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サッカーを視る

主にCLやビッグマッチについて。リーグ戦はEPLが中心

EURO2016-A1-FRA.vs.ROU

EURO2016 グループA-1 フランスvsルーマニア

 

スタメンは以下の通り。青がフランス黄がルーマニア(図1)

 

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図1 フランスvsルーマニア

 

フランス代表は欧州サッカーをかじっている人なら名前は聞いたことあるようなメンツ。中でも聞きなれないのは左サイドの8番パイェ位?彼は今年プレミアリーグウエストハムに移籍し、足の速さと両足を自在に使うウインガーとしてブレイクした選手。同様にコマンやマーシャルなどここ2年間でブレイクしたウイングの選手は多い中でスタメンを勝ち取った。

 

正直なところルーマニアの選手についてはほとんど知らない。国内リーグで活躍する選手も多いし、CLに出る選手も少ない。かろうじて知っているのはキリケシュとパンティリモン位なため当然選手に何ができて何が苦手なのかもよくわからない。したがってフランス目線でこの試合を見ていくことにする。

 

試合の要約

この試合は2-1でフランスが勝利する。フランスはジルーとパイェが1点ずつ、ルーマニアはスタンクが1点きめる。基本的にはフランスが試合を支配し、ゴールチャンスも10回以上作っていた。ルーマニアの決定的なチャンスは序盤のコーナーキックと後半開始直後のボレーシュートのみ。内容と結果が伴った試合だった。

 

 

前半

ルーマニアはカウンターができない状態になると前線にロングボールを出してしまうチームだった。ボールを保持した攻撃にあまり強みがないんだろうという感じがあった。しかしロングボールを主体にするにしても、フランスの最終ラインはコシルニー、ラミ、エブラ、サニャとエアバトルに優れている選手ばかり。セカンドボールもポグバ、マテュイディ、カンテと争わなくてはならない。このメンツ相手にロングボールで競り勝てるチームはそうそうない。実際に前半のルーマニアのロングボールはほとんど弾き返されていて意味をなさなかった。

 

おそらくこうなることは事前のスカウティングからもわかっていただろう。したがってルーマニア「守備からのカウンターで得点を狙いに行く」というのが試合前からの狙いだったと思う。

 

1. ルーマニアの守備

ルーマニアは4-4-2でDFをする。トップはアンドネとスタンチュ。基本的には結構プレスラインも高めで、必要とあらば両翼もプレスに絡んでくる。トップはビルドアップを妨害しつつ、取りどころで2列目がプレスに加わるというスタイル。

 

ただしルーマニアのトップ2人のディフェンスは全く意味をなしていなかった

 

一つはカンテの存在。

カンテがDFラインに入ってビルドアップすることで本来マークするべき相手と守るべきゾーンの整理ができていなかった。(図2)

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図2 ルーマニアの守備(4-4-2)

 

こういった状態になってしまったとき、4-4-2から4-3-3へとプレス人数を増やす方法4-5-1にして前線からボールを奪取することは諦めるなど相手に合わせたプランを持ち合わせているものだが、ルーマニアにはそういった規則性が見られなかった。

さらにラミやコシルニーがフリーな状態であればバンバン縦パスを通してくるというのも問題だった。そもそもの問題は2トップの運動量とDF能力が低いことも起因しているが、やはりルーマニアのディフェンスは整理されていなかったといえる。本来ハイプレスとは、相手の選択肢を狭めた上で行わないと意味がないが、ルーマニアのハイプレスは中盤のスペースをフランスに提供していただけだった。

 

こんな感じで前線からボールを回収できないルーマニアにとってのプランBはロングボールだが、これも前述のとおり意味をなさない。したがって前半戦でフランスの一方的な展開になるのは仕方がなかった。

 

2. フランスの攻撃

フランスはスムーズにビルドアップをしていた。

ルーマニアの2トップの監視エリアから外れた場所からの縦パスやロングボールなど計画されたビルドアップもあったが、個人のアイデアから突破することもあった。

 


EURO2016 A1 FRA vs ROU FRA 1stattack

 

FRAbuildup

6m40,9m00(ROU14),11m40(ROU),12m40(FRA),13m20(FRA15),16m20(FRA5good),

21m20,24m20(FRA4good),26m10(FRA4,8),29m20,31m00(FRA21good),

33m40(FRA14,8),40m50(FRA14)

 

これ意外にも多くのビルドアップを成功させたおかげで、前半だけで大きなチャンスは3つもあった。いずれも大チャンスであったことを考えれば、前半だけで1点か2点入ってもおかしくなかった。

 

フランスは4-3-3表記となっているが、実際はグリーズマンとジルーの2トップの周辺をパイェが自由にプレーするという形を取っているため、チャンスメイクは専らパイェの仕事だった。3つの大きなチャンスのクロスを上げたのはすべてパイェだったということからも得点するうえでパイェの存在は重要になってくる。

 

3. ルーマニアの守備(後半)

後半になるとルーマニアは少しだけ守備に変更を加えた。

1つめ、ボールを奪取できると判断した時、よりアグレッシブにプレスを強めたこと。

2つめ、4-2ブロック間のポグバ、マテュイディの監視役にホハンが抜擢されたこと。

 

ホハンが中央のスペースをカバーすることで、問題だったコシルニー、カンテ、ラミのドライブに対してアンドネとスタンチュがでていけるようにしたこと。ホハンが中央のスペースとポグバをカバーすることでビルドアップを妨害できるはずだった。(図3)

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図3 ルーマニアの守備(後半)

 

しかしうまくいかない。

 

なぜなら他の中盤の選手があまりにもルーズだったから。パイェやグリーズマンはビルドアップが滞りそうになると頻繁に下がってビルドアップを助ける動きができる。

 

結局ホハンで真ん中をカバーするという動きに連動してグリーズマンやパイェが頻繁に下がってくる。ホハンを除くルーマニアの2列目の3人はエブラ、マテュイディ、サニャ+パイェ、グリーズマンのエリアをカバーしなければならないが、そんなことは無理だった。

 

結局ビルドアップを妨害できない1列目、数的不利な状態でプレスをするかゾーンを守るかので混乱してしまった2列目、ラインを上げられない3列目とルーマニアのディフェンスはむしろ前半よりも致命的なエリアをフランスに提供してしまっていた。

 

 

結果的にパイェのクロスからジルーが決めて1-0ルーマニアのGKのタタリシャヌはロングボールへの対応がルーズで、どうみてもこのレベルのエアバトルに慣れていなかった。勿論、ジルーが相手のエアバトルはどのGKにとっても嫌なものではあるが。

4. 終盤の攻防 

終始試合を有利に進めていたフランスだったが、65分にエブラがスタンチュをエリア内で倒してPK。これをスタンクが決めて1-1ルーマニアはフランスの攻撃にも守備にも全く対応できていなかったが、運よく得点できてしまった。

 

同点になるとフランスはグリーズマン⇔コマンで攻勢に出る。クラブでの実績や選手の能力ではグリーズマンのほうがパイェよりも上だが、この試合のパイェのチャンスメイクをみればパイェを残すのは当然の判断だった。

 

一方のルーマニアは当然守備固めに入る。4-4-2の守備からのカウンター狙いは全くうまくいっていなかったし、ボール保持できないとなれば、あとは耐えて勝ち点1を持ち帰るのみ。(図4)

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図4 ルーマニアの守備(65-90min)

 

デスコルガード(カウンター要員)としてアリベツを前線に残す以外は4-4-1で自陣にバスを止める。これ以降はルーマニアにはチャンスは訪れないが、フランスのチャンスも減少していく。

ルーマニアのバスは一部ルーズな部分もあったが、25分守るという意味では十分だったように思えた。

しかし88分にパイェが密集地から打ったミドルシュートが吸い込まれて2-1

 

フランスは内容、結果ともに満足する出来で試合を終えることができたが、PKを決められて追いつかれてからはもどかしい時間帯が続いた。

 

余談

大会に風を巻き起こしそうなパイェが印象的なフランスだったが、ラミ、コシルニー、カンテ、ポグバ、マテュイディがビルドアップを完璧にこなせるという前提があってこそ。普通に地力が高い。このビルドアップを破壊できるチームはベスト8以降でないと現れない可能性が高い。