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EURO2016-D1-SPA.vs.CZE

EURO2016-グループD1-スペインvsチェコ

まずはスタメンから

赤がスペイン、白がチェコ(Fig.1)

 

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Fig.1 スペインvsチェコ

 

スペインはEURO2012、EURO2008と連覇している。

中心選手もW杯2010あたりから中盤に大きな変化はない。イニエスタ、セスク、シルバ、S.ラモスはキャップ数100を超えているし、ブスケッツ、ピケもW杯2018までには100の大台を突破するだろう。近年ではレアルマドリードバルセロナだけでなくアトレティコマドリードの台頭もあって、コケやサウールなど中盤にいい若手の選手は生れているが、代表のスタメンに定着する選手は少ない。そろそろ新陳代謝を高めていきたところでもあるが、デルポスケ監督はなかなか改革には踏み切らない。

 

チェコプレミアリーグで活躍してきたチェフやロシツキーは有名だが、正直知らない選手が多い。ただし予選は、オランダ、アイスランド、トルコと同グループにいながら1位で突破しているという事実があるので侮れないかもしれない。

 

試合の概要

試合は1-0でスペインの勝利で終える。試合の大半をスペインが支配し、チャンスを量産していく。チェコはバスを停めて引き分け上等というサッカーだったが、86分にイニエスタのクロスからピケが決める。スペインの勝利は納得の結果だったが、チャンスの数はあまり多くなかった。

 

 

1. スペインの攻撃

大方の予想通りスペインがボールポゼッションを高めてハーフコートでゲームを進める。

スペインのビルドアップに対してチェコはほとんど干渉せず、とにかく引いて、引いて失点を防ぐというのを目標にしているように思えた。

実際にビルドアップを終えてゲームメイクする段階に入ったときはFig.2.のような状態になっていることが多かった。

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Fig.2 スペインのビルドアップ直後の状態

 

チェコは11人でハーフコートを埋めていく。

その時のフォーメーションは4-1-4-1だが、ロシツキー、ダリダ、プラシルの位置関係は割とフレキシブルで、必ずしもイニエスタのマークがロシツキー、セスクのマークがプラシルだったわけではない。

 

チェコのネツィドはセンターサークル付近のパスの牽制とエリアの侵入を防ぐ役割を担っており、

スペインのゲームメイクは大概セスクとイニエスタの位置にいる選手から始まる。大部分はこの2人からスタートすることが多いが、特にピケは一列前に前進してゲームメイクするシーンも多かった。

 

スペインの攻撃は赤のスペースに縦パス→サイドでのコンビネーション→サイドのフリーの選手がクロスorカットインを選択というのが基本的な動きとなる。

アルバ、ノリートはインサイドレーンとアウトサイドレーンの担当が頻繁に逆転していたが右サイドのファンフラン、D.シルバ組は基本的にファンフランがアウトサイドレーン、D.シルバがインサイドレーンのエリアを担当していた。

 


スペインの強みはやっぱりイニエスタ

相手が引いていても赤いスペースにボールを供給しつつ、対面のディフェンダーに少しでも隙があれば1on1で勝利できる。セスクやD.シルバよりもさらに1段階上の選手であるのもドリブルから状況を打開できる能力に優れているところにあると思う。

 

最近の傾向としてゴールキックでショートパスを行う際に、チェコのように3枚前線に残すチームを目にすることが多くなった。(Fig.3)

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Fig.3 スペインのゴールキック時のチェコの陣形

このような状態でもショートパスからビルドアップを行おうとするチームはドイツ、スペイン、イタリア。ポルトガルやフランスはつなげることも多いが基本的にロングボールを蹴ってしまう派。

 

2. チェコの撤退守備

チェコの4-5-1において重要なのはサイドハーフの働きだった。

基本的にオーバーラップしてきたアルバにはセラシエが、ファンフランにはクレイチほぼマンマークで監視し続ける。

セラシエは元々SBの選手であるというのも、今回サイドハーフに採用した理由だろう。

 

したがってボールサイドは5バックのような形に去ることが多かったチェコの守備システムだった。(Fig.4)

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Fig.4 イニエスタがボールを持った時のチェコの守備体系

 

3. ドイツ、スペインの弱み

結局のところボールを保持するチームとバスを停めるチームの対戦になった時に、ボール保持側が有利に試合を進めていくためにはサイドで如何に優位な状態を作るかにかかっていると思う。

 

ドイツもスペインも

ゲームメイクまでは完璧な人材がそろっている。

しかしウイングの位置に最適な選手がいない。

 

ドイツに比べればファンフランもアルバもSBとしての攻撃能力は高い。

アウトサイドレーンでクロスを上げるだけでなくインサイドレーンでもプレーできることが何よりの証拠。しかしウイングの位置に1on1で勝負できる選手がいない。

 

基本的にこの試合ではアルバとイニエスタのサポートもあってノリートがウイングの位置から仕掛けることが多いが、本当に完封されていた。

ノリートは82分にペドロと交代するが、今回の出来ならもっと交代は早くてもおかしくなかった。

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Fig.5 ノリート

スペインのチャンス

15m10(16-21-7),28m00(6-7)、39m10(6-18),45m30(6-7),69m40(21-18),72m00(6-21)

 

4. チェコの攻撃、スペインの守備

前述のように自陣でバスを停めていたこともあって、チェコにボールが渡るのは自陣のかなり深い位置。

こうなった時のスペインの守備は4-1-4-1。(Fig.6)

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 Fig.6 スペインの撤退守備

スペインはハーフライン5~10 m前をプレス開始ラインに設定する。モラタが左右のビルドアップを分断し、最終的に中盤の4枚で追い詰めるというオーソドックスな形

 

そこまで激しいプレスというわけではなかったが、チェコは基本的に前線にロングボールを蹴りこんで神頼みということが多かった。当然チャンスは偶発的なものしか生まれず、質もあまり高くない。

 

チェコのチャンス

44m40(22-7)ファンフランオフサイドトラップミス

56m40(FK19-5)

 

またハーフライン付近でボールを奪取した時はネツィド、ロシツキーを中心にショートカウンターを仕掛けるが、スピードの乗ってからのパスミスやトラップミスなど基本的なミスが多かった。ここら辺の精度の差は現在力をつけているポーランドなどと区分するうえで分かりやすい点だと思った。

 

余談

いずれのグループでもそうだが、3位抜けの可能性があるため圧倒的実力差があるチームに対して初めから引き分け狙いでくるチームが多くなった。

 

守備に重きを置きつつ攻撃とのバランスを考えるのがサッカーにおいて一番難しく、楽しい部分だと思うが、EURO2016では守備100のチームが多いため上位と下位の試合は閉塞することが多い。

 

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