読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

サッカーを視る

主にCLやビッグマッチについて。リーグ戦はEPLが中心

EURO2016-C1-GER.vs.UKR

EURO2016 EURO2016-GroupC

EURO2016-グループC1 ドイツvsウクライナ

ここから6試合はグループCについて

個人的にグループC,D,E,Fは面白いチーム、試合が多い。

まずはスタメンから

白がドイツ、黄がウクライナ(Fig.1)

f:id:come_on_UTD:20161127195013p:plain

Fig.1 ドイツvsウクライナ

 

ドイツはフンメルスが負傷で代役としてムスタフィがスタメン。グアルディオラバイエルンで指揮を始めてから足元がうまい後列の選手が多く生まれた。その筆頭がボアテング、クロース。ざっと見てもレアルマドリーバイエルンに所属歴を持つ選手が並んでいる。世代交代もうまくいっていると思うが、CFのみ少し選手層が薄い。

 

ウクライナ4-5-1

注目選手はコノプリャンカとヤルモレンコのサイドハーフコンビ。クラブでもナショナルチームでも活躍するこの2人をどう生かすかというのが注目ポイント。ディナモキエフシャフタールドネツクで活躍する選手も多いのでUCLを通して地味に知っている選手が多い。

 

試合の概要

試合は2-0でドイツの勝利で終える。18分、92分にムスタフィとシュバインシュタイガーが決める。試合の大部分はドイツが完全に支配し、ハーフコートでゲームが展開する。特にボアテングのビルドアップ能力は圧倒的だった。一方でCFや撤退守備への切り替えの遅さに大きな課題を残した

 

 

 

1. ペップがドイツサッカーに与えた哲学

 

W杯2014を制したドイツだが、2年後のEURO2016までに多くの変化があった。特にバイエルンを指揮する監督がグアルディオラに変わってから2シーズン経ったという事実はドイツサッカーにとってとても大きな変化をもたらした。

 

W杯2014時点でもボアテングフンメルスのコンビだった。アルジェリアやアルゼンチンなど、ボールポゼッション率が60%を超えていた試合も当然あったが、基本的に堅守速攻がベースだった。

 

サッカーには4つの局面がある。

ボール保持攻撃、トランジションからのカウンター、撤退守備、ビルドアップ妨害。

これらのうちドイツが最も得意としていたのはトランジションからのカウンター。これでブラジルを1-7で虐殺したのは記憶に新しい。一方で一番苦手なのはボール保持攻撃といえるアルジェリア戦やアルゼンチン戦ではそういった部分が露呈していた。

 

そんな時にグアルディオラはボール保持攻撃における鉄則をバイエルンに伝えた。

 以下引用

ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

 

 

 

ボール保持攻撃における重要な考え方は、

パウサ5つのレーン

 

1.1. パウサ(小休止: Pause)とは

 

グアルディオラは自分たちがボール保持攻撃を行うにあたって常に注意していることがある。それは相手にボールを奪われてからのカウンターだ。

 

トランジションからのカウンターを防ぐためにはチーム全体をコンパクトに保ちながら相手を押し込むことが重要だと語っている。

 

ボールを奪取してからすぐに最終ラインの選手がドリブルやロングボールで前線にボールを供給してしまえば、チームは間延びしてしまう。

 

そういったことを防ぐためにボール保持攻撃を行う時はビルドアップを行う選手(中心はCBとメディオセントロ)がボールとともに前進することでコンパクトにすることが重要であると述べている。

 

1.2. 5つのレーン

カウンターを防ぐ方法はもう1つある当たり前の話だが、デスコルガードを除くすべての選手を相手陣地20~25m付近まで押し込んでしまえばいい。

 

そのためにはサイドバックのオーバーラップが不可欠で、サイドバックがオーバーラップすることでサイドハーフの選手を押し込めるといった手法は昔からよく行われてきた。(Fig.3)


さらにグアルディオラは従来の方法に5つのレーンという考え方を導入しプレーを整理する。(Fig.4)

 

f:id:come_on_UTD:20161127211239p:plain

Fig.3 従来のサイドバックを絡めたオフェンス

Fig.4 5つのレーンを用いたプレーエリアの整理

 

グアルディオラの主張は以下の通りで、

「もし同じレーンにSBとWGがいたら数的優位は作れない。数的優位ができるのはSBとWGが異なるレーンにいるときだけだ。WGが外に開いていたらSBは中に絞らなくてはならないし、SBが開くことでWGが中で攻めるスペースを作ることができる」

 

従来の方法では狭いスペースの2vs2だったが、

グアルディオラの手法はワイドな位置でより広い1vs1を行えるようにした。

(当然SBがInside Laneにポジショニングすることもある)

 

この2つの考え方以外にも明かされていないグアルディオラメソッドはあるのかもしれないが、EURO2016におけるドイツはこの哲学に遵守したサッカーを展開する。

 

2. ドイツのビルドアップ、ウクライナの前線守備

ドイツのビルドアップは主に4人で行う。 (Fig.5)

 

f:id:come_on_UTD:20161127212201p:plain

 

Fig.5 ドイツのビルドアップ

 

ドイツのビルドアップはクロース、ムスタフィ、ボアテングケディラで行われるが、

チャンスメイクに移行する際の重要なパスはボアテングとクロースからスタートする。

ウクライナはハーフラインより5~10m前でゾズリャとコバレンコが4人を追い掛け回す。

 

ただしこのプレスをドイツは軽々といなしていく。ビルドアップの局面でドイツがロングボールを蹴ってしまうシーンはとても少なかった。

 

ビルドアップによって相手を押し込んでいくとコバレンコは撤退守備に参加するようになり4-5-1のようなフォーメーションを取るようになる。

ゾズリャはデスコルガードとして前線で待機する。

 

3. ボアテング、クロースの存在


ドイツの強みはビルドアップと展開力の両方に強みを持つ選手が2人いることだろう。(Fig.6)

 

f:id:come_on_UTD:20161127212453p:plain

Fig.6 ボアテング(左)、クロース(右)

2人ともサイドチェンジやグラウンダーの縦パス、前線へのロングボールを使って、ピッチをワイドかつディープに使うことを可能にする。

 

特にボアテングからオーバーラップしたヘクターへのサイドチェンジや、クロースからヘヴェデスへのサイドチェンジは、ドイツのサッカーでよく見られるパターンとなった。

 

4. ウクライナの撤退守備

前述のように全くと言っていいほどビルドアップ妨害ができていなかったウクライナは、撤退守備でドイツが攻撃するスペースを埋めようとする。

 

撤退守備時の約束は、ヘヴェデス、ヘクターのオーバーラップに対応してコノプリャンカとヤルモレンコが下がっていたこと。

 

特にコノプリャンカはウイングバックといってもいいくらいまで下がっていた。4-5-1(5-4-1)のように守備ラインが寝そべってしまったウクライナはボールの位置とともにチーム全体がスライドするようになっていく。(Fig.7)

 

f:id:come_on_UTD:20161127213355p:plain

 

Fig.7 ボアテングからの展開

 

ウクライナがいけなかったことはボアテングとクロースを自由にさせすぎたことだろう。さらにこの2人のサイドチェンジの精度は世界でも本当にトップクラス。ドイツは簡単に相手陣地の深くまで攻め込みチャンスを積み上げていった。

 

ドイツのチャンス(前半)

3m00(18-9-11)11m50(11-13-3)12m40(13-19×)18m30(FK18-2)29m50(18-6)

36m20(6-19×)39m50(11-13)

 

5. ドイツの守備、ウクライナのビルドアップ

ドイツがボール奪取されるタイミングは、深い位置でのサイドでの1on1か、クロスを弾き返してのセカンドボールからがほとんどだった。

 

ドイツはボールが奪われてもすぐ撤退するのではなく、前線からハイプレスを行うことで素早くボール奪取を行おうとした。まさにバルセロナバイエルンの○○秒プレスという感じ。

 

ウクライナはそういった状況のためボールを回すことがほとんどできず、ボールを奪取してもロングボールを蹴ってしまうことが多かった。したがってウクライナのビルドアップはほとんどうまくいってなかったといえる。

 

6. ウクライナのチャンス

ここまでの展開を見てみるとドイツが圧倒しているようにも感じる。

確かにビルドアップが全然うまくいっていなかったウクライナが、前半だけでなぜか決定的なチャンスを3つも作っていた。二つはノイアーのスーパーセーブ、1つはボアテングのスーパークリアだったことを考えれば、普通1点もののシーンばかりだった。

 

ウクライナのチャンス(前半)

3m50(17-10),26m00(CK10-3)36m00(7-10)

 

ドイツの問題点は前線からのプレスと撤退守備の切り替えのタイミングがチームで統一されていなかったことだろう。確かにドイツの前線守備は効いていたが、前線、中盤、最終ラインがコンパクトにまとまっていなかった。

 

7. セットピースにおける守備

両チームともFKにおける守備に問題があった。


ウクライナ編(Fig.8)

f:id:come_on_UTD:20161127215411p:plain

Fig.8 FKにおけるウクライナの守備(18min)

 

本来ムスタフィはオフサイドラインにいるはずである。しかしヤルモレンコが最終ラインとなってしまっている。FK側から見て一番後列が最終ラインになってしまうと、後ろの選手のケアがしづらくなってしまう。結果的にこのミスはドイツの得点につながってしまう。

 

ドイツ編(Fig.9)

f:id:come_on_UTD:20161127215444p:plain


Fig.9 FKにおけるドイツの守備(25min)

 

クロースは本来フェデツキとステパネンコをマークしなければならない。このシーンでは、クロースは2人のマークを怠り、非常に危険なシーンになってしまった。

 

8. 後半戦

後半のドイツは少しテンポダウンする。理由は守備に多くの不安が見られたためであろう。ボールポゼッション率は前半、後半で大きな差はないが、前半は得点を取るためにアグレッシブなプレーが多く、後半はボール保持を目的としたプレーが多かった。

 

テンポダウンによって後半をやり過ごそうとするドイツだったが、ウクライナは75分あたりから4,5人でハイプレスを仕掛けるようになる。当然ウクライナの陣地にスペースができるようになるため、ドイツのチャンスは増えていく。

 

最終的に交代出場したシュバインシュタイガーがカウンターから得点するが、昔のドイツのようなロングカウンターだった。

 

ドイツのチャンス(後半)

47m20(17-11),73m50(18-19)74m50(19-13)81m20(17-3-19-9)86m50(18-8)92m50(8-7)

 

ウクライナのチャンス(後半)

57m00(FK20)87m10(12)

 

 

余談

バルセロナバイエルンもボール保持攻撃を得意としているが、相手を押し込んだ時にどう崩すのか?というのは難しいテーマである。バルセロナ時代はメッシという強力な個が偽9番のポジションにいた。バイエルン時代もウイングにはリベリーロッベン、ドグラスコスタ、コマンという1on1に長けている選手を起用し、フォワードにはレヴァンドフスキを起用していた。

 

じゃあドイツに圧倒的な個人技を持っている選手がウイングおよびフォワードにいるか?というとゲッツェミュラーもドラクスラーも物足りない。

ここが解決できればドイツはさらに強くなるが・・・