EURO2016-C3-NIR.vs.GER
EURO2016-グループC3-北アイルランドvsドイツ
まずはスタメンから
緑が北アイルランド、白がドイツ(Fig.1)
Fig.1 北アイルランドvsドイツ
北アイルランドはウクライナ戦と同じメンバー。現状できる100%を出し切っての勝利だったので、スタメンは変更しない。
一方のドイツはスタメンを少し変更した。
右サイドバックのヘヴェデスをキミッヒに、CFのゲッツェをM.ゴメスに、ゲッツェは代わりに左サイドハーフ(ウイング)にはいる。ここまでの2試合でゲッツェはあまりインパクトを残せていなかったことを考えれば、ゲッツェが外されるかと思ったがドラクスラーが外された。ゲッツェへの信頼は大きいのかもしれない。前の2試合でゲッツェが9番と表記していたが19番の間違い。9番はシュールレ
試合の概要
試合は0-1でドイツの勝利で終える。28分にM.ゴメスが決勝点をとる。終始ドイツがボールとゲームを支配するが、1失点で済んだのはドイツのフィニッシュが甘かったのとマクガバンが当たっていたから。ドイツの収穫は弱点だった右サイドバックとCFの適任者が見つかったこと。
1. 両チームの状況
2試合終わってドイツは勝ち点4、北アイルランドは勝ち点3。
グループリーグ突破のノルマは達成しているドイツだが、北アイルランドに負ければ3位転落もあり得る。北アイルランドは勝ち点3得失点+1であるため、最悪1点差で負けてもグループリーグ突破は可能。
両チームのこれまでの戦い方と現在の状況を考えれば、ドイツがボール保持して相手を押し込む展開になることは想像に難くない。
2. 北アイルランドの守備
北アイルランドは1失点までなら許容範囲内という状況であったため、終始引きこもるのかと思ったが、ドイツが低い位置からビルドアップしようとするときには前線からのプレッシングを欠かさなかった。その時はスタメン表どおりの4-1-4-1、もしくはS.デイビス、ワシントンが高い位置にいる4-4-2となる。(Fig.2)
Fig.2 北アイルランドのハイプレス
ただしドイツは北アイルランドのプレッシングを軽くいなしていく。
プレスの囲い込みかたが~とかは北アイルランドの個人の守備能力に詳しくないためわからないが、ドイツのビルドアップはフォローもうまいし、みんなボールを前に運ぶことができる。唯一ヘクターがこの中では一番下手だが、クロース、フンメルスがサポートしてくれるので問題にならない。
ドイツvsポーランドの時と同様にボールをハーフラインまで運ばれると、北アイルランドの守備形態は変化する。(Fig.3)
Fig.3 北アイルランドの撤退守備1
一見するとポーランドが行ったドイツ対策に少し似ていたが、北アイルランドのほうがより消極的だった。
したがってドイツのゲームメイクは、ポーランド戦よりもさらに高い位置で行うことになる。そういったことも相まって、ポーランド戦ではクロースとボアテングがゲームメイクをしていたが、この試合ではケディラ、クロースがゲームメイクを担当する。
さすがにFig.3の位置よりさらに高い場所でボアテングにゲームメイクをさせるメリットはあまりない。
一方で北アイルランドはマンツーマンの形でドイツの攻撃に対応しようとする。組み合わせは、C.エヴァンス-クロース、S.デイビス-ケディラ、ダラス-キミッヒ、ワード-ヘクターと対峙させる。
しかしドイツのサイドバックは前2試合と同じように高い位置を保ってくる。
したがって北アイルランドは押し込まれると6バックのような形になってしまうことが多かった(Fig.4)
Fig.4 北アイルランドの撤退守備2
北アイルランドのゲームプランがどういったものであったかはわからない。
しかし6バックになったことで北アイルランドはかなりジリ貧になってしまった。
守備的な問題
北アイルランドにとって、ドイツのなかで唯一いろいろなエリアに顔をだす権利を持っているエジルの存在が特に問題だった。
エジルは白のスペースで頻繁にボールを受けるが、この時ノーウッドはエジルについてはいかない。2列目を3人で守るということ自体に大きな問題があるのに、2列目のバランスまで悪くなってしまったら悲惨なことになる。
ただしエジルにフリーでボールを持たせるのは絶対に得策ではないというのもまた事実。この問題を最後まで北アイルランドは解決できなかった。
攻撃的な問題
Fig.4のように、6-3-1になってしまうと、ボールを回収する地点は必然的に下がってしまう。またデスコルガードのワシントンが孤立してしまうという問題があった。どちらの問題もカウンターの成功率を下げさせてしまう要因である。
じゃあポーランドのレヴァンドフスキのようにデスコルガードの役割をこなしつつも、守備に参加させればいいじゃないか!!というとそれは難しい。そういうことができる選手こそが一流のCFの条件であり、ワシントン、ラファーティーはそういった役割を十分にはこなせない。
結局のところ、ドイツと北アイルランドには大きな差があったということ。
3. ドイツの攻撃(キミッヒとM.ゴメスの触媒効果)
ポーランドにはうまく守られてしまったが、北アイルランド戦では文字通りボコボコにした。
理由はいくつかあるが、一つは前述のようにサイドで数的優位を保てたことが大きいだろう。
もう一つはキミッヒとM.ゴメスの存在だった。(Fig.5)
Fig.5 キミッヒ(左)、M.ゴメス(右)
キミッヒ
ここ2試合のドイツの攻撃はヘクター、ドラクスラーサイドで行われることが多く、右サイドはあまり攻撃に関与てきていなかった。
しかしヘヴェデスの代わりにスタメンに名を連ねたキミッヒは右サイドからの攻撃力を大幅に引き上げた。
キミッヒはグアルディオラが発掘し、バイエルンでも頭角を表してきているのもあって、ボールの扱いがかなりうまい。ボールを受けるのもうまいし、ビルドアップにも参加でき、なんといってもクロスの精度が段違いに高い。この試合でもかなり多くのチャンスを作っていた。
M.ゴメス
ドイツは今までFalse9の役をゲッツェにまかせるためにCFに置いていたが、ゲッツェはメッシのようにシュートレンジが広いわけでもドリブルで違いが作れるわけでもない。
ドイツ相手に引きこもるチームが多いこともあって、ドイツはクロスを多用することになるが、中にいるのがゲッツェでは何ともしょっぱい。ゲッツェが悪いというよりシステムと全くかみ合っていないのが問題だった。
そんなこともあってM.ゴメスのようなCFの投入によってドイツの攻撃力が増すのかどうか楽しみだった。結果的に言えばM.ゴメスの存在は、ゲッツェにはないポストプレーでチームの攻撃力を大きく向上させ多くのチャンスをもたらした。この試合の唯一の得点者だったが、それも納得の出来だった。
4. ドイツのチャンス、北アイルランドの守護神
ドイツのチャンス
6m50(17-21-8-13),10m10(17-8),11m20(8-23-6-19),18m50(19-3-8),
22m40(21-23-13),26m00(21-13),28m50(8-23-13-23),33m50(8-19-13),
34m40(CK8-6),40m00(21-8-23),42m30(17-13-19),51m10(21-19),
52m00(5-8-19),58m10(6),65m30(CK8-13),72m50(3-23),81m20(21-23)
ドイツは数多くのビッグチャンスを終始作り出していた。特に傑出した出来だったのはキミッヒとエジル。エジルは1つ1つのプレー精度が本当に高くて、この試合はエジルファンには必見だったかもしれない。
フィニッシャーは主にミュラー、M.ゴメス、ゲッツェとなるが、結果からもわかるように1点しか入っていない。
大きなチャンスが何回もあるにもかかわらず得点が入らない場合はフィニッシャーがやらかしたか、守護神がすごかったかのどちらかしかない。
6m50(17-21-8-13)シュートストップ
10m10(17-8)シュートストップ
11m20(8-23-6-19)シュートストップ
18m50(19-3-8)枠外
22m40(21-23-13)枠外
26m00(21-13)ポスト
28m50(8-23-13-23)ゴール
33m50(8-19-13)ポスト
34m40(CK8-6)ブロック
40m00(21-8-23)GK正面
42m30(17-13-19)枠外
51m10(21-19)シュートストップ
52m00(5-8-19)枠外
58m10(6)シュートストップ
65m30(CK8-13)ブロック
72m50(3-23)枠外
81m20(21-23)シュートストップ
結果的に言えば、どちらの要因もあるが、ゲッツェとミュラーは外しすぎだった。MOMは北アイルランドの守護神マクガバンだが、明らかに確変だった。(Fig.6)
Fig.6 マクガバン
余談
ドイツは右サイドとCFのピースを埋めることができた。あとは攻撃陣が爆発すれば問題ない。北アイルランド戦はほぼ完璧な試合運びだったのでこれを維持できればかなり強い。
北アイルランドは下馬評を覆してグループリーグ突破。1失点で済んだのは間違いなくマクガバンの健闘によるものであり、あまりいい守備をしていたとは言えなかった。