サッカーを視る

主にCLやビッグマッチについて。リーグ戦はEPLが中心

UCL16-17-E3-レヴァークーゼン.vs.トッテナム

UCL16-17-E3-Leverkusen.vs.Tottenham

まずはスタメンから
黒がレヴァークーゼン、白がトッテナム(Fig.1)

f:id:come_on_UTD:20170722211218p:plain

Fig.1 レヴァークーゼンvsトッテナム

 

レヴァークーゼンはいつもの4-4-2

特に大きなシステム、選手の変更はなし。変更点はキースリンク、メフメディがスタメンに復帰したくらいだろう。

 

トッテナムは4-1-4-1

ワニヤマがピボーテとなることでエリクセン、デレアリの中央での両立を可能としている。アルデルヴァイレルド、K.ウォーカー、H.ケインの欠場のためそれぞれダイアー、トリッピアー、ヤンセンが代わりを埋めている。

 

試合の概要

試合は0-0の引き分けで終了する。最初の15分はレヴァークーゼンが、15~45分はトッテナムが、後半45分間はレヴァークーゼンが完全にゲームの主導権を握りチャンスを量産していたがゴールには至らなかった。試合全体を見ればレヴァークーゼンのほうが内容はよかったかもしれないが、どっちに結果が転んでもおかしくなかった。

 

前半15分レヴァークーゼンが優位だった理由

レヴァークーゼンの前線守備、トッテナムのビルドアップ


トッテナムが2センターを採用していた時は、ダイアーまたはM.デンベレがCBのサポートをすることでビルドアップを行っていた。ただしSBはどの選手が出場したとしてもあまりビルドアップに関われる選手が多いわけではない。モナコ戦ではB.デイビスとアルデルヴァイレルドのロングボールが攻撃の基点となっていたが、この試合にはいずれの選手もいない状況となっている。また4-1-4-1を選択したにもかかわらずワニヤマはほとんどCB間に入ることはなかった(Fig.2)

f:id:come_on_UTD:20170722211238p:plain

Fig.2 レヴァークーゼンのビルドアップ妨害

レヴァークーゼンの前線守備の約束事は以下の通りである

キースリンクまたはJ.エルナンデスがワニヤマ、ダイアー、フェルトンゲンを監視する

・メフメディ、チャルハノールがD.ローズ、トリッピアーを監視

・カンプル、アランギスはエリクセン、デレアリへのパスコースをふさぎつつ中央をカバー

 

単純なハイプレスだったが、ハイプレスの強度が高く、トッテナムもポジションチェンジなどが少なかったことから、ショートパスでプレスを回避するような場面は希少だった。したがってダイアー、フェルトンゲンによるヤンセンへのロングボールがトッテナムのこの時間帯のビルドアップとなる。ただし、特にフェルトンゲンロングフィード精度は低くこの時間帯のトッテナムのボール保持攻撃はボロボロだった。

 

トッテナムの前線守備、レヴァークーゼンのビルドアップ

レヴァークーゼンのビルドアップの基本はカンプルがLSBに落ち、ボール保持攻撃の中心となることである。そのため、モナコのようにカンプルの動きを制限することはレヴァークーゼンを攻略するうえで重要となるのは明らかだった。トッテナムの守備の基本形は4-1-4-1である(Fig.3)

f:id:come_on_UTD:20170722211252p:plain


Fig.3 トッテナムのカンプル対策

 

トッテナムの守備の約束事は以下のとおりである

ヤンセンがター、トプラクを監視

・LSBの位置のカンプルをラメラまたはソンフンミンがマンマーク

・プレス開始し始めたらエリクセンまたはデレアリが追加でプレス

 

こんな感じでカンプルがLSBにポジションチェンジした場合にビルドアップに関与させないことで、トプラクまたはターがロングボールを蹴る展開が多くなった。ただしワニヤマ、ダイアー、フェルトンゲンというプレミアでもエアバトルに優れている選手がいるので、長身のキースリンクをもってしてもうまく収まることはほとんどなかった。

 

こんなことから少し時間がたつとカンプルはLSBの位置にポジションチェンジすることなくスタメンのポジションでビルドアップに関与しようとする。ただしこのビルドアップの場合はチャルハノールがよりアウトサイドでプレーに絡まなければならなくなる。チャルハノールは中央でのミドルシュートやラストパスに絡むようなプレーは得意だがサイドでのプレーはいまいちのため、前半のレヴァークーゼンのボール保持攻撃はビルドアップ、ゲームメイクの部分でチグハグしてしまっていた。

 

15分間の優位を勝ち取ったレヴァークーゼン

両チームともビルドアップが自由にできたわけではなかったが、レヴァークーゼンのほうが前線からの守備でボール奪取→カウンターアタックが嵌っていたことから前半15分間はレヴァークーゼンのペースとなった。もちろんレヴァークーゼンのプレスは質が高い分長時間維持することはできないので徐々にトッテナムも活路を見出していく。

 

 

前半15~45分までの30分間トッテナムが優位だった理由


エリクセン、デレアリの個人技~

f:id:come_on_UTD:20170722211304p:plain

Fig.4 デレアリ(左)、エリクセン(右)

レヴァークーゼンのプレスの強みは高い強度とハイプレスにかける人数である。一方でこのハイプレスは90分間維持することは不可能で時間経過とともにプレス強度は低下していく。これに伴ってフェルトンゲン、ダイアーからエリクセン、デレアリへの縦パスが通り始めるようになる(Fig.5)

 

ハイプレスしている分、エリクセン、デレアリを守らなければならないカンプル、アランギスの守備範囲は膨大となる。またエリクセン、デレアリは縦パスを受けた後ラメラ、ソンフンミンにワンタッチで正確につなぐ技術を持ち合わせているため、ハイプレスをかわしてこの2人にボールを届けることができれば即チャンスメイクができるという状態になっていた。また、ボールが回り始めてからはワニヤマの軽快なボールさばきも見逃せないポイントだった。レヴァークーゼンとしてはハイプレスが弱まる時間帯で撤退守備に切り替えられるともう少し安定すると思うが、この時間帯は完全にトッテナムのものになってしまった。

 

レヴァークーゼントッテナムのチャンスメイク(前半)

レヴァークーゼンのチャンスメイク(前半)

04m10T(10-14-7-44-8)zGrade4

06m20T(14)Grade4

40m50P(21-39-14-39-11-10-44M)Grade4

43m20P(44-39-7M)Grade4

 

トッテナムのチャンスメイク(前半)

09m40T(12-23-11-7offside)Grade4

17m50P(12-15-16-12-11-20-7)

20m30T(11-12-23-16)Grade4

23m50P(5-7-20-7M)Grade4

26m10P(3-9-23-12-16-11-23-12-16-20)Grade5

37m40P(3-20-7-9-20)Grade5

38m00P(16-9)Grade5

38m00P(9-11)Grade5

40m10FK-P(23-7)Grade4

41m50P(3-9)Grade4

45m50P(15-16)Grade4

 

トッテナムとしては前半のうちに先制しておきたかった。特に38分の3つの大チャンスできめきれないあたり今季のチャンピオンズリーグでは運がない状況ともいえる。

 

後半に向けた変更点

f:id:come_on_UTD:20170722211317p:plain


Fig.5 カンプル(左)、バウムガルトリンガー(右)


ハーフタイムでチャルハノール⇔バウムガルトリンガーの変更を行った。この変更によって前半なんとなくチグハグだったレヴァークーゼンは復活する。まず、ボールにあまり絡むことができていなかったカンプルがSHに移ることでビルドアップではなくゲームメイクに絡めるようになる。そしてポジティブトランジションの際にはカウンターの基点として正しいプレーをすることができるため、すべての攻撃の質が上がった。(Fig.6)

f:id:come_on_UTD:20170722211346p:plain

Fig.6 後半のレヴァークーゼンの形

 

後半45分間レヴァークーゼンが優位だった理由

レヴァークーゼンの攻撃がうまく嵌りだすようになると、トッテナムはロリスがボールに触れる機会が増えてくる。ゴールキックやロリスへのバックパスの際にレヴァークーゼンはプレスの強度を明らかに強めることでロリスのミスを誘発しようとする。(Fig.7)

f:id:come_on_UTD:20170722211402p:plain
Fig.7 トッテナムゴールキック

 

Fig,7は前半のシーンだが、レヴァークーゼンはこのようにゴールキックの際にショートパスを蹴らせないような陣形を保つことでトッテナムに自由を与えなかった。

たしかに、ロリスは相変わらず飛び出しやビルドアップではかなり不安定なプレーをすることはあるが、それを補うほどのシュートストップ能力があり、今回の試合でもその能力にトッテナムは助けられていたという事実はもちろん忘れてはいけない。

 

エリクセン、デレアリのインサイドハーフコンビについて

たしかに、ロリスは相変わらず飛び出しやビルドアップではかなり不安定なプレーをすることはあるが、それを補うほどのシュートストップ能力があり、今回の試合でもその能力にトッテナムは助けられていたという事実はもちろん忘れてはいけない。

トッテナムポチェッティーノが監督に就任してからビルドアップにとても力を入れている。それはトッテナムのなかでもクリエイティブなプレーを得意とするデレアリ、エリクセンを最大限生かすためである。ただし守備という側面からみるとデレアリ、エリクセンのディフェンスは少々危ういことが多すぎた。もちろん攻撃時のメリットを考えればエリクセン、デレアリが共存できるこのシステムは魅力的だが、そのためにはビルドアップの精度をもっともっと上げる必要があるように感じた。

 

レヴァークーゼントッテナムのチャンスメイク(後半)

レヴァークーゼンのチャンスメイク(後半)

45m10P(1-21-1-39-7-14)Grade5

47m40P(8-14-8-7)Grade5

54m30FK-P(20-11)Grade4

56m10FK-P(20M)Grade4

56m50CK-P(44-11-44-20)Grade5

57m00P(20-15-7)Grade5

61m40P(15-11-14M)Grade4

67m00P(20-44-11)Grade5

67m30CK-P(44-21)Grade5

71m30CK-P(44-21)Grade4

77m40T(16-7-15-44)Grade4

83m40T(15-14-7-44-11)Grade5

86m50P(20-44-19)Grade4

90m30P(44-19-15-19-14-20-14-16)Grade4

 

トッテナムのチャンスメイク(後半)

77m30P(15-16)Grade4

81m00P(20-23)Grade4

 

レヴァークーゼンはGrade4以上のチャンスが前半4、後半14、トッテナムは前半11、後半2と、本当に前半と後半で対照的な試合となった。特にレヴァークーゼンは後半何度も大きなチャンスを作り続けたがロリスのビッグセーブまたは決定力不足でゴールを得ることはできなかった。

 

余談

レヴァークーゼンはここまでの3試合いずれも内容はこのグループの中では最もいいのに勝ち点が伸びきっていない。75分以降キースリンクが完全にスタミナが切れていたようにもう少しだけ試合全体のリズム調整ができればもっといいチームになりそうな気配はある。

UCL16-17-E2-モナコ.vs.レヴァークーゼン

UCL16-17-E2-Monaco.vs.Leverkusen

まずはスタメンから
白がモナコ、黒がレヴァークーゼン(Fig.1)

f:id:come_on_UTD:20170708145347p:plain

Fig.1 モナコvsレヴァークーゼン

 

モナコは4-4-2

ファルカオが頭部のけがのため欠場しているためジェルマンがCF、変更選手はジェルマンのみなのであまり大きな変更はないとみていいだろう。

 

レヴァークーゼンは4-4-2

ベンデウがスタメンを外れたことでヘンリヒスがLSB、L.ベンダーがRSB。チャルハノールはLSH、フォラントが1列目と1節とはだいぶ様子が違う感じである。

 

試合の概要

試合は1-1の引き分けで終える。72分にメフメディのクロスをJ.エルナンデスがヘディングで決めてレヴァークーゼンが先制するも、93分に攻撃参加していたグリックの素晴らしいミドルシュートモナコが同点に追いつく。内容としてはレヴァークーゼンのほうが大分よかったが、モナコは1節に続き苦しい試合展開でも勝ち点を得ることに成功している。

 

レヴァークーゼンのビルドアップ、モナコの前線守備


レヴァークーゼンのビルドアップは1節と同じくカンプルを中心に行う。すなわちカンプルがLSBの位置に、ヘンリヒスがSHの位置に移動する。4-4-2の1列目の脇を突くという意味で1節のCSKA戦でもうまくいっていたが、モナコは以下のように対応した。(Fig.2)

f:id:come_on_UTD:20170708145409p:plain
Fig.2 モナコのカンプル対策

モナコの守備の基本形は4-4-2。バカヨコ、ファビーニョの守備重視のCH、ジェルマン、B.シウバが1列目となっており、ルマーとモウチーニョはその時々でお互いのポジションチェンジをすることが多い。

 

モナコの守備の約束事は以下の通りだった

・トプラク、ターに対して牽制はするものの積極的には追いかけない

・カンプルがLSBの位置でボールを受けようとしたら1列目のうち近い選手が厳しくマーク

・本来のSBヘンリヒス、L.ベンダーにはモウチーニョ、ルマーが厳しくマーク

 

つまり、「カンプルにボールを持たせない」がこの試合のモナコの守備のコンセプトだった。ただしモナコのこの守備は1列目が度々中央から外れてしまうため、ターやトプラクがある程度自由にボールを持ててしまう。実際レヴァークーゼンはカンプルを起点にしづらいと気が付くと、トプラクやターがロングボールを前線にフィードするようにシフトしていく。

 

こういったレヴァークーゼンに得意のビルドアップを試合を通してさせなかったことを考えるとモナコの守備は機能していたといっていいと思う。しかし、より上位のチームであれば、カンプルのようにビルドアップ-ゲームメイクできる選手を複数スタメンに擁していていることが多く、今回であればL.ベンダーやアランギスのような右側の位置の選手がもっとビルドアップ、ゲームメイクに絡めれば面白かったと思う。

 

モナコのビルドアップ、レヴァークーゼンの前線守備

一方でモナコがボール保持した時、レヴァークーゼンは4-4-2で迎えた。基本的には1列目をJ.エルナンデス、フォラントが務めるスタメン表通りのものだった。モナコのビルドアップの形も1節のトッテナム戦とほぼ同じ。基本はバカヨコがCBの間に落ちる、両SBがSHの位置で、両SHはより中央でプレーする。もしくはジェメルソン、グリック、ラッギの3人でビルドアップすることもあったが、基本的にレヴァークーゼンの1列目の脇から3人でビルドアップしようという狙いは明白だった(Fig.3,4)

f:id:come_on_UTD:20170708145436p:plain
Fig.3 レヴァークーゼンの守備

 

レヴァークーゼンの守備の約束事は以下の通り

・J.エルナンデス、フォラントはそこまでCBにプレスせず、中央のエリアとファビーニョモウチーニョへのパスを牽制

・J.ブラント、チャルハノールはSBに激しくプレス

 

f:id:come_on_UTD:20170708145451p:plain
Fig.4 モナコのビルドアップ

 

モナコがCLレベルで戦っていくうえで大きな障害となるのは、ボール保持攻撃、特にビルドアップの貧弱さにある。ファビーニョ、バカヨコは守備での貢献度は高いもののビルドアップであまり有効にプレーできない。これはシディベ、ラッギにもいえることで、モナコのビルドアップの多くは両CBもしくはSBからのロングボールのみ。そのロングボール精度もあまり高くなく、前線で無理やりボールを守ってくれる選手もいないのでボール保持攻撃は壊滅的だった。

 

カウンターと前線守備の質の差

両チームともボール保持攻撃はお互いの守備によってほとんど潰されてしまっていた。となると両チームの内容差を決めるのは、前線守備からいかにカウンターにつなげるか?がうまいかにかかっている。

 

モナコレヴァークーゼンのチャンスメイク

モナコのチャンス

28m50P(14-8-10-27-19)Grade4

31m20P(14-27-8)Grade4

42m50P(8-27-18-19)Grade4

43m50P(2-24-18-19-27M)Grade4

 

50m00P(24-10-24-8-10-27-19-10)Grade5

78m00P(8-25-11-10-19)Grade4

91m20P(24-11)Grade4

93m30P(19-11-25M)Goal

 

レヴァークーゼンのチャンス

03m10P(4-31M)Grade4

12m40T(21-39-31-10M)Grade4

40m40P(7-20-10)Grade4

41m30T(44-19)Grade4

46m30P(19-10-31-7)Grade5

 

46m50P(1-31-7)Grade4

51m40P(39-10M)Grade4

60m20T(21-31)Grade4

67m40P(39-31)Grade4

71m20P(10-7-44-10-7)Grade4

72m40P(20-14-7)Goal

83m40T(14M)Grade5

86m00T(44-7-20-10)Grade4

 

両チームともチャンスメイク数は少なく、

モナコはGrade3以上が15個(うちカウンターが1個)Grade4以上が8個

レヴァークーゼンはGrade3以上が23個(うちカウンターが9個)、Grade4以上が13個だった。両チームのチャンスメイク数の差はほとんどカウンターによるものであり、レヴァークーゼンは特に前線でボール奪取しショートカウンターに持ち込む回数も多かった。

 

レヴァークーゼンは前線に運動量を伴う選手を配置しているが、個の能力で特化した選手がいない。前線守備→カウンターという素晴らしい武器をチームとして持っているものの、得点になかなか結び付けられなかった。62分にJ.ブラントをキースリンクに交代し、キースリンク、J.エルナンデスの1列目にするものの、キースリンクの高さはあまり有効活用されていなかった。

 

モナコは76分までにジェルマン、バカヨコをカリージョ、ムバッペに変更しモウチーニョファビーニョをCHとする(Fig.5)

f:id:come_on_UTD:20170708145508p:plain
Fig.5 76分以降の各チームのフォーメーション

 

この時間帯までほとんど有効なビルドアップができていなかったモナコだったが、モウチーニョがCHとしてプレーすることでボール保持攻撃の質が上がったのは間違いなかった。

 

ただしモウチーニョをCHにおくのは守備を考えても難しいものがある。ボール保持攻撃の必要性が重視されるのであればモウチーニョは重要なカードになりえるが、CLレベルのチームと戦うためにはまず守備が大事になってくる。

そうなればバカヨコ、ファビーニョのCHは動かせないため、モウチーニョは必然的にSHでプレーしなければならないが、SHに結構優秀な選手が集まりつつあるモナコにおいて、モウチーニョのSHが正しいのかはこの時点ではまだわからない。

 

グリックの謎の同点弾

この試合はっきり言ってモナコにチャンスはほとんどなかった。ルマーは持ち前のスピードを生かせるシーンがそもそも少なく、B.シウバも圧倒的なキープ力を見せていたもののチャンスメイクにつながるようなプレーは少なかった。

 

そんななかでシディベからのロングボールをカリージョが落としてグリックが豪快なミドルシュートを決めてしまった。レヴァークーゼンとしてはあと1プレー守れば勝ち点3だったことからも非常に手痛い引き分けとなってしまった。

 

 

余談

とにかくモナコは内容がよくなかった2試合で勝ち点4を得たという事実がとてつもなく大きい。ただし内容はそれほどよくないので、改善するのかボロが見え始めるかは今後の試合を見ていけばわかるだろう。

UCL16-17-E1-レヴァークーゼン.vs.CSKAモスクワ

UCL16-17-E1-Leverkusen.vs.CSKAMoscow


黒がレヴァークーゼン、黄がCSKAモスクワ(Fig.1)

f:id:come_on_UTD:20170702195254p:plain

Fig.1 レヴァークーゼンvsCSKAモスクワ

レヴァークーゼンは4-4-2

シュミット監督のレヴァークーゼンといえばとにかく前線からプレスをかけるチームで、J.エルナンデス、チャルハノール、メフメディといった準一級の選手を擁している。

 

CSKAモスクワは4-4-2

怪我でEURO2016を欠場したザゴエフ、フィンランドのエレメンコ、スウェーデンのバーンブルーム、コートジボワールのL.トラオレ以外はEURO2016でロシア代表として出場していた選手ばかり。

 

試合の概要

試合は2-2-の引き分けで終える。7分にはJ.ブラントからのパスをメフメディが決めて先制する。14分にはチャルハノールのシュートがディフレクションしてうまくゴールに吸い込まれ2点目。しかし35分にカウンターの形からイオノフ→ザゴエフとうまくつなぎザゴエフが1点返すと、その直後もカウンターの形からエレメンコが狭いコースからシュートを決めて同点とする。試合内容としてはレヴァークーゼンが押していたが、レヴァークーゼンは試合を殺すようなサッカーができず自滅してしまった。

 

レヴァークーゼンのビルドアップ、CSKAモスクワの守備


CSKAモスクワの守備の形は4-4-2。失点するまでの間は1列目、2列目はそれほど熱心にプレスをかけるようなことはしなかった。一方でレヴァークーゼンのビルドアップの形はカンプルを中心とする、だった。(FIg.2)

f:id:come_on_UTD:20170702195307p:plain

Fig.2 レヴァークーゼンのビルドアップ

・CHのカンプルはビルドアップの段階で、LSBの位置に落ちる。

・ベンデウはWG

・メフメディ、チャルハノール、J.エルナンデス、J.ブラントは前線でボールの受け方を考える

このチームの中で誰が一番ゲームメイクがうまいか?と言われれば、おそらくカンプルである。カンプルがフリーでボールを持つためには4-4-2の弱所である1列目の脇にポジショニングさせればいい。この形はEURO2016のクロアチアモドリッチが担っていた役割と全く同じである。

ベンデウがオーバーラップすることでイオノフがカンプルにアタックしづらい状況を作り出し、L.トラオレもしくはエレメンコがカンプルにプレスするようであれば、L.ベンダーやCB陣が余裕をもってゲームメイクできる仕組みになっており、ハーフラインまでは簡単にボールを運べた。

 

レヴァークーゼンのゲームメイク、CSKAモスクワの守備

基本的にはFig.2を見ればほぼレヴァークーゼンのゲームメイクの形は理解できる。チャルハノールやメフメディが2列目の前後の狭いスペースでボールを受け、ダイレクトプレーで相手のゴールに迫っていく方法、もしくはJ.エルナンデス、J.ブラント、メフメディの裏抜けを狙ったロングボール。

基本的にこの2択しかないが、カンプルのパスと前線はよく連動しており、CSKAモスクワの撤退守備に対してもチャンスを作り続けていた。

 

CSKAモスクワのボール保持攻撃、レヴァークーゼンの前線守備

一方でCSKAモスクワのボール保持攻撃は非常に単調なものだった。というのもレヴァークーゼンCSKAモスクワがボールを保持しようとすると4人、多いときで5人でハイプレスを行う。この時無理にボールをつなごうとはせず、L.トラオレに向けてロングボールを蹴ることがほとんどだった。

 


L.トラオレは体格はかなり大きくポスト系のFWかと思っていたが、残念ながらこの試合ではJ.ターにほぼ完封されてしまっていた(Fig.3)

f:id:come_on_UTD:20170702195320p:plain

Fig.3 L.トラオレのエアバトル勝率(左)、J.ターのエアバトル勝率(右)

こんな感じでCSKAモスクワのボール保持攻撃はほぼボロボロだったといって過言ではない。ただし、ロングボールを前線が拾った場合には、実質レヴァークーゼンのハイプレスを躱したときと同じ状況になるためそれなりのチャンスとなる。詳細はチャンスメイクの部分で述べる。

 

レヴァークーゼンのチャンスメイク(前半)

レヴァークーゼンのチャンス

04m20P(39-19)Grade4

05m10P(44-10-19)Grade4

07m50P(44-7-39-14)Goal

14m10T(39-14-19-7)Grade5

14m30P(44-10M)Goal

17m10P(10-19-44-14)Grade4

18m40T(7-14-19)Grade5

22m20FK-T(10-8-18-14)Grade5

26m20P(8-19-14-10-19-18)Grade5

33m10P(4-1-44-21-19-8-14)Grade4

33m40P(10-8-10-39-8-39)Grade4

35m00P(4-14)Grade5

35m10P(14-14)Grade5

40m20P(44-14-19)

44m30P(8-18-44-10)

 

CSKAモスクワのチャンス

30m50FK-P(10-11M)Grade4

35m30T(17-25-2-11-10)Goal

37m00T(17-10-9)Grade4

37m30T(24-25-11-9-25)Goal

 

レヴァークーゼンのシュミット監督も言っていたように前半30分間のサッカーは完璧だった。

以下の4点が自分が感じたいい部分。

・ボール保持攻撃はカンプルの好調もあって精度が高かった

・CSKA側に押し込んだ状態でボールを奪取された時にはハイプレスでショートカウンターの機会を2度も作った

CSKAモスクワに押し込められてもボールを奪取した時にはロングカウンターの機会を作れていた

・2点ビハインドになったCSKAモスクワがハイプレスに切り替えた時にもショートパスでプレス網をかいくぐっていた

ゴール以外にもGrade5が6個、Grade4が7個とかなり決定的な場面が多かったことがわかると思う。ただし、14分に2点目を決めてから35分に失点するまでの間にGrade5が5個とかなり集中していながらも、追加点を奪えなかった。また、チャルハノールは2点先取した後カウンターの場面で何度か雑なプレーを見せることが多くなっていった。

 

前半35分間を完璧なサッカーというのであれば、前半残りの10分間はかなりひどい出来だった。というのもシュミット監督のサッカーはとにかく全員に集中力と運動量を求める。ボールを奪えば即カウンター、相手がボールを保持している時はハイプレス、と特に1列目、2列目の負担が極端に大きい。

前半も終盤になると、ハイプレスを躱された時にレヴァークーゼンのSHの戻りが極端に遅くなっていく。さらに前述のようにCSKAモスクワは守備時にハイプレスを行うようになる。(もっともCSKAモスクワのハイプレス精度は高くなく、レヴァークーゼンのビルドアップを完全に妨害できていたわけではない)


こんな2つが重なり合って両チームは守備時にも攻撃時にも縦に間延びした陣形になってしまう。間延びすると試合はランダム性が増し、コントロールできなくなってしまう。(Fig.4,5) f:id:come_on_UTD:20170702195338p:plain

Fig.4 レヴァークーゼンの被カウンター対応I


例えばレヴァークーゼンの最初の失点シーンだが、レヴァークーゼンのCKをボール奪取し、カウンターにつなげた場面。(Fig.4)

J.ブラント、メフメディら前線の選手は明らかに疲労で戻れていない。もちろんCKに関わっていた選手が戻れないのは仕方ないが、これだけしか戻れてないあたりシュミット監督の目指すサッカーを90分間通すことは限りなく難しい。

f:id:come_on_UTD:20170702195354p:plain

Fig.5 レヴァークーゼンの被カウンター対応II

2失点目もL.トラオレが競り合ってエレメンコがセカンドボールを取ったところから始まる。(Fig.5)この時もJ.ブラント、メフメディの最低どちらかは撤退するべきだったが、結局6人で守備をする羽目になり、同点を許すこととなる。もちろんCSKAモスクワのチャンス数は限りなく少なく、2失点すること自体がレヴァークーゼンにとって不運だったことは確かだった。しかし、CSKAモスクワはそれほどボールをつなげるチームでもないし、圧倒的な個のスキルを持っている選手はいないのだから、もう少し状況にあったサッカーをしてもいいのではないかと思った。

 

例えばアトレティコマドリードならハイプレスの時間帯、ビルドアップを制限する時間帯、4-5-1で守る時間帯、撤退する時間帯と自分と相手の状況に合わせて試合のリズムを変化させていくが、レヴァークーゼンはいい意味でも悪い意味でもノーガードなサッカーなのであまりうまく試合を殺せないことが多い気がする。

 

ちなみにロングカウンター時のイオノフのスプリントとザゴエフのパス精度はCSKAモスクワの中でレベルが抜けていた。特にザゴエフのテクニックはこのチームの生命線であり、おそらくWCUP2018においてもザゴエフの出来が重要になってくることをうかがわせた。

 

ハーフタイムにおける変更

49分までに交代枠3人を使い切ったレヴァークーゼンは以下のフォーメーションとなる。(Fig.6)

f:id:come_on_UTD:20170702195512p:plain
Fig.6後半のメンバー構成

J.エルナンデス(足首の怪我)⇔アランギス

チャルノハール(戦術的交代?)⇔ポーヤンパロ

L.ベンダー(ハムストリングの怪我)⇔フォラント

ただし固定されているのはカンプル、アランギスのCHと最終ラインの4人のみで、前線の4人は割と流動的に配置が決まっていた。

 

レヴァークーゼンのチャンスメイク(後半)

レヴァークーゼンのチャンス

45m20T(8-19)Grade5

50m30P(39-14-44)Grade4

59m40T(1-19-44-31-17)Grade5

61m00T(44-17)Grade5

61m20P(14-20-44)Grade4

63m10P(44-20-31M)Grade4

64m10T(39-19-17Nopenalty)Grade4

66m50T(18-44-14)Grade4

71m00P(20-14-39-17)Grade4

73m30P(20-44-18)Grade4

77m30T(44-19-44)Grade4

 

CSKAモスクワのチャンス

67m10T(10-17-11-17M)Grade4

80m10T(10-25)Grade5
83m30CK-P(10-8)Grade5

f:id:come_on_UTD:20170702195523p:plain

Fig.7 カンプル(左)、J.ブラント(右)

 

カンプルの重要性

基本的に後半もカンプル主導で試合は進んでいった。ボール保持攻撃時にはLSBの位置に下がってビルドアップ&ゲームメイク、前線からの守備時には中盤でのインターセプト、ボールリカバリー、そしてカウンターアタックにつなげる初動の視野の広さと選択の正しさはこの試合の中で圧倒的なレベルだった。(Fig.8)

f:id:come_on_UTD:20170702195540p:plain
Fig.8 カンプルのボールリカバリー(左)、インターセプト(右)

CSKAのほとんどの攻撃が確率の低いロングボールだったとはいえ、ボールリカバリー16、インターセプト8は守備の数字としても立派だが、最も素晴らしかったのはカウンターの基点としてかなり質の高いプレーを続けられたこと。

 

J.ブラントの将来性と現時点での能力

J.ブラントはドイツで今シーズンから本格的にブレイクし始めているドイツ人。やはりスプリントやドリブル時の独特なストライド、90分走り続けられるスタミナ、被ハイプレス時のゲームメイクの絡み方等将来有望な感じは確かにあるが、稀にリトリートしないのでいい方向に育てられるかは今後の監督次第という感じがある。

 

余談

試合のテンポが速い分、オフサイドを見逃すシーン、またはオンサイドなのにオフサイド判定してしまったりと線審がテンパるシーンが多かった。主審もトプラクからレノへのバックパスを見逃したり、ポーヤンパロの素晴らしい突破へのファールを見逃したりと結構ぶれていた。レヴァークーゼンとしては勝ち点3を取るうえでとても大事な1戦だったが、引き分けで終えることとなった。

UCL16-17-E1-トッテナム.vs.モナコ

UCL16-17-E1-Tottenham.vs.Monaco

まずはスタメンから

白がトッテナム、黒がモナコ(Fig.1)

f:id:come_on_UTD:20170626233709p:plain

Fig.1 トッテナムvsモナコ

 

トッテナムは4-2-3-1

K.ウォーカー、デレアリ、ダイアー、H.ケインにとっては苦い思い出となったEURO2016。ぽちぇっティーのが来てから特にビルドアップの精度が上がっており、圧倒的な個はないもののベイル、モドリッチがいた黄金時代に近づきつつある。

 

モナコは4-4-2

怪我からトップフォームに戻りきれていないファルカオ、新星B.シウバ、バカヨコや、モウチーニョやグリック、スバシッチといったEURO2016でも中心メンバーだった選手を擁している。

 

試合は1-2でモナコが勝利する。15分にB.シウバがカウンターでうまく独力で運びゴールまで決めてしまった。続く31分にもトッテナムの守備陣の少しのミスを突いてシディベのクロスからのこぼれ球をルマーが押し込んで2点目を決める。前半終了間際にラメラからのCKをアルデルヴァイレルドが決めて1点返すが、追いつくことはなかった。試合自体はトッテナムが終始ボールを持つ展開となったが、うまくビルドアップできた時間帯とそうでない時間帯が明白だった。内奥と結果を総括するとチャンスが少ないながらもしっかりと得点につなげたモナコとそうでないトッテナムという構図になってしまった。

 

ディラルの怪我

開始5分にトッテナムのCKを守っている最中にディラルがハムストリングを痛めてしまい、ルマーと交代した。これが幸か不幸かモナコに大きな影響を与えることとなった。

 

トッテナムのビルドアップ、モナコの守備(前半)


この試合の多くはトッテナムがボールを持つことになるため、トッテナムのビルドアップを見ていくことはこの試合を理解するうえで重要となる。(Fig.2)

f:id:come_on_UTD:20170626233721p:plain

Fig.2 トッテナムのビルドアップ(前半)

トッテナムのビルドアップの基本

・ダイアーがCBの間もしくはCBの脇にポジションチェンジ

・SBはWGのようにプレー

・デレアリは割と自由にポジショニング

 

一方でモナコの守備の形は4-4-2

・B.シウバ、ファルカオの1列目はセンターサークル付近は死守するも基本リトリート

・ディラル、モウチーニョトッテナムのSBのポジションに釣られて1列目とのギャップが顕著

 

こんな感じでトッテナムは63分まではモナコのプレスをうまくかわしてハーフライン付近まで進んでいた。

 

トッテナムのゲームメイク、モナコの守備(前半)

トッテナムのゲームメイクはかなり縦への速さを意識しており、基本的にはアルデルヴァイレルドからのロングボールまたはFig.2の白のスペースへ楔のパスをだし、ワンタッチでエリアを攻略していく形だった。ラメラ、エリクセン、デレアリ、ソンフンミンはこの1列目と2列目の間のスペースを活用することでパスを引出し、チャンスはうまく作れていた。

 

トッテナムのビルドアップ、モナコの守備(後半)

一方で63分以降になるとモナコがうまく守備を変化させ、トッテナムに対応した。

まず後半になるとソンフンミンをM.デンベレに変更する。ソンフンミンがハーフタイムで変更されるほど出来が悪かったかというとそんなことはなかったと思うが、デレアリを前で使いたいという思いと、ソンフンミン、エリクセン、ラメラの3人のうち1人を外すとなればソンフンミンしかないだろうという感じだと思う。これによってフォーメーションは以下の形に変化した(Fig.3)

f:id:come_on_UTD:20170626233736p:plain


Fig.3 後半の両チームのフォーメーション


この変化の意味は簡単で、M.デンベレとダイアーが柔軟にCBの間やSBの位置に入ることで、ゲームメイクの際にパスの出し手を増やすことや、ルマ、モウチーニョのマーク相手をずらすことが目的となっている。実際この交代は63分まで効果的だったといえる。(Fig.4,5)

f:id:come_on_UTD:20170626233750p:plain
Fig.4 M.デンベレが3バックの1角になったシーン

f:id:come_on_UTD:20170626233819p:plain
 Fig.5 アルデルヴァイレルドからのロングボールによるゲームメイク

 

いずれにしてもモナコの守備の基準点を破壊することトッテナムはゲームメイクを行いやすくし、これによって後半15分間はいいリズムを作れていた。

 

 

一方で63分を境目として、ルマーのマーク相手が変わる。今まではB.デイビスだったが、場合によってはビルドアップ時に疑似3バックの1角となるフェルトンゲン、M.デンベレをマークするようになる。これによって1列目のファルカオ、B.シウバはスライドの負担が軽減され、アルデルヴァイレルドのロングボールを制限できるようになる。つまりモナコは4-4-2を基本としながらも一瞬ルマーが前線に顔を出すことで4-3-3へと変化し、トッテナムのビルドアップに対応した。

この変化に伴いトッテナムはこの時間以降のチャンスは単発的なものになり、チャンスはカウンター性のものか最終ラインからのロングボールをうまくつなげた時にとどまってしまった。

 

トッテナムのチャンスメイク

07m40T(33-23-15-11-23-10-7)Grade5

13m50P(4-10-11-20)Grade5

16m30P(2-23-11)Grade4

18m50P(4-11-2-10)Grade4

28m10T(20-10)Grade4

44m40CK-P(11-2)Goal

47m20P(4-2-11-20)Grade5

 

47m10P(19-33-23-20-23)Grade4

47m40P(15-20M)Grade4

53m10P(4-2-10)Grade5

56m50P(33-23-33-23)Grade4

74m30P(33-9-10)Grade5

78m10P(2-9-10)Grade5


86m40T(19-23-9-17)Grade4

f:id:come_on_UTD:20170626233901p:plain

Fig.6 H.ケイン(左)、アルデルヴァイレルド(右)

何度か決定機を迎えたH.ケインだったがこの試合はノーゴールだった。ストライカーであれば少なくとも1点は決めてほしかったところだった。一方で動き出しの質などは高く、後はフィニッシュの精度だけという感じだったので、シーズンの間には戻っていくだろうということが予想できる。

アルデルヴァイレルドはロングボールの精度が高く、セットピース時にも脅威となっており、トッテナムの中では一番目立っていた。

 

モナコのボール保持攻撃、トッテナムの守備

前述のようにモナコは前線でボールを取る機会があまりなかったため、自陣深くからが攻撃のスタート位置となる。GKはほぼロングボールを蹴ってしまうし、かといってモナコの最終ラインはつなげるようなタイプではなかった。トッテナムはそこまでプレスはかけないものの、監視対象を見失わなければ特にトッテナムに問題を与えるような動きはなかった。

 


モナコのカウンター

f:id:come_on_UTD:20170626233909p:plain

Fig.7 バカヨコ(左)、ルマー(真ん中)、B.シウバ(右)

むしろ問題はカウンターだった。もちろんトッテナムがゲームメイクをうまく行っている間はうまい形でカウンターを行うことはできていなかったが、一旦ビルドアップを制限し、トッテナムのゲームメイクが見えるようになってくると守備面において対人能力の鬼のバカヨコ、攻撃面において快速のルマー、速さとテクニックを両立させたB.シウバが特に輝き始める。逆にファルカオはやっぱり怪我明け以降迫力が落ちてしまっているような感じだった。

 

モナコのチャンスメイク

14m40T(10)Goal

18m00T(9-10)Grade5

30m10P(19-10-19-27)Goal

35m00FK-P(8-25)Grade4

 

73m30P(27-10-27M)Grade4

77m40T(8-9-10-27)Grade4

79m50P(19-8-19)Grade4

82m50P(1-18-27)Grade4

 

とにかくチャンスメイクにおいてルマーの爆発的な加速力は脅威だった。この試合ではうまくボールを回収してカウンターにつなげる機会やボール保持攻撃の頻度が少なかったため披露する機会は限られていたが、とにかく危険な選手だった。

 

今回特に大きなチャンスにはつながっていないが、バカヨコは何度かそのストライドを生かしたぬるっとしたドリブルを披露していた。全盛期のディアビのようなプレーが今後効果的にチャンスメイクに生かされるようになればかなりモナコの攻撃の脅威性は増していく感じがする。

 

余談

トッテナムはうまく攻めてはいたもののデレアリの守備の緩みなど一瞬の隙が失点につながってしまっており、若いチームの特徴がでていた。一方でモナコはそこまで試合の出来はよくなかったと思うが、トッテナムのホームで勝てたという事実はグループステージ突破を考えるうえで非常に重要になってくるだろう。

UCL16-17-D6-バイエルン.vs.アトレティコマドリード

UCL16-17-D6-Bayern.vs.AtleticoMadrid

まずはスタメンから
赤がバイエルン、黒がアトレティコマドリード(Fig.1)

f:id:come_on_UTD:20170618133509p:plain

Fig.1 バイエルンvsアトレティコマドリード

 

バイエルンは4-2-3-1

遂にシステムを変更したバイエルン。今まではT.ミュラーをかならずSHに配置させていたため、左右非対称の形になることが多かった。またT.ミュラーが得点感覚を失っていること、撤退守備の強度などいくつかの問題点があった。そういったこともあってかフォーメーションは4-2-3-1へと変化させた。

 

アトレティコマドリードはいつもの4-4-2

ゴディン、ガビ、コケ、カラスコグリーズマンといった外せない選手はそのままだが、F.ルイス、ファンフラン、F.トーレスなど一部の選手の休養にあてた。なおアトレティコマドリードは今まで5戦連勝、バイエルンは3勝2敗のため、この試合負けても1位突破は確定している。

 

試合の概要

試合は1-0でバイエルンが勝利する。28分にベルナトが獲得したFKをレヴァンドフスキが直接決め、これが決勝点となった。この試合UCL2016-2017のバイエルンではほぼ初めて4-2-3-1を導入。変幻自在のビルドアップによってアトレティコマドリード10人を完璧に押し込んで終始試合を進められた。この試合に関してはバイエルンの完勝。

 

2節のおさらい

2節はアトレティコマドリードの完勝、6節ではバイエルンの完勝となり、なぜここまで内容に差が出てしまったかを確認していく。そのためには2節はどういった試合だったかを確認しなければならない。

2節でのバイエルンは4-3-3。この時のビルドアップはISHをSBの位置に落とし、SB、WGを利用した攻撃を行おうとした。一方のアトレティコマドリードバイエルンのISHがSBに落ちたタイミングでCHを前に上げ一時的に4-4-2→4-3-3へと変化し対応した。この守備はとてもうまくいき、アトレティコマドリードはボールを持たれつつも押し込まれなかったため、ボール保持攻撃、カウンターでバイエルンを圧倒出来た。

 過去記事貼り付け

バイエルンのビルドアップ-ゲームメイク、アトレティコマドリードの守備

この試合あまりにもアトレティコマドリードミドルサードでのバイエルンの進撃を止めることができなかったが、それはこの試合のバイエルンがあまりにも変幻自在になっていたからであろう。


バイエルンのビルドアップI

f:id:come_on_UTD:20170618133528p:plain

Fig.2 バイエルンのビルドアップI

バイエルンはオーソドックに4-4-2のままビルドアップを行うこともあったが、この時のアトレティコマドリードのマーク相手、対応はしっかりしていた

カラスコグリーズマンはR.サンチェス、A.ビダルへのパスコースを防ぎつつCBを警戒

バイエルンのSBにボールが渡った段階でコケまたはガイタンがSBにプレス

・SBへのプレスに合わせて1列目の2人がハイプレスにシフト

アトレティコマドリードの守備は常に守備的で、Fig.2のような場面でも3人しかハイプレスに参加しない。試合の序盤はこのような形でバイエルンが前に進めない場面もあったが、この試合のバイエルンの強みはビルドアップが非常に多彩であったこと。


バイエルンのビルドアップII

f:id:come_on_UTD:20170618133543p:plain

Fig.3 バイエルンのビルドアップII

これがこの試合のメインのビルドアップとなる。4-4-2に対して4-2-3-1のビルドアップはあまりうまくいかなかったので、A.ビダルをCB間に落としてアトレティコマドリードの1列目を混乱させようとする。この時のアトレティコマドリードの対応はただ下がるのみ。これはPSV戦でも見られたが、基本的にアトレティコマドリードはビルドアップ段階で数的同数をあまり作らない。一方でバイエルンは2vs3であれば安全にボールを回すことができるし、ビルドアップ問題はこれでほぼ解決していた。


バイエルンのビルドアップIII

 

f:id:come_on_UTD:20170618133557p:plain

Fig.4 バイエルンのビルドアップIII

いつでもA.ビダルがCBをサポートできるわけではないが、そういった時にもアラバ、フンメルスはとてもよく対応していた。両CBが大きく開くことでドライブするエリアを確保し、CBがドライブする際にはA.ビダルがCBのエリアをカバーするという感じで、特にアラバはSBのようにタッチライン付近を何度もドライブしていた。


バイエルンのビルドアップIV

f:id:come_on_UTD:20170618133615p:plain

Fig.5 バイエルンのビルドアップIV

このビルドアップ自体はあまり確認されなかったが、特に後半何度かはラフィーニャがCBの横をサポートする3バックのビルドアップもあった。基本はビルドアップIIと同じ役割なのでこういったビルドアップがあったということだけ紹介。

 

試合後のフンメルスのインタビューの中で、「今日は様々なシステムを切り替えながら戦っていた。ものすごくいい試合ではなかったかもしれないけど、でもいい試合だったし、試合の大半で主導権を握っていたと思う」kicker日本語版引用http://kicker.town/muenchen/2016/12/42821.htmlと語っているが、システムの切り替えとは間違いなくビルドアップの方法を指している。

 

バイエルンのゲームメイク、アトレティコマドリードの撤退守備

バイエルンはビルドアップをうまくコントロールしていたからこそ、ゲームメイクにもいい影響が出ていた。ハーフライン付近ではCBがフリーでボールを持つことができていたので、あとは従来通りサイドからゲームメイクを行い、崩せそうにない場合は戻すという動作をひたすら繰り返していた。


ここでポイントなのは、CB間に落ちていたA.ビダルはハーフラインを超えるといつのまにか元の4-4-2の位置に戻っていること。これによってアトレティコマドリードの1列目はバイエルンのバックパス時にプレスに行きづらくなってしまっていた。(Fig.6)

f:id:come_on_UTD:20170618133635p:plain

Fig.6 アトレティコマドリードがプレスしづらい理由

Fig.6のようにプレスしてしまったら多分中央をバイエルンが蹂躙することになってしまうため、アトレティコマドリードの1列目は下がるしかない。ちなみに2節でもアトレティコマドリードが押し込まれることは当然あったが、それ以上にミドルサードバイエルンの進撃をよく妨害していたためここまで一方的に押し込まれるシーンは目立たなかった。

 

アトレティコマドリードのボール保持攻撃、バイエルンのハイプレス

攻守は一旦入れ替わって、アトレティコマドリード側の攻撃について。アトレティコマドリードが2節にボール保持攻撃をうまく行えた理由は、「ミドルサードでの守備が成功→ビルドアップをせずにゲームメイクに移ることができた」が大きいと思う。2節でもバイエルンが押し込んだ時のオブラク、ゴディン、サビッチのビルドアップのレベルは高いとは言えなかった。

 

ではこの試合は?といえば、バイエルンはほぼ完璧にビルドアップおよびゲームメイクを成功させてきた。したがってアトレティコマドリードの攻撃開始地点は自陣深い位置となってしまった。つまり、ビルドアップをあまり得意としていないアトレティコマドリードはロングボールを蹴ることがほとんどとなってしまった。ただし前線はカラスコグリーズマンなのでロングボールでボールを前進させることはほとんどできなくなる。

 

また、アトレティコマドリードが得意としているカウンターもそれほど披露する機会はなかった。やっぱり押し込まれている以上カウンターの成功確率は低くなるし、カラスコや途中出場のガメイロ、A.コレアは最終ラインの裏抜けを何度か試みていたもののアラバのスピードに完封されていた。正直この試合をみただけだと、アラバはスピード、ビルドアップ能力を兼ね備えていることから押し込んでいる時の最適CBのように思えた。ただしバイエルンのCBは他にフンメルス、J.マルティネス、J.ボアテングバトシュトゥバーがいること、LSBには基本ベルナトしかいないことを考えるとアラバのCBを見る機会はそれほどないのかもしれない。

 

両者の強み、弱み

バイエルンの強みは相手を押し込んだ状態でのハイプレス、ボール保持攻撃におけるロッベンレヴァンドフスキの個の優位性だが、逆に弱みは撤退守備、カウンター対策。

撤退守備の弱みを隠すためには相手を押し込みハーフコートでプレーしなければならない。少なくともこの試合ではそれができていたし、カウンター対策もほぼばっちりだった。

一方でアトレティコマドリードの強みはミドルサードからディフェンシブサードでの全員守備、前線の速いカウンター、逆に弱みはビルドアップ

ビルドアップを省略できた2節はいいサイクルで試合に臨めたが、この試合では全くと言っていいほど攻撃はうまくいかなかった。

 

バイエルンのチャンス

16m30P(23-27-6-11-18-6-11)Grade4

18m20P(23-6-35-11-35-11)Grade5

22m30P(5-13-16-9-23M)Grade4

27m40FK-P(9)Goal

 

47m10T(9)Grade4

53m40T(6-9-35-10)Grade5

54m40P(11M-11)Grade4

57m20P(18-6-18-10-9)Grade4

58m20P(23M-18)Grade5

58m40P(6-10)No penaly

60m30P(23-11-18-11-9)Grade4

64m40P(13-35-10-35-10-6)

71m50T(6-10)Grade4

72m20T(23-6-10-9)Grade5

76m40P(18-11-6)Grade5

 

Grade3以上のチャンスは30個、前後半15個ずつだったが、後半より質の高いチャンスメイクができていた。理由としては前半得点出来たバイエルンは前がかりにならざるを得ないアトレティコマドリードのスペースをカウンターでつくことができたからだろう。

f:id:come_on_UTD:20170618133712p:plain

Fig.7 レヴァンドフスキ(左)、ロッベン(真ん中)、T.アルカンタラ(右)

レヴァンドフスキ

この試合唯一ゴールを決めたのがレヴァンドフスキで、直接FKは見事だった。しかしほかのプレーを見てみると特にカウンターのシーンなどいつものパワフルさはなく精度を欠いたパスも何度かあった。おそらくレヴァンドフスキがいつもの調子であれば追加点が入っていたと思う。

 

ロッベン

相変わらずロッベンのスピードは素晴らしかった。特にカウンター時にフリーで前を向ければほぼ確実にチャンスメイクしてしまうほど圧倒的だった。サビッチはかなりうまく対応していたが、それでも後手後手になるシーンも多かった。惜しむらくはペナルティエリアで簡単に倒れすぎてしまいPKを得られなかったことぐらいで攻撃において最高級の駒となっていた。

 

T.アルカンタラ

4-2-3-1において、トップ下をT.ミュラーにするかT.アルカンタラにするかという問題があったが、バイエルンにおけるトップ下の役割はビルドアップを時としてサポートすること、中盤でパスやターンなどを駆使して違いをもたらすことが求められる。いずれの役割についても今日のT.アルカンタラの出来を見ればT.ミュラーより優れているのは明白だった。もちろんかなり高いレベルの争いであることには変わりないが、T.ミュラーがT.アルカンタラのポジションを奪うためにはもともと最大の武器だった得点への嗅覚を取り戻すしかなさそうだった。

 

アトレティコマドリードのチャンスメイク

アトレティコマドリードのチャンス

08m50P(8-6-7-10)Grade5

14m40P(23-7-6-19-10)Grade5

 

73m10P(11-21-11)Grade4

Grade3以上のチャンスは12個のみ。そのうち決定的だったのは前半2個のみ。ここでカラスコが決めきれていれば試合は全く違うものになっていただろう。それでも5個以内のチャンスを決めきるのはとても難しく、守備で押し込まれてしまったことがすべてだった。

 

余談

これでアトレティコマドリード勝ち点15、バイエルン勝ち点12でグループリーグ突破となった。この試合は順位づけにおいては全く意味がない試合だったが、バイエルンの意地を見ることができたいい試合だった。

UCL16-17-D5-アトレティコマドリード.vs.PSV

UCL16-17-D5-AtleticoMadrid.vs.PSV

まずはスタメンから

赤がアトレティコマドリード、緑がPSV(Fig.1)

f:id:come_on_UTD:20170613233517p:plain

Fig.1アトレティコマドリードvsPSV

アトレティコマドリードはいつもの4-4-2

突破が確定しているためか1節ぶりのヒメネス、UCLでは今シーズン初スタメンのチアゴがスタメンとなった。ブルサリコはUCL4節でのパフォーマンスが評価されたためか一時的にスタメンを勝ち取っている。

 

PSVは1節と同じ5-4-1。ただし主力であるはずのルークデヨング、ナルシンといった選手は起用せず、ジンチェンコ、ベルグビインといった新たな選手をスタメンに起用している。正直UEL出場権である3位を狙うためには6節の直接対決が最も大事と考えたためか、この試合ではターンオーバーさせている。

 

試合の概要

試合は2-0でアトレティコマドリードが勝利する。54分にカウンターでグリーズマン→ガメイロとつなぎガメイロが素晴らしいシュートで先制すると、65分にもチアゴ基点のカウンターでグリーズマンがしっかり決めて2-0とした。前半は自陣で撤退守備をしてくるPSVを崩すのにかなり苦労していたアトレティコマドリードだったが、後半はPSVにボールを持たせることでアトレティコマドリードが有利になるようにゲームを展開していた。そして2得点した後は無意味なティキタカでボールを回し続けてPSVの反撃の隙を与えなかった。前半はPSVペースで進むこともあったが、後半は完勝といってもいいだろう。

 

1節のおさらい

1節のPSVのホームでの戦いは、アトレティコマドリードのボール保持攻撃vsPSVのカウンターだった。PSVのカウンターはポスト役のルークデヨング、快速のナルシンを使った質の高いものであった。

一方のアトレティコマドリードもコケ、ガビの配給能力とSBの攻撃参加を活かし以前よりも改善されたボール保持攻撃を見せていた。結果は0-1でアトレティコマドリードの勝利で終えるが内容に大きな差はなかった。

 

PSVの撤退守備、アトレティコマドリードのゲームメイク

PSVは1節と同じく5-4-1の撤退守備を選択した。(Fig.2)
異なる点は1節で暴れていたルークデヨングとナルシンがスタメンでないこと。怪我リストにも入ってなかったのでちょっと理由は分からない。ただ全体を見渡してもジンチェンコ、ベルグビイン、ラムセラールといった次世代の選手を多く起用していることから、戦術的な観点というよりもターンオーバーととらえたほういいのかもしれない。

f:id:come_on_UTD:20170613233545p:plain

Fig.2 PSVの撤退守備

PSVの撤退守備の特徴は以下のとおりである

PSVの1列目は今までの試合と同様に守備時の運動量は全くないデスコルガード

・2列目、3列目はファーストポジションがかなり深い位置

アトレティコマドリードのSBがボールを持った時はジンチェンコ、ベルグビインが一時的に前にでて5-3-2の形(Fig.3)

アトレティコマドリードのSHがボールを持った時はアリアス、ビレムスが対応


1節のPSVとの一番の変化は押し込まれても構わないという受け身のスタイルから押し込まれないように2列目ががんばる!!というスタイルに変更したことだろう。これは後述するPSVの攻撃方法と関連があるかもと思っているので、頭の片隅にでも。

f:id:come_on_UTD:20170613233601p:plain

Fig.3 PSVのゲームメイク妨害

本来であればSBに位置する選手がチアゴやゴディンにサイドチェンジできるとこういったスライドを無効化できる。1節ではコケ、ガビがその担当をしていたが、この試合ではそういったプレーは少なくなっていた。コケは何をしていたかというと、4節ロストフ戦序盤と同じように疑似SHとしてチャンスメイクに絡もうとしていた。ただし4節と同じようにコケがボール供給係でなくなるとゲームメイクの質は落ちてしまっていた。

 

コケのベストポジションは?グリーズマンとの関係性

f:id:come_on_UTD:20170613233618p:plain


Fig.4 コケ(左)、グリーズマン(右)

試合スタート時にはカラスコとコケの位置が本来と逆になっていたが、おそらくブルサリコとのコンビネーションを考えた時に外に張っているタイプのカラスコのほうが合うからだと思う。しかし

15分にはこれら2人はポジションチェンジしていつもの配置に戻る。もちろんLSHのほうがカラスコは攻撃で存在感をだせていたが、根本的なゲームメイクの質の改善につながらないのは4節ロストフ戦を見ていれば理解することができる。

 

一方でコケを前に置きたがる理由も理解できる。

コケ、ガビをCHとした場合、SHはカラスコ、A.コレア、ガイタンといったいわゆるウイング寄りのプレーヤーが多くなってしまう。この時、前線のリンクマンはグリーズマンが担うことになるため、ボール保持攻撃においてグリーズマンがシュートまで持ち込めるシーンは限られてしまう。

しかし誰がどう見てもこのチームで一番得点力があるのはグリーズマンなのは間違いないのだから、グリーズマンを出し手ではなく受け手にしたい。それならばコケがより前でプレーし出し手になるしかないという流れだと思う。数は限られていたものの、試合中のコケとグリーズマンがコンビネーションした時はいい予兆があった。

 

それでもそもそもゲームメイクがうまくいかなければ絵に描いた餅となってしまい、まさにアトレティコマドリードの前半はそういった状態だった。

 

PSVのビルドアップ、アトレティコマドリードの守備

この試合のトータルボールポゼッションはアトレティコマドリードが52%、PSVが48%

PSVも十分にボールを持っている。理由はアトレティコマドリードPSVの噛み合わせが非常に悪いからだと思う

 

アトレティコマドリードの基本は4-4-2

PSVのWBがボールを持った時はSHが前に残りの3枚がスライド(Fig.5,6)

PSVのISHが下がった時にはCHも前にでる
・WBからのバックパスに合わせて1列目は強度の高いプレス

f:id:come_on_UTD:20170613233652p:plain
Fig.5 アトレティコマドリードの中盤守備(ビレムスがボールを持った時)

 

f:id:come_on_UTD:20170613233705p:plain

Fig.6 アトレティコマドリードの中盤守備(アリアスがボールを持った時)

まず大前提として1節もこの試合でもボールを奪取するようなアトレティコマドリードは行わなかった。そしてPSVも1節と同様に攻撃時はWBを前に押し上げた3-5-2へと変化する。

当然3バックに対してとれてぃこマドリードの1列目は2人なのでとらえきれない場面がほとんどとなる。またこのような状態のプロパーをマークする仕組みがなかった。チアゴがプロパーにつくべきかどうかはかなり意見が分かれるだろう。バルセロナバイエルンブスケッツ、X.アロンソを平気で高い位置まで上げるがシメオネ監督はあんまりそういうことをやらない。こんな感じでアトレティコマドリードPSVのビルドアップを妨害する術を持っていなかったため、ボールポゼッションはほぼ50%となった。

 

PSVのゲームメイク、アトレティコマドリードの守備

前述のようにハーフラインより少し後ろまでは安全に進めたPSVだったがゲームメイクで詰まる。

PSVのビルドアップ要因は3バック+片側のWB+プロパー、それに対してビルドアップ妨害に参加するアトレティコマドリードの選手は1列目の2人+片側のSHの3人。そしてジンチェンコとラムセラールにはゾーンディフェンスで必ず選手がついている。つまりPSVの前線はG.ペレイロベルグビイン+片側のWB vs アトレティコマドリードの最終ライン4人+チアゴとなるのでこのままではチャンスを作ることはできない。チャンスを作ることができたタイミングはPSVの3バックがドライブなどで一時的にゲームメイクに参加できたときのみ。ただしそういったプレーは少なかったためPSVのボール保持攻撃はうまくいっていなかった。

 

こういう時にルークデヨングのようなターゲットマンがいれば1節のようなチャンスを作ることも可能だが、このメンバーではロングボールを使ったチャンスメイクは難しい。となればアトレティコマドリードのボール保持攻撃で押し込まれることはデメリットでしかなくなる。2列目の守備の強度が上がった理由はこんなところからも来ているだろう。

 

アトレティコマドリードのチャンスメイク

05m30P(5-3)Grade4

06m40P(6-7-16-10-21)Grade5

07m50P(3-21-6-7)Grade5

11m00FK-P(14-2)Grade5

15m10P(3-10)Grade4

16m40P(3-10)Grade5

18m50P(5-7-5-6-21)Grade4

45m30P(14-7-10-21)Grade4

 

46m10T(5-6-21)Grade4

49m30CK-T(10-24)Grade5

51m30T(5-14-7)Grade4

54m10T(10-6-21-7-21)Goal

59m20P(5-10)Grade4

65m40T(5-7)Goal

72m00CK-P(6-21)Grade5

 

Grade3以上のチャンスは29個と今までで最も少ない。前半も後半もゴールが入るまでの展開はお互いのボール保持攻撃の応酬だったが、アトレティコマドリードは特に前半カウンターの基点になりそうな場面でのミスがいつも以上に多かった。しかし後半になると見事にそういった部分は改善され、54分に素晴らしいカウンターからガメイロがうまく決めた。

 

ブルサリコについて

前節ロストフ戦ではそのクロス精度の高さで危険なプレーヤーとなっていたが、この試合では消えていることが多かった。多分相方のSHがコケだったこともあって、うまく攻撃に絡めていなかった。こういう部分はファンフランと比べると大分劣っている部分なので今後どう成長していくかがアトレティコマドリードで長くやれるかのカギになりそうだ。

 

得点後のアトレティコマドリードは露骨に攻撃の手を緩める。とはいっても攻めないだけでボールを持つという状態、いわゆる「無意味なティキタカ」を行うことで試合を強制的に終了させた。

 

PSVのチャンスメイク

PSVのチャンス

17m00T(15-27-7)Grade5

18m20P(5-4-6)Grade4

23m50FK-P(25)

33m00P(5-25-4-7)Grade4

 

73m10P(5-25-4-6-7M)Grade4

 

PSVのチャンス自体は非常に少なかった大チャンスは17分にベルグビインがヒメネスを完璧に抜きさり、G.ペレイロとオブラクの1vs1になった場面だろう。ただしこの場面ですらグリーズマンはいち早く危険を察知してプレッシャをかけているのは流石だった。

 

ジンチェンコの将来性

f:id:come_on_UTD:20170613234151p:plain

Fig.7 ジンチェンコ

EURO2016のウクライナで発見したこの選手はやっぱりポジショナルプレーで輝きそうな片鱗がある。置くようなスルーパスはD.シルバのようで、今季からマンチェスターシティ→PSVへレンタルで移籍し武者修行中だが、マンチェスターシティではデブライネとD.シルバがいるので2017-2018にレンタルバックすることはおそらくないだろう。今後ぜひ伸びてほしい選手。

 

余談

サッカーの面白い部分の1つとしてスペースをどう解釈するかというのが挙げられる。バイエルンのように徹底的に相手を押し込むことでハーフスペースでサッカーをする選択。今回のアトレティコマドリードのように相手にボール保持攻撃させることであえてカウンターのスペースを作り出すという選択。

アトレティコマドリードはそのどちらもに対応できるようになりつつある。

UCL16-17-D5-ロストフ.vs.バイエルン

UCL16-17-D5-Rostov.vs.Bayern

まずはスタメンから

青がロストフ、赤がバイエルン(Fig.1)

f:id:come_on_UTD:20170611163634p:plain


Fig.1 ロストフvsバイエルン

バイエルンは4-3-3

ノイアー、J.マルティネス、A.ビダルロッベン、コマンを負傷欠場で失い、X.アロンソ、キミッヒを休養させているため、GKウルライヒ、CBバトシュトゥバーは今期のUCL初出場。R.サンチェスは途中出場が多いがここまでいいプレーを見せていないこともあって、この試合でアピールしないとかなりやばい状況

ロストフはいつもの5-3-2

けが人なしのためメンバーは相変わらず変更なし。堅守5-3-2と得点力を両立できるかがこのチームの最大の課題

 

試合の概要

試合はロストフが3-2で勝利する。34分にR.サンチェスの素晴らしい突破からのこぼれ球をD.コスタがうまくコントロールしてバイエルンが先制するが、43分にカウンターからアズモンが同点にすると53分にはノボアがペナルティエリア内で倒されてPKをポロズが沈める。その直後51分に左サイドからのコンビネーションでベルナトが決めて再び同点にするが、66分にノボアが直接FKを完璧にコントロールし、最終スコアを3-2とした。ロストフの5-3-2の練度はとても高かったが、後半運動量が落ちる時間帯でも「バイエルンに勝てる」という強い士気のもと守り続けた。バイエルンの被カウンター問題はまたも解決されないままとなった。

 

ロストフの前線守備、バイエルンのビルドアップ

ロストフの守備の強みはなんといっても1列目の運動量、2列目、3列目の連係だろう。一方でロストフの攻撃はロングボールからアズモン、ポロズの個人能力に頼るパターンが非常に多いため、攻撃時間が非常に短くディフェンスラインを上げ切れないという問題がある。

 

そういった問題はこの試合でも内包していたものの、ディフェンスラインを上げることができた時のロストフはしっかりと前線から守備を行っていた。(Fig.2)


バイエルンゴールキック

f:id:come_on_UTD:20170611163649p:plain

Fig.2 バイエルンゴールキック時のロストフの前線守備I

初期配置は以下の通り

・ポロズ、アズモンがJ.ボアテングバトシュトゥバーをマーク

・ノボア、エロヒンがラーム、R.サンチェスをマーク

・ガツカンがT.アルカンタラをマーク

この時ラフィーニャ、ベルナトに出せるかがGKウルライヒの1つの仕事となる。

(そもそもバイエルンゴールキックになる回数はそれほど多くなかったので、試合全体に大きな影響を与えたわけではないが)

結論から言うとウルライヒノイアーほどうまくビルドアップに関与できていなかった。


基本的にウルライヒはJ.ボアテングまたはバトシュトゥバーに預けることが多かったわけだが、そうなった時はロストフもマーク相手を以下のように動かす。(Fig.3)

f:id:come_on_UTD:20170611163704p:plain

Fig.3 バイエルンゴールキック時のロストフの前線守備II

J.ボアテングにボールが渡った場合

・ノボアはラフィーニャにマークチェンジ

・ポロズはラームへのパスコースをふさぎながらJ.ボアテングにプレス

・アズモンはウルライヒ、T.アルカンタラを監視

・ガツカンはT.アルカンタラを監視しつつ、ラームのポジショニングを警戒

このようにハーフライン付近での守備を前線でも行うことでバイエルンが前進しにくい状況をつくっていた。もちろんEURO2016イタリアのように相手にロングボールを蹴らせて回収したボールでショートカウンターという形は最も理想的だ。しかしバイエルンはこういった前線からのプレスを回避する術を持っていること、そもそもバイエルンゴールキック回数が少ないことが要因で、ロストフはカウンターまで発展させることはできなかった。

 

ロストフの中盤守備、バイエルンのゲームメイク

いわゆるハーフライン付近のエリアでの攻防が最も激しかったこの試合。まずはバイエルンのゲームメ
イク方法を見ていく。(Fig.4,5)

f:id:come_on_UTD:20170611163717p:plain

Fig.4 ラフィーニャ側でのビルドアップ

ラフィーニャ側でのビルドアップはスタメン表通りに動くためそれほど難しい動きはない

・D.コスタがサイドに張り、ラフィーニャはSB、ラームはISHの位置からゲームメイクを開始

一方でロストフの守備は今までと同様に、


・ノボア→ラフィーニャ、クトリャショフ→D.コスタ、ガツカン→ラーム、アズモン→T.アルカンタラというように選手をコンパクトにまとめることでバイエルンのゲームメイクを妨害した。

f:id:come_on_UTD:20170611163728p:plain

Fig.5 ベルナト側でのビルドアップ

こちらのビルドアップはバイエルンアトレティコマドリード相手に行ったゲームメイクと同じ

・ISHのR.サンチェスをSBの位置に下げ

・ベルナトをオーバーラップ、内側にリベリーがポジショニング

単純にリベリーはより内側でのプレーを好むからということだろう。

相手のポジショニングが変化してもゾーンディフェンスなのでそこまで迷うこともないロストフはしっかりとマーク相手を見失わずにいた。

 

バイエルンのチャンスメイク

バイエルンのチャンス

18m10P(6-13-11-9-11-35M)Grade4

20m40T(35-9)Grade4

21m20CK-T(11-28)Grade5

23m50P(28-7-35M)Grade4

25m20P(28-13-21)Grade4

31m30P(17-13-11M)Grade4

34m40P(18-7-35-11)Goal

 

46m10P(35-7-21)Grade5

51m30T(11-9-7-35-7-18)Goal

74m20P(21-11-21)Grade4

74m40P(6-25-13-11-13-11)Grade4

77m00P(6-18-7-18-25)Grade5

79m10P(6-13-21-25)Grade5

83m20P(28-5-13-25)Grade4

85m10P(28-7)Grade4

89m00P(11-28-7-6M)Grade5

89m40P(6-11-13)Grade4

90m00P(7-9-25-7)Grade5

 

こういった守備に対して非常に苦労していたバイエルンだったが、ボール保持攻撃時のノウハウはかなりあり、T.アルカンタラ、ラーム、J.ボアテングのようなサイドチェンジも楽々こなせますよという選手がいるため、時間は1節に比べてかかるものの押し込むシーンは当然あった。

 
しかし1節の時のように1列目と2列目をD.コスタ、キミッヒで中央に切り裂いていくプレーは皆無であったため、サイドからのクロス爆撃またはブロック外からのミドルシュートが主な攻撃となる。(Fig.6)

f:id:come_on_UTD:20170611163741p:plainFig.6 バイエルンのクロス

このうちラフィーニャが0/6、D.コスタが3/15、ベルナトが1/4、リベリーが1/4と右サイドからのクロス攻撃に偏っていたことがわかる。ロッベンが負傷したこと、ラームが右SBでなくなったことでサイドの攻撃の質は一気に低下した。D.コスタは中央に切れ込むようなプレーは何度か見られたが、結局ブロック外からのミドルシュートで終わってしまっていたし、リベリーに関しては前半はインサイドレーン、後半はアウトサイドレーンを主戦場にプレーするがいずれも全盛期のクオリティを見せることができていなかった。またラフィーニャのクロス精度はラームに比べて低くここも問題だった。

 

R.サンチェスの個人技

一方で前半ポジティブだった点の1つにR.サンチェスの個人技が挙げられる。18分のチャンスを除いて、20分、23分、そして得点シーンだった34分のチャンスシーンではいずれも個人技を見せていた。

それぞれミドルシュート、ロングパス、1vs1の強引なドリブル突破と種類はちがうものの19歳とは思えないパワフルなプレーを見せていた。ただし依然としてボールを持ちすぎる傾向にあり、その部分が改善されれば間違いなく2,3年でワールドクラスになることは間違いない。多分R.サンチェスがいなければバイエルンは前半得点できなかっただろうというくらい個人技が光っていた。

 

70分前後からのバイエルンのチャンスメイク

66分にノボアに直接FKを決められて3-2と逆転されてからのバイエルンは、被カウンターを気にせず攻撃特化のチームになった。72分にこの試合唯一の交代だったR.サンチェスをT.ミュラーに変更し4-4-2とした。実際のところリベリーをT.ミュラーに変更し、R.サンチェスをLSHにしてもいいのでは?と思ったが、アンチェロッティはそうしなかった。

 

T.ミュラーの憂鬱

この時間帯になるとロストフの守備も疲労が隠せなくなって後手後手になるシーンが増えていた。実際74分から多くのチャンスが生まれていることはこの事実と無関係ではないと思う。その中でもT.ミュラーには少なくとも2回ビッグチャンスが到来したが決めきれなかった。

 

ロストフの執念

またロストフの守備陣1人1人がこの疲労がたまる苦しい時間帯にも非常に集中していたのも大きかった。本来この時間帯になると運動量が落ちるのは仕方ないが、危険なシーンで体を投げ出すシーンが今までの負けている試合に比べて圧倒的に多く、そういった細かい部分が失点を防いだ要因にもなっていたと思う。

 

ロストフのチャンスメイク

ロストフのチャンス

08m00P(44-89)Grade5

28m50FK-P(2-44)Grade4

33m20P(84-20)Grade5

43m10T(7-20)Goal

 

47m20P(84-89-7-16)Penalty

48m50PK(7)Goal

53m30P(84-20-84-2-20)Grade5

 

 

ロストフがボール保持攻撃をするシーンは非常に希少で、試合を通しても2,3回程度だと思う。そのなかでも面白いシーンが1つあった。(Fig.7)

f:id:come_on_UTD:20170611163815p:plain

Fig.7 ロストフのボール保持攻撃

8分のロストフのボール保持攻撃についてだが、この瞬間のみISHのノボアとエロヒンが前にでて3-3-4に変化している。まさにこれはEURO2016イタリア式ボール保持攻撃で、CBのロングボールから前線の4人が裏抜けを狙う形。この時はエロヒンの素晴らしい抜け出しが大チャンスとなった。

 

33分の大チャンスもガツカンからバトシュトゥバーの裏を狙ってアズモンが抜け出す形。この日のアズモンはトップフォームだったと思う、J.ボアテングバトシュトゥバーをスピードで完全に圧倒していた。

43分にはついにポロズとアズモンがショートカウンターを成功させて同点に追いつくことになるが、ショートカウンターになったきっかけはD.コスタのパスミスから。PSVに比べて運動量の高い守備をしているロストフの守備が実った瞬間でもあった。

47分もバトシュトゥバーの裏にポロズが抜け出し、J.ボアテングのクリアミスからノボアがエリア内でうまくプレーしPKを誘発。

63分にはまたしてもバトシュトゥバーの裏をアズモンが抜け出し、ポロズがペナルティエリア前でファールを受ける。このFKをノボアが沈めて3点目。

 

バトシュトゥバーが完全に裏抜けに対応できていなかった。ただしバイエルンのSBも被カウンター時には前線にいることが多く、ディフェンスエリアが非常に広大だったため少しかわいそうな状況ではあった。 

 

余談

5試合終わって勝ち点9となったバイエルンはグループリーグ突破を4節で確定させたものの2位で突破が5節で確定してしまった。撤退守備、被カウンター対策など特に守備に問題を抱えているバイエルンだが解決に向かうのだろうか。