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サッカーを視る

主にCLやビッグマッチについて。リーグ戦はEPLが中心

EURO2016-B3-RUS.vs.WAL

EURO2016-グループB3 ロシアvsウェールズ

 

まずはスタメンから

白がロシア、赤がウェールズ(Fig.1)

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Fig.1 ロシアvsウェールズ

 

 

ロシアはセンターハーフコンビをグルシャコフ、ママエフに変更。変更した理由はよくわからないが、このコンビのほうが攻撃的なイメージがある。さらにLSBもシュニコフ⇔コンバロフに変更。

 

ウェールズこの試合も3-5-2(3-4-3)

ウェールズにとって不動のスタメンじゃない部分はベイルの相方で、J.ウイリアムス、ロブソンカヌ、ヴォークスと試合毎にスタメンを変更している。

 

試合の概要

試合は0-3でウェールズが勝利する。ロシアはホイッスル直後からロングボール爆撃を行い続けるが、ウェールズは守備からのカウンターでチャンスを量産していく。10分、19分、66分にそれぞれラムジーテイラー、ベイルが決めて完勝する。スペースがある状態でベイルとラムジーが暴れればこのような結果になるのは仕方がなかった。

 

 

1. 両チームの状況

グループリーグ突破の条件~

ロシアは勝利が必須、ウェールズは引き分け以上が必要。

 

こういった状況はUCLの決勝トーナメントでよくおこるが、この時大事なことはチームのバランスをどこに設定するかが非常に重要になると個人的に思っている。

 

今回の例でいえば、

ウェールズが決勝トーナメントに出場するためには、失点さえなければ0-0でも突破が確定する。したがってスロバキアのように自陣で引きこもる選択肢もあり得る。

 

ロシアは勝利が必須であるため得点するための戦術は必須だが、1点でも失点すれば突破の可能性は極端に低下する。したがってオフェンス時のリスクとチームのバランスをどのようにするのか?といったことは非常に重要である。

 

この試合はロシアのロングボール爆撃vsウェールズの守備→カウンターとなる。

ウェールズが称賛されるべき点は3点取ったことよりも、デスコルガードを2人置くことでカウンターの破壊力を極端に上げたことだと思う。こういった大胆な采配を大一番でできる監督、チームは少ない。

 

ちなみにデスコルガードという言葉が頻繁に出てくるが、これはカウンター要員という意味でとらえてくれれば問題ない。 

 

逆にロシアのオフェンスはスロバキア戦とほぼ変わらない。想定内という感じだった。

 

2. ロシアの攻撃

ロシアの攻撃は前半からかなり大胆だったが想定内でもあった。(Fig.2)

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Fig.2 ロシアのボール保持攻撃

ロシアの強みはジュバのエアバトル能力、ベレズスキ、イグナシュビッチのボール供給能力だろう。特にベレズスキは危ういところにもバンバン縦パスを入れてくる。サイドバックセンターハーフも前線の選手かのようなポジショニングをとる。したがってオフェンス時には2-2-6のようなフォーメーションを取っていたといっても過言ではなかった。

 

2-2-6の内訳は、

2人のCB+攻めないほうのSB+センターハーフ片方+残り6人

 

ウェールズの守備の強みはウイングバックのポジショニングによって撤退守備とハイプレスを瞬時にシフトできること。

 

しかしウイングバックのポジショニングを固定化させてやれば中盤のスペースを埋めきることが難しくなり、カウンター時のウイングバックの攻撃参加も抑えることができる。

 

ロシアはサイドバックエンドラインまでオーバーラップさせることで、攻守両方に効果的な一手を打ったつもりだったのかもしれない(Fig.3,4)

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Fig.3 ロシアの攻撃(0m30)

 

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Fig.4 ロシアの攻撃(8m00)

 

3. ウェールズの守備

ウェールズの守備は前2試合と大部分は同じだが、ディティールは異なっていた。

 

前線からの守備は前2試合と同様に、3-4-3でヴォークス、ベイル、ラムジーでビルドアップを妨害しようとする。

 

前2試合ではベイル、ヴォークス(J.ウイリアムス、ロブソンカヌ)も撤退守備に参加していたため相手にチャンスが訪れるシーンはあまりなかった。しかし前線の選手が守備時に撤退しすぎてしまうことで、カウンター攻撃の有効性が薄れてしまうという問題もでてきていた。(Fig.5)

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Fig.5 従来のウェールズの撤退守備(スロバキア戦、イングランド戦)

 

この試合ではFig.2のようにベイル、ヴォークスの2人をデスコルガードとし、ロシアのボール保持攻撃に対抗した。ロシアにとって誤算だったのはウェールズがデスコルガードを2人も用意してきたことだろう。ロシアの戦術はウィングバックの攻撃参加を無力化できたかもしれないが、前線2人のカウンターに対して非常に脆くなってしまった。

 

繰り返しになるが、この大一番でデスコルガードを2人配置するというのは非常に勇気がいる采配だと思った。

 

守備に割く人数を少なくすれば、セカンドボールへの対応がルーズになる瞬間もあるが、カウンターで受ける恩恵は大きくなる。このリスクとリターンを天秤にかけてアグレッシブな判断を下したのは評価されるべきだと思う。

 

4. ウェールズの攻撃

ボールを保持しているときのウェールズは前線にロングボールを供給しようとしていたが、あまり効果はなかった。

ウェールズがクオリティの高い攻撃をするときはトランジションからのカウンターによるものがほとんどだった。

 

トランジションにおいて重要な役割をしていたのはデスコルガードのベイル、ヴォークスと守備にも攻撃にも参加していたラムジー、アレンだろう。(Fig.6)

 

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Fig.6 ベイル(左)、ヴォークス(中央左)、ラムジー(中央右)、アレン(右)

 

ベイルはスロバキア戦でもイングランド戦でも直接FKを決めており重要な選手であることを証明してきたが、本来のポテンシャルを考えればカウンター時にもっと輝いてもおかしくないはずの選手。それを阻んでいたのは撤退守備の参加であった可能性は大きい。この試合のように、ベイルをカウンター特化で使うことができればウェールズの脅威は非常に大きくなる。

 

ヴォークスはJ.ウイリアムスやロブソンカヌのように俊敏性を生かしたドリブルが得意なタイプではないが、フィジカルを生かしたエアバトル能力ならばこのチームでは一番。ロングカウンターを仕掛けるうえで前線にポストプレーヤーがいることは非常にありがたい。

 

ラムジー運動量と幅広いポジションでプレーすることができる。この試合では守備にも積極的に参加していたが、ロングカウンター時には運ぶドリブルかロングボールによって前線にボールを供給していかなければならない。ラムジーがその役をやることも多かったが、ベイルがウイングでプレーをしているときにはラムジーがフォワードの動きを求められることもある。そういった場面でラムジーの存在は非常に貴重だった。

 

アレンにはあまり触れてこなかったが、EURO2016が始まってから評価が見直されてきている選手。プレスがある中でボールを運ぶ能力があるか?といわれると疑問だが、自由にプレーできているときの積極的な縦パスはウェールズにとって大きな武器。小柄ながらも運動量が豊富でフィジカルバトルを躊躇しないというのも大きな魅力だろう。アレンもまたカウンターで輝くタイプだと個人的に思っている。

 

ウェールズの前半のチャンス(カウンターのみ)

0m50(7-11),8m30(19-10-11),10m20(7-10),19m30(10-11-3),21m10(7-10),

23m00(7-2-10),25m40(10-11-18-10-2-18),29m40(11-18),

30m40(7-11PK?),37m20(10-11),39m40(3-11),45m20(11-10)

 

これだけのチャンスを前半だけでつくったウェールズのカウンター攻撃は非常に機能していたといえる。前半10分にはアレンのパスに反応して抜け出したラムジーがゴールを決めて0-1。19分にもロングスプリントしてきたテイラーが決めて0-2。場合によってはもっと得点してもおかしくない前半だった。正直この時点でロシアは3点が必要となるため、敗退はほぼ確定である。

 

5. 後半戦

ロシアは後半戦に向けてV.ベレズスキをA.ベレズスキに変更する。CBの変更をこのタイミングで行うということと、A.ベレズスキは34歳でこの大会がおそらくメジャーな国際大会は最後であることを考えるとロシアは白旗を振っているようなものだった。

 

後半もロシアのボールを奪取したウェールズのカウンターという図式に変わりはなかったが、ウェールズはボール保持した時に意図的にテンポダウンするようになる。

 

ウェールズは前半に2得点しているが、前半終了時ですでにラムジーやアレンは疲弊していた。運動量が多い選手といってもロングスプリントを試合中に何度も行えば疲れるのは当然。むしろよく45分このペースを保ったなと思っていたため、後半のテンポダウンは当然の判断だった。

 

前半のボールポゼッション率はロシア(64%)vsウェールズ(36%)だったが、

後半はロシア(38%)vsウェールズ(62%)となる。

 

ボールポゼッション率がゲームを支配する指数ではないということがよく表れている。

 

後半のウェールズのチャンス(カウンターのみ)

46m30(11),54m30(18-10-11),61m10(11),66m30(16-2-10-11)

 

ちなみに66分にベイルが決めたため、リーグ戦3試合すべてでゴールを決めたことになる。この時点からウェールズはアレン、レドリー(負傷交代)、ベイルを下げて完全にテンポダウンする。ロシアも諦めているためこれ以降の25分を見る価値は全くない。

 

余談

ロシアにとって散々な結果となったウェールズ戦だった。幸運だったイングランド戦と不運だったスロバキア戦。トータルで考えればイーブンな感じだった。

 

この試合はウェールズのカウンターが驚異的であることを決勝トーナメントに進むチームに示せたと思うので、そういった意味でもこの大勝は大きいかもしれない。

 

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