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サッカーを視る

主にCLやビッグマッチについて。リーグ戦はEPLが中心

EURO2016-E3-ITA.vs.IRL

EURO2016 EURO2016-GroupE

EURO2016-グループE3-イタリアvsアイルランド

 

まずはスタメンから

青がイタリア、白がアイルランド(Fig.1)

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Fig.1 イタリアvsアイルランド

 

イタリアはボヌッチバルザーリ以外のスタメンをすべて変更する。

GKブッフォン⇔シリグ、CBキエッリーニオグボンナ

MFデロッシ⇔モッタ、ジャッケリーニ⇔フロレンツィ、パローロ⇔ストゥラーロ、

WBフロレンツィ⇔デシーリオ、カントレーヴァ⇔ベルナルデスキ、

FWペッレ⇔インモービレ、エデル⇔ザザ

イタリアは肝となる3バック+デロッシとGKがイエローカードをもらっていること、トーナメントは最高で4試合あることを考えれば控えの選手の適性を見極めることも重要

 

アイルランドスウェーデン戦の4-4-2に戻し、それに伴ってメンバーも大きく変更する。

CBオシェイ⇔ダフィー、クラーク⇔キオー

MFウィーラン⇔マクリーン

FWフーラハン⇔マーフィー

ベルギー戦で残念なパフォーマンスだった選手はマッカーシー以外軒並みスタメンから外れている。今場面でCB2枚替えの采配はかなり大胆だと思う。

 

試合の概要

試合は0-1でアイルランドの勝利で終える。84分にフーラハンのクロスをブラディーが決める。もちろんイタリアはメンバーを落としていたが、アイルランドは出来うる最高の準備を行ってイタリアのビルドアップを破壊した。イタリアのサッカーはよくデザインされているが、控えメンバーにコンテ監督の理想を叶えられる選手が少ないことが露呈してしまった。個人的にこの試合はグループリーグベストバウトの3つめになった。

 

 

1. 両チームの状況

イタリアは、勝ち点6得失点差+3

ベルギーは、勝ち点3得失点差+1

スウェーデンは、勝ち点1得失点差0

アイルランドは、勝ち点1得失点差-2

 

イタリアが2位に落ちる可能性は、

イタリアが負けることが最低条件で、ベルギーが得失点差で上回らなければならない。

得失点差が同じだった場合チーム間の結果で決まるので、イタリアが1位となる

 

こんな感じでイタリアの1位はほぼ確定している。

 

2. アイルランドのビルドアップ妨害、イタリアのビルドアップ

アイルランドの局面別のプレー精度をみていくと、ビルドアップ、ゲームメイクに難を抱えている。そのため確率の低いロングボールでボールを前進しようとするため、自陣深くまで攻められないようにしなければならない。

 

したがってアイルランドが勝利するためには、ひたすら前線から相手のビルドアップ、ゲームメイクを妨害し、なるべく相手陣地でボールを回収する必要がある。

 

一方でイタリアは、たとえゴールキックからでも最終ラインからボールを繋げてくるチームで、選手の大半が変更しているこの試合でも変わらない。

 

したがって、イタリアにとって最終ラインからのビルドアップは一種の哲学みたいなものである。

 

アイルランドはイタリアからのゴールキックに対して徹底的にハイプレスをかけていく。この局面をしっかり準備してきたアイルランドは本当に称賛されるべきだと思う。

 

いくつかのイタリアのゴールキックスクリーンショットを示していく。

(Fig.2~4)

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Fig.2 アイルランドの前線からのビルドアップ妨害I


ベルギーがイタリアに行っていたものよりもさらに人数をかけていく。

(ベルギーは4vs4を前線で作っていた)

おそらくFig.2の形がイタリアのビルドアップの一般的な形で、それぞれのマンマークに対応したアイルランドの選手が6人でハイプレスをかけていく。

 

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Fig.3 アイルランドの前線からのビルドアップ妨害II

 

Fig.3のようにイタリアはインサイドハーフウイングバックの位置に下げたり、ボヌッチの位置を上げたりもするが、アイルランドはマークの相手を間違えなかった。

 

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Fig.4 アイルランドの前線からのビルドアップ妨害III

しかしこういう形になるとアイルランドにとっては少し困ったことになる。

これだとわかりづらいので、全体図を見ていく。(Fig.5)

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Fig.5 イタリアのビルドアップ

 

細かい違いはシーンごとによって変化するが、アイルランドにはいくつかの約束事がある。

 

2.1. マーフィー、マクリーン、S.ロングでイタリアの3バックを監視すること

2.2. ヘンドリックが下がってきたモッタを監視すること

2.3. コールマン、ワードがウイングバックのポジションの選手を監視すること

 

これらはかなり徹底されていたが、Fig.5のようにフロレンツィがサイドに開いてしまうと対応できる選手はマッカーシーしかいなくなる

しかしマッカーシーまでマンマーク要因にしてしまうとGKからのロングボールのリスク管理ができなくなってしまう。

 

したがってこのような場合にはフロレンツィがフリーになることが多く、シリグはこのエリアへロングボールを蹴ることが多くなる。(Fig.6)

 

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Fig.6 シリグのゴールキック

 

シリグはブッフォンに比べて足元の能力が高いわけではなさそうな感じで、ミドルパスは通ったり通らなかったりという状況が続いた。

 

ゴールキーパーからたとえフロレンツィに渡ってもスペースを有効に活用した攻撃は出来ていなかった。

 

ここまでアイルランドが計算したとは思えないが、とにかくアイルランドは前線からプレスすることでイタリアのビルドアップを妨害に成功し続けた。

 

イタリアのビルドアップを妨害したことをしめすデータはボールリカバリーとボールポジションをみればはっきりする。(Fig.7,8)

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Fig.7 イタリアvsアイルランドのスタッツ

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Fig.8 アイルランドのボール回収位置

アイルランドは前線でよくボールを回収していることが分かる。

ただし、

ボールの回収位置が前線に集中している

=ショートカウンターの回数が多い

というわけではない。

 

例えばドイツやスペインはボールの回収位置が相手陣地内のことも多いが、ショートカウンターの回数が多いというわけではない。

というのもドイツやスペインは相手チームを押し込んでハーフコートで試合展開することが多いことに起因する。

ボールポゼッションとボールポジションの両方が60%を超えることが多いのが特徴。

 

相手を押し込んだ状態でクリアされたボールを回収することでボールの回収位置は自然と前線に集中していく。

確かにボールは相手陣地内で回収しているがショートカウンターが成立しているわけではない。

 

 一方で、今回の試合では両チームのボールポゼッションの値はほぼ半々。

しかしボールポジションはイタリアの陣地気味である、

ということはイタリアのビルドアップが難航していることを示唆している。

 

さらにボール回収位置が前線に集中していることからイタリアのビルドアップを妨害しつつショートカウンターにつなげている可能性が高い。

実際にアイルランドショートカウンターの回数は多かった。

 

データは複合的に見なければよくわからなくなることが多く、タックルの数が~とかパス成功率が~だけでは矛盾することがある。試合をちゃんと見たうえでデータを見ていくと新たな発見があったりする。

 

3. アイルランドの攻撃、イタリアの撤退守備

基本的にアイルランドのチャンスになりかけたシーンは,ショートカウンターが起点になるが、アイルランドの前線はチャンスメイクに秀でた選手が少なく、前半のショートカウンターからのチャンスはヘンドリックのミドルシュートのみ。

 

後半になるとボール奪取=チャンスのようなシーンが2つもあったが、イタリアはかなり集中力を切らしていたし、疲弊していた。

 

アイルランドのチャンス

8m50T(13M)

20m30CK(19-21)

43m10P(11PK?)

56m19T(2)

83m30T(20)

84m10T(20-19)Goal

 

ただし前線でボールを回収していることもあって、不得意なビルドアップやゲームメイクをしなくても済むというのはアイルランドにとって重要なことだった。

アイルランドは前線でボールを保持するとベルギー戦と同様に左右非対称になることが多かった。(Fig.9)

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Fig.9 アイルランドのボール保持攻撃

 

イタリアは撤退すると5-3ブロックを形成する。

前線の二人はデスコルガードに徹し、守備にはあまり参加しない。

 

アイルランドはヘンドリックがインサイドでプレーし、コールマンがオーバーラップする。マクリーンはアイルランドの中で縦への突破力が一番ある選手なので、アウトサイドでプレーすることが多い。

 

基本的なアイルランドの攻撃は2トップへのロングボールか、イタリアの2列目の外側からクロス爆撃を行っていく。

いずれの方法も確立の高い攻撃ではないが、アイルランドの前線のクオリティを考えれば最善の策であった。

 

4. 後半戦

前半の内容はアイルランドの完勝だったということもあって、後半にむけてイタリアは少し変化してくると思っていたが、そんなことはなかった。

 

しかしアイルランドの前線はハイプレスとロングボールの処理を続けていたこともあって、プレスの強度は次第に落ちていく。それでもハイプレスは90分間続けていたが、きれいにプレスを躱されるシーンも時間が過ぎるとともに多くなっていった。

 

ただしそれはイタリアにも言えることで、イタリアの前線はペッレ、エデルコンビほど守備をしない。特にインモービレの守備時の運動量はかなり少ないため、中盤にかかる守備の負担が大きい。後半になるにつれてイタリアはコンパクトなディフェンスという理想から遠ざかっていくことになる。

インモービレが欧州の最前線で使われない理由が垣間見えた試合だった

 

後半は殴り合いのシーンが多くなったが、アイルランドが84分にフーラハンがあげたクロスをブラディーがヘッドで押し込み先制する。

チャンスの数は多くなかったが、イタリアも最後まで殴り合いに付き合ってくれたことは大きかったと思う。

 

イタリアのチャンス

42m00(2-11M)

52m10(2-7)

76m40(20M)

 

余談

イタリア戦が3戦目というのが幸運だったが、この試合のアイルランドの出来は最高だった。イタリアは控えの選手であまり使える選手が見つからなかった。

少なくともシリグ、インモービレをこの先使うのはためらわれるような感じだった。

グループEというかイタリアは戦術がしっかりしているのでとても見やすいチーム。

 

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