヒンテレッガー側からはあまり有効なゲームメイクができていなかった。

 

総合的に見ればオーストリアのゲームメイクはほとんどうまくいっていなかったため、オーストリアのボール保持攻撃の質は非常に低いものとなる。

 

2. オーストリアのチャンスメイク

ボール保持攻撃からチャンスメイクに至る過程はほとんどなかったが、前線からの守備からのトランジションやロングボールからボールを前に進めることもあった。

 

オーストリアは一旦ボールを前に進めることができれば、アルナウトビッチの1on1やフックスのグラウンダーのクロス、アラバのミドルシュートなど選手の個人技をいかすことができている場面も多かった。

オーストリアのチャンス

00m20T(8M)

09m40P(7-8)

34m50L(3-7-10)

40m20T(7-10-7-11)

72m20P(5-20)

92m30FK(8-7M)

 

特に開始直後のハイプレスからのボール奪取→アラバのミドルシュート

34分のアルナウトビッチの絶妙なワンタッチからのハルニクのハーフボレーはとても危険なシーンだった。

 

1つはポスト、1つはキラーイのビッグセーブだったことを考えれば、オーストリアも先制するチャンスは十分あった。

 

3. オーストリアの前線からの守備、ハンガリーのビルドアップ


オーストリアの最大の特徴は前線からのハイプレス。

オーストリアは前線4人+アラバ、バウムガルトリンガーの計6人でハイプレスをおこなう。(Fig.4)

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Fig.4 オーストリアのハイプレス

オーストリアは人海戦術でハイプレスを仕掛けてくるチームで、アラバやバウムガルトリンガーも持ち場を放棄してハイプレスしてくる。

 

ハンガリーのビルドアップはGKのキラーイが参加することが特徴的

この時CBは大きく開き、ナジュ、ゲラはビルドアップをサポートするように最終ラインに入ったりしなかったりする。

そしてクラインハイスラー、ネーメト、ジュジャク、サラーイは前線にポジショニングすることが多い。

 

ハイプレスを躱す方法として、ロングボールで前線でボールを保持する方法とショートパスでプレスを躱していく方法がある。

 

前者ではサライ、ネーメト、ジュジャクへのロングボールに対して、セカンドボールをクラインハイスラーが拾う形が多く確認された。

オーストリアの問題点はバウムガルトリンガーとアラバが2人ともハイプレス要員となる場面が多く、セカンドボールを回収しきれなかったこと。

 

ハンガリーの強みはサイドバックセンターハーフに高度なレベルでビルドアップ-ゲームメイクできる選手がいたこと。

左SBのカーダール、センターハーフのナジュは無名だが、ビルドアップ、ゲームメイクだけ見れば今大会でもカーダールは左SBのBest3には入れる能力を持っている気がするし、ナジュも21才なので今後がかなり楽しみ。(Fig.5)

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Fig.5 カーダール(左)、ナジュ(右)

オーストリアは人数をかけてハイプレスをかけてくるため、ハンガリーの最終ラインは時間と空間が制限されていたが、カーダール、ナジュは特にうまくボールを前進させていた。

 

勿論前述のようにオーストリアはハイプレスからチャンスを作るシーンもあった。

しかしハンガリーはロングボールとショートパスをうまく使い分けており、オーストリアはハイプレスの恩恵をそこまで得られてなかった。

 

4. 魔の5分間


ハンガリーのゴールシーンはまさしくオーストリアのハイプレスをロングボールで躱したプレーがきっかけだった。グズミッチのロングボールをサライが落とし、クラインハイスラーがチャンスメイクする。(Fig.6)

 

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Fig.6 ハンガリーのロングボール時におけるオーストリアの選手配置

 

白いエリアを最終ラインだけでケアするのはほぼ不可能なので、やはりバウムガルトリンガーのポジショニングは本来もっと下がるべきだったと思う。

ここからクラインハイスラーとサライのコンビネーションで最終的にサライが61分に押し込む。

 

正直この時間帯までは両チームは拮抗していたが、失点を許した後のオーストリアは大きく崩れていく。

 

オーストリアはハンガリーアイスランドの2試合で勝ち点4を取ることがグループリーグの目標だったと思う。

しかもユヌゾビッチは怪我してしまい、

失点直前の58分にはユヌゾビッチ⇔ザビツァー、

失点直後の64分にヤンコ⇔オコティエを投入し、

オーストリアは前線をフレッシュに保とうとする。

 

しかしオコティエを投入した直後にオーストリアのドラゴビッチがハンガリーのカーダールをキックし、2枚目のイエローカードをもらい退場する。

ドラゴビッチは64分までに2枚のイエローをもらっており、1枚目は妥当だったが、2枚目は厳しい判定だった。

 

こんな感じで5分間の間に、

失点

交代枠をすでに2つ使い切った状態でドラゴビッチの退場とかなり間の悪い感じで悪いことが起こった。

 

5. 退場後のオーストリアのポジショニング

 

最後の交代枠をCBの補填に使うこともできたが、オーストリアは追加点をとらなくてはいけないし、64分で交代枠を使い切ることに抵抗があったのか、メンバーは現状維持でゲームを進めていく。ただし選手の役割は少し変化していく。(Fig.7)

 

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Fig.7 退場後のオーストリアのポジショニング

 

普通最終ライン、特にCBに退場者が出た場合前線の選手を控えのCBに変えるというのが常套手段。

 

ただしオーストリアはバウムガルトリンガーが2つのポジションを兼任することで人数の問題を解決しようとする。

 

具体的にはビルドアップ時にはCBとしてプレーし、ゲームメイク、チャンスメイク時にはCMFとしてプレーする。

守備の局面でも同様のことが言えて、押し込まれたらCBとしてプレーしていた。

 

6. ハンガリーの前線からの守備(ドラゴビッチ退場後)

ハンガリーはドラゴビッチ退場前は限定的にしか前線からのプレスを行わなかったが、ドラゴビッチ退場後は前線からのプレスを積極的に行う。

具体的にはサライ、ジュジャク、クラインハイスラー、ネーメトが最終ラインにプレスをかけていた。

これによって前半比較的安定していたオーストリアのビルドアップは崩壊し、多くのカウンターを受けることになる。

 

ハンガリーのチャンス

10m30P(7-15M)

22m40L(20-9-10M)

42m10T(8-15-7)

54m10P(10-7M)

61m50L(9-15-9-15-9)Goal

69m20T(7-8M)

70m40T(8-11M)

73m00T(5-15M)

86m40T(19-18)Goal

 

後半立て続けにトランジションからチャンスをつかんでいるハンガリーだが、これは明らかにドラゴビッチ退場によるオーストリアのバランスの崩壊によるもので、4つのチャンスはいずれもゴールにつながってもおかしくないシーンだった。

途中出場のプリシュキンが出したスルーパスをシュティエベルが決めて、86分の時点で2点差としたハンガリーの勝利が確定した。

 

余談

オーストリアのサッカーは多分弱いチームにしか通用しない。

弱いチームとは、オーストリアのハイプレスを受けるとビルドアップが全くできなくなってしまうチームを指す。ハイプレスが成功しない場合、特にアルナウトビッチはサイドハーフ(ウイング?)であるにもかかわらず対面のSBのオーバーラップに全くついていかないので守備面で多くの不安を抱えるチームという印象をうけた。